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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
69/325

*** 69 川を跨ぐ城壁の建設 ***

 



 俺は塩作りをさせていた悪魔っ子たちの第1班をキャラバンチームに回した。

 子供たち5人のチームを10チームほど作り、これに光の精霊と土の精霊と植物の精霊と、護衛兼対話役のフェンリルを3頭配置した混成チームだ。

 塩は今度俺がまとめて作るか。


 まあ、キャラバンとは言っても、アダムたちの監視能力があるからさ。

 なんか生物がいっぱい固まって暮らしてそうなところを狙って転移すればいいから、それほど広範囲の捜索活動も必要無いだろう。


 彼らには大森林西部の種族の集落を巡って、住民たちに『9時街』への移住を勧めてもらうことにしている。

 悪魔っ子たち以外はみんな各種族とは面識があるみたいだから、説得の効果に期待しよう。




 翌日、城壁チームの監督をさせていたベギラルムから連絡が来た。

 どうやら建設予定地が川を横切る部分に差し掛かったらしい。

 川の部分は後で俺が壁を作るので、なにもしなくていいとは言ってあったが、念のために連絡してきたようだ。

 また、その先にはまだ疎らながら、樹木も見られるようになっているとのことだった。

 俺は取りあえず現地に飛ぶことにした。


「ご足労をかけて申し訳ございませぬ」


「いやぜんぜんかまわんさ。

 それじゃあ川を跨ぐ部分を作ってみようか。

 お前たち、それを見てみたかったんだろ」


「はは、図星でございますな」



 俺は上空に行って川を観察した。

 周囲の大地から15メートルほど下った谷間を、幅20メートル程の谷川が予定城壁の外側から内側にかけて流れている。

 周囲に誰も住んでいないせいか、随分と綺麗な川だなあ。

 だが、すまないけど、長さ150メートルほど自然破壊をさせてもらうよ。


 俺は城壁が川を横切る部分の左右150メートルほどを削って、水路を作り始めた。

 川底の石を練成で液状化してから、断面がコの字型になるように形を整えていく。

 足りない部分はマナ建材を使用した。

 出来上がった元の川よりはやや広い水路に、川の水が浅く滔々と流れている。


 次に水路の上流部分に水路と同じ幅の穴を『岩石練成』で掘り始めた。

 穴の深さが20メートルほどになったところで、川の向きと同じ方向に横穴を掘り始める。その横穴が城壁予定地を超えた辺りから向きを上向きにし始めて、水路の下流部分に繋げるんだ。

 さあ、これで迂回水路の完成だな。少し水路の中を滑らかにしておくか。


 はは、川の水が轟々と音をたてて穴に吸い込まれて行って、また下流の穴から湧き出してるわ。なんか不思議な光景だよ。


 次は水路入り口部分のガードだ。

 まずは入り口の上流側に直径10センチ、深さ50センチ程の穴を100個ほど掘った。間隔はそれぞれ10センチほどだ。

 その穴にマナ建材を練成して作った、同じく直径10センチ、長さ3メートルの棒材を埋め込んで、『練成』で水路と融合させる。

 そこに液状のマナ建材を浮かせて行って、水路に厚さ1メートルほどの屋根を作り、棒材とも融合させてガード部分の完成だ。


 さて、次は水の流れなくなった水路の上に、幅50メートルの壁を形成する。

 これを大地と同じ高さになるように上に伸ばし、最後にさっき作ったガードの屋根部分とも繋ぎ合わせて、川をまたぐ城壁の土台の完成だ。

 へへ、俺もこういう作業が上手くなったもんだぜ。


「「「「「「「「 わぁーっ!!! 」」」」」」」」

「「「「「「「「 ぱちぱちぱちぱち…… 」」」」」」」」


 はは、悪魔っ子たちも喜んでくれてるわ。



「いやはや、まったくお見事なものですな。

 1時間とかからずにこのような大工事を為してしまわれるとは……」


「いやこれ、けっこう保守もたいへんだと思うんだよ。

 なあアダム、流木や大量の土砂なんかが流れて来て、水路が塞がっちゃって洪水が起きそうになったら教えてくれるかな。

 俺が転移して来て掃除するから」


(かしこまりましたサトルさま。

 ですが、もしよろしければ、ガード部分の上流側の川底に大きめの『転移の魔道具』を埋め込んで頂けませんでしょうか。

 そうすれば、サトルさまのお手を煩わせることなく、わたくしが簡単に障害物を取り除けますし)


「おお! ナイスアイデア! さすがだなアダム」


(お褒めに与り恐縮でございます……)


「あれ? っていうことは、そもそもこんな水路トンネルなんか必要無かったのかな?

