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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
43/325

*** 43 システィ無双しとる…… ***

 


 そのとき、俺とボスフェンリルの間に突如システィが現れたんだ。

 なんかすっげぇ嬉しそうににこにこしてんぞ……


「フェンちゃん! あなたフェンちゃんよね!

 大っきくなったわねー♪ 昔はあんなに小っちゃかったのに!

 でもその顔、その匂い。間違いないわ。フェンちゃんだわ!!」


(匂いって…… システィそんなに鼻いいんだ……

 あ! だから俺の夢の精もバレバレだったんだ!)



 止める間もなくシスティがボスフェンリルに抱きついて行った。

 ぴょんと飛んで首の辺りにしがみついている。


「ほんっと大きくなったわねえ。1500年前はわたしの膝の上で甘えてたのに。

 うふふ…… また会えて嬉しいわ♪」


「そ、そのお声…… そのお姿…… そしてその匂い……

 も、もしやあなたさまは……」


「えーっ! まさか忘れちゃったわけじゃないわよね!」


「我らの造物主、し、システィフィーナさま……」


「はい、よく出来ました♪ いい子いい子してあげる♪」


 はは、システィが目一杯手を伸ばしてボスフェンリルの頭を撫でてるよ。

 あ、フェンリルの尻尾がびーんって立って、毛も逆立ってる……

 あはは、タヌキの尻尾みたいだわ!


「あ、あの…… システィフィーナさま…… 

 わたくしめも今は群れのボスという立場にありましてその…… 

 仔フェンリル相手のような撫で撫でなど……」


「まあ! フェンちゃん、ボスになれたの!

 あのころは体も小さくて気も弱くて心配してたんだけど……

 頑張ったわねー♪ えらいえらい♪ もっとなでなでしてあげる♡」


(だめだこれ…… システィぜんぜん話聞いてないわ……)


「あのそのあの…… システィフィーナさま……」


「だめよそんな呼び方。あの頃みたいに『システィお姉ちゃま』って呼んで!」


「う、うっ。 し、システィ…… お、お ね え…… ち  ゃ  ま ……」


「うふふ。懐かしい呼び方してもらって嬉しいわ。

 あ、そうそう。フェリナちゃんはどうしたの? 

 あのとっても小さくて可愛い子。

 あなたいつも告白したがってたけど、勇気が出なくってもじもじしてたわよね……」


「う、うっ。そ、それは……」



 そのとき後方の集団から一番ちっこいのがとことこ出て来たんだ。


「我らが造物主システィフィーナさま。初めまして。

 フェンリーの28番目の末の息子でフェリールと申します。

 以前は父上がお世話になりましたようでございまして、厚く御礼申し上げます」


「まあ可愛い! それにおりこうさんねえ。

 喋り方以外はあの頃のフェンリーちゃんにそっくりだわ!」


「お褒めに与り恐縮であります。

 あの。そのフェリナというのは、わたくしの母上の名前であります」


「まあまあ! フェンリーちゃん、ちゃんと告白出来たのね!

 がんばったわねー。おめでとう! よかったよかった……」



(システィ無双しとる……

 あー、フェンリーくんのしっぽ、ダダ下がりだわ……

 あ、なんか顔からダラダラ汗も落ちてる……

 犬や狼って皮膚に汗腺無かったんじゃないのか?)


 あ、システィがボスの首から飛び降りて、息子の方も撫で始めた。

 い、いいなもふもふ……

 あー、よっぽど撫で方が上手いんだろうな。仔フェンリルがはふはふ言い始めたよ。

 お、腹を上に向けて寝転んだ。な、なんか至福の表情になってる……


「おいフェリール。フェンリル族の男子たるもの軽々にそのような「うわー、あなたフェンちゃんの子供のころとそっくりな寝方するのねー♪ 

 お姉さん嬉しいわ♡」」


(フェンちゃん可哀想に……

 しっぽがあんなに細くなって垂れまくってるわ…… 

 ネズミのしっぽみたいだ……)


