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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
92/325

*** 92 レーザーライフルと『魔道具』のデモ ***

 


 俺はレーザーライフルの銃口を上に向け、ドワーフの族長に向き直った。


「族長殿、あの向かい側の山の山頂にある大きな岩って、壊してもいいかな。

 神さまが祭ってあるとか部族の墓があるとかそういうことってあるかい?」


「い、いや、あれはただの岩だ。周りには何も無いし誰もいない……

 だが、あそこまでは10キロ近くあるぞ……」


「そうか、それじゃああの岩をここから壊してみようか」


「な、なんと……」


「アダム! 周辺並びに山の下の生命をチェックせよ!」


 アダムの声が辺りに聞えた。


「周辺2キロ圏内に知的生命体はおりません!

 山麓に10匹ほどの野兎がいるだけです!」


「被害予想地域の全生命を5キロ以上離れた場所に転移させよ!」


「了解いたしました! 全生命転移完了!」



 俺はレーザーライフルを担いで照準をつけた。

(出力は100テラワットぐらいでいいかな……)


「それじゃああの岩をよく見ていてくれよー。

 レーザー、発射っ!」


 ライフルの先端から強烈な白光が迸った。

 そのエネルギーが周辺の空気をイオン化してオゾン臭がたち込める。

 そうして、その光条が岩山に吸い込まれると同時に、光が当たった部分から水蒸気のようなものが噴き出して来た。

 レーザーの強烈なエネルギーが、当たった部分の岩石を瞬時に気化させて岩石蒸気を作っているんだろう。

 お、すぐに貫通したか。早いな。


 俺はライフルを斜めに横薙ぎにした。

 数秒で山頂の岩石3000トンほどが切断される。

 はは、切断面が溶融しているせいで、すぐには崩れ落ちないようだな。


 俺はライフルを肩から外し、銃口を上にして地面に立たせた。

 そうして、片手を上げて切断された山頂を指差したんだ。


「3、2、1、ゼロ……」


 合図とともに魔力で山頂を押す。

 途端に巨大な岩塊がゆっくりと剥がれ、轟音と共に斜面を転がり落ちて行ったんだ。

 うん、デモンストレーションは上手く行ったようだな。


 ドワーフさんたちはと……

 あー、あんなに口開けて…… 喉が乾いて咽ちゃうぞ。


「な、なんだよあれ……」

「あんなもんあったら、俺たちの城壁だって半刻ももたないぞ……」

「ぎ、技術って…… 凄いものだったんだな……」


「確かに凄いかもしらん。

 だが、さっきいみじくも族長殿が言ったように、『技術』とはみんなの暮らしを豊かにするためにあると思うんだ。

 だから俺が最も得意としているのは、暮らしの道具を作るための『技術』なんだよ」


「く、暮らしの道具のための『技術』……」


「それじゃあまずこれを見てくれるかな。

 これは『明りの魔道具』って言って、光を出して暗いところを明るくするための道具なんだ。

 これがあれば夜でも生活出来て便利だぞ」


「な、なんだこの透明な石みたいなものは……」

