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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
87/325

*** 87 洞窟ドワーフ族への説教 ***

 


 俺たちは、ドワーフ族の洞窟の中央ホールのど真ん中に転移した。

 はは、近くにいたドワーフたちが驚いてるわ。


 俺はすぐに族長を『詳細鑑定』した。

 ああ、やっぱり……

 あ、こいつこんなものまで持ってるのか……

 だから移住に反対してたのか。しょーもないやっちゃ。



 戦士頭が大きな声を張り上げた。


「第3砦司令官、戦士頭のドワールス、族長殿に進言の儀があって参上いたしました!」


 おお、コイツ、なかなか堂々としてるじゃん!


「なんだとドワールス! 貴様には第3砦の守備を命じてあったはずだ!

 なぜここにいる!」


 なんだこのぶよぶよデブ…… 鑑定してみるか。

 あ、こいつが将軍か。しかも族長の息子で次期族長だと。

 ったくしょーもないやつらだわ……

 それになんだよこのステータス…… 

 こんな莫迦が将軍やっとんのか……



 戦士頭ドワールスは、将軍を無視して族長を睨みつけたまま発言した。


「大平原に我ら一族全員が移住可能な場所を見つけました!

 素晴らしい場所であります上に、食糧も家もあり、さらにはあのシスティフィーナさままでもおわします」


「そ、そんな場所があるのか……」

「システィフィーナさままでいらっしゃるのか……」


 背後の群衆から声が聞こえて来た。

 やっぱりみんな不安だったんだな……


「ヒト族の侵攻に備えて一族全員で避難することを進言いたします!

 このままでは、ドワーフ族はヒト族に滅ぼされるでしょう。

 男は鉱山奴隷として死ぬまで酷使され、また女子供も奴隷として各地に売られてしまうのです!」


「黙れ黙れっ! 貴様、族長の命令に逆らう気か!

 ドワーフ族に連綿と2000年続く伝統に逆らうというのか!」


「そのドワーフ2000年の歴史がもうすぐ終わりを告げようとしています!

 何卒ご決断を!」


「お、おい…… 俺たち本当に滅ぶのか?」

「でっ、でも、族長も将軍も絶対に大丈夫だって言ってたよな……」

「あ、ああ。ドワーフ族にはシスティフィーナさまの加護があるから大丈夫だって……」

「でもさ、最前線の砦の戦士頭がああ言ってるんだぜ」


「き、貴様…… おい! こやつを捕まえて牢に放り込め! 反逆罪だ!」



 俺は一歩前に出た。

 戦士頭に20メートル以内に迫った10人ほどの兵士たちに、自動的にロックオンが為される。


「ショックランスLV1、照射」


「ぐぎゃっ!」 「ひいっ!」 「ぎゃあああ」 「あべべべ……」



「おいおいなんでえなんでぇ、ドワーフの戦士たちってこんなに弱ぇのかよ。

 こんなんでヒト族に勝てるわけ無ぇだろうに。

 あーあ、これじゃあ来年の今頃はお前たちの9割は死んでるなあ……」


「きっ、貴様ゴブリンか! お、おい! こいつもひっ捕えろ!

 上級戦士階級全員でかかれっ!」


 俺に20メートル以内に近づいた奴らがものも言わずに倒れた。

 今度はショックランスLV2だから口も聞けずに30人ほど倒れてるわ。

 それにしても、ヒト族との戦争間際だっていうのに、どうしてこの洞窟にこんなに上級戦士階級がいるんだ?



「かーっ! 弱ぇ、弱ぇよ。

 こんなんじゃあヒト族1000人を相手にだって勝てねぇだろ。

 でも今度侵攻して来るヒト族は、2カ国併せて7万人だぞ。

 あー、これでとうとう『サヨナラドワーフ』かぁ……」


「きっ、貴様っ! い、言わせておけば……」


「どうしたんだい? 将軍さんよ。お前ぇはかかってこないのかい?」


「ぐぐぐぐぐぐぐぐ……」


「それじゃあみんな、こいつが俺にかかって来ない理由を見せてやるよ。

 ほら、これがステータス画面だ。こいつの中身が全部表示されてるぞ」


 すぐに将軍野郎の頭上にスクリーンが現れて、ステータスが表示された。



 名前:ドワルギウス・フォン・ドワーリン

 種族:ドワーフ

 階級:将軍。族長の息子。次期族長。

 性別:男

 年齢:32

 総合レベル:3

 幸福ハピネスポイント: ▲832

 罪業カルマポイント:12(内正当防衛0)

