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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
80/325

*** 80 オーク・キングとオーガ・キング ***

 


 そうして或る日、ゴブリン・キングの紹介で、ついにオーク族の長であるオーク・キングとオーガ族の長であるオーガ・キングが、部下を引き連れて街にやってきたんだ。


 さすがにすげえな2人とも。

 オーク・キングは身長2メートル60センチほど。

 オーガ・キングに至ってはこれ身長3メートル行ってんぞ。


 でも……なんか俺、オークに対するイメージが180度変わっちまったよ。

 オークたちってものすごく紳士なんだわ。

 なんだか見た目がスーツみたいに見える服着てるし、蝶ネクタイみたいなのもつけてるし……

 肌の色は薄いピンクで、鼻もちょっと低くて鼻の穴が前向いててみんな太ってるけどさ。

 もう物腰は完全にジェントルマンだわ。

 帽子被ってたりステッキとか持ってるやつまでいるもんな。


 オーガたちは…… うん、見るからにオーガだわ。

 特にこのオーガ・キング。

 黒光りする鋼鉄のような筋肉。俺の胴体より遥かに太い腕。

 鬼のような顔…… あ、そもそも鬼だったわ。

 こいつ、どう見ても脳筋だよなあ……



 システィが降りて来て挨拶すると、両キングとも感激してたみたいだ。

 どうもみんな、システィの神威というか天使威がわかるみたいで、ひと目でシスティ本人だって気付くみたいだな。

 まあ、自分たちの祖先を創造してくれた天使なんだから当然なんだろう。



 案内役はゴブリン・キングが引き受けてくれたよ。

 キングは嬉しそうに街全体を紹介してたわ。

 それにしてもデカい種族向けの家も造っといてよかったぜ。


 オークもオーガも、レストランの料理に驚き、食糧倉庫に驚嘆し、展望台からの景色を眺めて嘆息していたわ。

 それから住宅の内部に喜び、病院に涙し、子供たちの学校まであるのに感激し、プールを見てさらに喜んでたよ。


 でもなによりも彼らを感心させたのは、数万人ものゴブリンの家族達が楽しそうに街を歩いてる姿だったんだ。

 親子連れが手を繋いでわいわい歩いている姿だ。

 子供が転んで泣き出すと、すぐに光の精霊が飛んで来て治してくれるしさ。


「精霊ちゃまあいがとー」とかいう声に、光の精霊が嬉しそうに手を振って応えてるし……



「おーい、精霊たちー、みんな出て来てお客さまに挨拶してくれるかなー」


「「「「「「「「 はぁ~い! 」」」」」」」」


 そうして四方八方から飛んでくる1800人の精霊を見て、さすがのキングたちも目を丸くするんだ。


「「「「「「「「 わたしたちの街にようこそ~♪ 」」」」」」」」

「「「「「「「「 ようこそようこそ~♪ 」」」」」」」」


 そうして最後には巨獣&巨人族との握手会だ。

 族長たちの後ろには、ドラゴンとベヒーモスとミノタウロスとトロールがずらっと100人も並んでいて壮観だし。


 でも…… うぷぷぷぷぷぷぷぷ……

 フェンリルの握手って…… どうみても「お手」なんだよなぁ。

 今度フェンリー騙してお座りやお回りも教えるか……



 それからみんなで城壁のところに移動したんだ。

 まずはオーク・キングが壁を殴った。

 もちろん壁はびくともしない。

 次はオーガ・キングが拳が破れるほどの渾身の力を込めて壁を殴りつけたが、壁はまた「みょ~ん♪」とかヘンな音をたてただけでひびすら入らない。

 最後にフェンリーが猛烈な体当たりをかましたんだが、やっぱり壁は「みょんみょん♪」とかいうだけでなんともなかったんだよ。


 そうしてみんなで壁を見上げてたんだ。



「オーガ・キング殿。

 キング殿であればこの壁、いかように攻略なされますかな?」


「うむ、このような城壁に囲まれている街は見逃してやって、次の街を攻略するとしよう」


 はは、さすがは脳筋たちの発想だわ。

 ベギラルムとおんなじこと言ってやんの。

 どうやら両キングにも満足して貰えたようだな。



 でもさ、最後にひと騒動あったんだわ。


「サトル殿。今日はご丁寧な見学会、誠に痛み入り申す。

 話には聞いてはいたものの、まさかこれほどまでの街とは思わなんだ。

 だが…… 最後にひとつだけお願いがあり申す」


「なんだい?」


「わしと立ち会ってはいただけないだろうか。もちろん素手で……」


 来たよやっぱり!

