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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
308/325

*** 308 『神界運輸・通信部門』設立準備 ***

 


 翌日、俺はまたアダムやケイちゃんたちと会議をしていたんだ。


「さてと、アダム。

『銀河救済部門』の活動は順調かな?」


(極めて順調でございます、サトルさま)


「そうか、さすがだな。

 なにか少しでも困ったことがあれば報告してくれ」


(はい)


「それじゃあ今日は、『神界運輸・通信部門』の設立準備について議論しようか」


(その前提と致しまして、少々ご報告させて頂きたいことがございます)


「おおケイちゃん。どんな報告だい?」


(サトル神さまの『魔道具』シリーズを分析研究させて頂いた結果についてでございます。

 あの…… サトル神さまは、ご自身のお作りになられた『魔道具』の最大効力をご存じであらせられたのでございましょうか……)


「んー、ガイアでは充分に役に立ってたからな。

 特に意識したことは無かったぞ」


(例えば、現在ガイア国内で通常使用されております標準型の『転移の魔道具』でございますが、その有効距離を計測させて頂きましたところ、実に10光時もの距離でも転移が可能でございました)


「えっ…… っていうことは……」


(そうですね、仮に地球のある太陽系でしたら、優に海王星の軌道長直径を越えます。

 つまり、あの『転移の魔道具』は、太陽系内全域で転移可能ということになります)


「そ、そんな距離でも有効だったんか……」


(しかもあの魔法陣にはさらなる改良の余地がございました。

 マナ電池の規模にもよりますが、たぶん有効距離は5万光年まで延長可能と思われます)


「げげげげ…… ご、5万光年……」


(ということは、『改良型転移の魔道具』が2組あれば、銀河系の端から端までの移動も瞬時に可能だということになりますな。

 まったく、恐るべき『技術』であります)


「うっわー」


(ということでですね、仮にサトル神さまの『魔道具』シリーズを銀河世界に供給したとして、最も経済効果が高く、また驚愕をもって迎えられるものは『転移の魔道具』ということになりますでしょう。


 なにしろ恒星間の物資や人員の移動に恒星船の必要が無くなるのです。

 また、もし惑星内での使用を認めたとしたら、惑星内物流に驚異的な効果を発揮するでしょうな)


「で、でもさ……

 そ、そんなことしたら、武器や兵器の移動も簡単になっちまうぞ。

 それから有害なウイルスや風土病の病原菌なんかも……」


(そこなのですが……

 実はあの転移の魔法陣には、まだまだ多くの改良余地があるのです。

 たとえば、転移の魔道具の通過に際して、その転移先を複数設定することも可能になりますでしょう。


 これにサトル神さまの『ロックオン』のスキルを魔法陣化して組み込めば、予め設定された禁止物質が通過しようとした際に、その物質だけ、もしくはその物質を所持していた者も含めて、別の空間に転移させることが可能になるのです)


「なんだと……

 っていうことは、たとえば爆薬を持ったテロリストが転移の魔道具を潜ろうとしたときに、そいつを別の空間に転移させて逮捕出来るっていうことなのか?」


(はい。

 しかも、『ロックオン』のスキルで設定可能な対象物質の数に制限はございません。

 爆薬も武器も兵器もウイルスも、何万種類だろうが登録可能でございます)


「す、すげぇなそれ。

 あ、でもその設定を改変されちゃったら素通しになっちまうよな」


(『魔道具』に、改変防止用プチAIを配置すれば対処可能でございます。

 改変を察知した際には、魔道具ごと自壊させればよいのですから)


「そ、そうか。

 まるで俺のVRゲーム機と一緒だな……」


(その通りでございますね。

 さらに『転移の魔道具』自体に最高強度の『絶対アブソリュートフィールドの魔道具』を組み込めば、さらに改変不能になりますでしょう)


「最高強度の『絶対アブソリュートフィールドの魔道具』って、そんなに強力だったのか?」


(あのフィールドは、準光速で射出された質量1キログラムの鉄球の衝撃に耐えました。

 その衝突のエネルギーで、鉄球が素粒子以下に分解されてしまってもフィールドは無事だったのです。

 銀河最強の1ゼタ電子ボルトのハドロン衝突型粒子加速器の衝撃にも耐えておりますし、また、1ペタケルビンのプラズマの直撃をもってしても破壊出来ませんでした。


 現在の銀河系の最高水準の技術を用いても、あのフィールドを破壊することは困難でございましょう。

 あれを破壊するためには、大規模実験施設と数千億クレジットのコストがかかります。

 そうした施設以外であのフィールドを破壊出来るとすれば、おそらく超新星爆発の近傍に置くぐらいかと……)


