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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
75/325

*** 75 『9時街』に驚くゴブリンさんたち…… ***

 


 ゴブリン達を連れてレストランに入ると、厨房服を着た悪魔っ子たちが両側に並んで待っていてくれた。


「「「「「 いらっしゃいませ~♪ 」」」」」


「食事の準備をありがとう。

 みんな、このレストランは、セルフサービスと言って自分で料理を持ってテーブルにつくことになっているんだ。

 今日用意したのは1種類の定食だけだけど、そのうち100種類ぐらいの料理を揃えてみんなに選んでもらう予定でいる。

 それじゃあここに並んでくれるかな」


 俺は『本日の定食』の乗ったトレイを受け取った。

 ベルミアスープと豪華版ハンバーガーとフライドポテトが乗っている。


「飲み物やサラダはあのテーブルから好きな物を選んでくれ。

 サラダにかけるドレッシングもあるから、よかったら使ってみてくれよ。

 それをかけるとサラダがより美味しくなるぞ」


 はは、デカいキングがトレイを持つと、ままごとのトレイみたいで可愛いな。


「のうサトル殿、ずいぶんと色とりどりの飲み物があるが……」


「これみんな果実を搾ったジュースなんだ。どれも旨いぞ」


(そうか…… サトル殿は果樹園までもお持ちか……)


 はは、悪魔っ子たちが一生懸命メモを取りながら見ているよ。

 こいつら本当に熱心だわ。



「みんな席に着いたかな。それじゃあ『いただきます』」


 あ、みんなも何事か呟いてる……

 そうか。食前の祈りや挨拶までしてるのか……

 ますますもって文明人だよこいつら。


 スープを一口飲んだキングが固まった。


「どうかなキング。口に合ったかな?」


「な、なんだこのスープは…… なんという深い味わいだ……」


「ウチの料理長自慢のスープでな。

 最近神さまたちの世界でも大評判になってるそうだぞ」


「わ、我々は、神と同じものを飲んでいるというのか……」



 テーブルからはゴブリン達の呟きが聞えている。


「う、旨い……」

「なんなんだこの柔らかいパンは……

 どうやら小麦を使ったパンのようだが、どうしたらこんなに柔らかくなるというのだ……」

「しかも、間に挟んであるこの肉と野菜…… なんという味わい深さだろうか」

「お、おお! こ、このドレッシングというもの。な、なんという旨さか」

「これは…… どうやらポテータを使った料理らしいが、いったいどう料理したらこのような味になるというのだ」


「そのフライドポテトは花の種を絞って採った油を熱した中に、ポテータを入れて揚げたものなんだ」



「あの…… サトルさま……」


「なんでしょうか奥さん」


「こ、このテーブルの上の不思議な透明の容器に入った白いものなんですが……」


「それは塩ですね。

 フライドポテトの塩味が足りないと思ったら、それをかけてください。

 こんなふうに」


「し、塩だと……」

「塩がなんでこんなに白いんだ……」


「その塩は俺が海水から作った塩なんだ。

 あの苦い味は全て取り除いた純粋な塩だから、安心して使ってくれ」


「そうか…… 純粋な塩は白いのだな……」


 はは、ゴブリンたちはすっかり食事に満足してくれたみたいだ。

 よかったよかった。


「このレストランは、朝7時から夜10時まで開くことにしようと思っている。

 もちろん誰でも好きなだけ食べられるが、あのコーナーで食材なんかも配るから、みんな自宅でも料理が作れるぞ」


「代価はどうやって払えばいいのだ?」


「全部無料だ。代価は必要無い」


 ゴブリン達がザワついた。


「すべて代価なしだと……」

「そ、そんなことが有りうるのか……」


「サトル殿。

 サトル殿はこの街は40万人が住むことが出来ると言っていたが、40万人もの住民を食べさせていけるだけの財力を、サトル殿はお持ちだというのか」


「実は最近ちょっと儲かったもんでな。

 最終的には400万人を10年間食べさせて行けるだけの食材を準備するよ。

 10年あればこれから準備する畑の作物も採れるようになるだろう。

 でも最大で2400万人を1000年食べさせて行くぐらいの財力はあるから安心してくれ」


「す、凄まじい富をお持ちのようだ。

 あの恐ろしい魔法の力に加えて富まで持っているというのか……」


「それは俺の手柄じゃないんだよ。

 すべては創造天使システィフィーナの思し召しと、彼女の上司である神さまのおかげなんだ。

 だからまあ、天使や神の恵みだとでも思ってくれ」


「そ、そうか……」


「みんなもう食べ終わったかな。

 それじゃあ済まないが、トレイはあの窓口のところに持って行ってくれるかい。

 このレストランでは食べたひとが自分で食器を片づけることになっているんだ。

 それじゃあみんなに安心してもらうために、この後は食糧倉庫にご案内しようかな。

 アダム、みんなをクリーンルームに転移させる準備を頼む」


(畏まりました)


