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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
78/325

*** 78 『岩山のゴブリン族』9万人の移住開始 ***

 


 街の集会場には主だったフェンリル達が全員顔を揃えて座っていた。

 あー、ゴブリンさんたちちょっと腰が引けちゃってるよ。

 まあ、5メートルから8メートルクラスの巨大狼が100頭以上もいたら、びびるのは仕方ないか。


「やあ長老、ボス。今日は客人たちをお連れしたんだ。

 岩山のゴブリン・キングさんとその配下の村長さんたちを紹介させてもらえるかな。

 キング、こちらがフェンリル一族の長老さんと、ボスのフェンリーだ」


「岩山のゴブリン一族の長、ゴブリン・キングのゴブルーンと申します。

 平原の守護神、フェンリル一族の皆さまにお会いできて光栄でございます」


「ようこそおいでくださった、ゴブリンさま方。

 このサトルさまの客人であれば、我がフェンリル一族の客人も同然。

 これからもよろしくお願い致し申す」


「あ、暖かいお言葉、ありがとうございます……」


 おお! さすが長老! 威厳あるわー。



「ふはははは、サトルよ、早速赤子の洗礼を浴びたか!」


「おいフェンリー、お前分かってて『サトルに仔を抱いてもらえ』って言ったろ」


「ぐはははははは。先日の城壁建設見学会のときのお返しよ。

 だがまあ、生まれたばかりの仔のアレを浴びるのは、名誉なことでもあるのだぞ。

 なにしろ母親を含む一族全員が、お前に気を許しているということなのだからな。

 そうでなければ大切な大切な赤仔を触らせるわけがあるまい。

 赤仔が生れる前後のフェンリルの群れは、最高警戒態勢になっておるからの。

 だがこの壁のおかげで今回の安心感は大分違うのう。

 やはり城壁とは大切だな」


「そうだな、その辺りのことはなんとなくわかってるよ。

 これでもう俺もフェンリル一族の名誉会員にしてもらえたかな。

 ありがとうな」


「さ、サトルさま…… お、お礼を申し上げるのは私共の方でございますのに……」


 あー、長老また泣いちゃったよ……


「ところで、最近生まれた仔はあと何頭いるんだ」


「あと5頭ほどだ」


「それじゃあ帰りがけにその仔たちも抱いていこうか」


「おお、みんな喜ぶだろうの。

 そうそう、先日の『しょうちゅう』は実に旨かったぞ。

 うぃすきーもいいが、我はあのしょうちゅうの方が好みだ」


「仔の生まれた祝いに置いていくからみんなで飲んでくれ」


「なんだお前は飲んでいかんのか?」


「俺は今任務中だ。今度ゆっくり一緒に飲もう」


「うむ。任務中であれば仕方あるまい。

 そうそう、ゴブリン・キング殿、今度ご配下の方々ともご一緒にサトルと来てくだされ。

 一緒にサトルの酒を思う存分飲みましょうぞ」


「お前すぐ寝ちゃうくせに」


「わははははははー。

 酒に酔って寝るのがあれほど気持ちのいいものだとは思わなんだわ」


「それじゃあ今日はこれで失礼するわ。

 また客人を連れてくるかもしれないんで、そのときはよろしくな」


「うむ。そのときも歓迎させてもらおう。

 あの街の住民が増えれば、他ならぬシスティフィーナさまが大いにお喜び下さるからな。我らも歓迎の仕事はしっかりとやらせていただく」


「ありがとう。

 システィにも伝えておくよ。

 そうだな、今度はシスティとも一緒に飲もうか」


「おおおおおお……」


 あー、今度は長老さん号泣しとるわ……



 赤仔たちを抱いた後、俺たちはドラゴン街やベヒーモス街やミノタウロス街やトロール街も回って各族長に挨拶をした。

 特にドラゴン達やベヒーモス達が全員頭を地面につけて敬意を表してくれたんで、ゴブリン達は驚いてたよ。

 それから転移で『9時街』に戻ると、なんかゴブリンさんたちがぐったりしてたわ。

 やっぱ巨獣や巨人たちのプレッシャーってすごいのかな?



