表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
40/325

*** 40 地球の金融シンジケートのみなさんたち…… ***

 


 翌日。地球、アメリカ合衆国NY州北部。

 深閑とした針葉樹の広大な森の中に、見た目は地味ながら歴史を感じさせる重厚な造りの巨大な別荘が一棟建っていた。

 周囲は目立たぬ服装の険しい目をした男たちが、ジャーマンシェパードを連れて巡回している。

 やや離れた丘の上では、天文台に偽装された建物の中でレーダーが回転していた。すぐ横のガレージ内では、開閉式の屋根の下、レーダーと繋がった対空砲がウォームアップ中であり、傍らには地対空ミサイルスティンガーを抱えた男たちが静かに座っている。


 車で15分ほど離れた私設空港には、予め届け出のあった飛行ルートを忠実に守り、プライベートジェットが次々と着陸していた。

 その度ごとに空港と別荘の間を次々と大型リムジンが往復している。

 リムジンの通る道の両側も、無数の男たちと目立たぬように配置された火器によって防衛されていた。


 1時間後。

 別荘のラウンジには、正装に身を固めた中年から老人までの男たちが10人ほど集まった。皆久しぶりに顔を合わせたらしく、親しげにファーストネームで久闊を叙す挨拶を交わしている。


 もしも彼らがファーストネームだけではなく、ファミリーネームも呼んでいたとしたら、「ロックフェラー」、「デュポン」、「ケネディ」、「メロン」、「フォード」、「ロスチャイルド」などという、日本人ですらよく知るファミリーの名前が飛び交っていたことだろう。



「みなさまそろそろお時間でございます」


 老齢の執事の声に促され、男たちは別室に入った。

 その部屋は、一見地味だがよく見れば恐ろしいほどの財力をつぎ込んで整えられていることがわかる。

 だがその部屋には、家具は椅子ひとつしか無かった。

 50センチほど高くなった場所に、呆れるほど豪奢な椅子がひとつあるだけである。


 重厚な男たちが皆椅子の方に向いて、見事な刺繍の施された絨毯に跪く。

 最高齢と思われる男が口を開いた。


「畏れながら。皆そろいましてございます。エルダリーナさま」


 途端に強烈な光と共にその椅子の上に上級天使の姿が現れた。

 その神々しい美しさを目の当たりにして、男たちからいっせいに畏怖の籠ったため息が漏れる。

 だが、不思議なことに、天使は椅子には直に座らず、少々浮いているようだった。


「皆の者、集合御苦労。

 僅か数カ月の予告期間で集まってくれたことに礼を言う」


「と、とんでもございませぬ。エルダリーナ様のお呼びとあらば……」


「それにしても久しぶりだの。20年ぶりか。

 はは、さすがに皆歳をとったようだ。幾人かは代替りしておるか……」


「エルダリーナさまにおかれましてはお変りも無く……

 お、おおっ! お、お背中の神威の翼が3対6枚にっ!」


 ふたたび男たちの驚愕のため息が広がった。

 ただでさえ天使は神々しく光っているのに、それに圧倒的な神威が加わって、ろくにお姿を拝することすら出来ない。


「なに、いささか昇格しただけのことよ」


 男たちがいっせいにこうべを垂れた。


「こ、心よりお祝い申し上げ……「そのようなことはどうでもよい」」


「はっ、うははーっ!」


「皆に集まって貰ったのはだの。

 神界の任務上、少々カネが必要になったのだ。

 最終的に金を50万トンばかり売却することになるやもしれぬ」


 男たちが一斉に息を呑んだ。


「せ、世界の年間金産出量の200年分をお売りになると……」


「なに、そう急いでカネを使うわけでもないがの。

 だがお前たちのシンジケートでいくらか引き取ってもらえんかと思ったのだが……

 もし無理なようであれば市場で売るが?」


「お、おおお、お待ちくださいませっ!

