表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
319/325

*** 319 『破滅の雷』無害化実験 ***

 


 ケイちゃんたちに頼んで作って貰った機器を使用した実験が無事終わった。


 実験は数十回も繰り返されたが、いずれも装置が破壊されることなく成功している。



 その実験装置とは……


 直径1キロメートルほどの円環体の形をしていて、自走機能の為の高性能推進機も搭載した『空間転移装置』だ。

 もちろん最高強度の『絶対アブソリュートフィールドの魔道具』でガチガチに防御してある。


 これを超空間航法で『破滅エクシティウムトニーテュラ』の進路前方に送り込んだんだ。


 送り込んだ『空間転移装置』の対になった片方は、『破滅エクシティウムトニーテュラ』の進路から外れた位置に、銀河系から離れた方向に向けて配置してある。


 そうそう、『空間転移装置』の元になった『転移の魔道具』って、元々は平らなマナ電池の上に魔法マクロの魔法陣を描いたものだったろ。

 それで転送先の装置はドア型じゃあ無くって元のマナ電池型にしておいたんだ。

 それも平らなマナ電池じゃあなくって、半球型・・・のマナ電池だ。


 そうしたらさ、円環体型空間転移装置から半球型空間転移装置に転移されたガンマ線が、見事に半球状に放射されて行ったんだよ。

 これで1000光年も進めばガンマ線の威力も相当に分散されるだろう。


 つまり、光速で殺到する高エネルギーガンマ線の前方に『空間転移装置』を置いて、そのガンマ線を別の方向に分散するように転移させられるか、っていう実験だったんだ。


 ヤバいな……

 実験がカンペキに成功しちまったぜ……





 それからちょっと驚いたんだけどさ。

 その実験の様子を観測させるために、遠隔操縦の観測機を『破滅エクシティウムトニーテュラ』に沿って準光速で飛ばしてたんだけど……

 あの超高エネルギーガンマ線の塊って目に見えるんだよな。

 ガンマ線なんか絶対に目に見えないと思ってたんだけどさ……


 実際にはガンマ線のすべてが目に見えていたんじゃないんだけど、その先端部の周囲の宇宙空間がめちゃくちゃキレイな白色光に輝いているように見えたんだ。


 そう、まるで超巨大なマッチ棒のアタマに明るい火が灯っているかのような姿に……

 それも安定した火というよりは、禍々しい小爆発がそれこそ無数に起きているかのようなんだ。

 時折デカい爆発みたいなもんも見られるなあ。

 それ以外にもマッチの軸に相当する部分も時折雷みたいに光っているんだけど。



「なあケイちゃん。

 なんでガンマ線が一部とはいえ可視光線で見えるんだ?」


(正確に申し上げれば、あれはガンマ線が光っているのではございません。

破滅エクシティウムトニーテュラ』に触れた宇宙空間の水素原子やダークマターなどの星間物質が、超々高エネルギーガンマ線に触れて光崩壊したときの発光現象でございます。

 無数の小さな光は原子ほどの大きさの星間物質、時折見られる大きな光は直径数ミクロンほどの宇宙塵が崩壊しているものでございましょう)


「そうか……

 それにしてもスゲぇな……

 進行方向のあるあらゆる物質を崩壊させながら進む超巨大なエネルギーか……」


(それでは画面上のガンマ線に色を付けて可視光にしてみましょう)



 途端に画面に赤い光の筋が現れたんだ。

 相変わらず先端部分を白色光に包んでどこまでも伸びる長大な光の筋が。

 これが全ての物質を崩壊させながら驀進する『破滅エクシティウムトニーテュラ』か……


 しかもこれレーザー光みたいな細い線に見えるけど、実際には直径0.2光年もあるんだもんな。

 太陽系ですら余裕で飲み込むほどの断面積が……




 この映像を神界の最高神政務庁で披露したら、やっぱりみんな無言になっちゃったよ。

 ゼウサーナさまも最高顧問会議の神々も最高神さまですら……

破滅エクシティウムトニーテュラ』の存在は知っていても、まだ誰もそれを可視光観測していなかったそうだ。




「……まさに『破滅エクシティウムトニーテュラ』じゃの……」


 シュリフィスラーナ最高顧問会議議長が口を開いた。


「このような恐ろしい存在が我が銀河系に向かって来ているのですね……」


「それでサトルよ……

 そなたはこの恐ろしいエネルギーに対してなにか新しい対策があるというのか……」


「ええ、それではこの映像もご覧ください」



破滅エクシティウムトニーテュラ』の先端部分前方がクローズアップされると共に、その場にちっぽけな円環体の構造物が見られるようになった。

 まもなくその構造物も『破滅エクシティウムトニーテュラ』に飲み込まれて行く。

 同時に超高エネルギーガンマ線により、少し離れた場所にある半球形の構造物が輝き始めた。


 円環体構造物に設置された『空間転移装置』を通って半球形の装置から放出・拡散されているガンマ線の姿だ。

 このガンマ線も目に見えるよう赤色に着色されているが、半球から出た光がすぐに拡散しながら色を薄めて行く様子がよくわかる。



「このように、直径1キロの『空間転移装置』を搭載し、最高強度の『絶対アブソリュートフィールドでガードした宇宙船を『破滅エクシティウムトニーテュラ』に送り込みましたところ、無事対になる『空間転移装置』にガンマ線を転移させることに成功致しました。


 尚、この出力側の『空間転移装置』は半球形にしてありますので、転移させたガンマ線もすぐに分散し、数千年も経つうちには、通常の宇宙空間放射線と変り無い単位面積当たりエネルギーになるものと予想されます」


