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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
57/325

*** 57 悪魔っ子たちの里帰り…… ***

 


 或る日の夕食後。


「なあ、ベギラルム。そういえば、悪魔っ子たちって里帰りしなくていいんか?」


「は、はあ。実は任務も訓練も忙しいために言いそびれておったのですが……

 初級悪魔の初めての任務の場合、そろそろ里帰りの時期でありまして……」


「ダメだよベギラルム。そういうことはちゃんと言ってくれなきゃ。

 俺はお前たちの習慣とかほとんど知らないんだから」


「も、申し訳ございませぬ……」


「それでふつーは何日ぐらい帰るものなんだい?」


「は、はい。交代で2~3日ずつ帰るのが一般的でございますが……」


「たったの2~3日か。それじゃあ少ないだろう。

 よし! 全員に1週間の里帰り休暇を与えるから、みんなで帰ってこいや」


「そ、そんなに長期間…… よ、よろしいのでございましょうか……」


「もちろん。みんなそれだけの働きはしてるからな。

 もちろんお前も一緒に帰っていいぞ」


「いやまあそれがしは構いませぬ。待っているひともいるわけでなし……

 口うるさい長老や父親と母親がおるだけですので」


「いやまあ引率だよ。お前はやつらの責任者なんだから、連れて帰るのは当然だろ」


「はあ……」


「そうそう。聞いてみようとは思ってたんだけど、お前ってもう大悪魔になってるだろ」


「ええ、すべてはサトルさまのおかげでございますが」


「じゃあお前ってヨメや子供はいないんか?」


「い、いえ。悪魔族はヒト族とは異なりまして、必ずしも子供の母親と一緒に暮らすわけではございませんし。それにそれがしにはまだ子がおりませぬ」


「そうなのか? お前みたいな立派な悪魔ならモテそうなものなのに」


「はは、実はそれがし、悪魔界でも顔が極端に怖い方でございまして……

 あまり女子おなごが近寄って来てくれぬのですよ」


「そ、そうか……」


(あー悪いこと聞いちゃったかな。

 ベギラルムのしっぽがへにゃりって垂れ下がっちゃったわ……)



「と、ところでさ。やつらに持たせてやる土産ってなにがいいかな」


「と、とんでもございませぬ。1週間もの帰省休暇を賜った上に土産などと……」


「いや、俺が土産を持たせれば親御さんも安心すると思うんだよ。

 それに、今はエルダさまのおかげでカネにもモノにも困って無いし。

 そうだ。やつらにアンケートを取ってくれや。

 全員強制で、土産に持たせて欲しいものを最低3つ書かせてくれ。

 お前、余計なこと言って遠慮させるなよ。これは命令だ」


「はは、サトルさまに『ご命令』を頂戴したのはこれが初めてですな。

 初のご命令がこのようなものになるとは……

 さすがは『爆撒英雄サトル』さまですなあ……」





 さて、それでは発表しまぁ~す。

 悪魔っ子たちが里帰りにお土産に持って帰りたいものベスト5!


 第5位は…… 精霊たちも大好きゲームでしたあ!

 意外だな。これ1位か2位だと思ってたんだけど。


 第4位は…… 故郷の街や村の小さな子たちに子供服でした!

 これも意外だわ。まあ1位か2位に来るとは思ってたけど、4位か……


 第3位は…… おじいちゃんやおばあちゃんへのお土産に、暖かい服か……

 これちょっとうるって来ちゃったよ。

 どうやら悪魔界って少し寒冷な気候らしいんだ。

 それで、この天使域の子供服売り場に置いてある暖かそうなコートとかダウンジャケットとか見て、おじいちゃんやおばあちゃんにも着せてやりたかったんだと。

 ほんにええ子たちやのう。

 よし! 地球に各種サイズダウンジャケット2000着緊急注文だ!


 第2位は…… ケーキ。これはまあ妥当だろう。知り合いの小さな子たちに食べさせてやりたいそうだ。ようし、山のように持たせてやろうじゃないか!


 そして第1位は!


