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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
46/325

*** 46 各種『魔道具』の開発 ***

 


『フェンリル街』周辺での簡単なインフラ整備を終えて街の中央に戻ると、そこには土の精霊たちが10種類ほどの家の見本を建てていて、フェンリルたちが見学していた。

 はは、まるで住宅展示場だぜ。


 でもこれ…… やつらには小さくないか?

 どう見たって犬小屋なんだけど……


 そう思って聞いてみたら、どうも彼らは寝るときには狭いところの方が落ち着けるらしい。普段は外にいるしな。

 だからこうして雨露が凌げれば、小さな小屋の方がいいそうなんだよ。

 はは、フェンちゃんが8メートル×5メートル、高さ4メートルほどの小屋に収まって、満足げに顔を出してるわ。

 まあそれでも子育て中のメスなんか用には、もう少し大きな家を用意するそうだが。



「なあ、そんな風に石の床に直に寝ていて痛くないか?」


「問題無い。我らの強靭な体では何の痛痒も無いわ」


「でもさ。生まれたばかりの子供なんかにはちょっと辛いんじゃないか?」


「む。そういえばメスたちは子を生む前に巣になにやら植物を敷きつめておったな」


「だろ。それじゃあ、子供や老人用に藁かマットレスでも用意するか」


「かたじけない……」



 それで地球の悪魔さんたちに頼んで、藁とマットレスを買って来てもらったんだけどさ。

 これが長老たちや若いメスたちに大好評だったんだよ。

 喜んでもらえてよかったよかった。



 それから中心部には、みんなが日中過ごせるように、『集会場』も作ったんだ。

 高さ1メートルほど、広さは100メートル×200メートルほどの台座の周囲に柱を立てて、屋根だけ作ったんだけどさ。

 はは、まるでパルテノン神殿だな。

 あとで土の精霊たちに柱に縦の筋でも掘ってもらおうか。


 さらには元のテリトリーの周りにあった果樹も、植物の精霊とアダムに頼んで運んでもらい、塀のすぐそばに果樹園を作らせたんだ。

 精霊たちが嬉しそうに世話をしていたから、そのうちに果実もたくさん食べられるようになるだろう。

 もちろん壁の中には大きな倉庫も作って、純粋マナのブロックも大量に入れておいた。

 藁もマットレスもたくさん置いて、自由に使ってくれって言ってあるし。


 翌日にはフェンリルたちが全員やってきて、それぞれが楽しそうに住宅を選んで土の精霊たちに注文していたよ。

 これですぐに『フェンリル街』が出来上がるだろう。


 あ、門のところに、見張り当番用の小屋も出来てる。

 あはは、これどう見たって番犬用の犬小屋だよなあ。

 でもフェンリルがデカ過ぎて怖いけど。

 なんせ座ってても頭が俺より上にあるからなあ。





 それからしばらくして、アダムと俺が共同で『簡易転移魔道具』を完成させた。

 マナ鉱石を使ったマナ電池に『転移の魔法マクロ』を刻んだ魔法陣を付けたものだ。

 これは2つの装置がセットになっていて、双方ともにその魔法陣の周囲の生物や物質をもうひとつの転移魔方陣まで転移させることが出来る。

 発動スイッチは魔法陣にもついているし、アダムたちの遠隔操作でも出来るスグレモノだ。

 一番難しかったエネルギー用の固体マナの問題が純粋マナ鉱石で解決したんで、あとは比較的楽だったよ。



 まずはアダムが一般的な『転移』の魔法陣を見せてくれたんだけどさ。

 みんな表計算ソフトのマクロの中身って『編集』で見た事あるかな。

 あのワケのわからんプログラミング言語がぎっしり書かれてるやつ。

 その魔法陣って、あれにそっくりだったんだわ。

 そうか、魔法陣ってプログラミング言語の一種だったんだなあ。


 その中には、転移させる物質の範囲だとか、転移させる位置の座標とかの数値部分があるわけだ。

 その数値を少しいじって、送信側の魔法陣の半径Xメートル以内の物質、もしくはマクロ発動者が手を触れている物質(自分含む)を送信せよ、っていう『送信魔法陣』を作ったんだ。

