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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
56/325

*** 56 氷龍族と焔龍族の餌付けに成功! ***

 


 俺の目の前では、仔ドラゴンが地面に這いつくばり、健気にも自分の身を差し出して、父と祖父の命乞いをしていた。


 だが……

 俺が優しく仔龍に話しかけようとしたそのとき、宙に下品な声が響いたんだ。


「ぐぅわはははははははは~っ!

 なんたるザマだ氷龍どもよ!

 氷龍のおさが氷漬けになるとは!

 ぐぅわはははははははははははははははははは~っ!」


「ち、ちくしょう焔龍のやつらだ……」

「またイヤガラセに来やがったか!」

「族長と族長候補が動けないこんなときに!」


「それそれ!

 それじゃあ我ら焔龍一族が、助けてやろうではないか!

 ものども! 一斉ブレスの用意だ!」


「「「「「 おお~~~っ! 」」」」」


 エメラルド色の巨大なドラゴン16頭が、一斉にブレスのタメに入った。

 額にっとい青筋を立てた俺は、まずその場の氷龍たちを『絶対アブソリュートフィールド』で覆う。

 そうして焔龍たちを見つめてタイミングを測っていたんだ。


 そして……

 焔龍達の喉が真っ赤に光り、そのファイアーブレスが炸裂しようとする瞬間、魔力で16頭の龍たちの口を無理やり閉じさせたんだよ。


 ずどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~ん!


 焔龍たちの固く閉じられた歯の間から火が噴き出した。

 わははは! 鼻からも耳からも目からも火が噴き出てるぜ!

 あっ! ケツからも火ぃ噴いとる!


 うーん、これでまあ懲らしめは充分かもしらんけど……

 このままだとこいつら負けた意識無いだろうからなあ……

 仕方ないな……



 俺は焔龍たちを魔力で空中に固定した。

 そうして6000度ほどのっといレーザーでそのしっぽを焼き落として行ったんだ。


「ギャーーーーーーース!」

「ギャーーーーーーース!」

「「「「「 ギャギャギャギャーーーーーーース! 」」」」」


 上空から16本の黒コゲしっぽがぼとぼとと落ちて来た。

 続いて白目を剥いて気絶した焔龍たち全員が落ちて来る。


 そうして俺はため息をひとつつくと、氷漬けの氷龍たちに向き直り、その身を拘束するマイナス270度の氷を消滅させてやったんだ……




 10分後。

 俺の前には全ての氷龍と焔龍が腹這いになっていた。

 全頭が下顎を地面につけてしっぽをぷるぷると震わせている。

 あー、氷龍の族長と族長候補の鱗がボロボロだわ。

 あまりの極低温に晒されて、ほとんどの鱗が剥がれ落ちちゃったのか……


 俺は2頭にグランドキュアをかけてやった。

 暖かい光に包まれた2頭はすぐに出血も止まり、新しい鱗が薄らと出来始めている。


 氷龍たちのどよめきが広がる中、俺は焔龍たちにもグランドキュアをかけてやった。

 すぐに黒コゲになっていたしっぽの切り口が塞がれ、新しいしっぽが伸び始めて来たようだ。はは、口の中も治り始めているな。



 また仔龍が近寄って来て、涙ながらにお礼を言った。

 俺はその仔の頭を優しく撫でながら聞いてみたんだ。


「なあ、氷龍の族長交代って、いつもあんなに激しく戦うもんなのか?」


「い、いえ超大強者しゃま……」


「ああ、俺の名はサトルって言うんだ。サトルって呼んでくれ」


「そ、それではサトルしゃま。

 今回の争いの原因は一族内の意見の対立から来たのでしゅ」


「意見の対立?」


「は、はい。

 このところ大平原のマナが急速に薄れ始めてしまっておりましゅ。

 そこでマナを主食にしておりましゅ我ら一族は、選択を迫られましゅた」


(や、ヤベぇ…… ま、また俺のせいじゃん!)


「この大山脈の山頂付近に、マナが豊富に吹き出て来ている場所が見つかりましゅた。我が父は、一族でそこに移住しようとしゅる立ち場でございましゅ。

 ですがその場は、寒さはともかく、空気が非常に薄いために、特に我ら幼体は生きて行くのに困難でありましゅ。

 でしゅから、たまに祖父や父の背に乗り、山頂付近まで連れて行ってもらってマナを食しておりましゅた。


 一方族長の祖父は、大平原に降りて、そこの植物や動物を食することを主張しておったのでしゅ。

 ですが…… いくら飢えていると申しましゅても、他の生き物の命を奪うのはいかがなものかと反対意見も多かったのでございましゅ」


「そ、そうか……

 それで焔龍たちはどうするつもりだったんだ?」


「お、畏れながら超大強者さま……

 我らは高山山頂付近の寒さには耐えられませぬ。

 致し方無く平原に降りるつもりでおりました」


(焔龍が焔でしっぽ焼かれたせいか、すっかり大人しくなったなこいつら……)


「それで高山山頂まで行ける氷龍が羨ましくて嫌がらせに来ていたのか……」


「は、はい…… 恥ずかしながら……」



「よしわかった!