 言葉は要らない拳で語ろうぜ的脳筋言語!


「了解した。

 ただしひとつだけ条件がある。

 システィの加護を受けてもらえないだろうか」


「し、システィフィーナさまの加護とな……」


「そうだ、実は俺はもう受けているんだ。

 この加護があれば、たとえ死んでも10秒後には生き返れるんだよ。

 お互いこんなところで万が一死んじゃったら困るだろ」


「光栄の極み。是非ともシスティフィーナさまの加護をお願い申す」



 そうしてシスティがオーガ・キングに加護をかけている間に、俺は街の外に武闘場を作ったんだ。

 まるで古代ギリシアのコロシアムみたいな収容人員5万人の武闘場を……


 30分ほどで出来上がった大コロシアムを見て、3人のキングも驚いてたわ。

 まあ、椅子も無い階段状の観客席だけだけど、こうしないとまたローゼさまやエルダさまが文句言うしな。

 今度はベギラルムも呼んでやったんで、ベルミアとイチャつきながら見てるぜ。


 正面スタンドの貴賓席に座ったローゼさまとエルダさまは、もう興奮のあまり翼全開でばっさんばっさん動かしてるわ。

 あ、可哀想に、後ろに座ってた他の種族の族長たちが、後上方に移動しとる。

 そうそう、最近わかって来たんだけど、天使の翼の動きって、フェンリルのしっぽの動きとほとんどおんなじなんだよな。はは。


 あ、選手入場通路にいるの、あれフェンリーだろ!

 あの野郎も俺とヤル気かよ!

 やる気満々のツラしてハアハア息吐いとる!