 そっ、そのようなこと…… 人類空前の大恐慌が……」


「安心せい。

 わたしとしても、まだ毛むくじゃらで石器を使って暮らしていたころから育てたお前たちが苦しむ姿は見とうない」


「う、うははぁっ!」


「金を売却したカネで、お前たちの作った品を買うつもりだ」


 脂汗を流していた男たちが、目に見えてほっとした。


「つ、つまり、商品購入の対価を金でお支払いになられると……

 と、ということは、最大で20兆ドルを超える商品購入の可能性が……」


「まあ最終的にいくら使うかはわからんが。

 だが、購入額が大きければ、大恐慌どころか大好景気になるやもしらんの」


「ご慧眼の通りかと……」


「どうだ。少しずつになるが順次金を預けるので、その分でお前たちの商品を買わせてもらえるかの?」


「も、ももも、もちろんでございます……

 と、ところで、どういった商品をご所望でございましょうか?

 兵器等も含まれるのでしょうか……」


「そうさの。あ奴の発想はこの私ですら追いつけんことも多いでのう……」


「は?」


「い、いやこちらの話だ。

 まずは大量の食糧になるだろう。あとは日用品か。

 兵器系はまず無かろうから安心するがよい」


「ははっ!」


「金の搬入と購入希望品は追って連絡させよう。

 金の買取価格についてはそなたたちに任せるが…… 

 まあ市場価格の25%引き程度でかまわぬ。

 だが、あまりあこぎなマネはするなよ」


「め、滅相もございませぬ!」


「今日は取りあえず50トンの金を持参した。

 この部屋に運んでも大丈夫か?」


「ははっ! この建物の地下深くは核シェルターになっておりますれば、50トンにも充分耐えられる強度はあるかと……」


「そうか、それではここに出すとするか」



 天使が座る椅子の前に50トンの眩い金塊が出現した。

 また男たちから畏怖のため息が漏れる。

 天使が薄く微笑んだ。


「ふふ。取引が上手く行った暁には、そなたらの希望も聞いてやれるかもしらんの」


「う、うはははぁぁぁぁぁーっ!」


「それではまた後日連絡をしよう。連絡手段はいつも通りでかまわぬか?」


「は、はいっ!」


「それでは集まってもろうた礼に、土産の品を渡すとするか」


 天使がそう言うと、その場に10本ずつ2種類、計20本の小瓶が乗ったテーブルが現れた。


「こちらがいつものエリクサーだ。いかなる病も治癒しよう」


「う、うはははぁぁぁぁぁーっ!」


「そうして、こちらは毛髪再生薬だ。塗れば数日でフサフサになる」


「は?」


「い、いや、新開発の試供品だ。あ、あまり気にするな……」


「ははぁっ!」


「それではよしなに……」


 そう言い残して上級天使は消えた。

 後に残された男たちは、或る者は神威に触れた喜びに身を震わせ、また或る者は畏れに身を震わせていた……



 だが……

 天使のトーガの下、やはり神々しくも美しい上級天使のおしりが、真っ赤になって少し腫れていることにはもちろん誰も気づいていなかったのである……







 翌日、俺は拠点の丘の下に大きな円形のプールを作ってやった。

 そうして、丘の斜面を利用して、ウォータースライダーも3つ作ったんだ。

 ひとつは小さいヤツで、精霊っ子用だ。


 水はダムから転移させて来たから氷河の冷たい水だったんだけど、火の精霊たちにまず入ってもらって暖めてもらったんだよ。

 はは、赤いトカゲが100匹以上もプールに浮かんでるのってシュールだわ。

 しっぽをふりふりしながらけっこう器用に泳いでるし。

 でもちょっとワニっぽくて怖いのはここだけの話だが。


 子供たちはもう大喜びだ。

 ひとり1日1時間までだよ、って言ったんだけど、もうみんなめいっぱい遊んでるよ。

 辺りには「うきゃーっ♪」とは「ひゃーっ♪」といった楽しそうな歓声が響き渡っている。

 まあ、管理システムイブに頼んで監視員やってもらってるし、みんなに加護もあげてるから大丈夫だろう。


 列に並んでスライダーの順番待ちをしている子たちもみんな楽しそうだ。

 社会のルールっていうものも、こうして学んでいくんだろうな。

 あ、水の精霊がスライダーの上で水出してあげてるんだ。

 そうだよな、水流れてないと滑り悪いもんな。



 子供たちが全員まっぱなのは……

 ま、まあそのうち水着も買ってやるか……

 し、社会のルールだもんな。


 はは、みんなスライダーで滑りまくって、おしりがまっ赤っかになってるわ。


 あ…… お、おいそこ!

