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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
39/325

*** 39 ダム見学会と氷のショー…… ***

 


 俺は、氷河の氷をダムに運ぶ労力の低減のために、氷河の末端のやや上流側から、下のダムに向かってトンネルを掘ることにした。

 最初は氷河の横の岩山に穴を掘り、それを漏斗状に成形したあと、俺はダムに向かって斜め下方向にトンネルを掘り始めた。

『岩石液状化』と『物質転移』と『固化』によって掘られる直径80メートル程のトンネルだ。

 掘り出した岩石はアダムの倉庫に移している。


(おーいアダム、この方向で大丈夫かー)


(右に5度ほど逸れてます。ああ、それでOKです。

 あと、もう少しだけ斜度を大きくしてくださーい)


(了解ーっ!)


 最後の300メートル程はトンネルを水平にした。

 そうしないと氷が落ちて来た勢いで、最初のうちはダム底が痛むからな。

 そうして掘り進み、予定通りダムの壁の途中、底面から1000メートルほどのところに出たんだよ。

 へへ、カタパルトみたいだわ。

 ダムに深さ1000メートル以上の水が貯まったら、もう一本トンネルを掘るか、トンネルの出口を上にずらせばいいだろう。



(おーい、アダム。氷のキューブを1個落としてくれーっ!)


(かしこまりましたーっ)


 しばらくすると、なんかガコガコいいながら氷のキューブが落ちて来た。

 素晴らしい勢いでトンネルから抜け出したかと思うと、放物線を描いて落ちて行き、ダムの底面にブチ当たる。


 どっが~ん!

 きゃ~っ♪


 あ、またヘンな音がしてるわ。

 そういやああのマナ建材で固めてあったんだっけ……

 氷は粉々になって、そのままものすごい勢いでダムの底を滑って散らばって行った。

 一部は20キロも離れた反対側まで届いてたよ。


 俺はダムの底に降りて氷が落ちて少しヒビが入った個所を『練成:液状化』で補修し、それからトンネルにもぐって内部の岩盤を圧縮して固め、表面を滑らかにしながら氷河に戻ったんだ。



「トンネルの具合はいかがでございましたでしょうか」


「こ、これオモロイわ……

 次は氷を直方体にしたり、円筒形にしたりしておくから、それを穴に入れてくれるかな」


「は、はい」


 俺はまたダムに戻った。


(アダム、いいぞおー)


(それでは行きまぁーす)


 しばらくすると、トンネル内から、「しゅおおおぉぉぉぉ~ん」という音が聞こえて来た。

 その音がだんだん大きくなったかと思うと、ダム内の穴からさらに素晴らしいスピードで直方体の氷が飛び出て来る。

 50メートル×50メートル×80メートルほどの塊だ。

 その巨大な氷塊は、美しい放物線を描いて飛び、ダム内を5キロほども飛んでから着底した。


 ずず~ん!

 みょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~ん♪

 しゃーーーーーーーーーっ!

 ……………………………………

 どごっ!

 ぴぎょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~ん♪


 おお、数分もかけて15キロも滑って行って、反対側の壁にブチ当たっとるわ。

 こ、これむちゃむちゃ面白いな。


 俺はダムの底全体をマナ建材で厚さ50メートル程補強した。

 中央部の氷が落ちそうな部分と滑る部分は、敢えて30メートルの補強に抑えてある。

 そうしてあと数回氷を滑らせて満足し、観客席を2つほど作ると、俺たちは夕闇の迫る中システィの天使域に帰ったんだ。





 そして夕食後。

「なあ、明日は1日仕事をお休みにしてピクニックに行かないか。

 ちょっと面白いところがあるんだ」


「それ楽しそうね。みんなで行くの?」


「うん、精霊たちも悪魔っ子たちも全員だ。

 ローゼさまもエルダさまもいかがですか?」


「喜んで♪」

「ふむ。楽しそうだの」


 そして翌日。

 俺はまずみんなを氷河の末端に連れて行った。


「わぁー、すごい場所ね。氷があんなにたくさん」

「氷の蒼さと雪の白さのコントラストが素晴らしいのう」

「似たような場所はありますが、ここは規模がぜんぜん違います。

 こんな素晴らしい場所があったんですねえ」


「「「「「わぁー、すっごーい♪」」」」」

「「「「「お水が綺麗ねーっ♪」」」」」」

「「「「「氷も綺麗ーっ♪」」」」」」



 俺は重力魔法で宙を飛び、『レーザー』で氷をスパスパ切る実演も見せてやった。


 はは、みんなきゃーきゃー言いながら喜んでくれてるよ。

『レーザー』が使える光の精霊たちも、楽しそうにマネしてたぞ。


「おらおらおらおらぁ~っ! 

