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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
71/325

*** 71 『岩山のゴブリン・キング』 ***

 


 1時間もしないうちに村長が帰って来た。

 後ろには歓迎要員なのか警戒要員なのかはわからんが、10人ほどの黒っぽいゴブリンが続いている。

 みんな腰にナイフや剣を差してはいるが、それを抜こうとする者はいないようだ。


「お待たせしますた。あちらでキングさぁがお待つすてますだ」


「それじゃあみんな、キングさんに会いに行こうか」


「それならサトルさん、私の背中に乗ってくれるかしら」


「え?」


「ふふ、私たちの大将を徒歩で行かせるわけにはいかないわ」


「い、いいのか?」


「ええ、もちろん。一度あなたを背中に乗せてみたかったのよ」


 俺は言われるままにフェミーナの背に跨ってみた。

 おお、なかなかカッコいいじゃん、俺!


「あー、フェミーナお姉さまだけずるーい!

 ねえねえサトルさん。後でわたしの上にも乗ってね♪」


「わたしもわたしも!」


「あなた、背に乗せるのはフェジールくんだけって言ってたのに」


「だってぇ。

 フェジールったらサトルさんの威圧でまっ白になっちゃったしぃ。

 それにサトルさんの方が強くてカッコいいんだもの♪」


(あの…… 『背に乗せる』ってそういう意味もあったんですね……

『子作りの練習』的な意味が……

 それにしても、フェジールくん…… 哀れ……)



 なんか護衛要員の黒っぽいゴブリンたちも、びっくりしてたみたいだな。

 どうやらフェンリルが背中に乗せてくれるっていうのは、破格の名誉でもあるみたいだ。


 お、少し森が開けてきたか。

 おお、まさしく岩山だ。こんな森の中にいきなり岩山があるなんて珍しいな。



 その場には大勢のゴブリン達がいて、なにやら忙しそうに働いているようだった。

 或る者は岩山に開いた横穴の中から籠に入れた石を持ち出し、石置き場に石を置いてはまた穴の中に帰って行っている。

 また別のゴブリンはその石も使って、別の入り口を塞ごうとしているようだ。


 そして…… 唯一大きく開いた穴の外には小屋が建っていて、その前に真っ黒なデカいゴブリンが茣蓙の上にあぐらをかいて座っていたんだよ。

 うん。ほんとにデカいわ。

 こいつ2メートル30センチはあるんじゃないか?

 腕も足も筋肉で盛り上がってるし。


 俺はまたそいつをこっそり鑑定してみた。


 名前:ゴブルーン

 種族:ゴブリン

 階級:ゴブリン・キング

 性別:男

 年齢:48

 総合レベル:40

 幸福ハピネスポイント:322,354

 罪業カルマポイント:425(内正当防衛425)

