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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
81/325

*** 81 ドワーフ族発見! ***

 


 或る日の朝。


(サトルさま。

 東の山脈の中部地域から、100名ほどの直立2足歩行生物が平原に降りて来ました)


「もうヒト族が山脈を越えて偵察に来たのか? アダム、映像を出してくれ」


(はい)


 おお…… これ、ヒト族じゃあないな。

 赤褐色の肌、やや低めの身長、長いひげ……

 こ、これ……


「なあ、アダム。こいつらって、『ドワーフ』か?」


(はい、システィフィーナさまが創造されたドワーフ族に酷似しております)



 ドワーフたちは、山脈と平原の境界辺りに降り立つと、そこに作られていた小屋の戸を開け、屋根に赤い旗を掲げた。

 そうして、背負っていた大きな荷物を次々に小屋に運び入れて行っている。

 何人かのドワーフはしきりに深呼吸をしていた。

 マナが薄れたのを確認しようとしているのかもしれないな。


 ドワーフたちは、しばらく休息したのちに薪を集め、近くの水場から水を汲んで来た。

 ここにしばらく滞在する気かな。


 そのうちに森の中から人影が現れた。

 あ、あの耳、あの跳ね方。あれ兎人族ワーラビットか?


 兎人族ワーラビットはしばらくドワーフたちと話をしていたが、そのうちに石のようなものを受け取った。


「アダム、あの石みたいなもんをアップで映してくれ」


(はい)


「なあ、あれ岩塩じゃないか?」


(ただいま分析致しましたが、岩塩に間違いございませんね。

 ゴブリン達の岩塩とは多少組成が異なりますが、純度96%ほどの岩塩でございます)


 その岩塩を受け取った兎人族ワーラビットは、ぺこりと頭を下げた後、ぴょんぴょん跳ねながら森の中に帰って行った。


「あの兎人族ワーラビットを追尾してくれ」


(はい)


 その兎人は、素晴らしいスピードで森の中を走っていた。

 そうして集落らしき場所に戻るとやや大きな建物の中に入って行ったようだ。

 そうしてその建物からひと回り大きな兎人が出て来ると、なにやら声を出し、すぐに大勢の兎人族ワーラビットが集まって来て大きな兎人の話を聞いていた。


 しばらくすると、100人ほどの兎人たちがばらばらの方向に森の中を駈けて行っている。あと200人ほどの兎人たちは、畑に行って作物を収穫し始めたようだ。

 お、あの畑に生えてるの小麦だな。

 あ、あれはキャベツっぽい野菜だ。ニンジンっぽいのもあるわ。

 はは、この世界でも兎はニンジンが好きなんだな。


 そうしてしばらくすると、その集落に馬っぽい大きなやつが10人ほどやってきたんだ。

 連中は、慣れた様子で大きな籠に野菜を入れている。

 あっちでは小屋から袋を出してるわ。小麦が入ってるのかな。

 あ、あれは栗の実かもしらん。


 そのうちに、馬っぽいやつらが大きな籠を背負い、兎人たちは各人野菜を抱えて森の中を歩き始めたんだ。

 間違いないな。これは『塩の交易』だわ。

 そうか、西ではゴブリン族が担っている役割を、東ではドワーフ族が担っていたのか……


「アダム、あの交易所での会話を拾えないかな」


(それでは交易所周辺に、多数の小型マイクの魔道具を転移させて配置いたします)


「よろしく」



 お、兎人族ワーラビット馬人族ワーホースの集団も大分森の中を進んでるな。


(サトルさま、森の中を駈けて行った兎人族ワーラビットたちが、他種族の集落に到着し始めました。その集落でも同様に収穫が始まっているようでございます。

 また、別の馬人族ワーホース牛人族ワーキャトルも移動を始めました)


