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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
93/325

*** 93 ドワスター・ドワーフたちの『9時街』見学会 ***

 


 俺の目の前では、ドワスタードワーフ族の実質的な族長交代が行われていた。


 うーん。

 こいつら相当にマトモだわ。

 独裁制でなく、ましてや世襲制でもなく、こんなふうに族長の後継を決めるとは……

 しかもこれ、立憲君主制や民主主義の萌芽かも知らんぞ。

 同じドワーフでもこうも違うものか……

 あ、『熱の魔道具』も出来上がったようだな。


「それじゃあ今日の本題に移ろうか。

 もしよかったら、これからみんなで俺たちの街に見学に来てくれないか?

 行くときも帰るときも『転移』で移動出来るから今日中には帰って来られるぞ」


「使徒殿、誠に申しわけ無いのだが、その見学は2回に分けて頂いてもかまわないだろうか。

 さすがにここにいる幹部全員が一度に街を離れるわけにはいかないのだ」


「もちろん構わないぞ。

 それに俺たちがいなくてもアダムが警戒してくれるから大丈夫だ。

 アダム、現在ここに最も近い位置にいるヒト族はどこにいる?」


「ここより500キロ南東に10人ほどの偵察分隊と見られる集団がおります」


「500キロも離れているのか。

 その連中は馬を連れているか?」


「3頭ほど伴っておりますが、全て食糧らしき荷駄を運んでおりますね。

 ヒト族は全員徒歩であります」


「そうか、それなら当面は問題ないだろうが、念のため200キロ以内に接近したら教えてくれ」


「かしこまりました」


「そ、そんなことまでわかるのか……」

「こ、これじゃあ隠れながらこっそり偵察するのも無理なんか……」


「その通りだ。

 そうそう、ついでにここと俺たちの街を結ぶ『転移の魔道具』も置こう。

 そうすればいつでも誰でも見学に行けるからな。

 転移先は、『見学ツアー受付』の周りにしておくぞ。

 あんた達の部下にも見学させてやりたいだろう」


「す、すげえな。そんなことまで出来るんだ……」


「それじゃあ第1回のツアーに行くメンバーは、俺に近寄ってくれないか」


 はは、当然のように大族長が近づいて来たよ。

 その場の半数のメンバーもわくわくしながらな。



 俺たちが街の外側にあるギャラリースタンドに転移すると、そこにはフェンリーとゴブリンとオークとオーガとドラゴンとベヒーモスとミノタウロスとトロールの族長もいたんだ。


「どうしたんだみんな?」


「アダム殿が、サトル殿がもうすぐドワーフの族長殿ご一行をお連れすると教えてくださったので、皆でお出迎えすることにしたのです」


「そうか、それはどうもありがとう」


「いえいえ、これが私どもの今の仕事ですからな……」


 それからはみんなで挨拶や紹介をしたんだけどさ。

 ドワーフさんたちは、各種族の族長が9人もいたんで驚いてたよ。


 それからはしばらくみんなで街を見ていたんだ。

 大族長はまたぷるぷるしてたけど……



「サトル殿」


「なんだい」


「この街の周りは草も木も無い完全な荒野になっている。

 それが、ここに街があるということは、荒野の中に街を造ったということなのか?」


「はは、さすがだなドワリングさん。

 そうだよ、街が出来る前はここも荒野だったんだ」


「それで、この街はいったい何年かけて作られたんだろうか……」


「はは、実は1日だったんだ」


「な、なんと! そ、それも『技術』なのか……」


「そうだな、『魔法マクロ』っていう技術だ」


「………………」



 それからはみんなで門の前に移動したんだ。

 ドラゴンやベヒーモスみたいな大きな連中には申し訳無いけどお帰り願ったよ。

 まだみんな周囲に小さな種族がいるのに慣れてないからな。

 万が一踏んだりして大ケガさせたらたいへんだから。

 まあ、みんな酒やらお菓子やら貰って嬉しそうだったけど。


 ドワーフ達は、みんなで門に彫られているシスティの姿に見とれていたよ。

 そうして門をくぐると、そこにはまた大勢のフェンリルや子供達がいたんだ。

 で、でもなんか子供たちがやたらに増えてないか?


 あ、あそこになんか看板がある……

 なになに、「おひるねばしょ。ふぇんりるさんといっしょにおひるねしましょう♪」だって。

 なんかおそろいの帽子を被った各種族の小さな子たちが、フェンリルにもたれたり上に乗って大勢寝とるわ。

 ああそうか、保育園の子たちの遠足か……

 はは、ゴブリン族の保母さんたちが連れて来たんだな。


 あ、あそこ、子供たちが並んでる。

 看板には…… 「ふぇんりるのりば」だと!

