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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
325/325

*** 325 エピローグ ***

 



 あるとき俺は家族全員とアダムたちとケイちゃんたちを集めた。

 最高神さまもいたんでゼウサーナさまもついてきてたよ。


 「みんな集まってくれてありがとう。

 早速だが例の『破滅エクシティウムトニーテュラ』の分散・無害化計画が始まった。

 最大コストは5000京クレジット、実施期間は1万6000年という遠大な計画だ。

 どうやら、上級神に昇格させてもらったおかげで俺の寿命も1万6000年を遥かに上回るらしいんだけどな」


「ふふ、それどころかその計画を1000回繰り返してもおつりが来るほどの寿命になるかもしらんぞ」


「そのことなんですがゼウサーナさま。

 まだ神にして頂いてから日が浅いもんですから、どうもそういう長寿命の実感が湧かないんですよ。

 それでですね、計画完遂までに俺の寿命が尽きたり万が一のことがあっても、少なくともあの計画だけは中断させたくないんです。

 事は1億の生命発生惑星に生息する全ての命にかかわることですから。


 そこで先日銀河クレジット&資源銀行(GCRB)に信託基金を設立しました。

 現金と資源、併せて5000兆クレジットの基金です。


 アダム、ケイちゃん」


「「はい」」


「俺からの永続依頼として、もしも万が一俺に何かあってもこの基金を使って計画を最後まで続けて欲しい。

 頼んだぞ」


「AI族一同の全てを結集してそのご依頼に沿えるように致します」


「私共ケイ素生命体は、個体としてはそこまでの寿命はございませんが、種族としての全てをもって今後とも努力させて頂くことをお誓い申し上げます」


「ありがとうな。

 それ以外にも俺の奥さんたちや子供たちが何か困難に直面したら、助けてやってくれるかな」


「「ははっ! 種族全構成員の全てを賭して!」」


「はは、実に頼もしいわ……」



 はは、神界や神の力に詳しいエルとローゼとシスティはにこにこしてるか。

 まあ万が一どころか兆が一やら京が一でも俺が死んだりしないことがわかりきっているんだろう。

 最高神さまなんか笑ってるしな。


 でも可哀そうにフェミーナはなんかうるうるしてるよ。

 俺がいなくなったときのことでも想像しちゃったんだろう。

 あとでみんなに頼んでよく説明してもらって、俺も慰めてあげようか……








 それからも俺と奥さんたちの生活はあまり変わらなかった。

 平日はガイアの自宅で毎日みんなで仲良く暮らし、休日は神界に頂いた別邸で6人で子作りの練習だ。

 まあもうみんな熟練者なんで、そんな練習の必要も無いけどな。

 はは。


 どうやらそろそろ沙希も決心を固めたらしくって、俺の6番目の奥さんになってくれるそうだ。

 そのときは別邸の増築でもするか……

 うっかり土の精霊たちに頼むと建坪が平方キロメートル単位になっちゃうから、AI族に頼むとしよう……







 ウサギもどきたちもずいぶん増えたよ。

 全部で500匹以上はいるんじゃないか?


 メスたちは近隣の丘にある別のウサギもどき一族にヨメに行き、オスたちは同様に近隣一族からヨメをもらって、家族を増やして行っている。


 どうやら俺も神力でいくらでも庭が作れるようになったらしいんでな。

 ウサギもどきたちが増えても当面は問題なさそうだわ。

 いざとなったら人工惑星作ってやるし。


 AIたちの惑星ニューガイアも人口が10億人を超えたそうだ。

 まあ50億を超えて少々手狭になって来たら、もう1個か2個惑星を用意してやればいいだろう。

 あんまり過密で人工的な環境じゃあなくって、自然をふんだんに残した惑星のままであって欲しいからな。





 神域の別邸の周りでは、大中小さまざまな大きさのウサギもどきたちが、いつも跳ねまわっている。

 どうやら俺たち家の近くっていう付加価値もあるらしく、近隣の一族も加わっているらしい。

 野原に食べ物が少ない時期には、遠くからやってくる連中もいるしな。

 ほっしーたちは、遠方から来るウサギもどき一族も絶対に拒まずにいつも歓迎してやっていたよ。

 そのせいか、奴らは他の一族にもずいぶん感謝されて尊敬されているようだった。



 大勢のウサギもどきたちの中心にいるのは、もちろんほっしーとつっきーだ。

 もうつっきーは子供を産まなくなったけど、その周囲にはたくさんの孫たちや曾孫たちやそのまた子供たちがまとわりついている。

 ああ、ちっこいのがほっしーたちにうんしょうんしょとパンを運んでいってら。


 ほっしーたちも歳をとったな。

 毛並みも少しぱさぱさになったし、体もちょっと縮んだように見える。





 この神域の庭にも、穏やかながら四季はある。

 或る冬の寒い日、ほっしーたちが別邸の庭に姿を見せなかった。

 もう跳ねることは出来ずにゆっくりと歩くだけになっていたんで、少し心配だった。


 それで夕方、俺たちはほっしーとつっきーの巣穴に様子を見に行ったんだ。

 夜は寒いだろうから、毛布や温めた石でも差し入れてやろうかと思ってな。


 そしたらさ、近所に独立した巣穴を構えている大きなウサギもどきたちが、ちっこい子供たちを連れて、続々とほっしーたちの巣穴に入って行ってるんだよ。

 あれ確かほっしーたちの子供や孫一家だよな。



 俺は神力を使って巣穴の中を覗いてみた。

 驚いたよ。

 大きなウサギもどきが周囲を固め、その中にちっこい子供たちがたくさんいて、山を作っていたんだ。

 あの山の中にほっしーたちがいるんかな?


