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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
31/325

*** 31 俺がシスティとの『種族特性』の違いを喜んでるのはバレバレだったんだ…… ***

 


 俺は悪魔っ子たちを何班かに分けて、居住室や風呂の使い方を教えることにした。

 部屋割はもう終わっているそうだ。


「それじゃあこの部屋に住む子は誰かな?」


 俺は精一杯優しく話しかけた。

 そうしないとみんな怖がって泣いちゃうからな。

 そしたら、男の子と女の子が一人ずつ出て来て、おずおずと「はい。わたしたちです……」って言ったんだ。

 俺は頭を抱えてしゃがみ込んじゃったよ。


「おい、ベギラルム…… なんで男女一緒なんだ?」


「は? 何故とおっしゃられましても?」


「だからなんで男の子と女の子が一緒の部屋なんだよ!」


「あ、あの…… 男女ひとりずつ150の部屋に割り振りましたが……」


「変更しろ! 

 男の子は男の子同士、女の子は女の子同士にして、部屋割のやり直しだ!」


「は、ははっ! か、かしこまりました……

 あの…… ご質問をお許しいただけますでしょうかサトルさま」


「なんだ。言ってみろ!」


「何故男女同室ではいけないのでしょうか?」


「………………」





 俺思わず考え込んじゃったんだよ。

 そういえばなんでいけないんだ?

 間違いがあってはいけないから?

 間違いってなんだ? 性犯罪か? 普通の生殖行為か? 

 まあ、性犯罪は全ての犯罪と同じく禁止されている。

 普通の生殖行為だとすれば、それは種の存続にかかわる重大事だろうに。

 あ、まだ未成熟な子供たちが万一妊娠とかしたら、出産時に母体が危険だし、子を産んでも父親が満足に働けないんで育てられないからか?

 でも……

 出産時に母体が危険になるほど未熟な個体が、なんで妊娠出来るんだ?

 それ生き物として間違っているだろうに。


 そういえば、ヒトって樹上生活だったサル時代から、気候変動で森が減って樹から平原に降り立ったときから進化が始まったって聞いたことがあるんだけどさ。

 ヒトは本来はそのとき絶滅しているはずの生き物だったそうだ。


 でも頭の良かった個体が、工夫したり共同で働いたりして生き延びて行ったらしい。

 そうして、その代償として頭が良くなる方向に進化の淘汰圧力が働いて、どんどん頭が大きくなって出産がタイヘンになったんだと。

 母体と新生児の頭の体積比は、サルにくらべてヒトはけっこう小さいらしいからな。

 つまりまあ、新生児のアタマが母親の産道に比べてデカいんだよ。

 だから若過ぎてまだ小さい母体からの出産はさらに危険なわけだ。


 余談だが、「小顔がモテる」っていうのはその影響らしい。

 女の子と男の子がお互いを見たとき、「こんな頭のデカい男の頭のデカい子を産んだら、アタシ死んじゃう!」、「こんな顔のデカい女に俺の子を産ませたら、出産時につかえて死んじゃうかもしれん!」って本能的に思うから、っていう説があるそうだ。


