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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
38/325

*** 38 超巨大ダム完成! ***

 


 東河の中流域ではもう護岸工事が始まっていた。

 アダムの調査で、雨期に毎年洪水を起こす箇所が特定出来たからだ。

 やつの計算では、南北およそ1000キロに渡って高さ10メートル程の堤防を作れば、中央平原の大洪水は防げるとのことだった。


 このとき、東河の東側はほとんど手をつけずに自然をそのまま残す。

 特に東の山脈から流れ込んで来ている支流はそのままにする。

 河の東側には街や農地を作るつもりは無いし、いつかは自然公園とかも作ろうと考えているからだ。

 河の西側は、大平原に洪水が起きないようにきっちりと堤防を作ろう。


 まずは植物の精霊が、今ある河の西側の植物を移動させる。

 それから土の精霊が少し川底を均し、大きな岩石を砕いて川の両端に寄せる。

 そこでさらに周囲の岩石を練成して、河から100メートルほど離れたところに、余裕を見て高さ15メートル、幅50メートルほどの堤防を作って行くんだ。

 岩石が足りない場合は、俺が掘ったダムの岩石を世界管理システムアダムが転移させて来て使用する。

 崩れたりしたら危ないから少しずつゆっくり運ぶように言っておいた。

 それでももし材料が足りなくなったら砂漠の砂を使うつもりだ。


 そうして、ざっくり整えた堤防の形をさらに整えたり表面を滑らかにしているのは、土の精霊たちに指導を受けた他の精霊たちや悪魔っ子たちだ。

 悪魔っ子たちは、必ず2人ひと組みにして作業をさせている。

 1人が作業をして、もう1人がいつでも体を支えられるようにバックアップしてるんだ。

 体内のマナが尽きて気絶するまでの作業だからな。

 ヘルメットだのその他防具もつけさせてるし、俺の加護で防御力も強化してあるから転んでも怪我なんかしないだろうけど、まあ念のためだ。


 悪魔っ子がマナ枯渇で気絶すると、周囲を飛んでいる光の精霊達がすぐにやって来て治癒キュアをかけてくれる。

 そうして相方が大量に用意してあるマナ・ポーション(初級)をゆっくり飲ませるんだ。

 悪魔っ子たちの魔力もどんどん上がって来ていて、気絶までの時間もずいぶん延びて来ているそうだ。

 早く総合魔力Lv100以上になるといいね。


 お昼になるとシスティーが転移して来て、「みなさんお昼ですよー♪」と声をかける。

 そうするとみんなが、「「「「「わぁ~い♪」」」」」って集まってきて、大勢でわいわいお弁当やらハンバーガーやらを食べるんだ。

 精霊たちと悪魔っ子たちが入り乱れて実に楽しそうな光景だよ。

 こいつらすっかり仲良くなったよなあ。



 笑っちゃったのは、堤防の上のところどころに1メートルほどの像が立っていることだった。

 精霊の形をしていたり、悪魔っ子の形をしていたりするんだ。

 中にはなんの像かわからんようなのもあったし、見事な芸術作品もあったりといろいろで、見ていて実に楽しいんだよ。


 きっと、自分達が堤防を作ったことを形として残しておきたかったんだろうな。

 中にはシスティや俺の像まであったんだぜ。

 ベギラルムの像は実に怖かったけど。

 あれどう見ても魔除けの像だよなあ。

 将来、ピクニックに来た小さな子とかが見たら泣くんじゃないか?


