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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
55/325

*** 55 ミノタウロス族とトロール族に続いて今度はドラゴン族か…… ***

 


 その後、俺はベヒラン族長たちと一緒にミノタウロス族とトロール族の居住地を回ったんだ。なんかみんな普段から仲が良かったらしいな。

 しかもミノタウロス族の族長もトロール族の族長もまだ代変わりしたばかりで若かったんだよ。

 それで自分たちが生まれたころから既に族長やってたベヒランには、一目も二目も置いてるんだ。

 なんせ自分が尊敬する先代の族長の親友だったそうだから。

 だから、ベヒラン族長の説明を真剣に聞いてくれたんだ。



 ミノタウロスの風貌は……

 うん。顔は完全に牛だわ。それも猛牛。

 でもって、体は完全にスーパーマッチョな人間だ。

 男性の角は左右に張り出して湾曲している。実に立派な角だよ。

 女性達のおっぱいは雄大のひと言だ。

 しかも牛みたいに腹部にあるんじゃなくって、胸のところに2つあるんだ。

 これ、巨乳好きだったら惚れるかもしらんぞ。



 トロールたちは……

 これもラノベの挿絵通りかな。

 皮膚は象みたいなカンジで、首も太い。

 太いって言うより肩から耳の辺りまで筋肉で覆われてるから、首があるかどうかもわからんな。

 でもさ。眼だけは異様に澄んでて綺麗なんだよ。

 そう…… 所謂『知性を湛えた眼』ってぇやつだ。



 俺は全員にマナブロックと塩つき茹でジャガイモとジュースを振舞ったんだが、もうその場で移住に前向きになってくれたんだ。

 それに、やっぱりみんな森の虫に刺されて困っていたようで、俺の『クリーン』の魔法を実に喜んでくれたし。


 こうして2時街周辺に、2000人のミノタウロス族と3000人のトロール族が移住して来ることになったんだ。

 みんな身長は2メートルから3メートル半近いから、もう完全に巨獣街というか巨人街だな。


 それで、街の中央部には、学校と病院とレストランだけ建てて、その周囲を彼らの街で囲ったんだ。みんなに大きな家も建ててやって。


 そうして…… 

 巨大レストランにはいつでも彼らの姿が見られるようになったんだ。

 フェンリルとベヒーモスとミノタウロスとトロールが入り乱れて仲良くメシ喰ってるんだぜ。けっこう凄い光景だよなあ……



 最初はジャガイモ茹でるのに、身体強化の加護をかけた悪魔っ子たちに働きに来てもらったんだ。

 子供たちも最初は少し引いてたけど、すぐに仲良くなってたよ。

 でもそのうちジャガイモは、手先の器用なミノタウロス族が代わりに茹でてくれるようになったもんで、週に1度ぐらい俺が転移して、マナ倉庫や食糧倉庫を補充するだけでよくなったんだ。

 街の『クリーン&虫除けの魔道具』も上手く動いてくれてたし。


 まあみんな楽しそうなんでよかったわ。





 それからしばらくして……


(サトルさま。緊急連絡です!)


「どうしたアダム!」


(中央大平原が、広範囲に渡って強烈な寒気に覆われました。

 地上付近の気温は、低いところで氷点下に達しております)


「もう7月だというのに氷点下か……

 このままだとせっかく移住してくれた種族たちが困り出すな……

 それで原因はわからんのか?」


(少々お待ち下さいませ……

 あ、北部大山脈の中腹から猛烈な寒気が発生しております。

 その付近の気温はマイナス30度に達しており、さらにその場には巨大な生命反応が複数存在致します!)


「映像を出してくれるか」


(はい)



 あっ、こ、これドラゴンだ!


 で、デカいな…… 

 一番大きなやつで、体高は15メートルほど。

 頭の先からしっぽの先まで30メートルはあんぞ。

 体全体が蒼銀色の鱗に覆われている…… 綺麗だな……


 その場には大きいのから小さいのまで50頭ほどのドラゴンがいた。

 そうして、その中でも一番大きな奴と2番目に大きな奴が戦っていたんだ。

 残りの連中はその戦いを遠巻きにして真剣に見ているようだ。


 その戦っている2頭は、時折しっぽで相手を殴りつけてもいたが、大半は口から吐くブレスで戦っているようだった。

 その青白色のブレスが当たった岩は、瞬時に凍りついて厚い氷に覆われている。


(『冷凍ブレス』か…… こいつら氷龍アイスドラゴンか……)


 そのとき、デカい方のドラゴンがぶっといブレスを吐いたんだけど、相手がよけたもんだから、そのブレスが大平原に向かって飛んで行ったんだよ。


(こいつらのブレスのせいで寒気団が出来ちまってたんだな……)


 俺の額に青筋が立った。


(他人の迷惑も省みず、好き勝手やりゃあがって……)



 俺はそのドラゴンたちを『鑑定』してみた。


(うん、映像越しでも鑑定出来るんだな。

 流石はゼウサーナさまの加護スキルだわ。

 ふむ、あの大きな奴でLv2万5000、戦ってる相手の少し小さい方でLv2万4000ほどか……

 確かにかなりのLvだが、『銀聖勲章』も装着すればなんの問題も無いな……)


「なあアダム。

 あのブレスって魔法じゃないのか?

