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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
324/325

*** 324 自走式『空間転移装置』のプロトタイプ完成と今後の銀河宇宙について ***

 


 ということで、俺たちはアダムやイブに準じる能力を持った上級世界管理システムAIを1000人分用意することになったんだ。

 実際には神界に特許料みたいなもんを払って、俺たちの手でAIのハードウエアを作ることになったんだが。


 それから彼らのブラザーとシスターになるAIのアバターも、都合1000万体銀河宇宙に発注した。

 まあ作ろうと思えば俺達でも作れたんだろうけど、銀河の有効需要創出のため、っていうところかな。


 更には宇宙空間作業対応の高性能ドローン100億体を建造する工場も用意させた。

 元になったCPUは、例の惑星ケットで活躍したオリジナルドローンたちのものだ。

 作業用ドローンたちが完成したら、あの『ドローンの母さま』って呼ばれて崇拝されてるキャシー大神殿長でも呼んで、言葉をかけてやってもらおうか。



 更にはダークエネルギー駆動エンジンや核融合エンジンとその制御装置なんかを銀河宇宙に発注し、併せて特許料を払って複製許可契約を締結して、『破滅エクシティウムトニーテュラ』拡散・無害化計画はスタートした。


 まずは100万対の自走式『空間転移装置』を建造するためのドックを造り始める一方で、プロトタイプの『空間転移装置』搭載宇宙船も作り始める。


 このドックの役割は、ほとんど『資材置き場』になるだろう。

 宇宙船製造の魔法マクロそのものはもうアダムたちが完成させているけど、なにしろ宇宙船そのものが超巨大だろ。

 だから、実際に建造するときに鍵になるのは、建造対象の宇宙船とその材料を置いてある資材置き場との距離になるんだ。


 例えばドックの資材置き場が12か所ぐらいしか無かったとしようか。

 そうすると、資材置き場と建造対象宇宙船の距離が最大で3万キロから4万キロぐらいも離れてしまうことになるんだよ。

 つまり、資材を地球の直径に数倍する距離の分移動させなきゃならなくなっちまうんだ。

 だから、『空間転移装置』で連結した資材置き場を、最終的には12億箇所ほど作る予定になっている。

 つまり、宇宙船建造ドックといっても、これらの資材置き場を固定するためのものに過ぎないんだ。


 このドックの建造には優に数十年はかかるだろう。

 一方で、アダムブラザーやイブシスターたちのアバターたちを300万人も投入したおかげで、プロトタイプの宇宙船は1年程度で完成するそうだ。

 それから試験航海や実地試験を経て、最終的な宇宙船設計に至ることになっている。



 この自走式『空間転移装置』宇宙船は、その外周をマナ建材で覆うことになるだろう。

 そうして、数か所に超大型慣性吸収の魔道具を設置して、構造体にかかる慣性や潮汐力を打ち消すことになる。

 それ以外にも、1隻につき12基のダークエネルギー駆動エンジン、1200基の姿勢制御用核融合エンジン、超大型の高次元航法装置とその電力を供給する大型核融合発電所も搭載される。


 これらの装置を繋ぐ制御系は、無線ではなくすべて『空間転移装置』を介在した有線で連結するつもりだ。

 中央指令室から周辺のエンジン操作系まで指令が届くのに、0.5秒以上もかかってたら危なくってやってらんないからな。






 日々は無事に過ぎてゆく。

 5人の奥さんたちもそれぞれ2人目の子を生んだ。

 俺は毎日午前中は事業の推移についての報告を受け、午後は子供たちと過ごす日々だ。

 フェミーナの生んだ2人目の子は女の子だったが、常にフェルくんの後ろをついて歩いている。

 兄弟姉妹たちがふらふらと1人で離れて行くと、目ざとく見つけて鼻でぐりぐりしてみんなのところに戻そうとするんだ。

 はは、群れを作ろうとする本能ってすごいよな。




 銀河連盟も無事に発足した。

 もともとこの連盟は、政治的なものというよりは経済的な利益団体に近いから、紛争や争議の調停とかはほとんど無いし、至って平穏な友好団体になっている。

 でも実際に多くの種族が顔を合わせて親睦を深めることが出来るようになったんで、今後の交流が楽しみでもあるんだ。


 ガイア近傍空間にある銀河連盟本部に来るようなトップ連中は、もちろんマナーも見識も素晴らしい連中が多いんだけど、これが一般のひとたちにも広がって行ったときにどうなるかは楽しみだよなあ。




