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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
97/325

*** 97 ビクトワール大王国、洞窟ドワーフ領侵攻計画 ***

 


 翌日俺は悪魔っ子たち300人の前に立っていた。


「みんないつも仕事お疲れさん。

 それで今日は希望者20人ほどに頼みたい仕事があってな。

 その仕事は『ガイア初の放送局』を作ることなんだ。

 まあ編集なんかはアダムがやってくれるけど、カメラの魔道具を持って『9時街』のみんなの生活をレポートしたり、住民にインタビューしたりして『番組』を作る仕事だ。

 悪魔界にも同じような仕事はあったと思うんだが」


 ああ、みんなこくこく頷いてるよ。

 まあ、この前の里帰りのときにみんなさんざんインタビューされてたみたいだから、どんなものかもイメージしやすいんだろう。


「それじゃあ『放送局』の仕事をしてみたい人は手を挙げてくれるかな」


 おー、50人ぐらいが張りきって手を挙げてるわ。

 みんなそういうマスコミみたいな仕事をしてみたかったのか。


「それじゃあ今手を挙げてる人たちで集まって、最初の20人を決めてくれ。

 もちろん1カ月ぐらいの交代制にしてもいいぞ」


 ははは、みんな嬉しそうだよなあ……


「そうそうアダム」


(はい)


「その『番組』をみんなに見せるための『スクリーンの魔道具』をたくさん作ろうと思ってるんだけど、魔法マクロ式を設計しておいてくれないか」


(スクリーンの大きさは3種類ほどでよろしゅうございますか?)


「うんそうだな。それでいいだろう」


 そうして俺はせっせとスクリーンの魔道具を作っては収容所に設置して行ったんだ。

 単に映像を流すだけじゃあなくって、アダムを通じてコントロールルームのPCと双方向会話が出来る高性能なものにしておいたぞ。

 もちろんマナ配合の超強化ガラスで覆われていて、斧で叩いても壊れないやつな。





 それから約1カ月後……


(サトルさま。

 ビクトワール大王国の使者がギャランザ王国王宮に到着し、先ほど会見が行われました。

 会見そのものは親書が渡されただけだったのですが、その後すぐにギャランザ王と王都に詰めていた侯爵との間に密談が為されております。

 ご覧になって頂けませんでしょうか)


「よし! よくやった。

 それじゃあみんなを呼んで、コントロールルームで見よう」


(はい)



 まもなく集まった皆の前のスクリーンに、やや小ぶりな王宮広間が映し出された。

 ここには王らしき人物と、あと数名の人物しかいない。


「ダゴラーザ侯爵よ」


「ははっ!」


「ビクトワール大王より書状が届いた。

 10日ほど後にビクトワール大王国軍5万が到着した後は、すぐにも洞窟ドワーフ族討伐に向けて兵を出せるよう準備せよとのことだ」


「ははっ! 陛下の予想通りでございますな」


「お前のところではどれだけの兵を出せるか?」


「はっ! 寄り子の男爵領軍5000に加えて我が領地の直轄軍1万5000ほどを動員出来まする」


「ふむ、ちと足らんな。

 ビクトワール王は最低でも3万の兵を出せと言って来た。

 仕方あるまい、東のルステル伯爵領より招集した兵5000に加えて、わしの直轄軍から兵1万をお前に預ける。

 計3万5000の兵をもって、洞窟ドワーフ軍を殲滅せよ」


「ははっ!」


「ドワーフどもの所有する岩塩は全て後詰のビクトワール軍に引き渡せとのことだ。

 また、ドワーフの男はすべて鉱山奴隷として岩塩採掘を急がせよ。

 岩塩鉱山の所有権はビクトワール大王国に帰属させるそうだの」


「あの国の岩塩鉱山が枯渇しかかっているという噂は、本当だったようでございますな」


「どうやらそのようじゃ。

 それから女子供も全て奴隷としてビクトワール軍に引き渡すように言われたわい。

 なんと強欲な王であることよ」


「度重なる岩塩鉱山奪取のための戦役で、軍費が底を尽きかけているのでしょう」


「だが3週間以内に岩塩鉱山を攻略出来たならば、我がギャランザ王国にも多少の岩塩と奴隷が与えられるそうじゃ。

 はは、ビクトワール王もだいぶ焦っておるようだの」


「ですが陛下……」


「ふふ、さすがはダゴラーザ侯爵だの。

 配下の者に命じて、岩塩も奴隷も一部は隠匿せよ。

 万が一もビクトワール軍に気取られるなよ」


「ははっ! 