 あ、ちっこいウサギもどきの山がもぞもぞ動いた。

 あはは。

 ぷはぁっていうカンジでほっしーが顔を出したわ。


 あれじゃあ息が苦しくなりそうだもんなあ。

 それに子供たちの体はあったかいからな。

 ほっしーの毛が少し汗で濡れてるようにも見えたよ。


 俺たちは安心してガイアに帰ったんだ。





 それから数カ月後。

 別邸の庭でくつろぐ俺たちの前に、大勢の大きなウサギもどきに支えられた、ほっしーとつっきーがよろよろとやってきた。

 俺と奥さんたちの前で、ほっしーがもの言いたげに俺を見上げる。


 俺は神力を使って、ほっしーたちと初めて思考コンタクトをした。

 ほっしーは何度か目をしばたたいて驚いたあと、思念を送って来た。



(かみさま…… そろそろ、おわかれのときが…… きたようです……)


「そうか…… お前たちもけっこうな歳だもんな……」


(ほんとうに…… ありがとうございました……)


「なあほっしー、俺の神力でお前たちを若返らせて永遠の命を与えてやることも出来るぞ」


 ほっしーとつっきーは微かに首を横に振った。


(かみさまのおかげで…… こどもたちはおなかいっぱいたべることができました……

 そのこどもたちも…… そのまたこどもたちも……

 だれも…… しにませんでした……

 これいじょうの…… しあわせは…… ございません。

 このうえは…… かみさまのおにわのつちにかえって…… 

 みんなをみまもって…… やりたいと…… おもいます……」


 ほっしーとつっきーは涙を零しながら頭を下げた。



「そうか……」


(それにかみさま…… 

 なんだか…… また……

 おあいできるようなきが…… いたしますのですよ……)


 俺にはそのときほっしーとつっきーが微笑んでいるように見えたんだ。




 ほっしーたちはそのまま俺とシスティの腕の中で息を引き取った。

 周りでは500匹を超えるウサギもどきたちが立ち上がってぽろぽろと涙を流し、ちっこいウサギもどきたちがぴーぴー鳴いていたんだ……





 それから半年ほど経った或る日。

 俺たちはまた別邸の前の庭でウサギもどきたちに食べ物をやっていた。

 連中は争うことも無く、俺たちの前に小さい順に並んで列を作っている。

 そうして食べ物をもらうと嬉しそうにぴーぴー鳴いて、はぐはぐ食べ始めるんだ。

 それはそれは賑やかで心温まるいつもの光景だよ。



 そのとき、突然ウサギもどきたちが動きを止めた。

 そうして全員が後ろ足で立ち上がって2つの道を空けたんだ。


 その空いた2つの道を、まだ若い母親らしきウサギもどきが2匹、俺たちに向かってゆっくりと歩いて来た。

 大勢のウサギもどきたちが、まるでその母親たちに敬意を払うかのように注目している。

 あ、あの母親たちって確かほっしーとつっきーの曾孫だよな……


 母親たちは、その手にそれぞれ生まれたばかりとみられる小さな小さなウサギもどきを大事そうに抱えていた。

 まだ目も開ききっていないような赤ん坊のウサギもどきだ。

 全身には薄茶色の細かいぽわぽわした毛が生えている。


 母親たちは俺と奥さんたちの前まで来ると、静かに俺たちに子供を差し出した。

 俺の手の中の赤ん坊ウサギもどきは、すんすんと俺の匂いを嗅ぎ、小さな声で嬉しそうに「ぴゅい」と鳴いた。

 そうして一生懸命体をもぞもぞ動かして、俺に背中を向けたんだよ。




 ああ…… 毛並みに星型の斑点があるじゃないか……

 お前、ほっしーなのか……

 いやほっしーの生まれ変わりか……


 おお、システィの手の上の赤ん坊の背中には三日月の形の斑点があるじゃないか……

 お前はつっきーの生まれ変わりなんだな……


 俺と奥さんたちの目からはぼろぼろと涙が零れ落ちた。

 そして、2匹の赤ん坊ウサギもどきは、また嬉しそうに「ぴゅい」と鳴いたんだ。





 そのとき…… 俺は突然わかったんだんだよ。


 ああ、これが命を繋ぐっていうことなんだ、って……


 うん。

 これからも俺たちは命を繋いでいくぞ。

 そして必死になって命を繋ごうとしている銀河の全ての生命も守ってやるんだ。

 今の俺にはそれが出来るんだし。

 そしてたぶん、俺にしか出来ないことなんだし。


 このとき、ようやく俺は俺の為すべきことを理解したように思う。



 そうして俺たちは、涙を零しながらみんなでずっと微笑み合っていたんだ……





                 (爆散英雄サトルのガイア建国記 了)






ということで、このお話も無事完結を迎えることが出来ました……

長い間のご愛読本当にありがとうございまする……

                             作者

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