 そうこうしているうちに、自走式『空間転移装置』のプロトタイプが出来上がった。

 厚さ300キロ、半径15万キロの超々巨大円盤型宇宙船と、半径15万キロの半球形型宇宙船だ。

 銀河系にヒューマノイドが現れて以来、圧倒的に史上最大の建造物になるそうだ。



 俺はそのプロトタイプ宇宙船の視察に出向くことにした。

 これさ、宇宙空間の構造物って、視覚で大きさの判断が出来にくいんだよ。

 つまり近くにあって小さいものなのか、遠くにあって大きなものなのかが分かりにくいんだ。

 つまり遠目から見れば、この宇宙船も単なる薄くて丸い紙みたいに見えるっていうことだな。


 そう言ったらアダムが宇宙船の表面に実物大の地球の姿を投影してくれたよ。

 はは、やっぱり比較対象が無いと大きさもわかんないや。


 それにしても……

 直径30万キロに及ぶまっ平らな白い平原か……

 なんだかホワイトアウトしたような不思議な感覚に襲われるわ……



 俺たちが固唾をのんで見守る中、プロトタイプは無事『破滅エクシティウムトニーテュラ』に飲み込まれて行った。

 そうして、破壊されることもなく、3週間後には『破滅エクシティウムトニーテュラ』の後方から出て来たんだ。

 もちろんその間、対になった半球形型宇宙船からは放射状にガンマ線が噴出していて、これも無事に分散・無害化を始めている。


 はは、また実験が成功しちまったか……

 これで『破滅エクシティウムトニーテュラ』のエネルギーも、約40兆分の1減らせたっていうことになるのか……




 ということで、計画には最終的なゴーサインが出たんだ。

 と言っても、既に全ての魔法マクロも完成してるからなあ。

 原材料になる岩石惑星を粉々にして、そこから資源を抽出して、ついでにマナ建材も作って……

 それらを造船ドックに転移させて、宇宙船を作り出して……


 そうした全てのマクロは既にアダムブラザーやイブシスターたちに伝授してある。

 彼らもみんなカップルを作って、子育てや生活を楽しみながら粛々と宇宙船を造り続けてくれている。


 ま、まあ丸投げって言えば丸投げなんだけどさ。

 ちょっとだけ心が痛むけど……


 でもまあエルやローゼなんかも、『これだけの大計画のトップが末端の作業をしているようではオカシイのでは?』って言ってくれたしな……


 このまま順調に行けば、1万6000年後には、『破滅エクシティウムトニーテュラ』もキレイに分散・無害化されていることだろう。

 なんか実感はわかないが、結果として1億の星々のすべての生命が助かるなら、俺の実感なんかどうでもいいか……







 或る日、俺は気になってたことをケイちゃんたちに聞いてみたんだ。


「なあ、このまま『破滅エクシティウムトニーテュラ』が無害化されて、自然災害による被害も激減して、ついでに銀河経済が活性化して飢餓死も無くなったとしてさ。

 そうすると、現在の銀河人口増加率2%が3%程度まで高まるそうなんだ。

 でも、それを養う食糧生産とか大丈夫かな?

 いつかどこかで破綻したりしないかな?」


(サトル神さま。

 その可能性について、我々は思考を重ねて参りました。

 結論から申し上げれば、破綻は完全に回避可能であります)


「そ、そうなんか?」


(はい。

 サトル神さま様はお気づきであらせられますでしょうか。

 この銀河宇宙に存在する約9000万の知的生命体居住惑星に於いて、最大の人口を擁する惑星でも約1000億にしか過ぎないのであります)


「そういえばそうだったか……」


(どうも知的生命体の遺伝子には、それ以上の人口過密を忌避する要素が組み込まれておるようでございますね。

 特に、一度に数百から数千の卵を生む昆虫系生命体の出卵数が、彼らの人口増加や治安良化と共に急速に減少しつつある例を見ても明らかでございます)


「そうか……」


(また、昆虫系生命体の平均寿命は20年ほどに過ぎませんでしたが、寿命の長期化と出産卵数には見事なトレードオフ関係があることが判明しております。

 つまりいくら寿命が延びても生涯総出産卵数は増えずに、むしろ減少を続けておるのです)


「ほほー、さすがは自然の摂理だなあ」


(現在、銀河系内の知的生命体居住惑星では、惑星当たり平均25億ほどの知的生命体が生息しておりますが、今後は最大でもこれが2500億、つまり100倍程度にしかならないことが予想されますです。


 昆虫系生命体の惑星居住数は、1惑星当たり平均5000万に過ぎませんでしたので、当初は急速な拡大を見せるかも知れません。


 ですが、惑星人口が500億に達する辺りから、自律的に強力なブレーキがかかることが予想されます)


「な、なるほど……」


(ということで、ここ銀河宇宙の知的生命体の総人口は現在約25京人でございますが、それも最大で100倍にしかならないと見込まれておるのです)


「で、でも、食料生産を100倍にするってけっこう大変だぞ?

