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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
98/325

*** 98 対ヒト族戦争への準備 ***

 


 コントロールルームには俺とアダムのアバターとベギラルムだけが残っていた。


「アダム。敵を転移させると同時に、その武器や鎧を別の場所に転移させることは可能か?」


(さすがに多少の負担がかかりますので、一度に100人ほどが限度かと)


「そうか、それじゃあ俺も最近物や生物を転移させる力が上がって来てるから、例えば俺がヒト族を転移させると同時に、お前が奴らの装備を別の場所に転移させるとしたらどうだ?」


(それでしたらかなり負担が減りますので、1000人でも大丈夫でございます)


「それじゃあ逆に、そいつらに別の物を装備させるのはどうだ?」


(それも500人程度まででしたら可能です)


「それだけ出来れば充分だろう。ベギラルム」


「はっ!」


「このリストにある物品を至急地球から輸入しておいてくれ」


「こ、これは……」


「なあに、奴らに『死んだ方がマシ』と思わせるための細工だ。

 ああ、それからヒト族が使っている革鎧と同じようなものを200人分ほど作って欲しいんだ。

 まあ遠目に見てそれらしく見えればいい。

 そのための皮革材料や塗料も頼む」


「はは、サトル殿の『策』が楽しみですな」


「一部始終はアダムが録画しておいてくれるだろうから後で楽しんでくれ」


「はい」


「アダム、ビクトワール軍はあとどれぐらいでギャランザ王国王宮に着くんだ?」


(あと7日ほどでございます)


「随分とゆっくりした行軍だな。

 それじゃあ俺はまだ洞窟に籠ってるドワーフの旧支配層を、収容所に転移させて来るわ……」




 俺はやつらの洞窟内に転移した。


「き、きさま! こ、この『悪の使徒』め!」


「おーおー、低くて狭いところだと元気なこと。

 これからお前たちを収容所に転移させるからな。

 そこで充分に反省出来たら、街に連れて行ってやってもいいぞ」


「やかましいわ! この高貴な生まれのわしに対してなんたる無礼か!」


「あー、ぜんぜん反省してないなお前。

 もっとも反省出来るほどのE階梯があったらとっくに反省してるか。

 それじゃあまず、テラスに転移しような」


 俺は全員を山頂付近にあるテラスに転移させた。


「「「「「うひー! うひー! うひー! 」」」」」

「「「「「 高いよう! 広いよう! 怖いよう! 」」」」」


「それじゃあ1人ずつ順番に転移してもらおう」


 俺は50人ほどの連中を1人用特別収容所に転移させていった。

 あー、みんな這いずりながら低いドーム型の住居に入って行ってるよ。

 まあ食材も水もあるし、当面は生きて行けるだろ。



「さてアダム。実地訓練と装備の確認をするぞ。

 まずは臨時族長のドワールスのところに行こう」


 おお、ドワーフ兵は街の外で訓練中か。

 なかなか頑張ってるじゃないか。


「やあドワールス臨時族長、ドワーフ兵はみんな走れるようになって来たかい?」


「おお使徒殿。

 はい、皆5キロ程度でしたらさほど疲れることもなく走れるようになりました」


「それじゃあ実地訓練といこうか。みんなで第3砦に移動するぞ」



 あー、なんか貧弱な壁しか出来てないなあ。

 洞窟ドワーフの旧支配層って、ほんと無能だよな。

 あーあ、俺の顔見て慌てて石を運び始めたやつが大勢いるわ。

 はは、みんなに睨まれてるぞ。


 よし、砦の後ろの壁のさらに外側に、大型の転移魔道具を配置してと……


「ドワールス、兵を何人か道を登らせていってくれるか。

 うんそうそう。もう少し先まで行って。

 ああ、そこでいったん止まって。よし、また登り始めて」


 うん。道の曲がり角にいい具合の岩があって、そこから先は兵が見えないな。


「アダム、あの砦のやや下の小山の山頂から、曲がり角の先のドワーフ達は見えるかな」


(いいえ、見えません)


