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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
79/325

*** 79 『岩山のゴブリン族』、他種族への移住勧誘開始! ***

 


 俺はゴブリン・キングを振り返った。


「どうかなキング、さっきの塩と塩壺はこうして作られているんだ」


 キングが開いていた口を閉じた。

「あ、ああ、見事なもんだ…… まさかこれほどまでとは……」


 かしらのみなさんは……

 はは、まだ大口開けたままだわ。


「の、のうサトル殿。

 魔法と言うものの素晴らしさはよくわかったつもりだが……

 これは我らにも使えるものなのかの?」


「う~ん。どうだろうか。種族的な適正もあるだろうし、今度システィに聞いてみるよ」


「よ、よろしく頼む」



 こうしてゴブリンの塩行商は再開されたんだ。

 どうやらその行商は、別にすべての集落を回るわけでは無いそうで、大森林中央部に500カ所ほどある、『交易所』を中心に行われていたらしい。

 森の恵みを求めて森林内を移動している種族も多いからな。

 それで、ゴブリンと牛人族ワーキャトル馬人族ワーホースがその『交易所』に塩を運び入れると、その交易所の屋根に旗が立てられて、周囲の種族たちが集まって来るそうなんだよ。

 さらに交易所から歩いて数日ぐらいの範囲には、ボランティアの連絡係が塩の交易開始を告げて回るそうなんだ。


 それでゴブリンの交易がしらたちが、これからはこの交易所は常設になって、いつでも塩を売るって言ったらみんな大喜びしてたそうだわ。

 しかも……


「な、なんて綺麗な壺に入った塩なんだ。

 それもこんなにまっ白で綺麗な塩なんて……

 な、なあ、ゴブリンの旦那…… こ、この塩壺は返さなきゃなんないんだよな……」


「いんや、そのまま使ってくれて構わんぞ。

 塩も壺もいくらでもあるからのう」


「い、いくらでもか……

 だが、これだけの物を頂くのだ。

 木の実や果物をもっと持ってくることにしよう」


「いんやそれも今まで通りで構わないだ」


「し、しかし……」


「これはサトルさぁっていう、システィフィーナさまの使徒さまが作られたもんだでな。

 壺はみんなへの贈り物だって言ってただ」


「し、システィフィーナさまの使徒さまだと……」



 交易所の隣には、土の精霊たちがゴブリンの行商人や遠方からくる客達のために、簡易宿泊所も建てていた。

 これでみんなが泊まりがけで塩を取りに来ることが出来るようになって、ずいぶん喜ばれていたようだったわ。

 売り物の塩もほぼ無制限にあるしな。

 今までは他の種族に遠慮して充分な量を買えていなかった連中も、好きなだけ買えるようになって更に喜んでいたそうだ。

 馬人族ワーホース牛人族ワーキャトルたちは、そうした大量買いした種族のために塩を運んでやってありがたがられているらしい。

 まあ、体が小さくて力もそれほどでない種族も多かったからな。

 代わりに馬人族ワーホース牛人族ワーキャトルたちは望むだけの量の塩が得られることになったんだ。

 もうみんな大喜びだったそうだわ。


 もちろん交易所の宿泊施設には、『9時街』から大量の食糧も運び込まれ始めている。

 そうして、当然のことながらその宿泊施設は情報交換の場になっていったんだ。

 それも各種族の重鎮たちの。

 まあ、塩の購入を任されているぐらいだから、各村からやって来る連中も、村長代理かそれに準ずるような者が多かったから。



「ええっ! それじゃあゴブリンさんたちは、みんなその『街』に引っ越すというのか!」


「んだ。おらの村はもう全員引っ越しただ。

 家族もみんな『街』に住んでるだ」


「そ、その街って、いつか村に来た精霊さまやフェンリルさまや見慣れない子供たちが言ってた街のことかな……」


「んだんだ。あの方たちもみぃんなサトルさぁの部下か仲間だけんの」


「そ、それにしてもゴブリンさんたちは思い切ったことをしたもんだの……」


「はは、なにしろおらたつのキングが、サトルさぁに惚れ込んでおっての。

 それに食べ物はいくらでもあるし、光の精霊さまも大勢いてくださって、いつでもみんなの怪我や病気を治してくださるし、こどもたちの教場まであるだ。

 それにどうだいこの綺麗な服、これもその街でサトルさぁを通じてシスティフィーナさまに頂いたもんなんだあ」


「し、システィフィーナさまに頂いただと……

 そ、その街ではシスティフィーナさまに会えるのか?」


「いつもお会い出来るわけではないんだけんの。

