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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
82/325

*** 82 ドワーフ族の塩交易所にて…… ***

 


 俺はすぐに東の交易所付近に転移した。

 それじゃあゆっくり近づいていくとするか。


「やあ、ドワーフさん、初めまして。俺はゴブリンのサトルというものだ。

 ここに塩の交易所があるって聞いたもんで来てみたんだが……」


「ゴブリン族さんか。珍しいな。

 大平原の西側には大勢いるとは聞いていたが、こんなに東の方まで来るようになったのか?」


「最近部族まるごと大平原の中央部に移住したんでな。

 ついでにこちらにも足を延ばしてみたんだ」


「と、ということは、大平原中央部のマナも……」


「もうすっかり無くなっているよ。ここと同じように」


「そ、そうか。

 それじゃあいずれヒト族がこの大平原にも侵出して来るっていうことか……

 それじゃあ例え俺たちが平原中央部に移住してもムダだっていうことなのかな……」


「ん? 平原に移住するつもりだったのか?」


「ああ、い、いや忘れてくれ」


「いや人ごとじゃあないからな。

 実は俺たちゴブリン族の住んでいた西の大森林にもヒト族が大勢やって来るようになったんだよ。

 だから俺たちも中央平原に移住したんだ」


「だっ、だがそこもマナが薄いんだったら同じことだろうに……」


「いや、実は我らの創造主であるシスティフィーナさまが、その使徒さまにお命じになって、大きな街を造って下さったんだ。

 それも、ものすごく大きな城壁で囲まれてる街をだ」


「し、システィフィーナさまだと! そ、それは本当か!」


「本当だとも。

 その街に移住すると、もうヒト族から守られるからさ。

 俺たちなんかのことを心配して下さったシスティフィーナさまも、すごくお喜びになるんだよ」


「あ、あんたシスティフィーナさまにお会いしたことはあるのか?」


「よく街の中を歩いていらっしゃるからな。

 俺のような者にすら声をかけてくださるんだぜ」


「そ、そうか…… 羨ましい話だ……

 だが、城壁だけじゃあヒト族の大群が押し寄せて来たら……」


「街の守備隊は、システィフィーナさまがお命じになって、あの平原の守護神フェンリルさま達が勤めて下さってるんだ。それも500頭もいらっしゃるんだぜ」


「ふ、フェンリルさまが500頭だと!」


「それからドラゴン族100頭とベヒーモス族300頭とミノタウロス族2000人とトロール族も3000人いるんだ。

 みんなイザとなったらフェンリルさまたちにご加勢下さるそうだよ。

 さらにオーガ族8万とオーク族12万もいらっしゃるしな」


「な、なんという凄まじい戦力だ……

 それ、この大平原の強者ばっかりじゃないか……

 だ、だがそんなに大勢いて、食べ物はあるのか?

 大平原中央部といえばほとんど草すら生えていないだろうに……」


「システィフィーナさまがその使徒さまにお命じになられて、大平原の全種族400万人分の食料を30年分用意されるそうなんだ。

 それに畑も作り始めたんだけど、なにしろ精霊さま達も1800人もいらっしゃるからなあ。

 だから食べ物の心配は要らないそうなんだ……」


「せ、精霊さまが1800人だと……

 それじゃあさぞかし実りの多い畑になるだろうな……

 な、なあ、それでそこには土の精霊さまもいらっしゃるのか?」


「ああそうか、ドワーフは洞窟に住んでいるから土の精霊さまと親しいんだな」


「親しいと言うよりは、信仰していると言った方がいいだろう。

 たまに来て下さったときには、みんなで歓迎のお祭りをするんだ」


「そうか。その街には土の精霊さまも300人ほどいらっしゃるぞ」


「そ、そんなに! だ、だから最近来て下さらなかったのか……」



「なあなあ、ゴブリンさん。

 その街には植物の精霊さまや光の精霊さまもいらっしゃるのか?」


「ああ兎人族ワーラビットさん。大勢いらっしゃるよ。

 植物の精霊さまも、光の精霊さまも、300人ずついらっしゃる」


「な、なんでそんなにたくさんいらっしゃるんだ?」


「そりゃあシスティフィーナさまの街だからだよ。

 精霊さまたちだって、システィフィーナさまがお創りになったんだから、お傍にいたいんだろう」


「ほ、本当に羨ましい話だ……」


「しかもその街に移住すると、家も服も食べ物も、ぜんぶシスティフィーナさまが下さるんだ。

 だからもう、俺の家族は毎日お腹いっぱい食べて、暖かい家で寝られるんだよ。

 子供が転んでちょっと怪我しただけで、すぐに光の精霊さまが飛んで来て治して下さるしな」


「な、なあ。その街に住んでるのはさっきの強い種族とゴブリン族だけなのか?」


「いいや、今ではもう西の大森林に暮らしていたほとんどの種族が移住して来て暮らし初めているぞ。

 兎人族ワーラビットもいっぱいいたな」


兎人族ワーラビットもか!」


「ああ、それに馬人族ワーホースだろ、牛人族ワーキャトルだろ……」


馬人族ワーホースもか!」

牛人族ワーキャトルもか!」


「それから猫人族ワーキャット犬人族ワードッグ狼人族ワーウルフに、それから熊人族ワーベアーもいたな。

 それからゴブリン族とオーガ族とオーク族とフェンリル族だ。

 移住種族第1号は、フェンリル族だそうだ。

 大きい種族だと、ドラゴン族とベヒーモス族とミノタウロス族とトロール族かな」


「フェンリル族もいるんか……」

「そ、それにドラゴン族やベヒーモス族まで……」



 そのころになると、俺たちの周りには、雑多な大勢の種族がいたんだ。


(あれは猿人族ワーエイプか……

 あ、あれ洗熊人族ワーラクーンだ! シマシマの太いしっぽが可愛ええ!)



