*** 32 俺の自己嫌悪とシスティの包容力…… ***
それからしばらくして……
「なあベギラルム……」
「なんでございましょうかサトルさま」
「俺まだあの子たちに恐れられてるみたいでさ。
目が合ったりすると、『ひっ!』とか言われちゃうんだ……
やっぱ初日にあの子たちの前で、お前を惨殺しちゃったのがマズかったんだな……」
「はっはっは…… 主さまは恐れられるぐらいでちょうどいいのですよ」
「でも…… ちょっと悲しい……」
「それでは少し親睦を深めていただく機会を作りましょうか。
皆と一緒に食事をしていただくとか、風呂に入っていただくとか……」
それでその日はみんなに交じって食事をしたんだけど、やっぱり悪魔っ子たちはけっこう緊張しているようだった。
それから50人ずつの交代制になってる大浴場(男湯)に行って、1班の子たち50人と一緒に風呂に入ったんだけどさ……
あー…… うん。やっぱりそうだったんだね……
風呂場には当然のように女の子たちが25人いて、ふつーに体洗ってたんだよ。
まー悪魔界では当たり前のことらしいんだけど。
俺は、悪魔っ子たちを怖がらせないように、湯船の端に大人しく座って湯に浸かりながら、ぼんやりとみんなを眺めていたんだ。
(このぐらいの外見年齢の子たちだと、後ろから見たらほとんど男女の見分けがつかないなあ。
それでも女の子の方がほんの少しだけおしりが大きいかな……
それにしても、男の子も女の子もぴこぴこ動くしっぽが可愛ええなあ……
やっぱりしっぽの先は、男の子がスペード型で女の子がハート型か……
あ…… あの女の子だけけっこうおしりが大きいな。ということは……
おお! もう胸もかなり大きくなってる……
そうか、この子他の子より発育がいいんだ)
俺は決してL野郎ではないが、それにしてもその子、なんか『5年前のシスティ』みたいに見える美人さんだしさ。そんな子がまっぱで堂々と立ってるし、実年齢は19歳だし。
それで、思わず俺のオオカミさんが反応しかけちゃったんだよ。
慌ててまた般若心経唱え始めたんだけど。
そうしたらさ、その女の子の周りにお友だちたちが集まって来たんだ。
そうして俺の邪魔にならないように小声で話始めたんだな。
でも、俺の聴力も相当なものになってるんで、全部聞えちゃったんだ。
「うわー、ミラシュ、おっぱい大きくなったわねー」(女の子)
「ほんとだー。もうお母さんみたいだねー」(男の子)
「ねえねえミラシュ、ちょっとおっぱい触らせてくれない?」(男の子)
「ふふ、シュリーったらお母さんのおっぱい思い出しちゃったの?」(女の子)
「うん。小さいころのことだからあんまり覚えてないんだけど、なんとなくすっごく懐かしい感じがする」(男の子)
「ねえねえ、ぼくにも触らせて!」(男の子)
「ああミラシュが羨ましいわ。わたしも早くおっぱい大きくならないかしら」(女の子)
「何言ってるのよサミリー、あなたのお母さんはあんなにおっぱい大きいじゃないの。だからすぐに大きくなるわよ」(女の子)
「そうかなあ。なるといいなあ。こんな小さいままだと、赤ちゃんにたくさんおっぱいあげられないもんね」(女の子)
「ねえ、サミリー。サミリーのおっぱいが大きくなったらぼくにも触らせてね」(男の子)
「うん。いいけど。いったいいつのことやら……」(女の子)
「あー、わたしも早くお母さんになって、赤ちゃんにおっぱいあげたいなー」(女の子)
「そのときは、この中の誰かがその子のお父さんになってるかもしれないんだね」(男の子)
「でもその前に、たくさん頑張って働いてまずは早く小悪魔にならなきゃ」(女の子)
「そうね。おっぱい大きくすること考えるより、そっちの方がよっぽど大事ね」(女の子)
「もしボクが中悪魔になれたら、みんなのうちの誰かにボクの子供のお母さんになってくれるようにお願いしようかな」(男の子)
「ふふ。わたしたちも中悪魔になれてたら、そのときはお母さんになってあげてもいいわよ」(女の子)
「ここにいるみんなが早く中悪魔になれて、それでみんなで子供を作れたらいいね」(男の子)
「じゃあがんばって働きましょうか」(女の子)
「「「「「 うん!」」」」」
俺…… 恥ずかしいよ。
この子たち、ぜんぜんエッチなことなんか考えて無いじゃないか……
それにひきかえ俺は……
俺だけが地球のオスで、いつも性欲にギラギラしてて、こんな純真ないい子たちですらヤラシイ目で見ちゃってさ。
いくら種族特性っていっても、俺だけヘンタイみたいじゃないか……
俺は悄然として風呂から上がり、肩を落としたままシスティの天使域に帰ったんだ。
リビングには珍しくシスティしかいなかった。
「あら、どうしたのサトル。元気無いわね」
「う、うん……」
「なにかあったの?」
