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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
50/325

*** 50 人間もフェンリルも変わらんな…… ***

 


 俺たちは、ようやく立ち上がったフェンリルたちと一緒に、城壁の末端まで転移した。


「さあ、これから城壁の土台を造るからねー。

 またみんなよく見てるんだよー」


「「「「「「「「 はぁーいっ! 」」」」」」」」


「それじゃあ始めるぞー。

 魔法マクロ発動、マクロ名【バケット作成100】」


 途端に、またもやマナ建材の山から砂状のマナが音を立てて移動を始める。

 そうして城壁建設予定地の横の空中に次々と箱が浮かび始めた。

 ギャラリーはまたみんな大喜びだ。


 100個のバケットの列が出来上がると、俺は次の魔法を唱えた。

「魔法マクロ発動、マクロ名【大地移動100】!」


 今度は城壁建設予定地の大地が50メートル角に切り取られ、ずぼっと地面から抜き出される。

 それがそのままふわふわ飛んで、横に浮かんでいるバケットに収まって行った。

 上面には草が茂っていて、相変わらず巨大な四角いパイナップルみたいだよ。


 パイナップルがバケットに納まったかと思うと、切り取られた部分に砂状のマナ建材が飛んで行く。そうして瞬く間に穴を埋め尽くして硬化した。

 すぐに次のパイナップルが浮かび上がってバケットに向かって飛んで行く。

 そうした光景が次々に繰り返されていった。


「「「「「「「「 うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ! 」」」」」」」」

「「「「「「「「 パチパチパチパチパチパチパチパチ…… 」」」」」」」」


 はは、今度の歓声や拍手の方がさっきより大きいや。

 そうか、巨大パイナップルが飛ぶ分、ビジュアル的に見栄えがするんだろうな。


「うわぁぁぁぁぁぁ~いっ!」


 ああ、子供たちが次々に出来上がるパイナップルを追いかけはじめたか。

 お、仔フェンリルも走り出してる。立ち直るの早いなー。

 はは、中ぐらいのフェンリルもなんかうずうずしとるわ。


「さあみんな、パイナップルを追いかけるぞーっ!」


「「「「「「「「 わぁぁぁぁぁぁ~い♪ 」」」」」」」」


 うん。楽しそうで何よりだよ。


 そうして、出来上がったパイナップルのバケット詰めは、また悪魔っ子たちが砂漠に運んで行ったんだ。


 

「サトルよ。あの切り取った大地はどこに運んでいるのだ?」


「はい、大砂漠の周囲の岩稜大地に運んで並べて置いてあります。

 そのうちに砂が撤去されたら、そこにも並べようと思ってます。

 少しでも早くあの砂漠を緑化したいですからね」


「なるほどのう。

 城壁建設と砂漠の緑化を同時に行っておるのか。

 ほんにお前はよう考えておるのう」


「はは、全部ゼウサーナさまの加護のネックレスや勲章があるおかげですけどね」


「それにしても見事なものよの」


「本当です! すごいです! 読者大喜びですっ!」


「あ、ああ、ローゼさま。建設の映像記録は全てアダムやイブが保存してありますから、ローゼさまはカメラ持つ必要は無いですよ」


「ふふ、それがですね、映像に『撮影者:ローゼマリーナ』ってつけると読者がさらに喜んでくれるんですよ!

 この前なんか最高神さまに、『素人っぽいアングルが手作り感に溢れていて実にいい!』って褒められちゃったんですから!」


「そ、そそそ、そうでしたか……」


(だいじょうぶかな神界……)




 それから俺は以前から疑問に思っていたことを、ローゼさまとエルダさまに聞いてみたんだ。


「あの、お二方とも今日の『城壁建設ショー』はお楽しみ頂けましたでしょうか」


「ええ、こんなに面白かったのは、あのダムのときと並んで数千年ぶりでした」


「うむ。素晴らしかったとしか言いようが無いの」


「それでちょっと不思議に思ったんですけど……

 お二方の天使力があれば、これぐらいの魔法というか天使力行使は可能ですよね?