「な、なあ。例えばの話だが……

 その街に移住出来る者に条件ってあるのか?」


「システィフィーナさまによれば、『この中央大平原や山に住み、これからやって来るヒト族に害される恐れのある全ての種族に来て欲しい』ということなんだ。

 だから条件なんか無いぞ」


「あ、ありがたいお話だのう……」


「それで俺は、少しでもそのご恩をお返ししようと思って、こうして交易がてらみんなに街の話を伝えるために大平原の東側までやって来たんだよ」


「随分と遠かったろうに……」


「いや、実は『使徒さま』から転移の魔道具って言うものを貸して頂いてるんで、1日で来ることが出来たんだ」


「な、なんだと!」


「じゃあ実演してみようか。

 あそこの山の中腹に平らなところがあるだろ。今からあそこに転移してみるわ」


「あ、ああ……」


「アダムさま、アダムさま、あの岩が平らになっているところに、俺を転移させて下さいませ……」


(ぷっ)

(こらアダム、笑うな!)

(し、失礼いたしました)



 俺はその岩棚に転移した。

 口を開けて驚いてるみんなに手を振ると、また元の場所に転移して戻った。


「どうだい、便利だろ。

 これ、距離の制約は無いそうだから、今からでも俺は家に帰れるんだ」


「た、頼む! そんなすぐ帰ったりせずに、も、もう少しだけ話を聞かせてくれ!」


「ああいいよ、いつだって家に帰れるからな。

 そうそう。みんなは家に帰らなくってもいいのかい?」


「おい、俺はもう少しこのゴブリンさんの話を聞いてるから、お前たちは帰って俺は後で帰ると伝えてくれ。

 場合によったら帰るのは明日になるとな」


「「「「 はい! 」」」」


 この頃になるとさ、交易所はさらに混雑し始めたんだ。

 狐人族ワーフォックス犬人族ワードッグなんかも加わって。

 あ、この東部の犬人族ワードッグって、西の犬人族ワードッグとは毛並みの色が違うんだな。

 あ、あれリザードマンかな。

 蛇人族ワースネークまでいるじゃないか。

 へー、この世界の蛇人族ワースネークは手足が生えてるのか……


「それじゃあみんな、先に塩と作物の交換を済ませちゃったらどうだい。

 俺は夜までここにいてみんなの質問に答えるから。

 そうそう。明日は朝からずっといるから、もしよかったら族長さんとかその部下さんたちも連れて来ればいいんじゃないか?」


「ほ、他にも来るのに3日ぐらいかかる連中もいるんだが……」


「じゃあここには4日ぐらい毎日通ってくるよ。

 あれ? なんか雨が降って来てないか?」


「ああ、ここは山脈のすぐ西側だから、雨は良く降るんだ」


「なあ、ドワーフさん。

 そこの空き地にみんなが入れる小屋を作ってもいいかな?」


「も、もちろんいいが、ざ、材料はどうするんだ?」


「アダムさまが用意して下さるから大丈夫だよ。

 アダムさま、アダムさま、こちらの空き地に300人ほど入れる小屋をお作りいただけませんでしょうか……」


(ぷぷっ!)

(こら! 今度笑ったら、お前のアバターに恥ずかしい落書きしてやるからな!

 イブですら近寄らなくなるような恥ずかしいやつを!)

(そ、そそそ、それだけはお許しを……)



 俺はその場を整地して、マナ建材で100メートル四方程の小屋を作った。

 みんなが入りやすいように間口は20メートルもあって、天上高も10メートルだ。

 中にはテーブルと椅子、それからクッションや簡易マットレスも転移させた。


(アダム、悪魔っ子たちに言って、300人分ぐらいの軽食を用意させてくれ。

 あ、念のため牛肉は無しで)

(は、はい)


「さあみんな、雨に濡れないように中に入ってくれ。

 そうそう、この小屋はシスティフィーナさまからみんなへの賜わり物だそうだ。

 これからは自由に交易所として使ってもらってかまわんそうだぞ」


 あー、みんな口開けてぽかんとしてるわ。

 ちょっと大きい小屋作り過ぎたか……



 ドワーフの交易長がようやく我に返った。


「ほ、ほんとにこんな立派な建物を使わせてもらっていいのか?」


「もちろん」


「じ、じゃあ、今までの交易小屋に入れてある岩塩をここに運んでもいいかな……

 あの小屋、古くなってて雨漏りがするんでうっかりしてると塩が溶けちまうんだ……」


「それじゃあアダムさまにお願いしようか。

 あっちの小屋にいるひとが驚かないように言ってくれるかな。

 アダムさま、塩の移動をお願い致します……」


 途端にその場に多くの籠に入った岩塩が現れた。

 はは、みんな目をまん丸にして絶句しとるわ……





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