 なんでお前が関与していないのにこいつら魔法を使えるんだ?」


(9500年前にシスティフィーナさまが大精霊さまや精霊さまをお創りになられた後、ドラゴン族やフェンリル族もお創りになられました。

 そのとき、小さなドラゴンの仔が、システィフィーナさまを見上げて思念で語りかけたのです。

『ボクもあんな力を使っておしごとしたい』と……

 それで宙を飛ぶ能力や、簡単な水魔法や火魔法などの能力を与えてやったことがあるのですが……

 どうやらあの連中はその仔の子孫のようですね。

 そうしてそのうちの水魔法の能力を選択的に強化して、今の氷龍アイスドラゴンに至った模様でございます)


「なるほど……

 ところで、あの氷のブレスを防ぐいい方法は無いかな。

 まあネックレスの加護があれば死にはしないだろうけど、それでも周りを氷で固められちゃったら身動きとれなくなるかもしれないからさ」


(それではゼウサーナさまの加護のネックレスにある、『絶対アブソリュートフィールド』のスキルをお取りになられたらいかがでしょうか。

 これは、面でも曲面でもサトルさまのお体の周囲にでも、お好きな形状で絶対不可侵のフィールドを展開出来るスキルでして、展開後の形状変化も自由自在です。

 あの程度の氷に覆われたとしても、すぐに形状を変えて砕くことが出来ましょう。

 しかもご自分の意思で『慣性吸収』状態を付加することも出来ますね。

 つまり強大な攻撃を受けてもフィールドの絶対座標は変わらないということです)


「おお! いいなそれ! 便利そうだわ。

 あ、それから俺も氷のブレス使えないかな」


(サトルさまはもはや水魔法は極めていらっしゃいます。

 その上位版である氷魔法ももちろん)


「そうか、それじゃあ氷の密度とか形状とかも変えられるかな」


(それは、『氷形成』と『練成』の合わせ技になりますね。

 ええ、その場で思った通りにお使いになれますよ)


「そうか、わかったさんきゅ。

 それじゃあちょっと行って、あいつらに説教してくるわ」


(お気をつけて……)




 俺は氷龍アイスドラゴンたちの集まっている岩棚に転移した。

 相変わらず2頭の龍たちはアイスブレスを撒き散らしながら戦っている。


「くぅおらぁぁぁぁぁ~っ!

 なにしとんじゃお前らぁぁぁぁぁぁ~っ!

 ちったぁ他人の迷惑も考えろぉぉぉぉぉぉぉ~っ!」


 魔力で拡大された大声で一喝すると、その場のドラゴンたちが怯んだ。

 まあ160dB、ジェットエンジンのすぐ傍の音量の100倍の音量だからな。

 あ、ちっこいドラゴンが白目剥いてくわんくわん揺れてる……



 戦っていた2頭が血走った眼を俺に向けた。


「神聖なる戦いの邪魔をするとは……」

「かような小さき者が我らの戦いにアヤをつけるとは……」


「「死ねぃっ!」」


 どおおおおおおおおおおおお~っ!


 あー2頭揃ってデカいブレス吐いて来たよ。

 それじゃあちょっくら…… 


絶対アブソリュートフィールド!」


 俺の前に直径10メートル程の円盤状のフィールドが展開された。

 あ、このフィールドって目に見えないんだ。

 そうか、それじゃあ……


 俺は絶対アブソリュートフィールドに手を添えた。

 わはははは!

 これまるで俺が手でアイスブレスを防いでいるように見えるぞ!

 ようし!

 俺はフィールドの形状を凹面に変化させた。

 おお~っ!

 跳ね返されてる跳ね返されてる!

 まるで掌に当たったブレスを、俺が跳ね返しているように見えるわ!

 こ、これ、面白れぇなぁ……



 お、ようやくブレスが止んだか……

 あはははは!

 俺が跳ね返したブレスで、ドラゴンたちが氷だらけになっとるわ!