 単に川の中に棒をいっぱい立てて、その上に橋脚を作ればよかったんじゃ……

 侵入防止棒の前に『転移の魔道具』を置いておけば、流木はアダムが処理出来るだろうからさ」


(いえ、サトルさま。残念ながらその方法では、橋脚を支えるガード棒材の強度が不十分になります。

 また、ガード棒材の数を増やしたり径を太くすると、今度は増水時の水量を捌き切れず、洪水が起きてしまうでしょう。

 ですから今の方法がベストと思われますです)


「なるほど、さすがはアダムだな」


(再度お褒めに与り恐縮でございます)


「ところでさ、これから先の城壁建設予定地って、けっこう木が生えてるだろ。

 それ、50メートルごとの【大地移動】の境界線上にある木に、印をつけることって出来るかな?」


(それではわたくしが赤い布でも転移させて木に結び付けておきましょう)


「その印のついた木は、土の精霊と植物の精霊をペアにして、土ごと浮かせさせよう。

 その浮かんだ木は、取りあえずアダムが時間経過無しの倉庫に運んでおいてくれるか。

 あとで街の街路樹にでもするから。

 そうすれば、無残にも縦に真っ二つにされた木とか見なくて済むだろうからな」


(かしこまりました。木に対してもお優しいのですね)


「あ、ああ、この前、大量に木を枯らしちゃうところだったし……」




 この作業さ、あとで視察してみたんだけど、実に面白かったよ。

 赤い布が結びつけてある木に、植物の精霊が手を当ててなにやら話しかけてるんだ。

 そうしてしばらくすると、にっこり微笑んで木をぽんぽんって安心させるように叩いてるんだな。

 そうすると今度は土の精霊が根の周りの土ごと木を持ち上げるんだ。

 それがアダムの倉庫に転移されてふっと消えると、また次の木に向かって話しかけ始めるんだよ。

 やっぱ植物の精霊って、木とも仲がいいんだなあ……



 そのうちに結構な量の木が溜まっていったんで、アダムに大きさ順に並べてもらって、9時街の大通り沿いに穴を掘って、土と一緒に街路樹として植えて行ったんだ。

 移植されたばかりの木の根元には、植物の精霊が例の風呂の残り湯の10万倍の希釈液をかけていたよ。

 どうやらあれが移植のご褒美だったらしいわ。


 ついでにマナ建材で大量のプランターも作って、街路樹の間には花壇も作らせたんだ。

 へへ、なんかいい感じに街になって来てるよなあ。

 そうして、花壇の周りにはいつも植物の精霊の子たちが飛んでいて、楽しそうになにやら花とお話ししながら世話をしてるんだよ。

 はは、お父さんやお母さんの仕事を手伝ってるんだな。





 或る日、各地のキャラバンに参加させていた悪魔っ子たちを見ていたら、なんだか疲れた顔をしてたんだ。

 だから優しく感想を聞いてみたんだよ。

「いろいろな種族と触れあってみてどうだった?」って……


「あの…… 

 最初はどの種族の方も、精霊さんたちやフェンリルさんを見て大歓迎して下さるんです。

 病人や怪我人はすぐに治りますし、畑の作物もみるみる大きくなりますから。

『フェンリルさまがいて下されば、この一帯も安心だ』とかも言ってますけど。

 でも……

 私たちが新しく安全な街を作ったんで、もしよかったら移住してみていただけませんか、って言うと、途端にみなさん黙っちゃうんです。

 みんなで顔を見合わせたりして……

 わたしたちでは誠意が伝わらないみたいなんです。

 本当に申し訳ございません」


「はは、なんだそんなことを思ってたのか。

 そんなこと、ぜんぜん気にする必要はないんだぞ」


「そ、そうなんでしょうか……」


「これでお前たちのおかげで、彼らは『安全な街に移住』という選択肢を得たんだよ。

 初めてそんなこと言われたら戸惑うのは当然のことだ。

 なにしろ今まで住み慣れた土地を離れるんだからな。


 でも、彼らも周囲のマナが薄れ始めていることはよくわかっているんだ。

 これからはヒト族が大森林に侵入して来るかもしれないっていうことも。

 西風の強い日なんかには、ふとヒト族の匂いが村に届くこともあるだろうしな。

 そのときに、お前たちのことを思い出すんだ。


 つまりお前たちは今種を播いていてくれてるんだ。

 そうしてその種は彼ら住民たちの中で順調に育っていると思うぞ。

 こういう心理は、仲が良かったり近くに住んでいた種族が移住を始めると、一気に育つものなんだ。

 ましてや移住したヤツに感想を聞いたりすれば尚更だな」


「そういうもんなんですか……」


「ああ、そういうもんなんだ。

 それにお前たちは種を播いているところだって言ったろ。

 播いてすぐに実がなるわけないからさ。

 だからぜんぜん心配する必要は無いんだぞ」


「は、はい。なんだか少し心が軽くなりました」


「はは、少しじゃあなくって大いに軽くして、明日からもたくさん種を播いて来てくれ」


「「「「「「「「 はいっ! 」」」」」」」」




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