 観客席には大観衆が集まりつつあった。

 俺は観客席全体を2重の絶対アブソリュートフィールドで覆った。

 貴賓席の反対側のバックスタンドには、敢えて観客席を置かずに厚さ20メートルのマナ建材製の壁があるだけだ。

 俺はこの壁だけは絶対アブソリュートフィールドで覆わなかったんだ。

 俺の最大威力の攻撃がフィールドに触れたときの衝撃波が怖かったからだ。


 アダムが街中に臨時の『転移の魔法陣』を設置したせいで、観客席もすぐにいっぱいになったようだな。



 こうして、俺とオーガ・キングは50メートルほどの距離を開けて対峙したんだ。

 キングは上半身裸になって、水着みたいなパンツ一丁になっている。

 きっとこれがヤツらの公式戦闘着なんだろう。

 でも笑えるぐらいプロレスラーに似てるけど……


 それにしてもデカいわ。

 こいつ、体重は500キロぐらいあるんじゃねえか。

 しかもものすげぇ筋肉量だ。

 まるで鋼鉄の壁が俺の前にそそり立っているかのようだな……



「立会申し入れを受けて頂き、誠に感謝の念に堪えん。

 だがあまりにも体格差が大きすぎる。かくなる上は、初撃はお譲り申す」


「それではお言葉に甘え、初撃はこの拳の渾身の一撃を貴殿の腹に入れさせて頂く」


「うむ。貴君の最大攻撃を楽しみにしておる」


 オーガ・キングはそう言うと、腹筋に力を込めた。

 すげぇ。すげぇよこの腹筋……

 まるで山脈みたいに盛り上っとるわ。

 どれほどの鍛錬をどれほどの時間為したらこんな腹筋になるんだろうか……



 大観衆の大声援が飛び交う中、俺はオーガ・キングを『ロックオン』した。

 そうして全身を『身体強化(神級)』で覆い、特に右腕は絶対アブソリュートフィールドで念入りに固めた。

 これで俺の腕はモース硬度にして30は行っただろう。

 ついで『隠蔽』も解除する。

 さすがだわ。眉すら動かさんわこの相手……


 俺はゆっくりと歩き出した。

 次第に速度を速めてキングに近づき、最後は秒速100メートルほどの速さで急速に標的に接近する。

 キングに近づくにつれて威圧を放出し、標的の目前、2メートル程のところで『威圧』を全開にしてさらに身体能力を高めた。

 それからジャンプして、渾身の速度・・でキングの腹に向けて拳を繰り出したんだ……


 最後の瞬間に、流石のオーガ・キングも何かを悟ったんだろう。

 思わず両手で腹をガードしてるわ……


 だが……

 0.01C、つまり光速の1%、秒速3000キロ、マッハにすればおよそ8800の速度で突き出された俺の拳は、その破壊力よりはむしろその衝撃波によってキングの腹を貫いた。

 そう…… 文字通り貫いた・・・んだよ……



 オーガ・キングの体は「ばしゃぁっ!」というバケツの水をぶちまけたような音とともに、胸から上と、ふともも辺りから下を残して消滅した。

 キングの後方にあったマナ建材製の壁には、直径2メートルほどの真円形の穴が開いていて、その周囲は真っ赤に染まっている。


 おお、さすがはオーガ・キングだわ。

 こんな姿になっても顔がにやりと笑ってる。

 まだ意識があるんだな……

 ああ、口が動いてる……

 これたぶん、『お見事』って言ってるわ……



 5万の大観衆は、誰一人として声を発していない。

 だが、ようやく目を閉じたキングの体とその残骸が、10秒後に暖かい光に包まれて復活すると、コロシアムには超絶大歓声が響き渡ったんだ。


 俺がキングの手を取って立ち上がらせ、固い握手を交わすと、大歓声がさらに大きくなった。




「オーガたちよ!」


 キングが声を出すと、またその場が静まりかえる。


「「「「「ははぁっ! 」」」」」


「しかと見たか!」


「「「「「 はいっ! 確かにお見届けさせて頂きましたっ! 」」」」」」


「これでそなたたちもこの街への移住に異存はあるまい!」


「「「「「 うははぁっ! ございませんっ! 」」」」」


「そうかそうか。ところでサトル殿」


「なんだいキング」


「わしの孫娘はまだ5歳だが、これが親や爺に似ず器量よしでな。

 ぜひそなたの側室にしてやって……」


「か、考えさせてくださいっ!」


「そうかそうか! ひ孫の顔が楽しみじゃわい。わははははははははははー。

 きっとわしより強い子になるに違いなかろうの……」



 ふう、次はフェンリーか……


 あ、あの野郎っ!

 ば、バックレやがったっ!!!



 後でフェンリーに文句言ったらさ。


「い、いやお前にもしものことがあったら、我がかたきを討ってやろうと思っていただけだ。は、ははは……」

 とか言ってやんの!


 それにしても、これだけ多くの種族たちにこの街のメリットを見せてやることが出来てよかったよ。

 まずはシスティの加護のありがたさだろ、次にこの街の最大防衛戦力だろ、そして最後に種族を越えた友情だ。

 まったくオーガ・キングには感謝してもしきれんな。


 でも…… すぐに5歳の孫娘連れて来て挨拶させなくっても……

 これがまた驚きの可愛い子でさ。

 どの種族も小さいときって、ヒトに似てるんだな……

 10年後が楽しみ…… い、いやまあ先の事は分からんよな!


 あ! ゴブリン・キングもオーク・キングも孫娘連れてきた!

 し、しかも2人とも可愛いっ!


 お、お願いします! ゆ、許してくださいっ!




 噂が噂を呼んで、9時街にはひっきりなしに移住者や見学者が来るようになった。

 もう俺も悪魔っ子たちも大忙しだ。

 だが、そのうちに、キング配下のゴブリン達が案内役を買って出てくれるようになったんだよ。

 さすがは『どの種族ともお友だち』のゴブリン達で、見事な応対だったわ。

 俺の仕事は族長クラスが来たときだけになったが、それも数種族同時になるように日程を合わせてくれたんで、それほどまでには忙しくならなかったんだ。




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