 E階梯:5.5


 称号:中央地区ゴブリンの統率者

 スキル:『統率Lv28』『両手剣技Lv32』『体術Lv35』『威圧Lv38』『狩猟Lv18』『農耕Lv22』



 ふむ。これだけ見てもわかるな。

 部族を守るために必死で戦って、それでキングにまで進化したんだろう。

 それに幸福ハピネスポイントを見れば、村長が「ここ300年で最高のキング」って言ってたのも頷けるわ。

 E階梯も5.5もあるしな。



 俺たちはゆっくりとキングに近づいて行った。

 あと50メートルほどのところでフェミーナから降りると、礼の代わりに耳の後ろを撫でてやる。

 はは、また頬をペロンって舐められちゃったぜ。

 なんかそれ見てキングも少し驚いてたみたいだ。

 それに俺の周りには10人の精霊たちが飛んでいるしな。

 はは、両肩に2人ずつ座って、頭の上にも1人座ってら。


「お初にお目にかかる、キング。

 俺は創造天使システィフィーナの使徒をしているサトルという者だ」


「わしはこの辺り一帯のゴブリンたちのおさをしておる、ゴブルーンという。

 それにしても…… 

 本当に精霊さまたちやフェンリルさままで従えておるのだのう」


「いや、従えているんじゃないんだ。

 こいつらはみんな大事な俺の『仲間』なんだよ」


「「「「「 えへへ~、仲間仲間♪ 」」」」」


 はは、またフェミーナにほっぺ舐められちゃったぜ。

 あ、精霊たちもほっぺ舐めに来た……


「と、ところでキング。この村に病人やけが人はいるかな?」


「最近だいぶ無理をして皆働いておるので、具合の悪い者も多いが……」


「それじゃあまず、光の精霊たちに治療をしてもらおうか。

 お前たち、頼んだぞ」


「「「 はぁ~い♪ お仕事お仕事♪ 」」」


「おい、光の精霊さまたちを治療院にお連れしろ」


 後ろに控えていた黒っぽいゴブリンが一礼して光の精霊たちを岩山の中に連れていった。


「ふむ」


 ああ、俺に振り返ったキングの目から少しだけ警戒感が薄れたようだ。

 だがまだ相当に警戒されてるな。


「すまんが今岩山の中は工事中でな。客人に座ってもらう場所も無いのだ。

 わしの家はご覧の通り狭過ぎて全員で入ることも出来ん。

 この場で話をさせてもらってもかまわんだろうか」


 キングが指差した『わしの家』を見て、俺は驚いた。

 これ、まるで見張り小屋じゃん……

 そうか、このキングって、自ら岩山の入り口付近に自分の家を建てて、見張りも兼務してたのか……


「もちろんかまわんさ。

 忙しい中突然訪れたのは俺たちの方だからな」


 俺はキングの前10メートルほどのところに用意された茣蓙の上にやはりあぐらをかいて座った。

 そのとき、老境に差し掛かりつつあるゴブリンの女性が、俺たちの前に茣蓙とお盆を置き、綺麗な土器に入った飲み物を置いたんだよ。


「粗末な茶で申し訳もございませんが……

 ゴブルーンの妻でゴブフィリンナと申します。

 今日は遠路はるばるようこそお越しくださいました」


「いえ、どうもありがとうございます。

 こちらこそお忙しい中、ご対応いただきましてありがとうございます」


 そうか…… 300もの村を束ねるキングが、こんな小屋に住んで、奥さんもひとりしかいないんだな。

 その気になれば豪邸に住んで若いゴブリンでハーレムも作れるものを……

 これはゴブリン達が尊敬しているのも当然だな……


 俺の中でこのキングに対する評価が爆上がりして行った。

 そうして俺は茶の好意を受け入れたことを示すために、すぐにそれを丁寧に頂いたんだ。

 おお、けっこう香り高いいい茶じゃないか……

 これ俺たちの街にも欲しいな……


 そんな俺を見て奥さんも微笑んでたよ。



「キング殿、すまんが俺は今、わけあって『隠蔽』という魔法で実力を隠しているんだ。

 これを解くと、いろいろと問題があるんで許してくれないか」


「ふふ、それ本当なのよ。

 この前サトルさんに頼んで、わたしたちフェンリル一族の前で『隠蔽』を解いてもらったんだけど、それだけで一族500頭のうち半分が気絶しちゃったんだもの」


「ふ、フェンリルさまを気絶させただと……」


「でも安心して。

 このサトルさんって、ウチのボスと同じ器の飲み物を飲む仲なの」


「そうか……」


「それでキング、もうひとつお詫びをしなきゃならんことがあるんだが」


「聞かせてもらおう」


「実はこの大森林や中央大平原のマナが急速に薄れ始めたのって、俺のせいなんだ」


「なんだと……」


「実は本来マナの噴気孔って、北の大山脈の山頂付近にあったんだよ。

 それが事故で塞がっちゃってたんで、中央平原に穴が開いてそこから高濃度のマナが噴き出すようになっちゃってたんだ。

 おかげで中央平原はフェンリルみたいな強い生き物しか住めなくなっちゃってたし、ヒト族も濃過ぎるマナのせいで異常に凶暴になっちゃってたんだ」


「そうか……」


「それで、俺たちが神さまに頼んで、その噴気孔を元通りに山の上に戻してもらったんだ。

 まあ、それが本来の姿だとはいえ、おかげで大森林のみんなをヒト族の脅威に晒すことになってしまったのは本当に申し訳なく思っている。

 それで、お詫びにというのもなんだが、俺たちはみんなが安心して住める国を中央平原に造ろうとしているんだ。

 絶対にヒト族が攻めて来られないような国をな。

 だからもし移住を検討しているんだったら、俺たちが造った街へ移住して貰えないかな」


「ふふ、移住種族第1号は、わたしたちフェンリル一族だったのよ。

 最初はちょっと不安だったんだけど、いまではみんなすごく喜んでるわ」


「話はわかった。

 だがこれにはわしら一族9万のゴブリンの運命がかかっておる。

 おいそれと信じるわけにはいかんのだ。

 それに、ここより東のオーク族やオーガ族までもが、東への移住を検討しておったわ。

 オーガ族ほどの強さを持つ連中ならばヒト族にも勝てようが、戦ばかりの暮らしを嫌って、東への移住を決めたそうだ。

 わしらは今の連中のテリトリーに移住させてもらえる方向で話がまとまりつつあるしの」


「だが、実はもう、中央平原にはマナが濃い場所がどこにもないんだ。

 だからこのままではヒト族は平原全体に押し寄せて来るだろう」


「…………」


「それにあんたの思うことももっともだ。

 一族の長たるものが、こんな初めて会ったヒト族の若造の言うことを信じられないのは当たり前だ。というより信じる方がどうかしていると思う。

 だがこれだけは信じて欲しい。

 俺はシスティフィーナ創造天使に召喚されて、別の世界からやってきたヒト族なんだ」


「別の世界だと……」


「そうだ。その世界は、土地も気候も生き物も、この世界とは全く違うんだ。

 そうして、システィフィーナ創造天使が、この世界に平和な国を造らせるために、若くして死んだ俺を生き返らせてこの世界に連れて来たんだよ」


 キングはなんだか考え込んでいるようだった……




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