それで俺、全部システィに話したんだ。
種族特性のこととか、地球人の俺の性欲のこととか、悪魔っ子たちとお風呂に入ったときに、裸の女の子をじろじろ見ちゃったこととか。
それで自分が恥ずかしくなっちゃったことなんかも全部話したんだよ。
「ううっ。お、俺システィがいるのに……
大好きなシスティがいるのに、エルダさまとかローゼさまとか悪魔っ子たちと風呂に入ったときとかに、みんなの裸を見ちゃってさ。いや見たがっちゃってさ。
なんかもう自己嫌悪でどうしようもないんだよ……」
そのときシスティは、それこそ天使の微笑みを浮かべたんだ。
「いいのよサトル」
「えっ……」
「サトルはそのままでいいの。
だってそれがサトルなんだし、わたしもそんなサトルを知った上で、私の子のお父さんになって欲しいって思ったんだもの」
「し、システィ……」
「わたしね。
お姉さまに教えてもらったの。
地球のヒト族って、特に男の子って、この宇宙でも有数の性欲の持ち主なんですって。
他に一人エッチするような種族なんかほとんどいないのに、地球の10代の男の子は毎日のようにしてるって。
だからあんなにたくさんのエッチな本が売られてるんでしょ。
その本の売り上げだけで、この世界全体の経済よりも遥かに大きな金額になるそうなんですもの。
でも、そんな激しい性欲を昇華させようとして、あんなにエネルギッシュに働いて、あんなにダイナミックな世界を作ってしまったんでしょ。
あの強い性欲を羨ましがる種族はいても、蔑んでいる種族なんかほとんどいないのよ。
そもそも性欲を蔑むのは、性欲が激しい種族だけの特性だもの」
「…………」
「しかもサトルって、前世では病気でほとんど性欲を発散することなんか出来なかったんだもの。
だから健康になった今、夢の中でまで子種を出しちゃってるんですもの。
女のひとの裸が見たいぐらいで、誰もサトルを蔑んだりしないわ。
それどころか、サトルに裸を見たいって思われた女のひとは光栄に思うんじゃないかしら。
だって、突き詰めればサトルのその性欲が原動力になって、この世界の欠陥も明らかになったし、一部の神さまの隠蔽も明らかになったし、失格していた天使達も救われたし……
それになにより上級神さまのご加護まで頂いて勲章まで貰えたんですもの。
さらには最高神さまにまで褒められちゃうし。
サトルが持て余していると思ってる性欲を、むしろ羨ましがるひとはたくさんいると思うわよ」
「し、システィ……」
「それに、サトルはその性欲を、かなりの部分わたしに向けてくれてるんでしょ♪」
「う、うん。ほとんど全部……」
「うふふ。それ、とっても嬉しいし光栄に思うわ。
神界で『英雄サトル』って呼ばれてるひとが、わたしにエッチなことしたがるなんて♪」
「ううううっ、し、システィーっ!」
「それからね。サトル、地球では『番を作って繁殖する種族で、浮気をするのはほとんどヒト族だけ』って言われてるのは知ってる?」
「えっ……」
「あのね。地球の類人猿って、その400万年の歴史の中で、ほとんどが『多夫多妻制』だったのよ。今のおサルさんたちがみんなそうであるように。
でも、大昔に気候変動で森が減っちゃって、おサルさんたちは厳しい生存競争が行なわれている平原で暮らさなきゃならなくなっちゃったのね。
そのときからヒトに進化し始めたんだけど、弱い種族が子孫を守って残すために、オスがメスと子供に食べ物を持って行く必要が出来たんですって。
それが番の発生と結婚制度の始まりだったのよ。
でも、本格的な結婚制度なんて、せいぜい数千年のことでしょ。
サトルのいた日本っていう国なんて、家族単位で暮らすようになったのはせいぜいここ1000年のことですもの。
だから、類人猿400万年の多夫多妻制の遺伝子のせいで、つい浮気しちゃうヒトがいるんですって」
「そ、そうだったのか……」
「だからサトル。他の女の人の裸を見たがってもいいのよ。
だって、それはサトルの遺伝子のせいなんだもの。
それに…… たまには浮気してもいいのよ。
でも、最後には必ずわたしのところに帰って来てね♡
それだけはお願いします♡」
「う、うわぁぁぁぁぁ~ん! システィ~~~っ!!! 」
俺もう、涙ぼろぼろハナミズぐしゃぐしゃでシスティに抱きついちゃったんだ。
そしたらシスティも俺を優しく抱きしめ返してくれたんだ。
本当に嬉しかったよ。
「それからサトル……
もしどうしても性欲を持てあましたら、わたしに言ってね……
また一緒に子作りの練習しましょ。
うふふ、わたしとサトルだけの『まぐあいパーティー』ね♡」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~ん!
システィ~~~~~~っ!」
………… やっぱり爆ぜてください。お願いします …………