「そ、それに強烈に明るいぞ。ろうそくの何倍も明るい……」


「それからこれは、『クリーンの魔道具』って言ってな。

 ちょっと中に手を入れて箱の底に触ってくれるかな」


 はは、ドワーフさんがおっかなびっくり手を入れてるよ。


「おおおお、手が綺麗になった……

 まるで30分も洗った後みたいに完全に綺麗だ」


「だから俺たちの街では食事の前にこの『クリーンの魔道具』で手を綺麗にしてもらってるんだ」


「そ、そうか、そうすれば病気にもなりにくいよな……」

「水を使わなくても手が綺麗になるなんて……」


「それにこの『クリーンの魔道具』は、下水処理にも使えるんだ。

 つまりまあ、トイレなんかに設置しておけば、汚物も全部綺麗にしてくれるんだよ。

 それからこの箱を大きくして中に入れば全身が綺麗になるんだ」


「「「「「「「「………………」」」」」」」」


「それからこれは『熱の魔道具』だ。

 この上に鍋なんかを置いてここに触れると、ランプが赤くなって熱くなってくるんだ。

 熱の調節はこのつまみで出来るんだけどな。

 だから薪を使わなくっても料理が出来るんだ。

 火事の心配も無いし便利だぞ」


「「「「「「「「 薪を使わずに料理が出来るですと! 」」」」」」」」


「な、なんかみょーに喰い付きがいいなおい……」


「こ、このあたりには木が少ないのですよ。

 ですから毎日薪拾い隊が出て、下の方まで薪を調達に行っているのです。

 そのために植林までしているぐらいですから。

 一族の料理用の薪を集めるのはそれはもうたいへんな仕事なのです」


「そうか、それじゃあ取りあえず、この『熱の魔道具』を少し置いていくから良ければ使ってくれ。

 アダム、今倉庫に何個ある?」


「現在200個しか在庫がございませんが」


「そうか、ちょっと少ないな。

 それじゃあ2000個分の材料を全部ここに出してくれ。今作るから」


「はい」


 すぐにその場に熱の魔法式がプリントされたマナ電池と、本体用のマナ建材とランプ用のガラスと、光の魔法式がプリントされた小さなマナ電池が現れた。


「それじゃあ今から作るから見ていてくれるか」


 はは、みんなこくこく頷いてるよ。


「それじゃあ作るぞ、魔法マクロ【熱の魔道具製作1000】実行、魔法マクロ【熱の魔道具製作1000】実行」


 その場でみるみる『熱の魔道具』が作られ始めた。

 俺はそのうちの一つを取って族長たちの前に置き、ついでに鍋を取り出して水魔法で水を入れた。


「それじゃあ実際に使ってみようか」


 熱を高めに設定すると、すぐにお湯が湧き始める。

 はは、ドワーフさんたちが集まって来て喰い入るように鍋を見てるわ。



「な、技術って便利だろ。

 俺たちの街は、こういう『魔道具』をたくさん設置してみんなに使ってもらってるんだ。

 ヒト族の侵攻に備えるだけじゃあなくってさ、せっかくだったら楽しく幸せに暮らさなくっちゃな」



 そのとき仕事を終えた精霊たちが帰って来たんだ。


「サトルさーん、お仕事終わったよー♪」

「病人さんみんな治しちゃったー♪」

「怪我人さんもー♪」


「ぞ、族長! 城壁工事の事故で潰れていたドワリンスキーの足が、完全に元通りになりました! 

