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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
91/325

*** 91 ドワスター・ドワーフの刀と俺たちの剣 ***

 


 ドワスター・ドワーフの族長が俺に深々と頭を下げた。


「使徒サトル殿。本当にかたじけない。

 それにしても……

 ただの一声であれだけの精霊さまたちを呼びよせるとは……

 恐ろしいまでの力をお持ちだわい」


「はは、みんな働き者なんで、仕事を頼むと本当に喜んでくれるんだよ」


「なんでも、使徒殿の造られた街にも、いつも大勢の精霊さまがいらっしゃるとか……」


「そうだな、あと600人の精霊と、それから600人の精霊の子たちがいるんだけど、そいつらは今も街に残って働いてくれてるんだ」


「ま、まだそんなにいらっしゃるのか……」


「サトルさま、そろそろまた子供たちが600人増えそうだど」


「おお! それはめでたいな!」


「なんせあの街でなら安心して子供を産んで育てられるだども」


「それじゃあまたケーキをいっぱい用意しないとな」


「えへへ、みんな喜ぶだ」



「ところで族長殿。族長殿は『技術』に興味をお持ちだとか」


「う、うむ。『技術』こそは一族の暮らしを豊かにする根源になると思うての」


「それで最近はどんな『技術』に興味をお持ちなのかな?」


「最近ではヒト族の脅威に備えて、刀の改良と生産に力を注いでおったところじゃ。

 そうそう、最近ようやく満足のいく試作品が出来たところでの。

 もしよければ使徒殿にも見て頂けんものかの」


「是非」


 あー、なんか族長、嬉しそうだよ。

 はは、また部下が何人か警戒するような目で族長を見とるわ。


「御身の近くに刀を近づけてもよろしいか」


「もちろんだ」


 ほほー、こいつら相当に礼義正しいわ……

 すぐに部下の一人がひと振りの刀を持って現れた。

 両手で鞘を捧げ持って、膝立ちで俺に近づいてくるぞ。

 あ…… こ、これって……


「刀身を拝見させて頂いてもよろしいか?」


「是非ご覧下され」


 俺はハンカチを取り出して口に咥えた。

 へへ、時代劇で見た知識が役に立つぜ。

 そうして鯉口を切って鞘を抜いた俺の目の前に現れたものは……


 やや反った刀身、地金が黒々と光る刀背、白銀に光る刃縁、一方で鈍い銀色に覆われた刃身、そしてその間に広がるにえ……

 間違いないな。これ日本刀の技術だわ……


 俺はその刃を太陽の光に当てて鑑賞した。


「美しい……」


 はは、ベギラルムが近寄って来てガン見してるわ。

 お、ちゃんと口元にハンカチ当ててるな。感心感心。


 族長はそんな俺たちをもっと感心しながら見ていたよ。

 呼気に含まれている水分を刀身に当てないようにする、刀剣鑑賞の基本マナーを知っててよかったぜ。



 俺は刀を鞘に収め、脇に控えていたドワーフに渡した。


「お見事な『技術』です。

 軟鉄と鋼鉄を合わせることで固さと欠けにくさを両立させられたとは……

 それも両者が完全に融合して見事な刃紋まで見られている」


「おおおお…… ひ、ひと目で見抜かれたか!

 その若さで20年かけて開発したわしの技術を見抜かれるとは!

 こ、これは畏れ入ったわい!」


「これは『切る』ための刀ですな。『叩きつける』ための剣ではなく」


「おおおおおおお……」


「これだけの業物をお作りになるには、さぞやご苦労がおありだったかと」


「そ、それな、まずは砂鉄を溶かした玉鋼を鍛えてな……

 砂鉄を溶かすときにも、ふいごというものを作っての……」


「親っさん、客人がお困りですよ。

 今日は技術談義ではなく我らドワーフの命運に関わる重要なお話だったはずです」


「う、うむ…… で、でもちょっとぐらいなら……」


「ダメです。

 だいたいその刀は親っさんが鍛えたとしても、ひと振り作るのにひと月もかかるじゃあないですか。

 それじゃあとてもヒト族との戦には間に合いません」


「ううううううっ……」


 はは、いいな、こういう慕われてる親分と、親分の暴走をすぐに抑える子分の関係。



「ということで使徒殿、使徒殿は刀を量産する技術をお持ちでしょうか」


「あれほどの名刀の後で出すのはちょっと憚られるが、あるにはあるぞ。

 それじゃあ今見せようか」


「そ、それにしてもどちらにお持ちで……」


「ほらここだよ」


 俺が虚空から刀を取り出すと、ドワーフ達が仰け反った。


「い、今どこからその刀を取り出されたのでしょうか……」


「俺はシスティフィーナさまの倉庫から思っただけで物を取り出せるんだ。

 だから荷物が少なくって便利だぞ」


「そ、それは、た、確かに便利ですな……」


「この剣はここにいるベギラルムが造ったんだ。

 まあ美しさは無いかもしれんが切れ味は一級品だ」


「は、拝見させていただいても……」


「良く見てやってくれ」


「こ、これは…… 鉄のように見えてもなぜこんなに白いのか……

 それに薄い……」


 そいつが少し剣を左右に振った。剣身が微かに撓んで揺れている。


「もしよければ剣身を曲げてみてくれ。

 力いっぱい曲げようとしてもいいぞ」


「し、しかし剣身に触れたりしたら……」


「その剣はサビないから大丈夫だ」


「な、なんと! それでは砥ぎの必要も……」


「うーん、その刀身を砥げるような石は無いからなあ。

 石の方が削れちゃうだろうからさ。

 それに滅多に切れ味は悪くならないし、悪くなったら別の剣を使えばいいし」


「そ、それほどの量産が可能なのですか?」


「おい、ベギラルム。お前ならこの剣、一日に何本コピペ出来る?」


「そうですなあ、それがしでは1000本が限界でしょう。

 サトル殿でしたら10万本ぐらいではないですか?」


「じゅ……」


「まあそんなもんかな。

 でもお前だってあのマナ・ポーション飲めばもっと行けるんじゃないか?」


「そ、それがし、あのポーションはもう懲り懲りでありまして……」


「あははは。それじゃあドワーフさん、その剣を曲げてみてくれないか」


「そ、それでは失礼いたしまして……」


(まあ無理だろうな。このデカいやつのLvは60もあるけど、Lv125のベギラルムが力一杯曲げても折れなかったんだから……)