 ローゼさま! アナタは水着着てくださいっ!

 まっ赤なおしり丸出しにしてなにやってんすか!





 翌日。

 発電用のダムに転移させていた氷がようやく溶けて、発電が始められるようになった。

 記念すべきガイアで初めての発電開始だ。

 うん。発電機は順調みたいだな。

 発電機のパイロットランプが光って電圧表示が変わり始めたよ。

 はは、水の大精霊ウンディーネが、「水がお仕事して光を作ってる……」って言って感激してるわ。


 ああ、けっこう水量には余裕がありそうだなあ。

 そのうちにもう5台ぐらい発電機買おうか。


 それから俺は、アダムに発電所の運用を任せて砂漠地帯に転移したんだ。


 水力発電所で確保できた電力で、これからいよいよ砂漠の砂をシスティの天使域に転移させる作戦を開始出来る。

 もうガイアでの生活にもすっかり慣れてきた悪魔っ子たちに、大型掃除機を持たせて大砂漠の砂掃除を始めさせてみた。

 まずは大砂漠地帯の北部、岩石地帯が砂漠になり始めるところから始めて、徐々に南下して砂を除去して行こう。


 それにしても悪魔っ子たち、すっげえ楽しそうだったぞ。

 俺の強化スキルで超強力になった大型掃除機に、どんどん砂が吸い込まれて行くのが面白いらしい。

 うん。なんとなくその気持ちはわかるな。

 まるでスイープ系のゲームだもんなあ。

 掃除機に吸い込まれた砂は、そのままシスティの天使域の倉庫に転移するから、重くもならないし。


「なあ、ウンディーネ。

 この掃除機の力も水が仕事して作り出してるんだぞ」

「うん。すごい……」

 はは、ウンディーネが涙ぽろぽろ零して感動してるよ。



 悪魔っ子たちは、そのうち掃除機を付属のベルトで背中に背負ってふよふよと飛び、きゃーきゃー言いながらお掃除を始めた。

 最近覚えた浮遊の魔法が楽しくてしょうがないらしい。

 掃除機からの排気が少し推進力にもなってるし。


 でも…… うん。知らなかったよ。

 女の子たち…… キミら全員パンツ穿いてなかったんだね……

 ということは男の子たちも穿いてないのね……

 それも『種族特性』なのかな?

 だからあんなに粗相の勢いが激しかったんだね……


 あの…… 地球の男の子代表であるボクの精神の平衡を保つためにも、もしよかったらパンツ穿いてくれないかなー。



 ということで、俺は彼らを連れてまたシスティの天使域に行って、ショップでみんなに下着を買ってやったんだ。


 あーキミ、それ黒レースのTバックだからね。水の精霊のお姉さんたちの御用達だから、キミはもっと大人しいのがいいと思うよ……

 ああ、キミも…… それはローゼマリーナ様用のブラだから……

 カップにキミの頭がすっぽり入っちゃうぐらいのやつだからさ……

 キミにはまだ必要無いんじゃないかなー……



 俺は彼らに下着を身につけてもらい、翌日恐る恐る感想を聞いてみた。


「運動したときに、擦れなくって痛くないから嬉しいです」(男女)

「なんかおしりがあったかくて嬉しいです」(女の子)

「走ってるときぶらぶら揺れないんで、早く走れるようになりました」(男の子)

「でもたまにおトイレで脱ぐの忘れてエラいことになっちゃいました」(男女)


 よかった…… おおむね好評だわ。

 翌日パンツ穿かずに走ってみて、明らかにタイムが落ちてたの見て俺も納得したし。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