 あー、なんか背中に箱みたいな鞍つけたフェンリルが、10人ぐらい小さな子を乗せて歩いとるわ。

 あ、全部で3頭も鞍つけてる。

 そうか、あそこに台があって、そこで保母さんたちに乗せてもらってるのか……

 ははは、なんだか各種族の子たちが入り乱れてキャーキャー言ってるわ。

 フェンリル達もドヤ顔でしっぽぶんぶん振りながら歩いてるし。

 みんな楽しそうだなあ。


 おお、あそこでは少し大きな子たちが、フェンリルを取り囲んで体当たりしてるぞ。

 なになに、「ふぇんりるたんれんじょ」だって。あはは。

 あれは小学校の生徒たちかな。

 これぐらいの歳からあんな鍛錬してたらみんな強くなるだろうなあ。

 おー、レベルアップチャイムが鳴りまくっとるわ。

 周りにはたくさんの精霊たちが待ち構えているから、ケガしてもすぐに治してもらえるだろ。


 あ、フェンリーがこっち見とる。

 舌舐めずりしてもの言いたげにしっぽ振っとるわ。

 仕方ないな、ウィスキーと焼酎追加だな……



 俺たちは北の大通りを歩いて行ったんだ。

 お、もう屋台が出てるぞ。

 エルダさまに地球の屋台があるといいですね、って言ってたんだけど、もう輸入してくれてたのか……

 鉢巻き巻いたゴブリンのおじさんがトウモロコシ焼いてるわ。

 わはは、似合い過ぎだろ。


 それにしてもこの醤油のコゲる匂いって懐かしいなあ。後で食べようか。

 あ、あれは綿菓子だな。みんなびっくりしながら取り囲んでるぞ。

 あっちは鯛焼きだな。ここにも大勢人が群がってるよ。

 あれ作るの見てると面白いからなあ。

 あそこはタコ焼きか。あっちはおでん屋か……

 それにしても、ゴブリンのおじさんたちみんな似会い過ぎだよな、はは。


 俺入院してばっかりで、こういう屋台で買い喰いって小さい頃1回ぐらいしかしたこと無かったからなあ。

 あ、なんか目から水が出て来ちゃった……

 よ、よし! 今度システィと全屋台制覇しよう!



「使徒殿。ああいう食べ物を頂くには、塩をどれぐらいお渡しすればいいのですかな」


「はは、ドワリングさん。全部ただですよ」


「な、なんと!

 それはなんとも申し訳ないというかなんというか……

 それでは働いていらっしゃるゴブリンの方々は……」


「あの方たちも、自分や家族がただでおなかいっぱい食べられるんで、それを申し訳なく思ったみたいなんですよ。

 だからああして自主的にみんなのために働いて下さってるんです」


 あ、ゴブリン・キングが屋台のおじさんを褒めてるわ。

 はは、おじさんびっくりしてトウモロコシ落しちゃったぞ。


「なあキング、ゴブリン族って本当に働き者だよなあ」


「はは、サトル殿に比べればなんということはないですぞ」


「でもみんな幸せそうな顔して食べてるよ。ありがとうな」


「そのお言葉、皆に伝えましょうぞ」


「うん、そうしてもらえるとありがたい」


「うーむ。オーク族も負けてはいられませんな」


「オーガ族もじゃの」


「まあまあ、みんなまだ移住して間もないからさ。

 そのうちみんなにもお願いしたい仕事があるから、それまではゆっくりしていてくれよ」


「それではご用命をお待ちしておりますぞ」



 その後中央棟に行って食事をしたんだが、ここでもドワーフさんたちは大騒ぎだったよ。

 やっぱりこの世界では肉や卵って超貴重品だったんだな。


 そうしたら、エプロンつけたゴブリン・キングの奥さんがシチューの皿を持ってやって来たんだ。


「あなた、ベルミアさんに指導してもらいながら、わたしがゴブリン族のシチューを作ってみたの。

 味見して下さらないかしら」


「おお! 旨い! 旨いぞ! お前も腕を上げたもんだ!」


「うふふ、ベルミアさんのおかげね」


 それで全員そのシチューを頂いたんだけどさ。

 なんかこう、超一流のプロが作った家庭料理みたいな感じでめちゃめちゃ旨かったんだ。

 そうか、この街にもう多種族融合料理が出来たのか……




 俺はドワーフさんたちの案内は族長たちに任せて、コントロールルームに戻って対ヒト族戦争の戦略を練ることにしたんだ。


「なあフェンリー、この階段を昇ってドワーフさんたちを展望台まで案内してあげてくれるかな」


「ふはははは。

 サトルよ! 我がこの程度の階段で怖がるとでも思ったか!

 確かにガラスの窓から下を見れば多少は足も竦むが、頭を低く下げて下を見ていればなんということも無いのだ!」


「そうか、さすがはボスだな。それじゃあご案内を頼んだぞ」


「うむ、任せておけ!」


 そうして俺は、『中級者用』と書かれた階段を昇って行く一行を見送った後、しばらく聞き耳を立てていたんだよ。


 そして……


「な、なんじゃぁぁぁぁぁぁこりゃぁぁぁぁぁぁ~っ!」

 というフェンリーの叫び声を聞くと、微笑みながらシスティの天使域に戻ったんだ。

 はは、これでようやくヘンなフェンリル名をつけられた仕返しが出来たぜ……




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