 そういえば、その晩はタイヘンだったんだ。


「そ、そのような素晴らしいデモンストレーションに、そ、それがしを呼んでくださらなかったとは……」ってベギラルムが泣き出しちゃってさ。

 次は必ず呼ぶからって宥めるのに1時間もかかっちゃったよ……




 翌週からゴブリン達の移住が始まった。

 家財道具も一緒に、準備の出来た西の方の小さな村からみんなで転移して来るんだ。

 最初はみんなおっかなびっくりなんだけどさ、その場にキングがいて、「おおおお、よく来たよく来た。まずはれすとらんでゆっくり食事をするとよい。こちらの悪魔の子らが案内してくれるでの」とか言うんでみんなびっくりするんだよ。

 普通のゴブリンだと滅多にキングには会えないらしいから。

 さすがはキングだわ。こうすれば誰もが安心するってわかってて、朝からずっと立ってみんなを出迎えてるもんな。


 そうしておなかいっぱいになって、新しい家でひと休みすると、ゴブリン達は北のビル街や中央棟を物珍しそうに見に来るんだ。

 みるみる辺りはゴブリンだらけになっていくんだよ。

 そうすると、後からやって来たゴブリンたちもさらに安心するんだ。

 近くの村の知り合いとかいると、街の暮らしのことを聞いてたりしてたし。

 こうして3週間ほどで、キング配下の300の村の9万人のゴブリン達がみんな移住して来たんだ。



 翌週からは塩の行商が再開される予定になっている。

 それで俺は『行商人頭』たちを集めて、みんなに『転移の魔道具』の使い方を覚えてもらったんだ。

『9時街』と岩塩鉱山のある岩山は、もう大型魔道具で繋いであっていつでも誰でも転移出来るようになっているけど、個人用の『転移の魔道具』の使い方にも習熟してもらいたかったからな。


「この片方を予め目的地に置いておき、そうして同じ模様のついたこちらを持って『てんい』というのだな」

「ちょっくらやってみんべ。おお! 場所が変わった!」

「それじゃあ今度は別の場所に片方を置いてと……

 おー、また場所が変わったか。こりゃあ便利だのう」

「確か帰るときは『きかん』だったかな?」


「はは、その言葉を忘れると帰って来れなくなるぞ。

 でも実はその魔道具に書いてあるんだがな」


「そう言う意味でも字って大切なんだのう」

「んだんだ」

「行商の合間に『初級学校』に通って、おらたつも字ぃ覚えるだか」

「そうすんべ」

「ところで皆の衆、この道具があれば、最初は荷物が要らないんじゃないか?」

「おおそうか! 最初は道具だけ持って行って、先方の村についたらこの道具で帰って来て、それからまた『てんい』で塩を運べばいいんか……」


「こりゃあ行商も楽になるのう」

「でもそうなると、馬人族ワーホース牛人族ワーキャトルの連中が悲しむかもだのう」


「なんで馬人族ワーホース牛人族ワーキャトルが悲しむんだ?」


「ああ、サトルさあ。

 馬人族ワーホース牛人族ワーキャトルの連中は、岩山の近くに住んでておらたつの行商を手伝ってくれてるだよ。なんせ連中は大きくて力も強いだでな。

 だからたーくさん荷物を背負って、一緒に行商に行ってくれるだ。

 帰りにおらたつが疲れてると、背中に背負ってくれたりもするんだ。

 おらの馴染みの牛人族ワーキャトルは、おらが座りやすいように背負い子に座布団までつけてくれてるだよ」


「だからおらたつは、お礼に連中の村にたくさん塩を配ってるだ。

 連中は塩を舐めるのが好きだでのう」


「行商の仕事が無くなると、みんな悲しむかもだわ。

 なんせ牛人族ワーキャトル馬人族ワーホースも、そのためにわざわざ岩山の近くに待合所を建ててるぐれえだかんの。

 そうして交代で行商補助の仕事に来てくれてたんだす」


牛人族ワーキャトル馬人族ワーホースも、岩山を襲って岩塩を独占しようとはこれっぽっちも思わなかったということか…… E階梯も高そうだな)