 みなさんはこうした『建築魔法』って使われないんですか?」


「ふむ、訓練すれば可能かもしらんが、使ったことは一度も無いの」


「ええ、我々天使の本分は、知的生命体を『創造する』ことと、その成長を『見守る』ことですから。このような素晴らしい実際の建築は行う必要も無いし、したことも無いんです。あまりやり過ぎると過剰関与になってしまいますからね」


「ついでに言えば、神は世界を創れるが、こうした建築分野にはほとんど手を出さんのだ。

 例外は『神界土木部』だが、彼らとてマナ循環システムの構築が主な仕事だからの。

 こうした具体的な建築は守備範囲では無かろう」


「そうでしたか……」


「つまり神界の本分は『世界創造』で、天使の本分は『生命創造』なのですよ。

 ですからこうした具体的な建築に神力や天使力を使うことは無いのです」


「そんな力を俺みたいな一介の使徒が使ってもいいもんなんですかね?」


「うむ。お前がこの魔法を開発したのは、この世界ガイアを試練に合格させるためであり、それは使徒としての本分であろう。故に何の問題も無かろうな。

 もしどうしてもこのような建築が必要とあらば、それは『使徒』を召喚してその『使徒』に行わせるものなのだ。

 或る程度進化した世界では通常『使徒』はおらん。現に今の地球にはおらんしの。

 故に、普通は『試練』に挑んでいる世界にしか使徒はおらんのだよ」


「それに加えて、こういった天使力、あなた方の言う魔力の行使には、かなりの想像力が必要になりますからね。

 自分の望む現象を明確に管理システムに伝えて、それを魔法式に翻訳してもらって初めて実行出来るものでしょうから」


「なるほど、その点俺は地球のラノベを読んでその想像力を得ていたということなんですね」


「ええ、天使力というか魔力を使えないにもかかわらず、地球のラノベ作家さんたちの想像力には素晴らしいものがありました。

 ラノベに書かれていた魔法はほとんど天使力行使で実行可能なものですけど、実際にあのような魔法を行使していた者は、神にも天使にもほとんどいないはずです。

 特にあの『魔道具』は素晴らしいですね。

 固体マナをエネルギー源として、それに命令式を組みこんであのように魔法の発動を容易にしてしまうなんて。

 もちろんアダムさんの管理の下限定でしょうが、おかげで許可さえ与えられれば一般の生命でも魔法が使えるとは……

 あの発想には画期的なものがあります。

 有害な使用が行われそうになった際には、すぐにアダムさんが遮断可能ですから安全措置も充分ですし」


「くっくっくっく。

 ひょっとしたら、あの『魔道具』は、これから神界で大流行するかもしれんの……

 早めに特許登録しておくか……」


(ま、またエルダさまから黒いオーラが……)




 その後はみんなで弁当を食べた。

 もう悪魔っ子も子精霊も仔フェンリルも入り乱れてたいへんだったわ。

 みんな楽しそうで何よりだ。


「なあ、フェンリー。お前たちって土魔法使ったりしないんだよな」


「そうだの、使ったとしても攻撃用の石弾ばかりだな」


「土の精霊に頼んで建築魔法の講師になってもらうか?」


「い、いやそれはまだ遠慮しておこう……」



 昼飯の後は、またみんなのリクエストに応えて、土台づくりと城壁建設の実演をした。

 みんな楽しんでくれたようでほんとによかったよ。





 数日後。

 俺はちょっと用があったんで『フェンリル街』に行ったんだけど……

 なんだか街の中の広場の隅とかに、ヘンな置き物がたくさんあるんだよ。

 なんか足のついた大きいのと丸っこい中ぐらいのと小っこいのが仲良く並んでるのとか……


「えへへ。それボクが作ったんだよ。ボクとパパとママなの」


 仔フェンリルが嬉しそうにしっぽをぶんぶん振り回しながら話しかけて来た。


「そうかあっ! キミも土魔法を使えるようになったのかあ!」


「うん。まだ少しだけど……」


 俺はその仔フェンリルをわしゃわしゃと撫で回してやった。

 その子は嬉しそうにお腹を上にしてはふはふしている。


「で、でもねでもね!