 光の大精霊さまの恐ろしさを見よぉーっ!」


 うん。約1名興奮してるのがいるけど無視するか。

 でも、フレンドリーファイアだけは起こすなよな。

 他の精霊たちや悪魔っ子たちはそれを羨ましそうに見てたんだ。


「みんなも練習したらあの魔法も使えるようになるからな。

 がんばって練習しような」


「「「「「「「「「「 はぁ~い♪ 」」」」」」」」」」



 そうして俺は、アダムをその場に残してみんなをダムに連れて行ったんだよ。


「す、すっごいダムね……」


「ほう! これほどのものをお前ひとりで作りおったのか!

 内壁が白く輝いているではないか!」


「すごいです! 綺麗です! これでまた読者が喜びます!」


「このダムは、直径20キロ、深さ2キロほどで、有効貯水容量は6000億トンほどあります。地球最大のダムの約3倍ですね」


「それにしては流れ込んでいる川も無いようだが。

 水はどうやって溜めるのだ?」


「川の水を引くと、下流域の魚が全滅してしまうかもしれませんからね。

 少々面倒ですが生態系に影響の無い手段を取ろうと思いました。

 それでは実演させていただきますね。

 おーい。みんなもダムの中をよく見てるんだよー」


「「「「「「「「 はぁーい♪ 」」」」」」」」


 はは、みんなダムの淵に作った観客席の手摺に寄り掛かって、ダムの中を見ながらきょろきょろしてるな。


「さあアダム。よろしく頼む」


(かしこまりました)



 しばらくすると、またトンネル内から「しゃーーーーっ」という音が聞こえて来た。

 その音がだんだん大きくなって来ると……


「しゅぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~ん!」


 すごい音をたてて弾丸型の氷が飛び出して来る。

 はは、氷の直径をトンネルの直径に近くしてあったからな。

 だから空気の音があんなに大きくなったんだよ。

 いい演出だろ?


 ふふ。子供たちはびっくりして声も無いか。

 あ、大人たちもだ……


 氷の弾丸はダムの中を5キロほども飛び、ダムの底に20メートルほど溜まっている水に着水した。


 びしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーんっ!

 みょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~ん♪


 弾丸は見事な水柱を上げて着水すると、そのまま大きく水を跳ね飛ばしながら滑水して行く。そうしてスピードを落としながらダムの反対側に到達した。


 どがっ!

 みよん♪


 そう……俺が昨日移動させた氷が溶けて、ダムの底に少し溜まっているんだよ。

 その水が氷の落下の衝撃を吸収してくれるから、もうダムの内壁は傷まないだろう。


 しばらくして、絶句していた子供たちが我に返った。


「「「「「「「「 わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ! 」」」」」」」」

「「「「「「「「 きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ! 」」」」」」」」

「「「「「「「「 すごいすごいすごいすごいっ! 」」」」」」」」


 へへ、大ウケだな。


「「「「「「「「 もう1回! もう1回! もう1回! 」」」」」」」」


「よし。お前たちが飽きるまで何度でもやってやる!」


「「「「「「「「 わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーいっ! 」」」」」」」」


「アダム。次よろしく」


(かしこまりましたサトルさま)



 はは。いろんな氷の塊を用意してあるからな。

 次の氷はまん丸だった。

 直径がよりトンネルの内径に近かったんで、氷塊がトンネルを抜け出るときの「しゅぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~ん!」っていう音も大きかったな。