「よし、あそこでいいか」


 俺は岩の後ろに移動して、そこに練成で岩を変形させて広場を作り、転移の魔道具を設置した。

 うん、こんなもんでいいだろう。


「よしドワールス、兵を集めてくれ。

 みんな、よく聞いてくれ。

 これからお前たちには、『ヒト族が攻めて来たんで慌てて逃げるドワーフ兵』と、『それを追いかけて進撃して行くヒト族』の演技の練習をしてもらう」


 兵たちの顔がちょっと険しくなった。


「はは、これは計略だ。ヒト族どもを全員掴まえるための策だから我慢してくれ。

 それじゃあキミ、ここからあの曲がり角の岩まで走って行って、岩の後ろにある転移の魔道具に触れてくれ。

 いやもっと必死で走って、ヒト族軍から逃げ惑うカンジで。

 うんそうそう。途中で何回か後ろを振り返ることを忘れずにな」


 その兵が岩の向こうに消えたかと思うと、すぐに砦の後ろに転移して来た。


「それじゃあ200名は同じように走る練習をしてくれ。

 そうだそうだ。なかなかいいぞ、必死で逃げる感じがよく出てるわ。

 よし、3周したら休息だ。ここで休んでいてくれ」


「し、使徒殿…… こ、これは……」


「はは、いかにも多数のドワーフ兵が逃げ出しているカンジがよく出てるだろ。

 これでヒト族どもは調子に乗って砦に突入してくるだろうな」


「なるほど…… 包囲などするよりすぐに突入して来そうですな」


「途中で俺が魔道具の設定を変えるから、そのときは全員第2砦に転移する。

 みんな、間違ってもヒト族と戦おうなどと思うなよ。

 それだけは絶対に守ってくれ」


「「「「「「「「 はっ! 」」」」」」」」


「次は、『ドワーフを追いかけて進撃して行くヒト族』の練習だ。

 今度は元気よく雄叫びを上げながら走るんだぞ。

 今ヒト族の服と革鎧を出すから今からそれに着替えてくれ。

 うん、後ろからだとヒト族軍と見分けがつかないな。

 それじゃあ同じように3周走ってくれ」


 おー、見事な追撃軍だわ。

 さすがはドワールス臨時族長の部下たちだ。

 うんうん、大合格だ。



「さて、それじゃあ俺はちょっと作業をするから、みんなはそこで休んでてくれ」


 俺は砦の建物のすぐ前面に左右に張り出した城壁を作り始めた。

 あまり高くするとヒト族軍が越えられないからな。

 高さは10メートルぐらいでいいだろう。

 これぐらいなら壁を越えて砦の門を内側から開ける気になってくれそうだ。


 それからこの城壁にはひと工夫したんだよ。

 まずは城壁の厚さは8メートルもあって、内部が空洞の回廊になってるんだ。

 そうしてこの城壁の門は、正面から見て相当に右側に寄ったところにある。

 そうして、この門を開けて城壁内部の回廊に入ったら、今度は砦の中庭に出るための出口は反対側の左端にあるんだよ。

 つまり城門を抜けて城壁の中に入っても、300メートル近く歩かないと中庭には抜けられないんだ。


 これは中世初期の城郭建築で見られた工夫でさ。

 例え敵に城壁を超えられても、内側から城門を開けるにはたいへん苦労してもらおうっていうものなんだ。

 回廊の中は狭いから一度に2人ずつぐらいしか戦えず、どんな大群が来ても城門を開けられるまではけっこう時間が稼げたそうだ。

 当然罠も大量に仕掛けられるし。


 外からこの城門に入ると10メートル四方ほどの小部屋があり、そこを抜ければ砦内に入る回廊にも繋がっている。

 砦の出入り口はここと小さくて頑丈な裏口だけにして、後は全て完全に塞いでおいた。

 まあ、砦内に立て籠る敵兵を排除するには、どうしても城壁内回廊を攻略する必要があるようにしたんだよ。


 それから後方の城門の前には小さな体育館ぐらいの箱を作った。

 ヒトって明るい外から急にこんな窓も無い小屋に飛び込むと、瞳孔が開いて部屋の様子がわかるようになるためにはけっこうな時間がかかるんだ。

 だから対テロ特殊部隊の兵士なんかは、暗い場所への突入前はサングラスをかけるか片目を瞑ってるらしいな。


 後は砦の内部や中庭に、スピーカーの魔道具を取りつけてと。

 それから城壁内回廊や砦の入り口の内側に、OFF状態にした転移の魔道具を設置して準備は完了だ。


 それから俺たちは第2砦と第1砦にも転移して、ドワーフ兵の逃走訓練と追撃訓練と同様な城壁造りや魔道具の設置をしたんだ。



「それでは最後に200人ずつに分かれて、剣と盾での模擬戦闘をしてもらう。

 これは剣戟の音を記録するためのものだから、ハデに音をたててくれ。

 ときどき雄叫びを上げたり、やられたときの絶叫も入れてくれな」


 おー、さすがに迫力のある戦闘音だわ。

 雄叫びも絶叫も真に迫ってるし。


「どうだいアダム。この戦闘音を編集して実際の戦闘のときの音みたいに出来るかな?」


(編集の必要の無いほどに真に迫った音でございますね)


「はは、その通りだな」


 最後に俺は全員にペンダントを渡した。

「これは『連絡の魔道具』だ、当日は必ず身につけておくように。

 ここから俺の声が聞こえるからその指示通りに動くようにな。

 何か緊急事態が生じたら、それに向かって喋って報告してくれ」


 はは、なんかみんな嬉しそうだぞ。


「それじゃあちょっと練習してみるか」


 俺は砦の上に転移して、連絡の魔道具のスイッチを入れた。


「俺の声が聞こえた者は手を上げてくれ」


 全員が手を上げた。


「よし、それじゃあ俺から見て右側はヒト族軍役、左側はドワーフ軍役に分かれてくれ」


 よしよし、全員に俺の指示が聞こえているようだな。


「お疲れさん。

 行動実施は早くとも20日後の予定だ。

 出動1日前と6時間前には連絡するから、それまでは軽い訓練でもしていてくれ」


 ふむ。

 これでだいたい準備は終わったかな。





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