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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
72/325

*** 72 ゴブリン族への移住勧誘 ***

 


 ゴブリン・キングはしばらくの沈黙の後にまた口を開いた。

 なんだか落ち着いたゆっくりとした話し方になって来ている。


「その平和な国の王は誰なのだ」


「王はいない。強いていえば代表はシスティフィーナ天使だ」


「そなたは?」


「そうだな。まあ単なる代表代行かな。

 なにしろシスティは、地上界の生き物に直接手を出せないからな」


「お前は各種族から女を集めてハーレムを作るのか?」


「いや、俺はハーレムなんか作る気は無い。それは女性への冒涜だと思っている」


(ぜひ作って欲しいのに……)


 フェミーナの呟きが聞えたが無視することにしよう……


 キングがちらりとフェミーナを見やって驚いているようだ。


「それでキング。

 もしよかったら、俺たちが作っている街を視察に来てくれないか?

 もちろんキングだけじゃあなくって、村長さんたちも大勢連れて」


「だがその街とやらは中央平原の中央部にあるのだろう。

 どんなに急いでも往復で3カ月はかかろう。

 わしらは今、ヒト族が攻めて来たときのために、こうして岩山の拡張工事をしておる。

 村を任せている村長たちも、食料の増産に追われておって、長期間村を離れるのは到底無理な話なのだ」


「俺たちは『転移』という魔法が使えるんで、街に行くにも1秒もかからないんだ。

 だから視察には1日あれば充分だよ。

 それにあんたほど優秀な指導者なら、そのぐらいの留守を任せられる部下を育てていないはずがないだろ」


「な、なんだと…… 1日だと……」


「キングさぁ、それ本当みたいなんだぁ。

 このお方たち、急に消えて急に現れたりなすっただあ。

 それにおらの村からここまで本当に一瞬で連れて来てくださっただよ」


「そ、それに主だった村長たちを集めるのにも時間がかかるぞ。

 どんなに急いでも10日は……」


「それについても心配は要らない。

 キングの部下を何人か連絡用に用意して欲しい。

 その部下たちを『転移』で村まで送って、村長さんを連れてまた『転移』で帰ってくればいいからな。

 おいアダム」


(はい)


「この辺り半径500キロほどの地図を用意してくれ。

 そこにゴブリン集落らしき場所を赤く表示してプリントアウトして出してくれ」


(はいサトルさま。どうぞこちらに)