「そうか、みんな兎人族ワーラビットと同じように塩の交易を始めようとしてるんだろう……

 お、最初の兎人族ワーラビットの集団が交易所に到着したようだな……」



「おお、これはこれは交易長さんではないですか。

 今回は交易長さん自ら塩の交易にお出ましですかな。

 それにずいぶんとたくさんの塩を持って来てくださったようで」


「ああ兎人族ワーラビットさん。

 実は次の交易に来られるかどうかわからなくなってな。

 だから多めに持って来たのだよ。

 万が一のときのために、今回は少し多めに塩を持って行ってくれないか」


「ええ、使いの者からそのように伺いましたので、作物は多めに持って来ました。

 特に保存の利く栗や小麦をたくさん。

 他の種族の村への使いにもそう言ってあります」


「それはどうもありがとう」


「いえいえ、私どももたくさん塩があるのはありがたいですからな」


「それで、もしも知っていたら教えて欲しいんだが、この辺りに大きな洞窟は無いかな」


「い、いえ。この付近には鍾乳洞のようなものはないんですよ。

 もっとずっとずっと南の方にはあるそうなんですけど……」


「そうか……」


「それにしてもどうされたんですか、ドワーフさん」


「皆も知っていると思うが、我々は東側の山の中にある交易所でも塩交易をしていたんだ。

 あのヒト族とな……

 だが、そのヒト族が約束の期日を過ぎても交易所に現れなかったのだよ。

 それに東のヒト族の村の方からは、黒い煙がたくさん上がっているのが見えたからな」


「ええ、確かあまり他種族に偏見の無いヒト族の国だったんですよね。

 でも、それが現れなかったということは……」


「その国はグレゴール王国と言う国だったんだが、どうやら敵対関係にあった隣のギャランザ王国に滅ぼされてしまったようなんだ」


「それはそれは…… ほんにヒト族は戦争が好きですなあ」


「グレゴール王は比較的穏やかな男で、我らドワーフともまともな交易をしていたんだが……

 かねてよりドワーフの塩鉱山を狙っていた更に東のビクトワール大王国が、実質支配下にあるギャランザ王国に命じてグレゴール王国を侵略させたらしいのだ。

 その際にはビクトワール大王国から5万もの軍勢が援軍として来ていたという噂なんだよ」


「と、ということは、そのビクトワール大王国の次の目的は……」


「そうだ、我らドワーフということになろう……」


「そ、それは一大事ですな……」


「まあ幸いにもヒト族の進撃路は谷筋の道一本しか無いだろう。

 そこには既に3つの砦があって、補強工事も始めている。

 そうやすやすとは破られることも無い。

 だが、それもあって、今回はグレゴール王国に回す予定だった分の塩も持って来たのだ。籠城用の食料を確保するために」


「そ、そうでしたか……」



 俺はこの交易所に行って、もう少し事情を聞いてみようと思った。


「なあアダム、俺ってゴブリンに化けられないかな」


(それでは『銀聖勲章』の中にある、『それは、ヒ・ミ・ツ♪』というスキルをお使いください)


「ったくどうしてそうアヤシイ名前のスキルばっかしなんかなあ……

 ほらこれでどうだ」


(お見事な男前ゴブリンでございますな)


「それから転移鞄の用意も頼むわ。

 俺が心でお前に指示したモノを大量に出せるようにしておいてくれ」


(畏まりました)


「それじゃあ俺をあの交易所の西300メートルほどのところに転移させてくれるか。

 念のためシスティとベギラルムにも連絡して、コントロールルームで俺を見ているように伝えてくれ」


(ですがサトルさま、サトルさまとシスティフィーナさまは、本日あと1時間ほどで9時街にて『懇親昼食会』にご出席の予定でございましたが、そちらはいかがいたしましょうか。 

 それまでにお戻りになれるでしょうか)


「そういやそうだったか。

 その昼食会って、出席者は誰だったっけ?」


(こちらはシスティフィーナさまとサトルさまとベギラルムさまでございます。

 先方はフェンリーさまとフェミーナさまと、ゴブリン、オーク、オーガのキングさまたちでございますね)


「なあシスティ。

 ちょっと頼みがあるんだがこっちに来てくれないか?」


「なあに?

 あっ、ど、どうしたのサトル! その格好! まるでゴブリン族みたい!」


「どうやら平原の東側で塩の交易が始まるみたいなんだ。

 だから俺これからちょっと行ってこようと思ったんだけど、ヒト族の姿だと警戒されちゃうから、勲章のスキルを使ってゴブリンに変身してみたんだよ」


「うふふ、ゴブリンになってもサトルはステキなのね♡」


「は、はは。

 それで今日の昼食会にはシスティひとりで出てくれないかな。

 出来ればシスティとベギラルムにはコントロールルームで俺を見ていて欲しかったんだけど」


「あら、だったら懇親会の場所をコントロールルームにしましょうか」


「いいのか?」


「ええ、みなさんも一度私の天使域にお招きしようと思ってたからちょうどいいわ」


「それじゃあ飯でも喰いながら俺の行動を見ていてくれ。

 場合によったらシスティにも精霊たちを連れて来てもらうかもしれないから」


「ええわかったわ。

 東の種族さんたちにも私たちの街に来てもらえるといいわねえ♪」


「それじゃあ行って来るわ」


「がんばってねサトル♡」




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