 その次はまん丸氷3連発、その次は6連発だ。

 それから小さな丸氷30連発もあった。まるで散弾だったよ。

 それから舟の形もあったし、ひょうたんみたいなのもあった。


 子供たちや精霊たちはもう大喜びだ。

 みんな顔を真っ赤にして汗びっしょりになって大歓声を上げている。

 あ…… 俺以外の大人も全員だわ。

 みんな童心に帰っちゃってまあ。


 俺はまた重力魔法で宙を飛び、トンネルの出口の横100メートルほどのところに作った頑丈な岩棚の上にみんなを連れて行った。

 もちろんベンチも柵もある。

 ここに座ればもっと近くで氷のショーが見られるだろう。


 みんなはさらにヒートアップして大喜びだ。

 それに、この場所だと、氷塊が穴から飛び出たときの風圧も感じられるんだよ。

 何人かの精霊っ子が飛ばされちゃって、親たちが慌てて飛んでって掴まえてたけど。

 でも子供はそれがまた面白かったらしくて、「うきゃーっ♪」とか叫びながらますますヒートアップしてたわ。

 まあ、あいつら全員飛べるから大丈夫だろ。


 俺はときおり氷河に転移して、ダムに落とす氷を整形してはまた戻ったんだ。



 それにしてもさ……

 もうさっきからずっと30分近く氷のショーを見てるんだけど、みんなぜんぜん飽きないんだよな。

 そうか…… 今までこんな遊びって経験無かったんだ……

 なんか俺、ひとりでしんみりしちゃったわ。

 これからは、お菓子やゲームばっかりじゃあなくって、こういうレジャーも楽しませてやろうか……

 きっと、みんなでこうしてきゃーきゃー言って、一緒に楽しさを味わうっていう経験もE階梯を上げて行くことに通じるんだろうから。





 そのとき、トンネル内からみょーな音が聞こえて来た。

 なんだか「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーっ!」って聞えるんだ。

 ま、まさか……


 次の瞬間、そのまさかがトンネルから飛び出て来た。

 あ、なんか空中でくるくる回ってる……

 あ、水面に落ちた……


 おいおい、手足が曲がっちゃいけない方向に曲がってんぞ!

 首もま横に曲がってんぞ!

 あ! ケツの肉が全部削られて無くなってる!



 ベギラルムはそのまま水面にぷかーっとうつ伏せに浮かんでいた。

 10秒ほどで暖かい光に包まれて復活する。

 な、なんだかトンネルの中からも少し光が出てきて合流してるぞ。

 あ、そうか。あれ擦り減っちゃったケツの肉か……


 ベギラルムは、そのままふらふらと飛んで岩棚に帰って来たよ。

 まあさ、ここは俺が作ったし、今はシスティもいるから『復活の加護』の効力は充分だけどさ。

 なにもそんなことで死ななくてもいいだろうに……


「おーい、みんな見たかぁ! 

 あれ自分で滑るとああやって死んじゃうからなー。

 よい子はマネしちゃダメだぞー」


「「「「「「「「 はぁーい! 」」」」」」」」


 うむ、素直でよろしい。


「ううううっ。 し、しんでしまうとはなさけない……

 それがし、まだまだ修行が足りもうさん……」


 何の修行だよそれ! 

 ウォータースライダー・マイスターでも目指してんのかよ!

 こんな恐ろしいウォータースライダー、どこにも無ぇだろうに!

 なにしろ全長5000メートル、標高差3000メートルだぞ!

 ふつーのヒト族だったら途中で擦り減って、無くなるぞ!

 しかもスライダー出口から水面まで1000メートルもあんだぞ!



 そのとき、またトンネルから奇声が聞こえて来たんだ。

 今度は「うほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~」って聞える……


 そうしてその奇声がトンネルから飛び出してくると……

 光輝く体が、空中で仰向け姿勢からうつ伏せ姿勢に見事に半回転し、同じく光輝く翼を広げて滑空し始めたんだよ。

 あの光って、『身体強化』だよな。それも特上の。

 特にお尻が強く光ってるから重点的に強化してるよな。


 その奇声のぬしは、鮮やかに旋回して戻って来ると、ちょードヤ顔で子供たちの超絶大歓声に迎えられていた。


「ふはははははははははは! 見たか上級天使のワザを!

 だがお前たち、これは数万年の修行を積んだわたしだから可能なワザなのだ!

 まだお前たちはマネなぞしてはいかんぞ!」


「「「「「「「「 はぁーい! 」」」」」」」」


 あの…… 

 上級にもなられた天使サマはふつーそんなことしませんけど……

 それにエルダさま、どうしてアナタさまは今、まっぱなんでしょうか……

 まあ、服なんか着てたら、間違いなくおしりのとこ擦り切れて、丸出しになってたでしょうけど……

 でも、『身体強化』かけてても少しは擦れたみたいで、おしりまっ赤ですね。

 そんなまっ赤なおしり丸出しにしてドヤ顔されても……


 あ…… お、おいそこ!

 ローゼさま! なんでアンタもトーガ脱ぎ始めたのさ!

 危ないから滑るのはヤメなさいってば!




 その後はみんなでダムの上に戻ってお弁当を食べたんだ。

 あー、精霊っ子たちがみんな寝ちゃってるよ。

 興奮しすぎて疲れちゃったんだな。

 はは、悪魔っ子たちもうつらうつらしてるわ。


 その後は俺やアダムやシスティが、手分けして精霊っ子たちや悪魔っ子たちを転移させてやって帰ったんだ。

 みんな、今日は楽しかったね……




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