 E階梯:0.5


 称号:無能将軍

 スキル:『威張り散らしLv8』 『尊大Lv10』 




「字の読めないやつもいるだろうから、俺が読んで解説してやろう。

 だがみんな、数字ぐらいはわかるだろ」


 あ、何人か頷いてるわ。

 スクリーン上にはポインタが現れている。


「まずはこの総合レベルだが、これは強さの度合いを示しているんだ。

 コイツの場合、3しか無いから、ゴブリン族の6歳児並みっていうことになる。

 それから、これは幸福ハピネスポイントと言って、誰かを幸せにしてやったり感謝されると増える数字なんだ。

 俺も今までいろんな奴のステータスを見て来たが、マイナス表示を見るのは初めてだな。

 それにしてもこいつ、部族を832人も不幸にしてるのか。

 こんな奴が次期族長とか言ってのさばってるんだったら、ドワーフが滅ぶのも当たり前だなぁ」


 はは、聴衆が何人も頷いてるわ。

 こいつ、マジで酷ぇやつだったんだ。


「それからこれは、罪業カルマポイントって言って、誰かを殺したときに増える数字だ。

 部族を守るためにヒト族を殺したときにも数字は増えるんだが、そのときはこの『正当防衛』って書いてあるところも増えるんだ。

 こいつ、ドワーフの仲間を12人も殺しているようだな。

 たぶん、誰かに命じて殺させたんだろう」


 はは、何人かが激しく頷いて将軍を睨んでるよ。


「それに正当防衛0っていうことは、こいつは一度もヒト族と戦ったことが無いんだ。

 よくそんなんで将軍が務まるもんだよ。

 だから総合レベルもこんなに低いんだな。この数字は戦わないと増えないからな。

 それからこのE階梯っていうのは、『他人を思いやる心を持っているか』っていうものの尺度だ。

 それが0.5っていうことは、こいつの思い遣りは、そこらのミミズやネズミと変わらないっていうこった。

 それにしても俺、このE階梯が1未満のヤツって初めて見たぜ」


 あはは、デブが肉を揺すりながらぷるぷる震えてるよ。


「ということでだ。

 お前たちドワーフには、こんな奴を将軍にしていた罪もあるんだよ。

 これじゃあ滅んでも当然だろう。

 こんな、俺に睨まれただけで気絶しそうな将軍サマなんかをな」


「きっ、キサマ、言わせておけばぁっ!」


 はは、なんかキンキラゴテゴテの剣を振りかざして突っ込んで来たぞ。


「みんなよく見てるんだぞー、今からこいつを睨みつけるからなー」


 それじゃあもうロックオンはしてあるから、こいつにだけ『隠蔽』を外してと……


「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~っ!」


 あーあ、前から後ろから盛大にお漏らしして気絶しちゃったわ。

 洞窟ドワーフって閉鎖空間に住んでるから、こういうお漏らしとか屁とかにすっごい忌避感があるらしいんだけど……

 はは、観衆全員に睨まれちゃってるぞ……

 みんな鼻をつまみ始めたわ。



「なんだよ、本当に睨んだだけで気絶しちまいやんの。

 マジで情けねぇやっちゃな。

 それじゃあ比較として、この戦士頭さんのステータスを見てみるかい?」



 名前:ドワールス

 種族:ドワーフ

 階級:戦士頭。第3砦守備隊司令官。

 性別:男

 年齢:36

 総合レベル:32

 幸福ハピネスポイント:1832

 罪業カルマポイント:120(内正当防衛120)

 E階梯:3.5


 称号:最優秀戦士頭

 スキル:『統率Lv23』 『両手剣技Lv22』 『体術Lv15』 『威圧Lv2』 『狩猟Lv18』 『農耕Lv8』




「どうだい。そこの将軍サマと比較するとよくわかるだろ。

 こいつはヒト族を120人も殺してるんだ。

 それもそのすべてが自分や部族を守るための正当防衛なんだよ。

 だから総合Lvも32まで上がったんだな。


 それに見ろこの幸福ハピネスポイントを。1832もあるじゃねえか。

 お前らよくこんな立派な戦士を追放同然に最前線に送りこんだなおい。

 因みにこの世界のヒト族の将軍たちも、だいたい同じLv30ぐらいだ。

 そこで寝てる臭い将軍サマじゃあ逆立ちしたって勝てねぇぞ」



「おい、そこの若造……

 ゴブリン風情が好き勝手言いおって。

 お前には必ずやシスティフィーナさまからの天罰が下ろうて」


「ほう、面白れえ。なんで俺に天罰が下るんか、教えろやじじい」


「じ……」


「なんだよなんだよ、理由も言わねえでシスティフィーナさまの名を語るんかよ」


「そ、それは、我らドワーフとその長老一族が、システィフィーナさまに祝福された存在だからだ! 

 お前のような下賤な生き物とは身分が違うわ!」


(おい、ノーム。出てきて俺の肩に座ってくれるか。

 土の精霊たちも)


(はいだす! サトルさま!)


「お、おい。なんか現れたぞ……」

「うわっ! 土の精霊さまだっ!」

「それもこんなに大勢……」

「ち、違う…… あ、あれ土の大精霊さまだ!」


「おおおお…… これはこれは土の大精霊さま……

 そのような下賤な者の傍ではなく、どうぞこちらの方にお越しくださいませ……」


「いんや、おらこのサトルさまの肩の方が遥かにいいだ。

 サトルさまの肩に座らせて頂くなんて、こんな光栄なことは無いだぞ」


「!!!」


「それにおら、お前ぇのことキライだし」


「そ、そのようなことを仰らずに……

 私こそはシスティフィーナさまに祝福されて、そのご指示のままに族長を務める高貴な血筋の末裔でございますぞ」


「うんにゃ。システィフィーナさまはそんなこと仰ったことは一度も無いだ」


「そ、そそそ、そのようなことはありません!

 族長一族に伝わる口伝の中に確かに……」



「ところで族長さんよ。

 お前さん、なんでドワーフがヒト族に襲われて滅亡してもいいんだ?

 それもシスティフィーナさまが仰ったのか?」


「黙れ下郎! お前ごときに聞く口は持たん!」


「サトルさまのご質問に答えるだ!」


「ひっ!

 そ、それはもちろん、我らの始祖ドワーフであるドワーリンさまが、システィフィーナさまより『この地の中で暮らせ』という御言葉を賜ったからでして……

 で、ですからこの洞窟を離れて移住するなどもってのほかなのです」


(ぷんぷん。わたしそんなこと一言も言ってないのに)


(まあまあシスティ。そろそろ出番だから……)




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