 今は日に数百メートルしか進んでいない作業だけど、悪魔っ子たちの魔力アップも目的のひとつだからゆっくりやろうや。

 堤防の予定総延長は1000キロもあるんだしさ。


 大平原西部の堤防造りはもう少しみんなが慣れてからだな。

 こっちはあんまり氾濫しないみたいだし。

 堤防工事現場の視察を終えると、俺はシスティの天使域に帰ったんだ。




 それから6週間後。

 ようやくダムの掘削が終わった。さあ、次はダムの内壁工事だ。

 この頃になると、俺の魔力もけっこう上がってたんで、工事もだいぶ早く楽になって来ていたよ。


 お、壁面の何カ所からか地下水が噴き出ているな。

 アダムに場所を記録してもらって、後で水抜きの穴を通すか。

 ダムに水が溜まらないうちに、あの地下水の圧力で壁面が崩壊したら困るからな。


 俺はダムの内壁に沿って飛び、側面に『平滑』の魔法をかけて平らにして行った。

 それからまたアダムに言って、ざっくりと表面を削ったダムの底に、あの白砂状のマナ建材を16立方キロほど転移してもらったんだ。

 その間に俺は、ダムの底面の岩石を深さ20メートルほどに渡って、『相転移』の魔法で液状化させた。

 ふう、範囲が広いからそれなりに大変だわ。

 またマナ・ポーションをちびちびと舐めながらの作業だな。


 それが終わると今度はマナ建材も『相転移』の魔法で水並みの粘度の液体にする。

 まっ白な液体がみるみるダムの底部に広がって行き、30分ほども経つと、それはダムの底中に行き渡った。


 もちろん液状の岩石とも混じっているが、各種の金属資源を抜き出した後だけあって、マナ建材の方が岩石よりも若干軽い。

 だから表面はまっ白なままなんだが、液状岩石との境界面は相当に混じり合っていることだろう。

 そうして俺が岩石もマナ建材もゆっくりと元通りに固化させると、頑丈で水平なマナ建材の底面が出来上がったわけだ。


 この魔法建設のコツは、温度や体積の変化を伴わない『液状化』を使うことなんだ。

 そうすれば液体から固体に相転移したときに、体積が変わらずにひび割れが出来ないからな。

 うんうん。なかなかの出来栄えだよ。

 直径20キロに渡って広がる純白の平面だ。

 そのうちに水の底に沈むのがもったいないぐらいだな。


 はは、この星の球面曲率に沿って底が少し丸くなってるのか。

 中央に立つと、超強化されている俺の視力でも、周辺部のフチが見えないもんな。

 なんか星の丸さが実感出来るって不思議な光景だよ。

 さて、次は周囲の垂直な壁にマナ建材を塗りつける工事か。



 俺はまず7立方キロほどのマナ建材をダムの底、壁に沿って積み上げて行った。

 また魔法マクロ定義の出番だ。


「魔法マクロ定義 マクロ名【建材吹きつけ×1】

『マナ建材を、粉末のまま魔法発動者の前面に立つ壁に向かって、幅100メートル、厚さ25メートル、高さはダムと同じになるよう吹きつけよ。

 次に壁面岩石と粉末マナ建材の位置はそのままで、壁面岩石は厚さ5メートル、粉末マナ建材はすべて液状化し、両者の接触面を融合させよ。

 ただし、壁面が既にマナ建材で覆われていた場合は、マナ建材同士を液状化して融合させることとする。

 また、左側にすでに完成していた壁面があった場合は、その壁面の側面とも融合させ、さらに底面のマナ建材とも融合させることとする。

 両者の接触面が充分馴染んだら、全ての岩石とマナ建材を固化させよ。

 次の作業は今作成した内壁の右隣から始めるものとする』

 以上、魔法マクロ定義終了」


 ふう。けっこう長いマクロだったけど、どうやら上手く行ったみたいだな。

 はは、この白い壁っていうか帯っていうか、すごいもんだぞ。

 なんだか不思議な光景だ。



「なあアダム。マナ建材内や壁面岩石との境界面に、クラックや空洞があるかどうかチエックしてくれないか?」


(まったくございません。見事に融合しております)


「そうか。それじゃあ念のために、今のマクロをあと2回発動してみようか」



 マナ建材の砂の粒がザーっと音を立てて飛んで行く。

 数分後。ダムの壁面は幅300メートルに渡ってマナ建材の壁で覆われていた。


(100メートルごとのマナ建材の接合部も、完全に融合しており不都合は見当たりません)