 俺はゆっくりと歩いてボスに近づいて行ったんだ。


「やあ、改めて、俺はシスティの『使徒』のサトルだ。よろしく。

 システィのために、この中央平原に幸せな国を作ろうとして働いている」


「ふん。ヒト族に幸せな国なぞ造れるわけがあるまい」


「いや、俺は確かにヒト族だけど、この世界とは別の世界で生まれたヒト族なんだ」


「別の世界だと?」


「そうだ、その世界からシスティに召喚されて来たんだ」


「はっ。その程度の力で国なぞ造れるわけもあるまいに。

 それに何かで自分の力を隠しているようだが、そのような輩の言い分を信じるほど我らは愚かではないぞ。

 それに我らの序列の基本は力だ。システィフィーナさまのお知り合いのようだから今は見逃しておるが、本来であればキサマのような弱き者と口を利くことなど無いのだぞ」


「あ、すまんすまん。今は『隠蔽』を纏っていてな。

 さっきは勝手に『鑑定』して失礼した。

 今隠蔽を断つから俺もチェックしてみてくれ」



 俺が隠蔽を解いた途端に、ボスの尻尾が膨れ上がった。

 全身の毛も逆立って、なんかふた周りぐらい大きく見えるようになったよ。

 あ、また顔に汗が出てる。もうダラダラだな。


「ば、化け物……

 な、なにものだキサマ…… 

 どうしてヒト族がそのような力を手に入れたのだ……」


 おお、さすがはボスだ。

 垂れそうになる尻尾を必死で高く掲げてふんばってるわ。



「もちろん俺の実力じゃあないんだ。

 システィたち天使の上役である神さまからもらった力なんだよ。

 だからぜんぜん威張れたもんじゃないな」


「そ、そうか…… それにしても……」


 あー、後ろの連中はしっぽ垂れまくりだわ。

 デカいのはそれでも必死で頑張ってるけど、中ぐらいのはもう足の間にしっぽ挟んで震えてるぞ。

 あ、小っこいのが座りしょんべんしとる……

 口開けて白目剥いて気絶しとるわ……


「なあ、お仲間が辛そうだから、また『隠蔽』を纏う方がいいと思うんだけど……」


「う、うむ。そ、その方がよかろう」



 俺がまた『隠蔽』を発動すると、フェンリルたちは目に見えて安堵していたよ。


「それで、どうして俺たちの小屋を壊したりしたんだい?」


「うむ。あれはどう見てもヒト族の建てたものだった。

 この場所は我らのテリトリーから近いために、念のため排除したまでだ。

 我らの存在を知らしめて、ヒト族を追い払うためにな」


「もしヒト族が来たら全部殺せばいいだけの話なんじゃないのか?」


「それこそヒト族の発想よな。

 我らは攻撃されるか飢えていなければ殺しはせん。

 それが誇り高きフェンリルの掟よ」


「気が合うな。

 俺もシスティに誓ったんだ。

『ひとりも殺さずに、この世界のヒト族の国を解体し、平和で幸福に溢れた統一国家を作る』と……」


「いかにお前が強かろうが、単独では無理に決まっておろう」


「いや、俺にはもう、結構な数の仲間がいるんだよ。

 そうだな…… もう2000人以上も」


「それでも少なすぎるだろうに」


「だからお前たちフェンリル族も、俺たちの仲間になってくれないか?」


「断る。今は一族危急存亡のときだ。

 お前なぞの手助けをしている暇は無い」


「なんか問題でもあるのか?」


「お前のようなヒト族相手に語る口は持たん」


 そのときシスティが叫んだんだ。


「まあ、フェンちゃん! あなたたち困ってるの!

 お姉さんに言ってごらんなさい。なんとかしてあげられるかもしれないから」


「あ…… う…… そ、その…… システィフィーナさま……」


「お姉ちゃんに隠し事なんかしたらダメなのよー」


「う、うう……

 ま、まずはこのところこの中央平原のマナ濃度が急速に薄れて来ております。

 このままではマナを主食とする我々が飢えてしまい、周囲の動物を捕食する必要が出て来てしまいますが、それは我らの本意ではありませぬ」


「そ、そうだったの……」


「そのため我らは、もっとマナ濃度の高い場所にテリトリーの移動を検討中です。

 それに、こうまでマナが薄れると、ヒト族がこの平原に進出してくるようになるでしょう。

 我らはやつらを追い払うことと、新たなマナ濃度の高い場所を求めてテリトリー外の巡回を始めたのであります」


「ご、ごめんなさい。

 そのマナが薄れた理由って、私たちがマナの通り道を修理しちゃったからだわ」


「は?」


「もうあの大砂漠の真ん中にあったマナ大噴気孔は塞いじゃったの。

 今は北の大山脈の山頂付近からマナが出てるのよ。

 そうか。あなたたちにとっては迷惑だったのね。

 本当にごめんなさい……」


「い、いえ、頭をお上げくださいシスティさま。

 なんとかマナ濃度の高い場所を探してみますので……」


「なあ、お前たちってマナさえあれば生きていけるんだよな」


「もちろんそうだ。たまには果実なども食するがな」


「アダム、ここにマナ鉱石をいくらか転移させてくれないか」


(かしこまりましたサトルさま)