「おお、早いな。

 キング、この地図を見てくれるか。

 視察に連れて行きたい村長たちのいる村を示してくれれば、後はそこに連絡係を転移させて連れてくればいいだろう」


 俺はペンも転移させて来て、地図と一緒にキングに渡した。

 地図を持つキングの手がぷるぷると震え出している。


「こ、これは…… 

 わしらゴブリンの村がどこにあるのかが一目瞭然ではないか……」


 まあ、初めて地図を見たらびっくりするか。



 キングが真剣な表情で俺の目を見た。

「それにしても、もうひとつ不安がある。

 しばらく前だったが、平原の中央の方から凄まじい殺気が押し寄せて来たことがあった。

 おかげでほとんどのゴブリンが気絶してしまったし、このわしですらも立っているのがやっとだったのだ。

 おまけに大地すら揺れおったしの」


 あ、フェンリル達や精霊たちが俺のことジト目で見てる……


「あのような『恐ろしいモノ』がいるならば、果たして東に逃げても安全かどうか……

 オーガ族ですら半数以上が気絶したそうで、あまり東には行けないので南東方向に移住しようとしておるほどだった。

 お前たちは平原中央部から来たそうだが、あの『恐ろしいモノ』について何か知りえることは無いか?」


 俺は助けを求めてフェミーナを見やった。

 フェミーナがくすくす笑いながら説明を始める。


「大丈夫よキングさん。

 あの『恐ろしいモノ』は、わたしたちフェンリル族に頼まれて、『耐威圧訓練』をしてくれたの。それでわたしたちの前で『威圧』を出してくれただけだったのよ。

 でも『威圧』を出すのが初めてだったんで、加減が分からずにあんなことになっちゃったのね。

 すぐ傍にいたわたしたちなんか、全員気絶して、しかも何百メートルも吹き飛ばされちゃって…… 精霊さんたちが千人以上も来て助けてくれたのよ」


「あ、あれが『訓練』だったというのか……」


「ええ、あの『恐ろしいモノ』は、誰も傷つけるつもりは無かったの。

 単に頼まれたから『威圧』を出しただけだったのよ。

 しかもそのあと、地面に頭を埋め込みながら、『ごめんなさい、もう2度としません』って謝ってたし。普段はとっても優しいいい『モノ』なのよ。

 フェンリルの子供たちもすっごく懐いてて、私たちの『街』に来たときには子供たちに囲まれちゃってたいへんなんだから」


「そうか…… それにしても、それはどのような『モノ』なのだ?」


 あ、フェミーナ、ドヤ顔になっとる……


「ご自分の目でとくとご覧くださいな。

 今キングさんの目の前に座っているから……」


 あ、キングが仰け反った……


「「「「「「 あのときは大変だったよねー♪ 」」」」」」

「「「「「「 みんな倒れちゃってて動かないし、心配しちゃったよー 」」」」」」

「「「「「「 でもサトルさん、もうアレしないって言ってたよー♪ 」」」」」」

「「「「「「 よかった♪ よかった♪ 」」」」」」



「こんな遠くにまで迷惑が及んでいたんだな……

 す、済まない。もうあんなことはしないから許して欲しい。

 それからオーガ族やオーク族や他の種族のみんなにも、あれはそんなに恐ろしい『モノ』じゃあ無いって言っといてくれるとありがたいんだが……」


「さ、さきほど『隠蔽』を解けないと言ったのは、そういうことだったのか……」


「あ、ああ、それにこの力は神さまにもらったものなんで、まだ使い方に慣れてなかったんだよ」


「か、神にもらっただと……」


「そうなんだ。この世界に平和な国をもたらすために、神が俺に授けてくれた力なんだ。

 だから別に俺自身の力じゃないんだけどな」


「……………………」



 キングが後ろの部下たちを振り返った。

「連絡係を82人用意しろ。

 そうしてゴブリン・ジェネラルが村長をしている村に派遣して、キングの依頼だと言って村長を全員連れて来るのだ」


「はっ!」


「それではしばしお待ちいただけるかの」


「それじゃあその間にこの岩山の防備を固めようと思うんだがいいかな?」


「どういうことだ?」


「うん。この岩山の周囲を城壁で囲もうと思うんだ。

 そうすればキングも留守中安心だろ」


「な、なんだと……」


「かまわないかい?」


「あ、ああ……」


「それじゃあアダム。

 この岩山を囲む直径8キロほどの城壁を造ろうと思うんだが、建設用地の選定を頼む。

 それからいくらかの木も生えてるみたいだから、土の精霊と植物の精霊を50人ほど呼んでくれるかな」


(かしこまりましたサトルさま)



 しがらくすると精霊たちが現れた。


「「「「「「 わぁ~い、サトルさまぁ♪ なにかお仕事ぉ? 」」」」」」


「今アダムが円周内の木に赤い布をつけてくれるから、その木たちを円の外側に移植してやって欲しいんだ。

 肥料と例の水も頼んだぞ」


「「「「「「 はぁ~い♪ 」」」」」」


「せ、精霊さまたちがこんなにたくさん……」




 まもなく俺の視界に岩山を囲む直径8キロほどの白い線が見えるようになった。


「魔法マクロを組む必要までは無いかな。

 それじゃあアダム、1000万立方メートルほどのマナ建材を転移させといてくれ」


(はい)



 城壁建設予定地の外側に、音をたててマナ建材が積もり始めた。

 はは、精霊たちも木の移動が早くなってるわ。

 もう随分と慣れたんだね。


「サトルさま、木の移動が終わったよー♪」


「お疲れさん。システィの天使域に戻ってケーキでも食べて休んでてくれ」


「「「「「「 わぁ~い♪ 」」」」」」


「ちゃんと手を洗ってからだぞー」


「「「「「「 はぁ~い♪ 」」」」」」



 キングはそんな俺と精霊たちのやりとりを、真剣な表情で見ていたよ。

 さて、それじゃあ俺は城壁建設予定地の土台づくりを開始するか。



「アダムの指定した白線部分を、幅50メートル深さ50メートルに渡ってくり抜き、くり抜いた岩石は倉庫に転移させよ。

 同時にくり抜いた穴にはマナ建材を充填し、液化して地盤の岩石と融合させた後に固化せよ。

 上面は水平を保つよう留意せよ」


 岩山の周りに、突如として巨大な輪状の岩塊が浮き上がったと思うと、すぐに消失した。

 同時にマナ建材が音をたてて岩塊があった穴に吸い込まれていく。

 まもなく穴がまっ白い砂で埋まったかと思うと、たぷんと液状化した後に固化した。


 よし、それじゃあ次行くか。


「今完成したマナ建材製土台の中央線に沿って、マナ建材で厚さ20メートル、高さ50メートルの城壁を構築せよ。

 城壁と土台は完全に融着させよ。

 また、城壁の上部のフチは、R1メートルでテーパーせよ」


 またもや大量のマナ建材が浮かび上がり、みるみる城壁を構築していった。

 うん。これぐらいの城壁だったらもう一度に造れるようになったか。

 体内マナも10%も減って無いようだな。

 はは、俺も進化したもんだぜ。

 そうだ、ついでに建物も作っておくか……


 俺は城壁内部の平坦な地域の半分ほどを『液状化』してから固化し、そこに街を作ったときの魔法マクロで、底面50メートル×80メートル、高さ5階建てのビルを20棟ほど建てていった。

 これだけあれば、当面大丈夫だろう。

 つめれば1棟に5000人は入れるからな。


 ああそうか、ついでに少し畑も用意するか。

「開いたスペース5平方キロほどに、肥料を混ぜた腐葉土を厚さ2メートルほど転移させよ」


 すぐにどこからともなく現れた土がどかどか降って来て積もっていった。


 さあ、最後に城門を造って完成かな。


「なあ、キング。城門は1カ所でいいかな?

 その方が出るには不便だけど守りやすいと思って」


「……………………」


 あー、聞いてないよこのひと。

 大口開けて城壁見てるだけだわ。

 まあいいか、小さめの城門でも作るか。

 実際には穴開けるだけだけど。門自体はゴブリン達が好きに造るだろう。

 穴の脇には四角い石材でも用意しておいてやるか……




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