「ぬおおおおおおおお……

 か、微かに曲がるものの折れぬ!」


「それじゃあ次は切れ味を試してみようか。

 ベギラルム、頼んだぞ」


「畏まり申した。

 卒璽ながら、試し切り用の木材をご用意願えまいか。

 出来れば木の棒や丸太など所望させて頂きたく……」


(コイツ…… 口調が時代劇調になって来とる……)



 すぐに木材が用意された。

 大きな石の土台に穴を開けて、そこに太さ8センチほどの木の棒や30センチほどの丸太を差し込んで立てたものだ。

 多分これいつも試し切り用に使ってるんだろう。


「それではご無礼仕る……」


 そうしてベギラルムが木の棒の前で剣を構えたんだよ。

 ほう、さすがは俺の剣技の師匠だっただけのことはあるわ。

 相当に年季の入った構えだ。

 ああ、ドワーフたちも感心してるぞ。


「おうりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 ベギラルムの気合い一閃、木の棒が見事に斜めに切り落とされた。

 ドワーフたちから微かにため息が漏れる。


「それじゃあベギラルム。次はこれをお見せして」


 俺は振動剣を取り出して奴に渡したんだ。


「ははっ」


 そうしたら、ベギラルムのやつ、剣を構えずに刃を水平に丸太に当てたんだよ。

 そしたら、微かな振動音とともに、丸太がバターのように切り取られて輪切りにされていったんだ。


「「「「「「「「 おおおおーっ! 」」」」」」」」


 はは、ドワーフさんたち大喜びだわ。

 ベギラルムは、調子に乗って、丸太を3センチほどの厚さでどんどん輪切りにして行っている。


 あ、族長がふらふらと近づいて行って、輪切りを手にして切断面を撫でてるぞ……

 ああ、他のドワーフ達もみんなベギラルムを取り囲んでるわ。


 はは、もう丸太を全部輪切りにしちゃったか。

 あっ! こいつ、土台の岩まで切り始めた!

 岩の輪切りまで作っとる!


「「「「「「「「…………」」」」」」」」


 あー、ドワーフさんたちどん引きだよ。

 ま、まあ驚くか。

 現代日本人が見ても驚くだろうからなあ……


 お、ようやく全ての岩も輪切りにし終わったか。

 あー、ベギラルムの鼻の穴が開いちゃってるよ。

 こいつウケたのがよっぽど嬉しかったんだろうな。

 あ、族長さんの鼻の穴も開いとる!



 ベギラルムがスイッチを切ると、さらにドワーフ達が集まって来たよ。


「も、申しわけ無いのだが、その剣を見せてもらってもよろしいかの……」


「どうぞ、納得いくまでご覧ください」


「か、かたじけない……」


「こ、これは…… よく見れば刃が細かくキザギザになっておる……」

「ま、まるで細かいのこぎりのようだ……」

「なんでこれで岩が切れるんだ……」


「それスイッチを入れると、その剣が細かく振動するんだ。

 1分間に5万回ほど」


「そ、そんなに……」


「それに刀身の厚さが均一だろ。

 ついでに刃先には「あさり」もついてるから、ほぼのこぎりだよな。

 そうじゃなかったらいくら切れ味が良くっても、岩は切れないよ。

 よく見れば周囲に岩の粉がたくさん落ちてるだろ」


「ほ、ほんとうだ…… それも凄まじく細かい粉だ……」


「な、なあ。この剣があったらどんなに厚くて大きな城壁でも、まるで役に立たないだろうな……」


「し、使徒殿。ヒト族はこのような剣を持っているのだろうか……」


「いや持ってないぞ。

 それに、この剣は作るのに『魔法』の力が要るから、たぶんこれからも作るのは無理だろう」


 はは、ドワーフ達が目に見えてほっとしてるわ。


「だが、使徒殿はこの剣を量産出来るというのですな……」


「もちろん。

 だが俺は自分の部下に剣を持たせたくないんだ。

 そんな近接兵器を使わせたら、怪我するヤツが出るかもしれないから。

 それに敵の弓矢の届く位置に兵を置くこともしたくないしな」


「そ、それではどうやって敵と戦うので……」


「戦うにしても遠距離兵器しか使うつもりは無いんだ」


「遠距離兵器?」


「1キロも離れていたら、敵の矢も投石も届かないだろ。

 だから最低でも2キロ以上離れた敵を攻撃可能なものしか使うつもりはないんだよ。

 実物を見てみるかい?」


 みんなこくこく頷いてる。


 俺はその場にレーザーライフルを取り出した。

 すげぇデザインだなこれ。

 もう完全に遥か未来の兵器に見えるわ。

 長さは2メートルしか無いけど、そのぶっとい外見といい、冷却装置の作り込みといい、最高に禍々しいライフルだぞ。


 はは、何も無い空間からまたそんなライフルが出て来たんで、ドワーフさんたちがみんな絶句しているわ。





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