「そ、そそそ、そんなにスゴかったのかよあれ……

 俺、そんなもん使ってソリ遊びとかしてたんか……」


(ということで、悪用不能な『転移の魔道具』の開発は完全に可能でございます)


「で、でもさ。

 そんなもん一気に銀河宇宙に放出したらさ……

 各惑星の運輸会社がみんな倒産してエラいことになっちゃうぞ……」


(仰る通りでしょう。

 ですが、たとえば運輸用の大規模恒星船を建造する必要は無くなります)


「そうか……

 ヒューマノイドが隣の恒星系に資源採掘に行く際には、小型恒星船にこの転移の魔道具の片一方を搭載して行けばいいのか。

 そうして対になった片方は、自分の惑星の近傍空間に置いておけばいいんだな」


(はい)


「だけどまあ、個別惑星内の物流に供することは当初は控えた方がよさそうだな。

 あまりにも影響が大きすぎるだろう」


心のままに……)


「でも、少なくとも880の管区本部のある惑星近傍と、このガイア本部を繋げる『転移の魔道具網』を構築すれば、恒星間物流には革命的な変化が起きるな。


 この恒星間物流を主産業にしている世界は未だほとんど無いから、銀河経済に与える影響はプラスしかないだろう。

 さらには管区本部から象限本部へ、そして個別の惑星へとこの転移の魔道具網を構築出来れば、銀河の将来すら変わって行きそうだな」


(仰る通りでございましょう。

 さらにこの『転移網』を利用すれば、完全に安定したインタープラネットネットの構築が可能になります。


 現状の恒星間通信は、如何に高次空間を利用しているとはいえ、間にブラックホールや白色矮星がございますと大きく影響を受けてしまい、度々通信が途絶しておりますので。

 ああした大重力星は、近傍の高次空間まで影響を及ぼしてしまいますから。


 ですが、この『転移網』であればその心配は不要でございます。

 なにしろ『転移の魔道具』を通して『有線』でネットを繋げますので)


「そうか……

 その『転移網』さえあれば、恒星間物流にも資源開発にも銀河系内インタープラネットネットの構築にも転用できるのか。

 『銀河救済機関』の活動にも使えるな……


 よし! その『転移網』を作ろうじゃないか!

 転移網を構築するために必要なものはなんだ?」


(まずは全ての機能を備えた『転移の魔道具』のプロトタイプ開発の許可を頂戴したいと思います)


「よし、許可する!

 それから次に必要なのは……

 やっぱりそれだけの装置を銀河世界に供給するには、神界の了解も得ていた方がいいだろうな。


 そうか、了解が得られれば、各管区本部近傍と象限本部近傍に神域を設置する許可も得られやすくなるだろうな。

 装置を設置するのは神域がいいだろうけど、既存の管区や象限本部の神域を借りるわけにはいかないだろうから」


(はい、将来的に膨大な量の物資が通過するようになると考えられますので、管理部門の神域を使うのはかなりの御迷惑になるかと……

 それにその管区物流ハブ神域には、管理担当のAIの方に常駐して頂く方がよろしいかと思いますので)


「なるほどな。

 それじゃあむしろ俺の名義の神域じゃあなくって、神界の神域にして貰う方がよさそうだな。

 既に全ての惑星には管理システムがいるから、神界からの指示でもうひとつの神界神域を作って貰うことも簡単だろう。

 その方が俺も手間がかからないからラクだわ……」


(はは、それもそうですな)


「ところでその惑星ごとの神域と各惑星の間で物資はどう移動させようか……

 うん、やはり『転移の魔道具』で繋いでやればいいか。

 そうだな、当面は各惑星に100カ所ほど装置の片方を置いてやればいいだろう。

 それ以上は有料ということにして。


 とすると、『転移の魔道具』は約100億組ほど必要になるということか。

 なあアダム、必要な装置が開発出来たとして、それを100億組作るのにどれぐらいの時間がかかるかな」


(今のサトルさまのお力であれば1日もかかりませんでしょう)