 これさ。マジ意外だったんだよ。こんなもん考えもつかなかったよ。

 得票率100%で全員が里帰りにお土産に持って帰りたいもの……

 それは、「各自が俺やシスティやローゼさまと一緒に写っている写真」だったんだ……

 なんかこれも嬉しくってうるうるしちまったぜ。

 もちろんシスティもローゼさまも感激してたけどな。



 翌日の夜、仕事が終わってからさっそく撮影会だ。

 ソファに悪魔っ子が座って、その両脇にシスティとローゼさまが座る。

 そしてソファの後ろに立った俺が悪魔っ子の肩に手を置いて、みんなで微笑んでいる写真だ。

 大きくプリントアウトした写真には俺たち3人のサインもせがまれちまったぜ。

 撮影には全部で3晩もかかっちまったけど、その間に子供たちはメールで里帰りの予定を故郷に伝えているようだった。

 みんな楽しそうにきゃっきゃしてたよ。


 彼らと撮った写真は、俺が作ったマナ建材製の額に入れてやったんだ。

 まあ美麗な額をデザインしたのはノームくんで、俺はそれをコピペしただけだけど……

 ガラスも俺たちが抽出した資源で作って、俺が練成したものだ。

 もちろんほぼ割れない超強化ガラスな。


 ついでに各自に大きなフロートカートも作ってやった。

 マナ建材製の箱に『浮遊の魔道具』と『移動の魔道具』と、新開発の『冷蔵の魔道具』と『時間停止の魔道具』を張り付けたやつ。

 これ優れモノなんだぜ。

 魔力登録したやつの後ろをふよふよ浮かんでついて行くんだ。

 障害物があっても勝手によけるし。

 ついでにケーキが潰れないように、『慣性吸収の魔道具』もつけたんだ。

 俺、そんなもんまで作れるようになったんだなあ。


 そうして悪魔っ子たちは、各自ゲーム機10台と、子供服30着と、ダウンジャケット4着と、ケーキを100個持って帰って行ったんだ。

 胸には綺麗に包んだ写真の額を大事そうに抱えてな……



 それからの1週間は、なんかガイアにぽっかりと穴が開いたみたいに寂しかったよ。

 システィも精霊たちも、それからフェミーナまで元気なかったし。

 もう彼らも欠かせない大事な仲間になってたんだなあ……



 1週間後……

 彼らは元気いっぱいに帰って来た。

 里帰りは楽しかったらしいな。よかったよかった。


「なあベギラルム。帰省は楽しかったか」


「いやもうたいへんでございました……」


「なにがそんなにたいへんだったんだ?」


「それがですな。まず、異世界間転移ゲートをくぐった途端に、転移ポートがたいへんな数の悪魔で溢れていたのでございます。

 TVカメラやライトの数も群衆の声も驚くべきものでした」


「ふーん。有名人の帰郷と鉢合わせでもしたんかね?」


「ええ、それがしもそう思いまして、すぐに端の方にどこうとしたのですが……

 それがなんと我々の里帰りを歓迎する群衆だったんですわ」


「なんだと……」


「いや、子供たちは親と連絡を取ったりして知っておったらしいのですが、それがしはまったく存じておりませんでした。

 あのローゼマリーナさまの『ガイア観察日記』は、神界だけでなく悪魔界でも公開されておりまして、超絶大人気になっておったのですわ」


「!」


「なにしろ『ガイア観察日記』には、たくさんの映像が添付されておりますですからの。

 その多くにそれがしやあの子たちが映っておるものですから、もう皆悪魔界中の人気者になってしまっておったのです。

 いや驚き申した」


「!!」


「おまけにその日の悪魔界は、英雄サトルの使い魔たちの里帰りを歓迎する行事のために、祝日になっておったのです……」


「!!!」


「転移ポートでは、全員そろって記者会見ですわ。

 それがし、突然スピーチを要請されてえらく汗をかき申した。

 さらになんと、転移ポートから首都までは、オープンカーに乗ってのパレードが用意されておったのです。もう驚くやら呆れるやら……」


「…………」


「首都では行政府の長と、各街の長老たちが総出で出迎えてくれましての。

 その場でせがまれて子供たちのお土産も広げさせられたんですが、もうゲームも服もケーキも、出すたびに盛大などよめきですわ。

 しかもフロートカートまでもがサトルさまのお手製だと知れるや、大変な騒ぎになり申した。長老たちのほとんどが大泣きし始めましたし。

 行政府に飾りたいのでひとつ譲ってくれと言われて、仕方無しにそれがしの分を置いて参りましたが……

 さらに、あの写真を皆に見せてやったときの大歓声は凄まじいものがありましたな。

 しかも額までもガイア産の素材でサトルさまのお手製とあってはもう……」


「………………」


「その後、子どもたちは各自それぞれの故郷の街や村に帰ったのですが……

 ほとんどの子供たちのサトルさまたちと一緒に写った写真が、その地の神殿に飾られたそうでございます。いやはやまったく……

 そうそう、あのフロートカートは、神界の神々からもいくらでも出すから譲ってくれとの引き合いが来たそうでございますな」


(悪魔界も神界もヒマなのかな…… あ、またエルダさまから黒オーラが……)


「ところでサトルさま。このベギラルム、折り入ってお願いがございます……」


「なんだ改まって……」


「実は…… 故郷の村で長老や重役たちに取り囲まれまして……

 それがしに縁談が殺到したのでございます……」


「おお!」


「そ、その中でも、小さいころから遊んでやっていた長老の孫娘で馴染みの女子おなごが、いつのまにやら立派に成人しておりまして、去年めでたく中悪魔にも昇進しており申した…… 

 ま、まあ、あまりにも才色兼備な上に、長老の孫とあっては、それがしなぞには高嶺の花と諦めておったのですが……

 長老もその娘も、是非ともそれがしとの間に子が欲しいと、その……」


「おお!よかったじゃないか!

 そうか! 幼馴染だからお前の顔もそんなに怖いとは思われなかったんだな!」


「そ、それでですね。その娘が申すには、ぜひサトルさまのようなヒト族の風習にのっとって、それがしと一緒に暮らしたいというのですよ……」


「おおおお! それは素晴らしい! 

 それじゃあシスティ、ベギラルムたちの部屋はこのシスティの天使域に作ってやりたいんだけどいいかな?」


「もちろんよ! ベギラルムさんおめでとう! 本当によかったわ♪」


「よし! 

 その部屋の家具はわたしがお祝いとしてプレゼントしようではないか!」


「え、エルダリーナさま…… よ、よろしいのですか?」


「もちろんだ。最近サトルのおかげで滝のように儲けが降って来ておるからの!

 そうそう。わたしの使い魔たちにもボーナスを弾むか」


「うっ、ぐっ、ぐぅおおおおおおおおおおおおお~っ!」


 あーあ、ベギラルムが号泣しちゃったよ。

 まあなんにせよ、よかったよかった……




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