 あー、怒ってる怒ってる……

 氷だらけのツラで血走った眼で俺を睨みつけてるわ……



 はは、今度はしっぽ攻撃か。

 期せずして2頭のしっぽが両側から迫って来てるわ。

 うん、これムチと同じ原理だよな。

 熟練した者がムチを使うとその先端速度は音速を超えるっていう。


 そのしっぽの先端が0.01秒ほどの差で左右から迫って来てるのか。

 これぐらいの差があれば大丈夫そうだ。



 俺は右側から先に迫って来た太さ80センチほどのしっぽの先を『絶対アブソリュートフィールド』を纏った右手で抑える。

 同時に左手を前方下側に出して人差し指を上に向け、指先から出力1兆ワット程の細いレーザー光を出した。


 右手には切り取られたしっぽの先端が残り、目の前をしっぽの切り口が通過して行く。すぐに左手で左から来たしっぽの先端を押さえ、同じように右手の指から出したレーザーでしっぽを切り取る。


 あははは、間違いなくしっぽ攻撃が俺を捉えたと思ったのに空振りしたもんだから、ドラゴンたちが驚いとるわ。

 あ、2頭ともしっぽの先を見た……


「ギャーーーーーース!」

「ギャーーーーーース!」



 あー、今頃痛みが襲って来たのか……

 まあ、あれだけ綺麗に切り取られたから、その瞬間は痛く無かったんだな。


 お、2頭が俺を睨みつけたぞ。

 すっげぇ怒ってる怒ってる。

 あ、大口開けてタメを作っとるか。

 これ最大威力のブレス攻撃だな。

 よし! 受けてやろうじゃねぇか!


 俺は両手を広げて宙に浮かび、2頭のドラゴンの間に移動した。

 両の手から半球状の『絶対アブソーリュートフィールド』を展開する。


 ドラゴンたちの喉の奥が蒼白く光り始めた。

 ほほお、これなかなか威力がありそうなブレスだわ……



 だが……

 ほぼ同時に発射されたブレスは『絶対アブソーリュートフィールド』に跳ね返され、ドラゴンたちの頭部がみるみる氷に包まれていった。

 あー、なんてマヌケな姿なんだ……

 アタマだけ氷漬けになった氷龍アイスドラゴンなんて。


 俺は宙に浮いたまま、あらかじめイメージしていた巨大な氷球を2つ出現させた。

 ドラゴンたちの上空に、密度5.0、絶対温度マイナス270度、直径30メートルの氷塊が現れ、球状の形を保ったまま『練成』によってその内部にドラゴンたちを取り込んで行く。

 はは、氷龍アイスドラゴンの氷漬けの完成だわ。

 おお、この氷、透明で綺麗だなあ……

 完全に中まで透き通って見えるわ。



 あ、このままだとドラゴンたちが窒息死しちゃうか。

 それにこいつらのブレスで出来た氷は不透明で美しくないから、俺の作った氷に置き換えよう。


 俺はドラゴンたちの頭部を覆う氷を魔力で剥がし、代わりに小さめの丸氷を作って顔を封じた。

 もちろん鼻の辺りから穴も作ってやって息も出来るようにしてやっている。

 あはははは。

 穴からぶふーぶふーって音をたてながら白い呼気が吹き出して来てるわ。

 氷龍入り氷だるまの完成だぜ!


 あ、しっぽが動いとる……

 必死になって氷を叩いてるけど、だんだん動きが弱々しくなって来てるか……

 いくら氷龍でもマイナス270度の氷は辛いのかな?



 そのとき……

 周りにいたドラゴンたちの中から小っこいのが出て来たんだ。

 体高は1メートル50センチほど。体長は2メートル程だろうか。

 まだしっぽも短くて可愛らしいドラゴンだ。


 その仔は俺の前までぽてぽてと歩いて来ると、下あごを地面に付けて喋り始めたんだ。


「大強者しゃま……

 直接話しかけるご無礼をお許しくだしゃいましぇ……」


「かまわんぞ。どうした」


「大強者しゃまに挑んで氷漬けにされたそこなる愚かな2頭のドラゴンは、わたくしめの祖父と父でございましゅ。

 族長である祖父に父が挑み、2000年ぶりの族長交代を賭して戦っていたのでごじゃいましゅ」


「そうか」


「大強者に挑んで敗れれば死を迎えるのは定め……

 で、でしゅが大強者しゃま。

 こ、この氷の温度は……」


「マイナス270度ほどだが……」


 周囲の氷龍たちから呻き声が響いて来た。


「す、凄まじき低温の氷……

 で、でしゅが大強者しゃま……

 強者に挑んで死すのは致し方なしといたしましゅても、その死に方が凍死とあっては氷龍一族の名折れ。

 こ、この上はわたくしの身を捧げましゅので、どうか、どうかあの氷塊を解いてやって頂けましぇんでしょうか……」


 見れば目の前の仔龍は、そのつぶらな目からぽろぽろと涙を零していた。

 しっぽもぷるぷると震えている……




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