「それなら簡単そうだな。

 そうか、そうした『転移の魔道具』にケーブルを敷設してインタープラネットネットも繋げられるのか。

 それならどんな大容量ケーブルでも繋げられそうだなあ」


(はい。

 そうなれば、『神界運輸・通信部門』がこの銀河宇宙唯一にして最大のプロバイダーということになりますな)


「はは、まあそうしたプロバイダーとしての役割は、そのうち民間に任せてもいいだろう。

 ところで運輸部門の方はどうしようか」


(サトル神さまは現在5万隻の小型恒星間輸送船を保有されています。

 これを1億隻程度に増やされて、8800万の惑星全てに資源採掘用に貸与されては如何でしょうか)


「そうか。

 そうすれば銀河人たちも独自で資源開発が出来るようになるな。

 小型輸送船に乗って隣の恒星系に飛んでって、そこの生命体非居住世界で資源採掘と精錬を行う。

 そうして得た資源を輸送船内の『転移の魔道具』で母惑星近傍にある神域倉庫に転移させ、そうして惑星各地に再転移させればいいのか……」


(はい)


「だが、農業系惑星みたいに特に資源開発をしていない世界には必要無いな……

 ああそうか、そのときは鉱業系の惑星に貸してやってレンタル料が稼げるようにしてやればいいのか。

 そうすればやや貧しい農業系惑星にも所得再分配効果が期待出来るな」


(さすがのお考えでございます……

 ところで、そうした資源開発用恒星船の貸与料金はどう設定されますか?)


「まあ別にタダでもいいんだが……

 なあアダム。

 現状、例えば50光年先の星系に資源開発をしに行ったとして、輸送コストってどれぐらいかかっているんだ?」


(おおよその概算ではございますが、金などの高額資源を除いて、ほぼ資源価格と同額の輸送コストがかかっております)


「そ、それは確かに高額だな。価格が倍になっちゃうのか……

 さて、料金設定をどうするか……」


(あの、サトル神さまの『抽出』される資源は全て純粋資源であり、その価値は通常純度資源の100倍になっています。

 ですが、今後のご任務のために通常純度資源の備蓄も進められたら如何でございますでしょうか)


「そうか、それもそうだ。

 純粋資源に不純物を混ぜて通常純度にするのもアホらしいしな。

 それじゃあさ、『魔道具船』の貸与費用は採掘して精錬した資源の1%っていうのはどうだ?」


(それでもよろしいのでございましょうが……

 料金を資源の3%にして、それをすべて神界に収める形にされたら如何でしょうか。

 この『神界運輸・通信部門』は、救済部門などの行政部門とは異なり、神界の現業部門でございます。

 ですから神界への納付金も必要かと……)


「うん、それもそうだ。

 それじゃあ料金は採掘資源の3%にして、それを全額神界に納付することにしよう。

 それでも充分に銀河世界は喜ぶだろう」


(たぶん相当に喜ぶかと……

 鉱業生産額が10倍以上に跳ね上がって、GGPグロス・ギャラクシー・プロダクツにすら大きな影響が出るものと思われます)


「はは、そうなれば、この『神界運輸・通信部門』が公共事業の役割も果たせることになるのか。

 それでまた幸福ハピネスポイントが稼げそうだな」


(はい)



「なあアダム、他になにかするべきことってあるかな?」


(それではまず、『転移の魔道具』という呼称の変更を行われてはいかがでしょうか。

『魔道具』という言葉を誤解する者も出て来るかもしれませんので)


「おお、それもそうだわ。

 新呼称はなにがいいかな?」


(それではこの魔道具の呼称を『空間転移装置』に改称されたら如何でしょうか)


「うん、それ採用。

 その全ての機能を備えた装置は、これからは『空間転移装置』と呼ぼう。

 それから準備しておくことは?」


(神界の了解が得られた後は、銀河宇宙に『空間転移装置』を搭載する小型恒星船を1億隻近く発注することになります。

 さらにはその恒星船の各惑星への貸与と料金の説明などのために、ここサトルさまの神域で『銀河ヒューマノイド会議』を開催されては如何でしょうか)


「おお、それ説明と注文がいっぺんで済んでラクそうだな。

 それじゃあ惑星イルシャムに頼んで、銀河中の政治や経済のグループ代表を集めて貰おうか。

 確かそういうグループって3000ぐらいあるんだろ。

 それに加えて種族会の種族代表や管区代表惑星の連中も呼ぶか……」




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