 すでに奴隷商人たちを南の国境沿いの村に集めるよう指示しております!」


「そういう意味でも攻略は早い方がよい。

 後詰のビクトワール軍が追いつけぬうちに、岩塩も奴隷も隠匿するのだ」


「それでは我が嫡男バリステルを総大将とし、先鋒はギルダス・ボルグ男爵に任せようと考えまする」


「ボルグ男爵と言えば先のグレゴール王国攻略戦で功あった者か」


「はっ! そのため騎士爵より男爵に引き上げてやりましたところ、更なる栄達を夢見て血気に逸っておりまする」


「総大将はそちの嫡男バリステルか」


「はは、わたくしもそろそろ歳ですので、戦は若いものに任せようかと……」


「何を言うておるか、そのボルグ男爵に献上させた娘が余程に気に入ったとみえるわ」


「こ、これはこれは……」


「ふふ、まあよい。

 わしにも見目良いドワーフ奴隷を3人ほど献上することを忘れんようにの」


「ははっ! お任せくださいませ!」





(そうか…… ビクトワール大王国は塩不足に悩んでいるのか……

 ドワーフ侵攻軍を叩いた後は、塩を中心とした謀略でも仕掛けるか……)



(この会見の後、ダゴラーザ侯爵はボルグ男爵に早馬を出して侯爵領の邸に呼びつけた模様です。

 また、王都から侯爵領の中心都市までは馬車で3日ほどの行程と思われますので、3日後に侯爵とボルグ男爵の会見の内容をお伝え出来るかと思います)


「よろしく頼む」



 それからも俺は『人形遣い』のスキルを練習し、映像を見ながらヒト族の鎧を試作し、さらに大型の『転移の魔道具』を作ったり、多数の『連絡の魔道具』を作ったりして忙しく働いていたんだ。

 そうそう、捕虜収容所を造る傍ら、『砦つき軍野営地』を建設する魔法マクロも4種類ほど造ったんだよ。

【大野営地建設(5万人用)】マクロと、【中野営地建設(2万人用)】マクロと、【小野営地建設(5000人用)】マクロと、500人用の【最小野営地建設(500人用)】マクロな。


 中身はけっこう豪華なんだぜ。

 倉庫にはたっぷりと食料も入れてあるし、大きな水場もあるし、全体が高さ10メートルの城壁に囲まれてるしな。

 特に指揮官や将校が寝泊まりする部分は、装飾までつけてより豪華にしてあるんだ。


 ん? なんでそんなもん造るのかって?

 これを街道沿いに作っておけば、アフォ~なヒト族軍が引っ掛かってくれるかもしれないだろ。


 これは俺が造るものだから、システィの『準天使域』になるだろう。

 だから俺もアダムも、あまり負担無く中のヒト族を全員収容所に転移させられるんだ。

 そりゃあもちろん街道を歩いてるヤツだって転移させられるけどさ。

 そういう『天使域』の外で、しかも生物を転移させるのって、結構な負担なんだよ。

 アダムでも、天使域外では1万人を転移させるのには10分はかかるから、その間に逃げられちゃうかもしれないからさ。


 だからこうして城壁で囲えば、俺たちの負担も減って、数秒で全員転移させられるはずだ。

 まあ、もうマクロは作ったから、これからはそう負担にはならないし。


 そうだ、この野営地を『ヒト○イホイ』とでも名付けるか……

 後でマクロ名を変えておくとしよう……




 3日後。

 ダゴラーザ侯爵邸で、侯爵と子飼いの男爵との軍議が行われたようだ。


(それではサトルさま、ただいまより録画映像を再生させて頂きます)


「おう、見せてくれ……」


 画面には侯爵邸内らしき庭園が現れた。

 かなりのカネをかけたと見られる風景が広がっている。

 その見事な芝生の中の東屋に4人の男たちの姿があった。

 2人の男たちはテーブルについていたが、後2名はそれぞれの主の後ろに控えている。



 ダゴラーザ侯爵が口を開いた。


「ボルグ男爵よ。王命が下った」


「ははぁっ!」


「そちは自領の領兵5000を率いて洞窟ドワーフ領侵攻軍の先鋒を務めよ。

 後続としてわしの嫡男バリステルが率いる侯爵軍1万5000が続く。

 その後ろにはルステル伯爵領軍5000に加えて王の直轄軍1万も預かっておる。

 7日後にビクトワール大王国より第3王子率いる後詰軍5万が到着次第、侵攻を開始出来るよう準備せよ」


「畏まりましてございます!」


「今回の侵攻では、なによりも早さが求められておる。

 これだけの大軍で攻略するのはそのためだ。

 速やかにドワーフ兵どもを殲滅するのはもちろん、殲滅後は速やかに略奪にかかれ。

 ビクトワール大王国からの指令では、岩塩と女子供はすべて引き渡せとのことなのだが、連中が追いつかぬうちにそれらを一部隠匿するのだ。

 決して気づかれぬようにな……」


「ははっ!