「だったら今まで通り連中にもたっぷり塩を渡してやったらどうだろうか」


「だけんどサトルさぁ。牛人族ワーキャトル馬人族ワーホースも働かずに塩は受け取らねえと思うだ」

「んだんだ」


「だったら、俺たちの街へ移住して、農業を手伝って貰えないかな。

 いくら魔法の力があるからって、農業は重労働だから」


「おお、それはいい考えだべな!」

「それじゃあ行商だけじゃあなくって岩塩採掘も頑張らねばのう」


「そのことなんだがな、実は俺も塩を作ってるんだよ。

 もうけっこう溜まってるぞ」


「なんとサトルさぁは岩塩鉱山までお持ちですたか!」


「いや『岩塩』じゃあなくって『海塩』なんだが」


「海の塩は舐めたこと無いけんど、苦くて食べられないそうだがのう」


「それが魔法で純粋な塩だけ抜きとれるんだ。

 ほらレストランにもあったろ。あれは海の塩なんだ。

 そうだな、みんなに塩倉庫も見て貰おうか。

 あ、誰かキングも呼んで来てくれないか」



 こうして俺たちはみんなで塩倉庫に行ったんだ。

 ゴブリンたちはまたみんな固まってたよ。

 まあ見渡す限り視界の先まで塩の壺が並んでいれば、そりゃあ驚くか。

 手近な壺を開けてみんなに実際の塩も見て貰ったんだけど、これにも驚いてたわ。

 それに……


「な、なんて綺麗な壺だすか……」

「こんな綺麗な壺に入ったまま塩を渡したら、みんなどんなに喜ぶか……」

「こ、これ塩を使い終わったら、種や食べ物の保存にも使えるだ……」


 そうしてみんなが俺の顔を見るんだよ。


「はは、もちろん壺ごといくらでも配って来ていいぞ。

 なにしろこんなにたくさんあるんだからな」


「サトル殿、だがこれだけの塩や壺を作るには、相当な労力が必要だったと思うが……」


「そうだな、それじゃあ今からみんなで塩工場を見に行かないか?」



 こうして俺たちは、南部の塩工場に転移したんだ。


「あ、サトルさま! ご視察ですか!」


「そうだ、今日はキングと塩行商のかしらさんたちをお連れしたんだ」


「うふふ、わたしたちもう1人で【塩壺作成100】のマクロを3回も唱えられるようになってるんですよ。どうかじっくり見て行ってくださいね♪」


「そうか、もうそんなに進化したか……」


(なあアダム、塩造りってそんなに早く進化するほどたいへんな作業なのか?)


(はい。作業そのものは単純作業の繰り返しで簡単なのですが、なにしろ塩の結晶を一粒ずつ『抽出』いたしますので、魔力量消費はさほどでないのですが、マナを操作する力を大量に使います。

 そのためにこの塩造りをすると、MPが飛躍的に上がっていくようでございますね)


(そうか…… MPのための訓練には最適な作業だったか……)



 塩工場では、左手のプールから右手のプールに海水が流れて行っている。

 あ、海水の量がだいぶ増えてるな。

 そうか、アダムに頼んで増やしてもらったのか。

 ということは、マクロの実行スピードも上がってるっていうことか……



 中央の作業台に立った子が、【塩壺作成100】のマクロを唱えると、脇にあった小山からマナ建材が飛んで来て、すぐに壺になる。

 その壺に海水から『抽出』された塩がみるみる詰まって行って蓋がされた。

 そうして、その壺が正面のスペースに飛んで行くと、また壺が作られ始める。

 1つの塩壺が出来上がるのに約6秒。

 それが滞りなくどんどんと進んで行っている。

 こうして日産3000個の塩壺が出来て行っているんだ。


 うーん、これ、1人当たりマクロを2回までにする代わりに、製造ラインを2つに増やしたら日産6000個になるのか。日産60トンの塩か……


 俺はその場で塩工場を2つに増やして、試しに2人に作業をさせてみた。

 多少忙しくなったものの、作業は順調に進んでいるようだ。


「少しでも気分が悪くなってきたら、全員作業を中断して休むんだぞー」


「「「「「「「「 はぁ~い♪ 」」」」」」」」




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