 それからその『送信魔法陣』と対になった『受信魔法陣』も。

 ああ、受信側も転移先の魔法陣からYメートル以内とかの指定も出来るようにして。


 そうして純粋マナ粉末を練成で固化して、頑丈なプレートを作ったんだ。

 ちょっとやそっとのことじゃあ割れないようなヤツ。

 そうして、アダムのスクリーン上にあった『転移の魔法陣』を、俺が加護のネックレスのスキル『転写』でマナプレートに印刷したんだ。

 もちろん転移のためのエネルギーは、魔道具使用者の体内マナじゃあなくって、マナプレートのマナを使うようにしてある。


 そしたらあっさり『転移の魔道具』が出来ちゃったんだ。

 これ楽でいいなあ。量産も簡単だし。


「なあ、アダム。

 これさ、マナプレートに送信側と受信側の両方の魔法陣をセットしたら、1対で双方向の魔道具にならないかな」


(可能でございますね)


「そうか、その方が便利そうだからそうするか」


(はい)


「それからアダム。この『転移の魔道具』だけどさ。

 これ使うのとお前に転移させてもらうのとではどう違うんだ?」


(はい、わたくしがシスティフィーナさまの『管理領域』の外側で、皆さまや物品を転移させて頂く場合に比べて、『転移の魔道具』を使用すると、わたくしの負担が大幅に軽減されます。

 具体的に申し上げますと、通常の『転移』の場合にはわたくしの内部のマナエネルギーを使用し、さらにわたくしのマナ操作力も使用することになります。

 ですが、魔道具を使用した場合には、エネルギーはマナ電池のものを使用いたしますので、わたくしの負担はマナ操作力の使用のみになります。

 ですから、負担は相当に軽減されますね)


「なるほどな……

 それじゃあ或る程度決まった場所同士で転移する場合には、魔道具を使った方がいいっていうことなのか」


(あまりお気に為されませんよう。

 おかげさまで、中級システムに昇格させていただきましたし、何よりも今までに相当多数の転移を繰り返してまいりましたので、わたくしのマナ操作力も格段に上昇しております)


「へえー、お前たちシステムも、魔法を使えば使うほど魔力が上がるんだ」


(はい、天使さまやそのご卷族の方のニーズにあった作業が出来るように、わたくしどもの根幹には、自己成長機能が組み込まれておりますので)


「な、なあ、俺ってお前の使い方が相当に荒かったりするんか?」


(ええ、まあ。そうですね、通常の試練世界の管理システムに比べて、優に1万倍から数100万倍は働いておりましょうか。

 なにしろ通常の世界では、あれほど大きなダムを作ったりはしませんし)


「す、すまん……」


(いえいえ、お気になさらずに。

 サトルさまが、ご自身の肉体や魔力を酷使して進化されて来られたのを嬉しく思われるのと同様に、我々も自身が進化するのは喜ばしいのですよ)


「そ、そうか。で、でもあまりにも辛かったら言ってくれよ。

 お、俺も手伝うから」


(暖かいお言葉、誠にありがとう存じます……)