 お前たち、これ喰ってみろ!

 一度にあんまり喰うなよ。少しずつだ」


 俺はまたその場に純粋マナのキューブを取り出した。

 ドラゴンたちが恐る恐るそれを口にする。


「ふおおおおおおおおおーっ!」

「な、なんだこれは!」

「マナだ! マナの香りがする!」

「た、たった一口齧っただけで、もう満腹になったぞ!」


「そうか、それならこれも喰ってみろ。

 熱いから気をつけろ」


 俺はその場にジャガイモの塩茹でを取り出し、さらにたっぷりと塩をかけた。


「うおおおおおおおおおおおおおおーっ!」

「旨い! 旨いよこれ!」

「こ、これが食べ物か……」

「な、なんて旨いんだ……」

「し、しかもこれ、たっぷりと塩がかかってる……」

「あの高山の上にしか無い貴重な塩が……」


 俺は夢中でジャガイモを食べている仔ドラゴンの頭を撫でてやった。

「それじゃあこれも飲んでみるか」


 そうして巨大な皿を取り出して、オレンジジュースを振舞ったんだよ。


 そしたらさ、仔ドラゴンが泣き出しちゃったんだ。


「こ、こんな美味しいもにょ、う、生まれて初めて……」


 はは、他の全てのドラゴンがジュースの皿をガン見しとるわ。


 俺はその場にマナ建材を転移させて巨大な皿を20枚ほど作り、オレンジジュースを1000リットルほど転移させて来て、ドラゴンたちに振舞ったんだ。


 あ…… 大人ドラゴンたちも泣いとる……




 そのとき一番大きな焔龍が、俺の前に出て来ておずおずと言ったんだ。


「お、畏れながら超大強者さま……」


「サトルだ。俺のことはサトルと呼んでくれ」


「そ、それではサトルさま……

 わ、我ら焔龍一族のメスや仔たちにも、この奇跡の食べ物を……」


「もちろんいいぞ。誰か飛んでってすぐにここに連れて来い」


「あ、ありがとうございます……」


 すぐに若そうなドラゴンが飛んで行く。



「ああ、他にドラゴンの一族はいないのか?」


「い、いえ。我々の他にはおりませぬ」


「そうか、これしかドラゴンがいないんだったら、これからは仲良くするんだぞ」


「は、はい。仰せの通りに……」



 その後焔龍のメスや仔たちもやって来て、みんなで腹いっぱい食べてたんだよ。


「さてみんな、腹は一杯になったか?」


 総勢100頭ほどのドラゴンたちがこくこくと頷いている。


「あ、あの…… サトルさま……

 これほどのご馳走の見返りに、我らは何を差し出せばよろしいのでしょうか……」


「ああ、気にするな。

 それどころか、これからは何度でも腹いっぱい食べさせてやるぞ。

 そうだな、何年でも何十年でも何百年でもだ」


「あ、ありがとうございます……

 そ、それにしても何故にそのようなご恩恵を頂戴出来るのでございましょうか……」


「お前らは自分たちがシスティフィーナ天使さまが創った存在だということは知ってるか?」


「も、もちろんでございます。

 創造天使システィフィーナさまが我らをお創りくださったと、我ら一族の口伝にございます」


「実は俺はそのシスティフィーナ天使の『使徒』なんだよ」


「「「「「「「「 !!!!!!!!!! 」」」」」」」」


「それでシスティに頼まれたんだ。

 この大平原に生きる全ての種族が幸せに暮らせるようにしてくれって。

 だからマナが薄れた今、お前たちに食料を配るのも俺の仕事だっていうことだ」


「ま、まさかシスティフィーナさまの思し召しだったとは……

 返す返すもシスティフィーナさまの使徒さまにご無礼を致しました……」


「はは、まあ気にするな。

 それでさ、まあお前たちは自由自在に飛べるから住処はどこでもいいんだろうけどさ。

 俺、システィに頼まれて、今街を作っているんだ。

 大平原のマナが薄れたせいで、これからヒト族がこの大平原に攻め込んでくるだろうから、飛べない種族や弱い種族を守るために、大きな城壁で囲まれた街をな」


「わ、わかりました!

 ぜひ我々ドラゴン族を、対ヒト族用の決戦兵器としてお使いくださいませっ!」


「なぁに、ブレスのひと噴きで、ヒト族軍の1万や2万、焼き払ってみせやすぜ!」


「ま、待て待て! 早とちりするな!