「それじゃあみんな、クリーンルームに転移するぞ。

 食糧倉庫に入るときは、全員その部屋で『クリーンの魔法』を使って体を綺麗にすることになっているんだ」



 こうして俺たちは食糧倉庫に足を踏み入れたんだ。

 ここはいつ来ても俺でさえも感嘆するよ。

 なんせどっちを向いても壁が見えない位広いスペースに巨大な棚が無数にあって、食材や調理済みの料理が見渡す限り並んでいるんだものなあ。

 あ、やっぱりキングたちも立ち竦んどるわ……


 目の前の棚は視界の果てまで続いていて、その全てに小麦粉の袋が乗っている。

 その隣の棚には野菜。その隣にはチーズやヨーグルトなどの乳製品が、やはり見渡す限り並んでいた。

 お、あの離れた棚はラーメンの棚だな。その隣はチャーハンか。


「こっ、これは……」


「な、けっこうたくさんあるだろ」


「こ、これほどまでに大量の食糧が……

 だ、だが野菜や調理済みの食品は腐ったりしないのか?」


「実はこの倉庫はシスティの力で時間が止まっているんだよ。

 だから何年経とうが、料理はいつまでも作りたてのままなんだ」


「な、なんという力だ……」


「まあ生命を創造出来るぐらいだからさ。これぐらいは簡単らしいぞ」


「そ、そうか……」


「ということで、食料はけっこう溜まりつつあるんだ。

 まあ取敢えずの目標は、さっきも言った通り400万人の10年分の食材と料理を用意しておくことだが。それぐらいあればみんなも安心するだろ」


「あ、ああ…… 我々も土と水さえあれば作物は作れるからな……」


「しかも土の精霊と植物の精霊と水の精霊も大勢いるし」


「そ、そうか…… そうだった……」


「さて、それじゃあ『食』を見てもらったところで、次は『衣』を見てもらおうか。

 レストランに戻ろう」


 俺はゴブリン達を中央棟3階のショップに連れて行った。

 そこには広い売り場いっぱいに色とりどりの服を着たマネキンが並んでいる。


「さあ、ここが服の売り場だ。

 あ、すまんがまだキングが着られるほどの大きな服は置いて無いんだ。

 そのうち揃えるから今日は勘弁してくれ」


「なんだこの見たことも無いような服は……」

「それになんとたくさんの色があることか……」

「この服の生地…… 植物の繊維ではないのか?」


「半分ぐらいは植物の繊維なんだけど、後は化学繊維っていって、石油っていうものから作ったものだな。

 俺の前世の世界から輸入して来たものなんだ」


「サトル殿…… ま、まさかこの服も代価は……」


「代価は要らない。創造天使さまからのプレゼントだとでも思ってくれ」



 ご婦人方は、可愛らしい子供服を見ながらちょっと涙ぐんでいた。

 きっと孫たちに着させてやりたいんだろうなあ。


「それじゃあ次はみんなをこの街自慢の展望台にお連れしようか」


「展望台…… そ、それはまさか……」


「そう、ここに来るときに見えた、あの塔の上にある見晴らしのいい場所だよ。

 まあみんなはあの岩山に登ったりして高いところには慣れてるだろうけど。

 それじゃあ1階に降りようか。

 あ、エレベーターと階段があるけど、ご婦人方はエレベーターで行こう。

 男性諸君は済まないが階段で行ってくれるかな」


「サトル殿、この階段の入り口になにやら書いてあるようだが……」


「この階段が『初心者用』で、こっちが『中級者用』、それからこっちが『上級者用』だ」


「な、何の『初心者』で、何の『上級者』なのだ?」


「それはまあ昇ってみてのお楽しみと言うことで……」



 俺はご婦人方を伴ってエレベータに乗り込んだ。

 このエレベーターには窓もあって、塔のところどころに埋め込んだ窓から少し外も見えるんだ。

 あ、ご婦人方がちょっとびびってるか……


「みなさん大丈夫ですよ。

 このエレベーターは魔道具をたくさん使って安全に作ってありますから」




 展望台に到着すると、みんなはふらふらと窓のところに近寄って行っている。

 でも窓のすぐ傍までは行けないみたいか。

 まあ岩山と展望台ではまるで雰囲気が違うだろうからなあ。


 そのうちに『初心者用』階段の出口から、何人かのゴブリン達が出て来たんだけど…… なんだかこっちのみんなもふらふらしてて、疲れた顔してるんだわ。

 まさかこの程度の昇りで疲れたわけでもないだろうし。

 あそうか。側面の窓が怖かったのか。

 ということは……


 そのとき、『中級者用』の階段から悲鳴が聞こえて来たんだよ。


「うひーっ!」とか「ギャーっ!」とか「きょえーっ!」とか「押すなーっ!」とか……


 はは、やっぱり怖かったんだな。

 まあガラスなんて見たこと無かったんだろう。


 それにしても『中級者用』階段の出口からは誰も出て来ないなあ。

『上級者用』は言うに及ばず……

 はは、全員が疲れ切った顔で『初心者用』階段の出口から出て来たわ。

 あー、座り込んで床撫でてるよ。みんなお疲れさん♪



 それにしてもこの展望台からの景色はいつ見ても素晴らしいよ。

 まだマナが薄れて間もないんで植物もほとんど生えてないから、荒涼とした岩稜地帯が広がっていて、地平線も綺麗に丸く見えるんだ。

 この星って地球よりは少し小さいから地平線の曲率も大きいし。


 でも目を下に転じると、マナ建材の白と土の黒と、そうして街路樹の緑の間に咲き誇る花のプランターの明るい色が見えるんだ。

 まさに荒野に忽然と現れたオアシスみたいな雰囲気なんだよなあ。

 お、ようやく座りこんでたゴブリンたちも立ち上がって景色を見始めたか。

 はは、見慣れない景色にみんな口もきけないみたいだわ。





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