 それぐらいヒト族って出産事故が多いそうなんだけど……

 でも、それって、生物として間違ってるだろ。

 最も肝心な生殖の時に死亡率が高いなんて。

 そんな動物他にいないぞ。

 だからヒトはまだまだ進化の途上で、これからは出産がよりラクになるような方向に進化して行くんだろう。


 それから、サル時代に比べて長寿化した影響で、育児がたいへんになって、かつ長期間になっているんだ。

 だからサルのときみたいに、オスが育児にまったく参加しないと、せっかく生まれた子が死ぬ確率が高くなっちゃったんだ。

 それでメスに子を産ませた後でもメスや子のところに食べ物を運んでやるオスの子が、より生き延びて行く確率が高くなったんだよな。

 だから俺たちはほとんどみんな、そういうサルにしては珍しい『自分の子やその子を生んでくれたメスを大切にするオス』の子孫なんだそうだ。

 どうやらこれが結婚制度が発生した理由でもあるらしいけど。


 でもやっぱりヒトっておかしいよ。

 だって成人するまで20年も親にエサ運んでもらうなんて。

 そうしないとマトモに育っていけないなんて。

 しかもひとりでメシ喰えるようになるまで3年近くもかかるなんて。

 これも種としてオカシイよな。

 少なくとも、ヒト族はまだまだ進化の途上、それも相当に未熟な状態にあることだけは間違いないだろう。



 それに比べてこの悪魔族……

 ベギラルムに聞いたら、この子たちは1年ほどの乳児の段階を過ぎると、その後は基本的にはマナだけを摂取して生きていけるそうだ。

 たまには果実とか、他の世界に働きに行っている大人たちが持ち帰ったお菓子とかも食べていたそうだが。

 それに妊娠期間も6カ月ほどと短くて、出産も1時間ほどで実に軽いらしい。

 出産事故もほとんど皆無だそうだし。

 しかもこうやって、10歳ぐらいのときから初級悪魔として働き始めてるんだもんな。

 教育水準も相当に高いらしい。

 もう一人前に近いと言っていいだろう。




 俺は悪魔っ子たちを解散させ、宿舎の応接室でベギラルムに聞いてみた。


「なあ、ベギラルム。お前たちの寿命ってどのぐらいなんだ?」


「およそ500年ほどでございます」


「それ…… しょっちゅう例のパーティーとかやってたら、計算外の妊娠とかで、あっという間に人口爆発とかにならないのか?」


「実はわたくしも長年地球にいて知ったのですが、ヒト族の女性は自分で妊娠をコントロール出来ないのですな」


「は?」


「悪魔族の女性は、そのときが来れば自分の意思で排卵するのですよ。

 一緒に遺伝子を残すことを合意した男性の精子が子宮内にあるときに、自分で排卵するのです。

 したがって、望まない妊娠などということはありえません」


「そ、それでも人口爆発の問題は……」


「はは。確かに地球ではそのような問題もございましたな。

 ですがわれわれ長命種族は、モラル的にも本能的にも2人よりも多くの子を望みません。

 いくらマナが無限に供給されるといっても、居住地の面積や環境汚染の問題がありますからな」


「すげえな。モラルでも本能でもか……」


「地球人類は、昔は相当に好戦的でしたが、あれはもともとは自分の子孫を無限に増やしたい、そのためには他人の子孫が邪魔である、という発想が元になっておったと思われます。

 もしヒト族が人口の増加し過ぎを忌避する本能やモラルを持っていたとしたら、遥かに平和な世界であったことでしょう」


「そ、そうか……」


「それに、我々悪魔族は、少なくとも中悪魔になるまでは子を作りません。

 中悪魔に昇格出来た祝いに最初の子を作るのが一般的であります」


「それって、聞けば聞くほど、悪魔族の方が生物としてヒト族よりも遥かに優れているように思えて来るよ」


「はは。優れているいないではなく、すべては『種族特性』というものでしょう」


「『種族特性』か……」


「はい」


「で、でもいくらなんでもあんな小さな子たちにあのパーティーはやりすぎなんじゃないか?」


「あの子たちはサトルさまからご覧になれば『小さな子』ですが、実年齢は19歳でございますよ」


「な  ん  だ  と  ……」


「我々の種族は寿命が長い分、成長が遅いのですよ。

 まあ外見も精神年齢も、地球のヒト族の10歳から12歳ほどに相当致しますが。

 ですが実際には上級学校を卒業した19歳なのです」


「ま、まさかの年上……」


「はは、ですがまあ精神年齢は低いですからな。

 もしよろしければ外見通り10~12歳の子として扱ってやって頂ければと」


「わ、わかった……」


「だからあのパーティーも許可されてはいるのですが……

 それがし、地球のヒト族を見ていて思ったのですが、ヒト族は少々性欲が強すぎるようでございますね」


「性欲が強すぎる……」


「我々悪魔族にとって、『まぐあい』とは親しい異性の友人同士の友愛を示すものでありまして、性欲にかられてやむにやまれずというものではないのです。

 実際に子を作るときでも、性本能ではなく、種族保存本能で作りますからな」


「確かにヒトは性欲が強すぎて歪んでるんじゃないかって思うこともあるけど……」


「はは、歪んでいるというほどまではいかないでしょうが……

 ですがそのせいか、我々の社会には、性暴力や性犯罪というものが存在しないのですよ。性欲そのものがほとんどありませんから。

 また、そのために性的関心の異常進行による嫉妬という感情もほとんどありません。

 最初に地球で『痴情のもつれによる犯行』という言葉を聞いたときには、なんのことかさっぱりわかりませんでした」


「そ、それはすばらしいな……

 そ、それにひきかえ、ヒト族の行動の原動力って、ほとんどが権勢欲と性欲らしいんだよ。とほほ」


「ですが、それすなわちヒト族が劣っているということでもないと思います。

 ヒト族は数多の種族の中でも、最もエネルギッシュな種族と言われておりますからね。

 たとえその原動力が強すぎる性欲に基づくものであったとしても、あの文明発展の速度は素晴らしいです」


「そ、そうか……」


「したがいまして、我々のあのパーティーも、決して溢れる性欲の発散の場ではないのですよ。

 大勢が集まって新しいグループを作ったときや、なにかめでたいことがあったときには、よくあのパーティーを開くのです。

 どうしても普段は異性の方がやや疎遠になりがちですので、それを解消する機会を作るためでもあります。仲間内の結束を固めて親睦を深めるために」


「そ、そうか。知らないこととはいえ、お前を殺したりしてすまなかったな。

 種族が違えば習俗も違って当然なのに……」


「はは。お気になさらずに。

 わたくしも、その習俗の違いを知っていながら、サトルさまに配慮するのを忘れておりました。わたくしこそすみませぬ」


「い、いや気にしないでくれ。これからはお互い気をつけて行こう」


「はい」


「あ、そ、そういえば……

 システィ、い、いや天使族の習俗はどうなんだ?」


「我々悪魔族とよく似ております。

 なにしろ我々をお創りくださった神族の方々が、天使族と悪魔族をお創り下さったのですから。

 ですが、天使族の方々は我々より遥かに寿命が長いために、性欲はさらに少ないようでいらっしゃいますね。

 それに、なぜか天使族の方々は、あのパーティーはほとんど為さらないようでございます。まあ、それも『種族特性』かと……」


(だからシスティやお姉さまたちって、俺と一緒に風呂に入ってもぜんぜん気にしないのか……

 それに、だからお姉さまがシスティにたまには俺を貸してくれって言ったり、システィがそれを了解したりしたのか……

 なるほどな。 

 これも『種族特性』の違いなんだ……


 あ…… そういえばエルダお姉さまがシスティに、『その羽毛は無い方がサトルの意欲が上がるぞ』って言ったのって……

 地球のヒト族の男の子の過剰性欲を完全に理解してるからなんだな……


 そ、そうか、俺がシスティとの『種族特性』の違いを大いに喜んでるのもバレバレだったんだなあ……)





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