 その後、ついでにアダムと俺で他の便利魔道具も開発したんだ。

 まずは『浮遊の魔道具』。

 これは術者が魔道具に意思を伝えると重力魔法が発動されて、その魔道具が設置された物体を浮かせることが出来るものだ。


 次は『移動の魔道具』。

 これは、『浮遊の魔道具』で浮かせた物体を、術者が示した方向に移動させることが出来る。

 両者を組み合わせれば、魔力の少ない者でもかなりの重量物を運ぶことが出来る優れものだ。


 それから『解体の魔道具』。

 これは、マナ建材で作られた物体を瞬時に元の砂状のマナ建材に戻す便利なものだ。砂に返ったマナ建材は、自動的にアダムの倉庫に戻るようにも設定してある。


 どの魔道具も、建設現場なんかでは実に重宝な道具になるだろう。

 どれも対象物に魔法陣付きのマナプレートを張り付けるだけだから、運用も簡単だし。


 ついでに作ったのが『連絡の魔道具』だ。

 これは所有者が触れるといつでもアダムたちと連絡が取れるものだ。

 同時にアダムたちが所有者の位置情報を知ることも出来る。

 これさえ持たせておけば、悪魔っ子たちがどこにいても連絡が出来るから安心だよな。

 なにかあったら、すぐに俺やベギラルムが駆け付けることも出来るし。


 そうして俺は、毎日寝る前にこれらの魔道具を1000個ずつぐらいコツコツと作っていったんだよ。



 俺は早速『転移の魔道具』を『フェンリル街』の上下水道に設置した。

 上水道用は、街の水槽と飲料水用のダムを繋いでいる。

 下水道用は、送信側は街の下水槽内に置き、対になった受信側は大陸の南方海上の無人島の海岸付近に設置した。

 マナ電池は大型の物を付ければ10年や20年はもつそうだ。

 まあ、無人島付近の生き物には迷惑かもしらんが、そのうちに下水処理場も作るから勘弁してくれな。



 それでそのときに思いついたことがあったんで、アダムに聞いてみたんだよ。


「なあ、この世界のヒト族の国では、金貨や銀貨銅貨以外にも、『塩』も疑似通貨として流通してたよな」


(はい。特に岩塩鉱山を持つ国々は、周囲の国をその岩塩を使って実効支配しております。塩は生存に不可欠な戦略物資でございますので。

 そのために貴重な岩塩鉱山を巡って侵略のための戦争も多いわけですが)


「なんでみんな海水から塩を採らないんだ?」


(この世界の海水は、非常に『にがり成分』が多いために、塩にしたときに苦すぎて食べられないのです。塩漬けなどの保存用にも使えない程です。

 しかも、あまり海水塩を摂取すると体調すら崩します。

 まだにがり成分の分離方法は知られていないようでございますね。

 ですから岩塩鉱山しか塩の供給源が無いのです)


「っていうことはさ。

 俺がこの世界ガイアで海水から塩を作ったら大儲けっていうことだな。

 それに戦略物資としても強力なアドバンテージになるのか」


(仰るとおりでしょう)


「へへ、なんせ俺には『物質抽出』の魔法があるからな。

 海水塩なんか作り放題だな。にがりまったく無しの。

 よし、海水から塩を抽出する工場を作って、大量の塩を備蓄しておこう。

 最初は俺が作るが、そのうち悪魔っ子たちにも魔法マクロを覚えてもらって、彼らに塩づくりを任せられるようにするか……」



(ところでサトルさま。下水の処理についてなのですが……)


「ん?」


(『クリーンの魔道具』をお作りになられて、綺麗になった水だけを海に流されたらいかがでしょうか)


「あ、あのさ。そもそも『クリーンの魔法』で除去された汚れってどこに行ってるんだ?」


(あ、はい。汚れ部分だけをまとめて、わたくしが管理する倉庫内の『汚物専用庫』に集めておりますが)


(そ、それって、俺の『夢の精』もそこに行ってるっていうことか……)


「そ、それ、いつかは膨大な量になっちゃうんじゃあ……」


(いえ、水分はすべて除去して海に流した残りの乾燥部分ですので、それほどの量ではございませんが)


「じゃあ将来はマナ建材で固めて、大きな穴でも掘って埋めればいいのか」


(はい)


 ほんとに魔法って便利だよなあ。

 これで下水処理の問題も片付いちゃったよ。

 あ、そうか。『クリーンの魔道具』が作れれば、シャワートイレもトイレットペーパーも要らないのか。こ、これは是非作らねば……




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