 むろん俺はこの大平原に住む種族の誰ひとりとして死なせたくない。

 だが、ヒト族すらも殺したくないんだよ。

 でもさ、今度、フェンリル族500とベヒーモス族300、それからミノタウロス族2000とトロール族3000が、仲間になって俺たちの街に来てくれたんだよ」


「な、なんと! 陸の大強者全てではないですか!」

「うーん…… な、なんという戦力だ……」


「だからお前たちにもよかったら俺たちの街に来て貰えないかと思ってな。

 そこには『レストラン』というものを作ってあるから、いつでも好きなだけ食べ物を食べていいぞ」


「いつでも!」

「好きなだけ!」


「そ、それに、もし欲しければ家を作ってやってもいいし」


「家!」

「そ、そそそ、それって、あのゴブリン族みたいな連中が作ってる雨や風を凌げる巣みたいなものですかい?」


「あ、ああそうだが……

 な、なんかみょーに喰い付きがいいなおい……

 お前ら洞窟とかに住んでるんじゃないのか?」


「そ、それが……

 この山脈には洞窟がほとんど無いのです。

 僅か数カ所の浅い穴は、卵を暖めるメスと仔たちに割り当てられておりまして、我々成龍は吹きっ晒しの外で寝ているのですよ」


「氷龍はともかく、我々焔龍は寒いのが苦手でして……

 冬になると何万キロも飛んで南の島に渡っていたのです。

 ですが、そこはマナが薄く、いつも腹を空かせておりました」


「そうか……

 それじゃあさ、お前たちの希望を聞きながら、全員がゆとりで住める大きな『巣』を作ってやるから、もしよかったら俺たちの街に来てくれるか?」


「「「「「 是非! 」」」」」





 こうして『2時街』にはドラゴン族も移住して来ることになったんだ。


 俺はフェンリル街とベヒーモス街の間のスペースに、岩山を2個作ってやった。

 ひとつは氷龍用でもうひとつは焔龍用だ。

 それぞれ、直径500メートル、高さ100メートルのマナ建材製の山で、大きな穴が100個ほど開いている。

 その穴の前にはテラスがあって、飛んで来た龍はそこに降りるんだ。

 そうしてドアを開けて玄関に入り、またドアを開けてリビングに入るんだよ。

 

 ん?

 ドアはどうやって開けるのかって?

 あいつら器用にしっぽ使ってドアノブ回せるから何の問題も無かったよ。

 リビング内の空調の魔道具のスイッチも押せるし。


 たまにドアにしっぽ挟んじゃうらしくって、「ギャ――――ス!」とかいう叫び声も聞こえて来るけどな……

 ま、まあ、そのうち慣れるだろ。

 土の精霊たちに頼んで金属製のしっぽガード作って貰ってるやつもいたけど……



 リビングの中には大量の藁やマットも入れてあって、照明の魔道具も水飲み場もある。

 そうして外にはベヒーモス族と共同で、巨大なトイレと水浴び場があるんだ。

 最初は初対面でお互い警戒してたみたいだけど、すぐに仲良くなって一緒に水浴びしてたよ。


 それからもちろん風呂も作ってやったわ。

 頭にデカいタオル乗せたドラゴンとベヒーモスが並んで湯船に浸かり、「あ゛ー」とか声出してる姿は笑えるぞ。

 たまにミノタウロスやトロールの若いのが一緒に風呂入って、デッキブラシでカラダ擦ってやってたりすると、「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ー」とか声出して喜んでるし。


 お返しに、ベヒーモスたちがミノやトロの子供たちを背に乗せて、地響きたてて荒野を走り回ってたし。それ見たドラゴンの族長たちが子供たちを背にくくりつけて空飛んでやったりしてたし。

 もうミノやトロの子たちは大喜びで、すっかりベヒやドラに懐いてたわ。



 そうそう。

 最初に俺が切り落とした氷龍のしっぽの先と凍って剥がれ落ちた鱗は、勝者の戦利品として俺に渡されたんだ。

 この鱗ってすっげえんだぜ。

 1枚が50センチから1.5メートルぐらいで、それが500枚近くもあるんだもの。

 これさ、ベヒーモスの角や甲殻と合わせて、ラノベだと超お宝だよな。

 ヒト族の国だといくらぐらいで売れるもんかね?

 後で『宝物庫』でも作って大事にしまっておくか……



 しっぽは5センチぐらいの厚さに輪切りにして、1枚だけ焼いてみんなで食べたんだ。

 すげえだろ。直径80センチのステーキだぜ。

 これがまた旨いのなんのって……


 敢えて塩胡椒だけの味付けにしたんだけど、もう程良い固さといい、溢れる肉汁の香りといい、最高なんだ。これならいくらでも食べられるわ。


 残りは大切に時間停止の倉庫にしまっておいて、パーティーのときとかのメインディッシュにするか。

 ドラゴン族がいるときは食べられないけどな……




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