 パパはすっごい上手だって褒めてくれたんだけど、ママは『もう少しママを細くしなさい!』ってちょっと怒ったんだよー」


(人間もフェンリルも変わらんな……)





 その後しばらくしてまたフェンリル街に行ってみたんだけど……

 なんか土の精霊たちが、フェンリルの家の入口の屋根に、狼の頭の像を作ってるんだよ。そうしてその像の後ろにはキリッとした顔のフェンリルがいて、その様子を周りの大勢のフェンリル達が楽しそうに見てるんだよな。


 あはは、表札の代わりかな。

 でもみんなおんなじ狼顔だから区別出来ないんだけど……


 そのとき若いメスたちの会話が聞こえて来たんだ。


「みんな家に自分の像を作ってもらってるのねー」


「これでどれが誰の家だかすぐ分かるようになって便利よねー」


(き、キミタチこの像見て誰の家だかわかるの!!!)



「えへへ。

 あたし、土の精霊さんに頼んで自分の像の鼻筋、少し細くしてもらっちゃったー♪」


「えーっ! ずるいずるい! あ、あたしもお願いしてみる!」


(そうですか…… やっぱり鼻筋が細いのが美人さんなんですね……

 俺には区別出来んけど……)



 フェンリーくんの家の屋根には、ひときわ大きく凛々しい狼の像があった。


(誰だよこれ……)


 俺はアダムに頼んで、あの城壁建設のときの映像記録をプリントアウトしてもらった。

 そうしてその写真を土の精霊に見せて、フェンリーくんの像を作り直してもらったんだよ。

 そう…… あの目をまん丸に見開いて、大口開けてるアホ面にだ……


 しばらく貯水槽や水道の具合をチェックしていた俺は、フェンリーくんの、「なんじゃぁこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」という声を聞くと、静かに転移してシスティの天使域に戻ったんだ。




 その日の夕食時。


「のうサトル。おかげで神界の『カフェ・ガイア』は大賑わいなんだが、そろそろ新メニューも出したくての。他にお前の好物は無いのか?

 それから売店で売り出すいい品はないものかの」


「そうですね。久しぶりにパスタが食べたいです。

 ボロネーゼとかカルボナーラとかあさりバター醤油とか。

 それから、あの仔フェンリルのぬいぐるみを売店で売り出すのは如何でしょうか。

 可愛らしくお腹を上に向けてるポーズとか、観客席の上で腰を抜かしてるポーズとか。

 そうそう。あのボスのフェンリーくんが、目をまん丸にして大口開けてるアホ面状態のぬいぐるみとか……」


「す、素晴らしい…… ほんにお前は天才だの!」


「そ、そういえばアダム。

 ひょっとして、フェンリーくんが小さい頃、システィの膝の上でお腹上にしてはふはふしている映像の記録とか持ってないか?」


(もちろんございますとも。あれはシスティさまのお気に入り映像でしたから)


「それさ。プリントアウトしてもらえないかな。

 ヤツの子供たちに見せてやりたいんだ」


(畏まりました)



 それからの3食はパスタづくしだったよ。

 ローゼさまやエルダさまがカメラ構えてて、「もっと美味しそうな顔で!」とか「笑顔で!」とか言われてバシャバシャ写真撮られちゃってたし……





 数日後の夕食時。


「先週の『ガイア観察日記』はおかげさまで大反響だったんです。

 でも神界がたいへんなことになっちゃったらしいんですよ」


「ど、どんな風にたいへんになっちゃったんですか?」


「ほら、サトルさんがあの城壁を作ったときに、『ゼウサーナさまの加護のネックレスのおかげです』って仰っていたでしょう。

 それで神界中の上級神さまたちが『加護のネックレス』をカフェ・ガイアに持ち込んで、『こ、これをサトルに渡してやってくれ!』って言ったそうなんです」


「…………」


「でもゼウサーナさまが止めに入ってくださって騒ぎは収まったそうなんですけど。

 ああ、最高神さまも『ゼウサーナくんだけガイア観察日記に登場してズルいっ!』って仰って、加護のネックレス持ち込もうとされたんですって。

 みんなで必死になってお諌めしたんで諦めてくださったそうですけど……」


(……神界の神さまたちって、ヒマなのかな?……)




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