 あ、あと胸の病で医師も諦めていたドワスカヤも、立って歩ける程までに回復しております!」


「あとねー、古い水場はもう水脈が枯れちゃってたんだけど、もっといい水脈を3つ見つけたから、新しい水場を作ったよー♪」

「水の量は今までの10倍になってるよー♪」

「みんなで張り切って畑の世話してたら、もう作物が実っちゃったー♪」

「ついでに収穫もしておいたよー♪」


「そうかそうか、さすがはお前たちだな。よくやってくれた。ありがとう」


「「「「「「「「 わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~い♪ 」」」」」」」」

「「「「「「「「 サトルさんに褒められちゃったぁっ♪ 」」」」」」」」


「さ、サトル殿、それから精霊さまたち……

 心より御礼申し上げまする……」


「「「「「「「 えへへへへへ、またお礼言われちゃったぁ♪ 」」」」」」」

「「「「「「「「 お礼がたくさん♪ お礼がたくさん♪ 」」」」」」」」


「本当によくやってくれたな。

 それじゃあ今日は街に帰ってケーキでも食べてゆっくりしてくれ」


「「「「「「「「 わぁ~い♪ ご褒美ご褒美♪ 」」」」」」」」


 精霊たちが手を振りながら転移して行った。

 ドワーフ達も手を振ったりお辞儀したりして見送っている。


「な、『転移』って便利だろ。

 それじゃあ最後に『転移の魔道具』をお見せしようか。

 これは2つの魔道具がセットになったものなんだ。

 ひとつはこの場に置いておく。

 ベギラルム、もうひとつをテラスの端に置いて来てくれるか」


「はっ!」


「誰か実際にこれを使ってみてくれるかな」


「それではわたくしが……」


「あ、ドワリングさん。

 それじゃあこの魔道具に触れて、『転移』って言ってくれるかな。

 帰って来るときは『帰還』だ」


「『てんい』と『きかん』ですな。それでは『てんい』!」


 すぐにテラスの端にドワリングが現れた。

 びっくりした顔でこちらを見た後、すぐに帰って来る。


「どうだったかな」


「どうもこうも、『技術』や『道具』とは便利なものですなあ……

 これならばヒト族との戦の際にも、負傷者をすぐに後方の救護所に運べるではないですか」


「使い方はそれだけじゃあないぞ。

 これは設定を変えるとずっと物を送り続けられるんだ。

 たとえばこれだけ大きな都市に水場が3カ所では、水汲みもたいへんだろう」


「ええ、いつも女性たちが苦労しています」


「だから街中に水槽を作っておくんだよ、例えば100カ所に。

 そうして水場とその水槽をこの『転移の魔道具』で繋げば、街の水場がすぐに103カ所になるわけだ」


「!!!」


「実は俺たちの街も、水源は北部山岳地帯の湖なんだ。

 そこから街の大水槽に水を転移させて溜めておいて、それをたくさんの小水槽に転移させて、それから各家に送ってるから、誰も水汲みをする必要がないんだよ。

 な、『技術』って便利だろ」


「「「「「「「「……………………」」」」」」」」



 その場でずっとぷるぷるしていた族長が、突然平伏した。


「し、使徒殿! どうか、どうかわしを使徒殿の弟子にしてくだされ!」


「え?」


「既に卓越した、い、いや超越したその技術!

 しかもそれを民の暮らしのために使おうとするその思想!

 もはやあなたさまは、『技術の王』と呼ぶべきお方様であらせられる!

 な、何卒、何卒わしを弟子に……」



「あー、とうとうスイッチ入っちゃったよ親っさん」

「こんなすげぇもん見せられたから、心配はしてたんだけどな」

「それにしても『弟子』とはなおい……」

「この街をここまで大きくした『英雄ドワタルニクス』がなあ……」


「親っさん、あんた4万人を率いる族長なんだからな。

 もっと自覚を持ってくれないと……」


「やかましいぞドギーリン!

 族長の座はお前に押しつけてやる!

 わしは今日からただのじじいじゃ!」


「あー、これダメなパターンだ……」

「親っさん言い出したらまっしぐらだからなあ」

「どうするみんな?」

「そうだな、仕方ないから親っさんを『大族長』にして、ドギーリンには『族長』になってもらおうか」

「だ、だがドワリングの兄貴、俺なんかじゃあ到底族長なんか……」

「お前、俺たちの中じゃあ親っさんに次いで強いだろうが」

「これからヒト族が攻めて来るんだからお前でいいんだよ」

「もちろん俺たち文官やここにいる将軍たちも協力するからな。

 みんなで話し合って、どうしても結論が出ないことがあったら大族長に決めて貰うっていうことでどうだい?」

「おお! それいいなあ」

「ドルスキーの兄貴まで……」


「それにさ。俺確かに『技術』には感銘を受けたんだ。

『技術』があれば、ヒト族の侵攻も防げるかもしれないし、みんなの暮らしももっともっと楽になるかもしれないぞ」

「そうだな、兄貴の言う通りだ」

「それで、俺たちの中でも最も技術に長けていて、技術に惚れこんでいるのは親っさんだからさ。

 その親っさんが使徒殿の弟子になって技術を教えて貰うって、けっこういいことかもしれないぞ。

 俺たちドワーフ全員にとって」


「親っさん、それでいいですかい?」


「もちろんじゃ!

 どうしても決められんことがあったらわしが相談に乗ってやる。

 じゃがあまりわしの邪魔をするでないぞ!」


「「「「「へいへい」」」」」





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