 俺たちの目の前に50センチ角ほどの純粋マナ鉱石がいくつか出現した。

 ボスフェンリルがびっくりして見ている。


「こ、これは……」


「大砂漠の砂から抜き取った、純粋マナの結晶みたいなもんだ。

 石みたいに見えるけど、これ全部マナを固めたものなんだ。

 ひょっとして、濃いマナの大気を吸う代わりに、このマナ鉱石を食べたり出来ないかな?」


「う、うむ……」


 はは、ボスが必死になってマナ鉱石の匂いを嗅いでるよ。

 あ、『鑑定』も発動させてる。


「それじゃあ試しにひとくち齧って……」


 ひょいパク。


 ああっ! キューブ1個全部口に入れちゃったよ!

 あー、ごりごり齧ってるわ。や、ヤバいことになっても知らねえぞぉ……


「お、おお! す、素晴らしいっ!

 みるみる体にマナが満ち溢れていくではないか!

 こ、ここまで満腹になったのは1500年生きて来て初めてだ!」


「そ、それはよかった……」


「ん? な、なんだこれは……」


 ぶぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーー。


 あー、やっぱ出ちゃったよジェット噴射。

 あ、しっぽがマナの噴射でたなびいてるよ。

 後ろにいたフェンリルたちが慌てて両脇に逃げたぞ。

 あーあ、地面にあごをつけて前足で鼻を覆ってるわ。

 最初は少し臭いからなあ。


「あのさ。それ固体化されたマナだから、すっごく濃度が高いんだよ。

 それで体が吸収しきれなかった分が、そうやって気体になって体外に排出されてるんだ」


「は、早くそれを言わんか! (ぶおおおおおおおおおおおおお)」


「だってお前すぐ食べちゃったじゃないか。止める間も無かったんだよ」


「そ、それにしてもだ! (ぶおおおおおおおおおおおおお)」


「そんなことより、お前の後ろで小っこいのが気絶してるぞ。

 地面に背中をつけて足全部上に上げてぴくぴくしてるぞ。

 早く助けてやれよ」



 ああ、中ぐらいのが慌てて小っこいのの足を咥えて引きずって行ってるわ。

 はは、フェンリルたちがみんなボスのケツをジト目で見てるぞ。


 ボスが群れを振り返った。


「おいお前たち。(ぶおおおおおおおおおおおおお)

 お前たちもこのマナの塊りを喰え。(ぶおおおおおおおおおおおおお)」


「しっ、しかしフェンリーさまっ!」


「わしの勧める喰い物が喰えんというのか? (ぶおおおおおおおおおおおおお)」


「はっ、はい……」


「ばかもの! ひとくちでは無い! お前はその塊の半分だ! (ぶおおおおおおおおおおおおお)

 お前はそのまた半分でよろしい。(ぶおおおおおおおおおおおおお)

 ああ、子供たちはひと齧りでよかろう。(ぶおおおおおおおおおおおおお)」


(しっかしこいつの威厳もすっかり無くなったなおい……)



 しばらくして……

((((((((((ぶおおおおおおおおおおおおお))))))))))


 あー、52頭のフェンリルがみんなジェット噴射始めちゃったよ。

 みんなでしっぽをたなびかせて、項垂れてるわ。

 あーあ、耳なんかぺったんこに垂れちゃってまあ。

 あ、仔フェンリルが飛ばされまいと必死で足踏ん張ってる…… か、可愛ええ♪

 あ、堪え切れずに飛んだ……

 あはははは、ねずみ花火みたいにそこら中転がり回ってるわ。

 まあこいつら強いから大丈夫だろ。


(ね、ねえサトル…… 

 この音、エルダお姉さまの部屋から聞こえた音とおんなじなんだけど……)


(しーっ! それには気づかなかったことにしてあげなさい。

 このマナの塊で作ったマナ・ポーション(超級)なんか飲むから……)


(う、うん、わかった……)




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