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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
73/325

*** 73 『9時街』見学会にゴブリン族ご一行さまご案内 ***

 


 ゴブリン達の住む岩山を囲む城壁が完成した。


 はは、キングの奥さんが涙をぽろぽろ零しながら城壁を見てるわ。

 気丈に振舞っていても、きっと不安だったんだろうなあ。



「お待たせしましたキング、伝令役82人を……

 う、うわっ! な、なんだこれはっ!」


 おお、ゴブリン達が立ちつくしとるわ。

 まあ、初めてみたらびっくりするわなあ。

 俺だって初めて造ったときは自分でびっくりしたもの。


「うふふ、たった今サトルさんが造った城壁なのよ。どう、すごいでしょ♪」


 キングがようやく我に返った。

 涙を零している奥さんを見やった後、俺を振り返る。


「サトル殿。なんとお礼を申し上げたらいいものやら……

 これでもうヒト族が攻めて来ようとも……」


「いやキング。これだけじゃあまだ安心出来ないぞ。

 なんせここにはゴブリン達しか戦力がいないからな。

 それに畑もこれだけじゃあぜんぜん足りないだろう」


「サトル殿は戦力をお持ちなのか」


「うふふ。わたしたちフェンリル一族500頭がサトルの戦力よ。

 それにきっとサトルが言えば、ドラゴン族100とベヒーモス族300とミノタウロス族2000とトロール族3000も加勢してくれるわ。

 でも…… 全員集めてもサトルにはぜんぜん敵わないでしょうけど」


「す、凄まじい戦力だな。

 ところで何故その戦力をもって、ヒト族の国に攻め込まないのだ」


「そのことなんだが……」


 俺はキングをはじめ、その場のゴブリン達に、『試練』や『罪業カルマポイント』について詳しく語った。

 みんな真剣に聞いてくれてたよ。



「なるほど理解した。

 それゆえ防御に特化した国を造ろうというのか。

 そうしてヒト族に攻められないよう、我々ゴブリン族をその防御の内側に入れたいがために、移住を検討して欲しいというのだな」


「そのとおりだ」


「それではお前たち、それぞれ担当の村に行って、わしからの指示だと言って村長を連れて来てくれ」


「行きは『転移』っていう魔法で直接村まで送り届けるし、戻って来るときは『岩山に戻してくれ』って声を出して言えばいいからな。

 最初はちょっと驚くかもしれないけど、慣れればどうってことはない魔法だ。

 アダム、頼んだぞ」


(畏まりました)


 はは、伝令たちがつぎつぎに消えて行くんでキングがびっくりしとるわ。


「なあキング。試しにあんたも転移してみるかい?」


「あ、ああ……」



 途端に俺たちは城壁の上にいた。

 キングは衝撃で硬直していたが、間もなく気を取り直して城壁の上を歩いて視察を始めたようだ。


「あんまり端に行かないでくれよ。

 鉤爪なんかを引っ掛けられて登って来られないように、角を丸くしてあるから……」


「ああ……」


 しばらく歩いた後、キングはしゃがんで城壁を叩き始めた。

 まあ、もちろんマナ建材製だから傷すらつかないけど。


「なんという堅牢さだ……」


「そうだな、フェンリルでも壊せないって言ってたぞ」


「うむ……

 それで我らはこの城壁の見返りになにを差し出せばいいのだ」


「はは、なにも要らないよ」


「そういうわけにもいくまい」


「いや、これはさっきも言ったように、『お詫び』の印なんだ。だから気にしないでくれ」


「そうか……」



 そうこうしているうちに、伝令たちが村長を連れて戻り始めたようだ。

 俺はキングを連れてふわふわと浮き、岩山の前に戻った。


「そ、空まで飛べるのか……」



 キングの家の前にはゴブリンの村長たちが伝令役とともに集まり始めていた。


「お、おい。本当に岩山の村だぞ……」

「あ、歩いて10日の距離を一瞬で……」

「な、なんだこの大城壁はっ!」

「お、おいっ! き、キングが飛んでる……」


 俺たちは、口を開けて呆然としているゴブリン達の前に着地した。

 あはは、キングが腕を組んでにやにやしとるわ。

 まるで空を飛ぶぐらいは当然だって言いたいみたいだな。


 村長たちが全員揃ったところでキングが説明を始めた。

 俺はその後ろに立っていたんだが、ゴブリン達にガン見されちゃってたよ。


(なあアダム、ベルミナに言ってさ。

 1時間後ぐらいに客を84人連れて行くから、中央棟のレストランに食事を用意しておいてくれって頼んでおいてくれるか。

 いつもの定食セットでいいから)


(畏まりました)



 キングが説明を続けている間に、いつの間にか初老の女性ゴブリンが10人ほど集まっていた。

 なんかみんなちょっと凝った衣装を身につけてるな。


「あなた。そのご視察なんですけど、わたしたち女衆長老会もご一緒させて下さいまし」


「お、お前たちも行くというのか……」


「ええ、一族の生活の場の確認は、我々女衆の仕事ですから」


「そうか…… その方がよかろうな」


(アダム、94人に訂正な)


(はい)