 特にそれだけの農業用地を確保するのは……」


(食糧増産につきましては、少なく見積もっても現在の銀河総食糧生産量の約1000億倍まで可能でございますです。

 若干の無理をすれば1.8×10の22乗倍までは可能でございましょう)


「!! そ、そんなに……」


(例えばサトル神さまのご出身の太陽系に於きましては、地球が受け取っている太陽エネルギーは、太陽が放散しているエネルギー全体の約1.1×10の17乗分の1、約11京分の1に過ぎません。

 したがいまして、太陽系の植物ハビタブルゾーンには、余裕を見ても1000億個ほどの農業用人工惑星の配置が可能でございます)


「そ、そうか…… その手があったか……」


(しかも、この銀河宇宙には、植物の生育に適したG3型恒星が約2000億個もございます。

 そのうち知的生命体が生息している恒星系は2000分の1に満たないのです。


 そして、G3型恒星系の中には、植物ハビタブルゾーンに全く惑星の存在しない恒星系が約1800億個ございます。

 そこにはいくら農業用人工惑星を建造しても誰の迷惑にもなりません。


 つまり、この銀河系の食糧生産量は、単純に言って1800億の恒星系にそれぞれ1000億の人工惑星を配置して、1.8×10の22乗倍、つまり180億の1兆倍にまで増やせるのであります)


「そ、そんな大量の人工惑星を建造する資源は……

 あ、そうか。

『神界運輸・通信部門』のおかげで今資源開発が急速に進み始めてるのか……」


(さらに、銀河宇宙での主食の一つである小麦類につきましては、その生育を行える人工太陽の存在もございます。

 これがあれば、太陽から遠く離れた人工惑星でも農業が行えるでしょう)



「す、すげえな、その構想……」


(そうしてサトル神さま。

 この構想を実現できるお方様は、今のところ全銀河宇宙を見渡しても、銀河世界に『空間転移装置』と『絶対アブソリュートフィールドの魔道具』を提供出来るサトル神さましかいらっしゃらないのであります)


「そ、そうなんか?」


(まずはなんといっても平均的惑星50兆個分の年間予算に匹敵する御資金力。

 それから10億人に達しようとする超忠実で御優秀な配下のAIの方々。

 手前味噌で恐縮ではありますが、2万人を超える我らケイ素生命体の専属ブレイン。

 さらに加えて御神力による御加護の力。


 しかも、総計1億隻を超える恒星間輸送船の御保有と銀河全域を網羅する大通信網の御保有。

 そして……

 こうした空前にして絶後の大計画を継続可能にする、あなたさまの数億年に及ぶ可能性のある御寿命。


 これだけの完璧な要素の集積は奇跡であります。

 しかも単に可能な要素が揃っているだけではなかったのです)


「そ、そうなのか?」


(やはりサトル神さま御自身には御自覚はございませんでしたか……


 あなたさまの提唱されたご施策である『銀河救済機関』、つまり、紛争撲滅、飢饉回避のための食糧援助によって、直接命を救われた民の数は既に1000兆人を超えております。

『神界運輸・通信部門』による銀河経済活性化によって間接的に生命を長らえた貧困層の数に至っては8000兆人を超えておるのです)


「す、すげぇなそれ……」


(あなたさまは、単なるいちヒューマノイドであらせられた時期から、まさに神のごとき善のご意思をお見せくださいました。


 つまり、能力、資源、人員、実行力に加えて、『善なる意思』をもお持ちになられたご存在に上りつめられました。

 そうして上級神になられた今、あなたさまは、文字通り銀河宇宙の神という名にふさわしいご存在におなりあそばしたのでございます)


「す、すすす、すげえなおい……」


(また、食糧生産にこれだけの余裕があれば、知的生命体の人口増加も思いのままでございますね。


 人口が1000億を超えて過密により人口増加が頭打ちになった種族には、居住可能な人工惑星を与えてやれば、その分また人口を増やしてくれることでございましょう。


 しかも人工惑星ですから、惑星表面のみに居住するのではなく、階層式にすれば何百倍もの人口が収容可能になりますです。

 下層にも空間転移装置や光ファイバーなどで充分に太陽光を届けられますでしょう)


「な、なるほど……」


(つまりはサトル神さま。

 あなたさまは、もはや思うままに銀河の人口もその幸福も増やしていける御力をお持ちになっていらっしゃるのであります。

 しかも安全で健全な状態を保ったままに。


 私ども珪素生命体は、そうした善の万能神というべき偉大なお方様にお仕え出来ることを、至上の喜びと存じ上げておりますのです)


「そ、そそそ、そうだったんか……」






次話はいよいよ最終回、エピローグとなります。

長い間のご愛読、本当にありがとうございました……

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