 あー、なんかみんな無言になっちゃったよ……

 無言で俺の顔を見つめてるわー。



「この『破滅エクシティウムトニーテュラ』に送り込んだ『空間転移装置』は数週間後にはガンマ線の後方に無事出てきます。

 その後超空間航法でガンマ線の前方に移動すれば、何度でも繰り返しこの作業を行えるわけですね。


 ということで、もしもこの自走式『空間転移装置』を大量に用意し、また数千数万年の時間をかければ、ひょっとして『破滅エクシティウムトニーテュラ』のかなりの部分を分散・無害化出来るかもしれないのであります」


 おいおい……

 なんか皆さんの目が怖いんですけど……



「ま、まあ実際に実行可能かどうかはやってみなければわかりません。

 やってみても重大な問題点が見つかるかもしれませんし」


「そなた……

 本気でこの計画を試してみるというのか……」


「ええ。

 この計画に必要なのは、資源と人員とその人員の労力だけであります。

 幸いにも我々はそのどれも保有しております。

 神界が計画中の被害予想世界の避難・移住計画と並行して、このまま私の実験や計画の準備を推し進めることをご承認頂けませんでしょうか」



 はは、みんな怖い顔のまま全員一致で承認してくれたわ……






 ガイアに帰った俺は、アダムとケイちゃんたちを呼び出した。


「さて、それでは会議を始めよう。

 まずは何と言ってもあの『破滅エクシティウムトニーテュラ』の消去と言うか無害化の実験が、一部とはいえ成功してしまったことについてなんだが……」


(まさかあれほどまでに恐ろしいエネルギーに対し、避難の対策を練るのではなく分散無害化までお考えであらせられたとは……

 これはもう、『努力』、『智慧』、『資源力』、『信用』に加えて『発想力の怪物』の御名を奉らねばなりませんな……)


「それを言うなら、ケイちゃんたちやAI族は『俺の発想を全て実現してしまう怪物』だろうに」


(それも全てはサトル神さまが我が種族にお与え下さった深い深い御恩義があればこそ)


(我らAI族もまったくおなじでございますよ)


「はは、そこまで言われるほどの恩義を与えたつもりは無いけどな」


((とんでもない!))


「まあ、それが銀河宇宙の役に立つならどう考えてもらってもいいけどさ。


 ところで俺は何もあの『破滅エクシティウムトニーテュラ』を分散無害化することだけに注力するつもりは無いんだ。

 ただ、神界が被害予想世界の為に新しい惑星を用意するのにも時間がかかるだろ。

 その間に、あの超々高エネルギーガンマ線を少しは減らす努力をしてみてもいいんじゃないかって思ったんだよ」


(それについては、超莫大な資金・資源とサトル神さまの労力が必要となりますが、被害予想世界の動植物や環境の保全のために、それだけの物を費やすと言われるのですか……)


「い、いやまあ何というかさ、自然現象に屈して逃げるだけっていうのもなんか寂しいじゃないか。

 せっかく俺たちには資金も資源も人材もあるんだから、少しは抗ってみたいんだよ」


(……さすがの御発想でございます……)



「それで、俺の考える『破滅エクシティウムトニーテュラ』の分散無害化プランなんだけどさ。

 当然のことながら、ああした『自走式空間転移装置』の大型のものを大量に作って、ガンマ線レーザーの進路に並べてみたらって思うんだわ。

 その作戦についてなにか意見はあるかな?」


(それにつきましては、その『空間転移装置』は大型であればあるほど効率的になりましょうね)


「で、でもさ。

 あんまり大きくすると壊れやすくならないか?

 ほら、推進機の推力のせいで構造材が歪んで破断するとか……

 それにそんな大型の機械を動かす推進装置って作れるのか?」


(その点につきましては、どちらも全く問題ございません)


「そ、そうなのか?」


(サトルさまの『魔道具シリーズ』のうち、銀河宇宙に最も歓迎されたのは『空間転移装置』でございましょうが、物理学上最も驚愕を与えたものは、あの『慣性吸収の魔道具』でございます。

 慣性を吸収するということは、加速度をも吸収消去してしまうことを意味しますので。


 物理学の世界ではですね、物体に加速度を与えたときに、その物体の構成物質そのものや、その中の資材や生物にかかる加速度を吸収消去するのは、理論的に不可能とされているのですよ)


「えっ……」


(あの『慣性吸収の魔道具』は、まさに物理学に喧嘩を売っているとしか思えません。

 いかに神の御力だとしても、到底有り得ない『道具』なのでございます)


「そ、そうだったんか……

 俺はただ神界から貰った勲章や加護に付いてたスキルを応用して魔法化しただけだったんだけど……」


(ですから、自走式『空間転移装置』、まあ『空間転移装置』装備の宇宙船と言っていいのでしょうが、それを『慣性吸収の魔道具』や『絶対アブソリュートフィールド』で完全に覆ってしまえばよろしいのですよ。

 そうすれば、推進機が発動しているときも宇宙船の構造材は何の影響も受けませんでしょう)


「で、でもさ。

 そんな大きな宇宙船を動かすだけの推進機の方は……」


(確かに核融合駆動エンジンでは無理がございます。

 せいぜい姿勢制御に使える程度でございましょう。

 ですが、最新の銀河技術では『ダークエネルギー』、つまり真空のエネルギーを利用した推進機が既に開発されております。

 この推進機は宇宙空間にあるダークエネルギーをそのまま推進力として利用出来ますので、理論上いくらでも強力なものが作れますです)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