 ビクトワール王国軍より軍監が付けられましょうが、それは如何致しましょうか」


「ふふ、戦場には不慮の死というものがよくあるわの。

 見つかった場合には上手く消せ」


「はっ!」


「王への献上用に見目麗しい女子おなごの確保も頼んだぞ」


「このボルグにお任せくださいませっ!」





 映像が終わると、その場の全員の顔が蒼白になって引き攣っていたよ。

 ああ、ローゼさまもシスティも泣いちゃってるわ……

 システィを泣かせるとは…… このヒト族たち、許せんな……

 でもシスティ。

 これからヒト族と戦争するからには、これはキミも見ていなければならないことなんだよ。手を汚すのは俺だけで充分だけどね。


 それにしてもこいつら……

 我欲の為だけに他人のことなど全く考えずに好き勝手言いやがって……



(あの、サトルさま……

 本日入手致しましたその後のボルグ男爵と、その配下の奴隷兵頭との会話もございますが……)


「見せてくれ……」



 場所が変わった。

 画面の隅には、「ダゴラーザ侯爵邸内、ボルグ男爵の部屋」と表示されている。


 木造の室内では、先ほど侯爵邸の庭にいた男爵と、もう一人の男が向き合っていた。


「どうやら俺の上昇運は止まるところを知らんようだの」


「ははっ! 洞窟ドワーフ軍攻略戦先鋒拝命おめでとうございます!」


「ふはははは!

 侯爵令嬢ご学友の名の下に、娘を侯爵殿に差し出した甲斐があったというものだな。

 これであの娘が侯爵の胤でも孕んでくれれば、俺も侯爵一族に名を連ねることになろう。

 だが、この戦で軍功を挙げれば子爵の地位も有り得るぞ!

 そうすれば奴隷兵頭のお前も騎士爵にしてやろう」


「ははっ! 有り難き幸せにございまする!」


「そのためには如何に早くあのちっぽけな3つの砦を攻略するかだ。

 戦闘工兵部隊の準備を急がせろ」


「はっ! 既に荷駄用の馬100頭に、攻城用の大槍と城壁攻略用のはしごを作るための資材の準備は完了しております」


「それでは工兵部隊を分隊に分け、密かに最西端の村へ移動させておけ。

 やつらはどうしても足が遅いからな。いいか、決して目立つなよ」


「はっ」


「明日、領地に帰還する。

 後詰のビクトワール軍5万が到着次第進軍を開始出来るよう最後の準備をせよ。

 まあ後詰の軍と言うよりは、俺たちを監視しつつ略奪するための兵だろうがな。

 いいか、やつらに倍する速度で進撃し、先に岩塩や奴隷の隠匿を行うのだ。


「はっ。兵糧はいかほどご用意致しましょうか」


「うむ。兵糧は最小限でよい。

 奴隷兵どもには、日に1食で充分だ。

 メシが喰いたければドワーフ砦の食料を喰えと言え。

 そうすれば連中も必死で侵攻するだろう」


「はっ!」


「それから間道を下った先の村の準備は出来ておるか」


「はい、岩塩用の隠し倉庫3カ所の準備は命じております。

 また、目立たぬ場所の奴隷収容施設2カ所もです」


「はは、王や侯爵にもいくらか渡さねばなるまいが、俺の取り分もたっぷり頂かねばな。

 そのカネや女をビクトワール王国高官に渡せば、ビクトワール王国貴族の地位も夢ではなかろう。

 それもこれも全ては我が男爵領軍の力にかかっておる!

 いいか! 奴隷兵どもを全員戦死させるつもりで突撃させよ!」


「うははぁっ! 仰せの通りにっ!」







「のうサトルよ」


「はい、エルダさま……」


「こいつだけは許せんの……」


「はい。俺も許せません。

『死んだ方がマシ』という目に遭わせてやりますよ……」


「そうか…… 任せたぞ……」


「はい……」



(サトルさま。この後は如何致しましょうか)


「引き続き監視を続けてくれ。

 特にビクトワール大王国第3王子が率いる後詰軍の位置と、このボルグ男爵軍の動静を頼んだぞ」


(畏まりました)





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