 天使さまは天上の天使域っちゅうところで暮らしておられるから。

 だが、よくフェンリルさまを連れて散歩なさってるだ。

 こないだおらがお辞儀すたら、「こんにちは~♪」って言ってくださっただよ。

 おらもう嬉しくって感激しちまって、涙が止まらなかっただ。

 そうそう、この服はそのとき来ていた服だで」


「そうか……

 それにしてもよくぞこんなに多くの塩を持って来てくださったものだ。

 本当に感謝する」


「あ、いやいや。

 これはみんなサトルさぁのお力で運んで頂いたもんなんだぁ。

 ほらそこの道具んとこに毎日塩や食べ物が送られてくるだよ。

 明日の朝になったら交代要員が来るだで、おらは街に帰って1日お休みだ」


「ど、どうやったらそんなことが出来るのだ……」


「はぁ、おらたつにもよくわからんが、サトルさぁの開発した『魔法』っちゅうもんで出来るらしいけんの」


「ま、魔法……

 そ、それでその街の暮らしはどういうものなんだ? 王はいるのか?

 兵隊に取られたり、奴隷にされたり、ぜ、税とかもあるんか?」


「あはは、今言われたことは全部無いだよ。

 国の代表はシスティフィーナさまだど。サトルさぁはその代理だそうだ。

 それに兵隊はフェンリルさまたちが一族全員で500頭もいらっしゃるし、いざとなったらドラゴンさんやらベヒーモスさんやらミノタウロスさんやらトロールさんも、全部で5400人もいらっしゃるだ。

 それほどまでの戦力におらたちが加わっても何の役にも立たないだよ」


「な、なんという戦力だ……

 それだけの戦力が、そのサトルさまのひと声で動くと言うのか……」


「んだ。

 それから奴隷は『絶対禁止』だそうだし、税もなんもおらたつの方が貰ってばっかりだあ。

 だからこうやって働いて、少しでもそのご恩をお返しをしとるとこだわ。

 サトルさぁは、おらたつが他の種族のみんなのために働くと、ひどくお喜びになるからの」


「そ、そうか……」


「それにの、システィフィーナさまがその使徒サトルさぁにお命じになってあの街を造ってくださったのは、おらたつをヒト族から守って下さるためなんだと」


「ヒト族から……」


「んだ。中央大平原のマナが薄れちまったんで、これからヒト族が押し寄せてくるそうだわ。

 だからおらたつを守ってくださるために、街はでっかいでっかい城壁で囲まれてるだよ。

 おらの背丈の30倍よりももっと大きな城壁で……」


「そうか、街を作った目的は、システィフィーナさまが我らをお守りくださるためだったのか…… 

 な、なあ、もしも…… ひょっとして、我らもその街に受け入れてくださるものなのか?」


「システィフィーナさまは、いろんな種族が街に移住して来ると、ものすごく喜んでくださるだよ。

 だども、一度族長と一緒にその街を見学に行ってみたらどうかの。

 おらたつのキングさぁも、その見学をしてから移住を決めたでの」


「ど、どうやったら見学が出来るのかの」


「族長や村の主だったお方を連れてここに来て下さればええ。

 あとはおらがサトルさぁに紹介するだぁよ」


「あ、あんたはそんな偉いひとに我らを紹介出来るほどの方だったのか……」


「あはは、違うだ。サトルさぁが気さくな方なだけの話だ。

 まあ、いつも頭の上に精霊さまたちを乗せて歩いてるぐらいだものな」


「そうか、精霊さまたちもたくさんいらっしゃるなら、作物もたくさん取れるのだろうな……」


「はは、精霊さまは全部で1800人もいらっしゃるだで」


「せ、せんはっぴゃく……」


「おらもあんなにたくさんの精霊さまは見たことがないだども、サトルさぁが一声発すると、その精霊さまたちが一斉に動くんだぁ。

 それに言われた仕事を終えてサトルさぁに褒められると、精霊さまたつはすっごく嬉しそうにされてるだよ。実にいい光景だど」


「さ、さすがはシスティフィーナさまの使徒さまだの……」




 こうして『9時街』には毎日毎日たくさんの種族の代表が見学に来るようになったんだ。さすがはゴブリンたちだわ。

 それにキャラバンに回っていた悪魔っ子たちも喜んでたよ。

 中には悪魔っ子たちのことを覚えてて、声をかけてくれる種族もいるみたいだし。

 あの子たち、ちょっと嬉し泣きしてたぞ。苦労が報われたって。


 おかげで俺は毎日大忙しだ。

 族長たちを案内して、キングに紹介してフェンリルたちなんかに紹介して……

 仕方ないから巨獣族や巨人族には、毎日100人ぐらいずつ9時街に来てもらったぐらいだわ。

 まあ帰りにはウィスキーやら焼酎やらジュースやらを持たせて貰えるんでみんな喜んでたけどな……




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