「そうか。それじゃあ……

「魔法マクロ定義 マクロ名【建材吹きつけ×100】

『【建材吹きつけ×1】のマクロを100回発動せよ』

 魔法マクロ定義終了」


 おおーっ! 見てる間にマナ建材の内壁がどんどん伸びて行ってるぜ。

 このマクロ一発で10キロに渡って内壁が出来たか。

 このまま60回ほど繰り返せばダム内を1周出来るな……

 それをあともう1周繰り返せば、厚さ50メートルのマナ建材の内壁の完成だ。

 念のため底面と側面が交わっている場所は、Rが出来るように充分補強しておこう。


 こうして俺は、また『マナポーション(超級)』をちびちびと舐めながら、ダムの内壁を作って行ったんだ。


 最後にダムの周囲に頑丈な柵を作って巨大ダムは完成した。

 後は飲料水用と発電用の3つのダムか。

 こっちは小さいからすぐ出来るだろう……




 こうしてガイア世界の北部山岳地帯に巨大ダムを含む4つのダムが完成したんだ。

 どれも内壁が純白に輝く非常に美しいダムだ。

 なんだか非現実的な光景だよ。


 そうしてエルダさまのところの悪魔さん達が、市販されている中で最大の水力発電装置と蓄電池や変圧器を発電ダムに設置してくれたんだ。

 全部合わせて12億円ほどかかったが、何の問題も無いだろう。

 もうエルダさまには金を50トン渡してあるし。


 そのレベルの発電機になると、設置は発電機メーカーの社員がやってくれるそうなんだが、まあそういうわけにもいかないからさ。

 地球の悪魔さん達がヒトに化けて何日もかけて設置研修を受けてくれたらしい。

 まあ俺も一緒に水路を『練成』して作ってやったから、比較的楽に設置出来たみたいだ。

 上の小ダムに水を少量転移させてのタービン回転テストも上手くいった。


 俺は「これでみんなでなにか旨いもんでも喰ってくれ」と言って、感謝の言葉とともに悪魔さんたちに300万円ほど渡してやったんだ。

 そしたら連中、泣いて感激しながらも嬉しそうに帰って行ったよ。

 みんなで分配すれば、悪魔界への里帰りのときにお土産も買えるだろ。



 この発電所の建物は、俺が作ったからシスティの天使域にもなっている。

 だからアダムが転移装置に電源ケーブルを通して、直接電力を確保できるようになったんだ。

 それを既に購入済みの大型掃除機に繋げれば、いよいよ『砂漠の砂お掃除大作戦』が始められるようになるな。

 だから早くダムに水を貯めなくっちゃだ。




 翌日、俺は完成した北部山岳ダムから標高にして2000メートルほど上、距離にして4000メートルほど離れた大氷河の末端に転移した。

 この氷河は、遥か高山の山頂付近に端を発し、西北方向から東南方向にかけて流れ、東河の源流になっているんだ。

 それにしてもすげえぞこの氷河。圧倒的な氷の量だわ。

 氷河の幅だけでも3キロぐらいあんぞ。

 厚さも500メートル近いし……



 氷河の末端では時折巨大な氷塊が大音響とともに崩れ落ちていた。

 そこからは見てるだけで吸い込まれそうになるような蒼い水が滔々と流れている。

 俺はその光景にしばらく見入っていた。


(ここ、将来はけっこうな観光地になるかもな……)


 しばらく景色に見とれた後、俺はようやく加護のネックレスと『神界銀聖勲章』を装着して仕事に取り掛かった。

 重力魔法で飛びながら、氷河の末端を『レーザー』で50メートル角ほどに切り取る作業だ。


 まずは上空から縦横に切れ目を入れる。

 おお! これけっこう面白いな!

 さすがのレベル100万だけあって、出力10万キロワットの超高出力レーザーがスパスパと氷を切断して行く。

 切断面からは大きな音を立てて水蒸気が噴き出していた。


 ある程度の範囲を切ると、次は氷河の断面の横に移動して水平にレーザーを当てる作業に移る。

 切断された氷のキューブが、「ガコッ」と音を立ててレーザーの幅の分だけ落ちるのが面白かったわ。


 でも最初は面白がってたくさんキューブを作り過ぎちゃってさ。

 いくら氷河の末端で氷の温度もそれほど低くないとは言っても、氷自体の重さで下の方のキューブ同士がくっついちゃうんだわ。

 だからけっこうやり直しになっちゃったかな。


 そうしてキューブが出来ると、アダムに頼んでそれを下のダムに転移してもらっていたんだよ。

 でもさ。考えてみればあのダム一杯にするほどの氷の転移って大変だよな。

 それでちょっと思案した俺は、氷河の末端のやや上流側から、下のダムに向かってトンネルを掘ることにしたんだ……




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