「「「「「 サトルさまぁ、治療が終わってみんな元気になったよー♪ 」」」」」


「おお、お疲れさん。ありがとうな」


「「「「「 へへー。みんなにもいっぱい、ありがとうって言われちゃったー♪ 」」」」」


「うん。お前たちはみんな大勢の役に立ってて偉いぞ」


「「「「「 わぁ~い! サトルさまに褒められちゃったぁー♪ 」」」」」


 はは、精霊たちがみんな俺に抱きついて来たよ。

 半信半疑だったゴブリンの村長たちも、これを見て納得してくれたみたいだ。


(それじゃあアダム、みんなの転移の準備をお願い出来るか。

 転移先は9時街の北門の前、ギャラリースタンドの入り口のところな)


(はい。それではみなさまのご準備が出来ましたら一声ご指示くださいませ)


「それじゃあみんな、そろそろ『転移』したいと思うんだけど、準備はいいかな。

 もちろんゴブラータ村長さんもどうぞ」


「うむ。ゴブルシアス、留守を頼んだぞ」


「ははっ!」


「みんなもう少し近くに来てもらえるかい。

 よし、それじゃあアダム、転移を頼む」


(畏まりました)




 すぐに俺たちは9時街の北門前に転移した。

 目の前には巨大な門がそそり立っている。

 あ、もう土の精霊たちが門を完成させてたのか。

 はは、ハイパージュラルミン製の門に、微笑んでるシスティの姿が浮き彫りにされてるよ。

 見事な出来だわ。


「おお…… ま、また場所が変わった……」

「な、なんという巨大な城門だ」

「それに城壁もまたでかいな」


「アダム、待機させていた悪魔っ子たちをここに呼んでくれるか」


(はい)


「う、うおっ! ま、また誰か現れたぞ……」


「サトルさま、お呼びでしょうか……」


「ああ、俺はこれからこちらのゴブリン・キングさんたち御一行に、この街をお見せして行くんだ。

 お前たちはそれについて来て、ご案内の仕方を覚えてくれ。

 そのうちに一般の見学はお前たちに任せるつもりだから、よく見てるんだぞ」


「「「「「 はいっ! 」」」」」


「それじゃあみんな、この坂を昇って上に行こうか。

 上に行くと街が一望出来るんだ。

 ご婦人がたは俺が一緒にお連れしますよ」


 俺は女性たちを驚かせないように30センチほど浮かべ、一緒に飛びながらスロープを昇って行った。

 ああ、みんなきゃーきゃー言って大喜びだわ。

 キングたちもおっかなびっくり後を昇って来ているようだな。


 俺は全員を案内して最上部中央のベンチに座ってもらった。

 目の前の街の全景を見てみんな黙っちゃったよ。


「えー、この街は最大で40万人収容可能だ。

 今はこの街ひとつだが、こういう街をあと11個造る予定になっている」


「これほどの街を作るのに何年かかったというのだ……」


「実は1日だったんだ。さっきの城壁造りとおんなじ要領だな」


「「「「「…………」」」」」


「それからもっと小さな農村も造るつもりだ。

 そうだな、2万人ぐらいの村を144個造る予定でいる」


 あーみんな口開けて黙っちゃってるわ。

 特に中央の塔の印象が強烈みたいだなあ。


「し、しかしだな。いくらこれほどの城壁があっても、周囲を包囲するほどのヒト族の軍勢が押し寄せて来たら……」


「そうだな、そうならないように、遥か彼方にも城壁は造っているんだが……

 もしあの城壁が破られて、ここが包囲されるとしたら、そのときは仕方が無いんでヒト族の軍隊には全滅してもらおうか」


「ど、どうやって……」


「おーい、アダム。全員に連絡。

 これより北の大地で戦闘デモンストレーションを行うので、大きな音とかするだろうけど、みんな驚かないようにって伝達してくれ」


(畏まりました。ただちに連絡いたします)


 そしたらさ、なんか街全体から小さいものが無数に飛び上がって来たんだ。

 すっごいたくさん。まるでカラフルな雲みたいに。


 あ、あれ精霊たちじゃないか……

 あ、悪魔っ子たちもいる……

 あの翼は! ローゼさまとエルダさま! システィもいる!

 もう5分もしないうちに、ギャラリースタンドは満員だよ。


「サトルさんの戦闘デモンストレーションなんて! 

 また読者大喜びですわ!」

「これは見逃せないのう。

 おやそうか、客人たちに見せて安心してもらおうということなのだの」

「サトルが戦うところなんか、訓練以外では初めてよね♪」



「な、なんだこの膨大な数の精霊さまたちは……」

「こ、子供たちまで……」


「の、のうサトル殿、あの背に翼をもった方々はもしや……」


「そうだ、お三方とも天使さまだ。

 いちばん小柄なのが、この世界の知的生命体を作ったシスティフィーナ中級天使だな」


「お、おお…… 祖先から伝わる我らが造物主、システィフィーナさま……」


「あ、キング、システィを知ってるんだ」


「も、もちろん存じ上げておるとも。我らが創世伝説の口伝にあるからの……」


「じゃあ後で紹介するよ。

 それじゃあみんな聞いてくれるかなー。

 今日はゴブリンのキングさんや村長さんたちが大勢来てくれたんだー

 みんな歓迎の拍手ーーーっ!」


「「「「「「「「 わぁぁぁぁぁぁぁ~っ! 」」」」」」」」

「「「「「「「「 パチパチパチパチパチパチパチパチパチ 」」」」」」」」


 はは、キングたちが照れながらお辞儀しとるわ……




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