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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
304/325

*** 304 激昂する中級神たち ***

 


 神界管区担当中級神会議の議場では、最前列に座った古参の中級神たちのヒートアップが続いていた。



「そ、それにキサマの資金力も、あのワケのわからん『げーむ』とやらを銀河世界で売り出したからだろう!

 なぜワシの管区で商売をするのにワシに挨拶が無かったのだ!」



「あの…… ひとつ訂正させて頂きたいのですが……」


「な、なんだ、今さら言い訳は聞かんぞっ!」


「あのですね、あれは『あなたの管区』ではなく、『あなたが管理人をしている管区』なのですよ。

 ヒューマノイドの暮らす世界を、自分の所有物のように思われるのもどうかと思いますねぇ」


「ぐ、ぐぎぃぃぃぃぃーっ! い、言わせておけばっ!」


「それにですね。

 もしもあなたがあなたの管区の民を自分のものだと思っていらっしゃるのだとしたら。

 頭を下げて挨拶に来るのはあなたの方ですよね。

 だって自分の民をわたしに救ってもらったんですから」


「ぐぎぎぎぎぎぎぎ……」


「こ、こここ、ここな餓鬼めがっ!」


「なんという、なんという傲慢な若輩者でしょうか!」



「それにあのゲームの売り上げだけでは到底足りませんよ。

 実際、救済に費やした予算の数%にもならないのです。

 さらにあのゲーム販売は純粋な商取引ですからね。

 それとも銀河宇宙では、商取引をするのにいちいち地域の管理人さんの了解が要るんですか?」



「な、なんだとぉっ!」



「それから先ほどあなた方は、『救済活動を始めるに当たって挨拶が無かった』とも仰いましたよね。

 商取引の挨拶も含めて、その挨拶って『よろしくお願いします』でいいんですか?

 それともまさか、単なる商取引や神界の任務遂行に対して、ショバ代としての金品を要求されているんじゃないですよね?」



「な、なんてことをっ!」


「こ、これだから野蛮人は!」


「そ、それからだ!

 キサマは要請に応じて直ちに救済活動をしたとかヌカしたが、我が第6管区本部からの救済要請に関しては3カ月もの間放置していたではないかっ!

 それをどう申し開きするつもりだっ!」



「ああ、ズイクルフォンナ中級神殿。

 それは要救済惑星名と座標を明示した要請ではなかったからですね。

 しかも何故か、救済物資は管区本部の倉庫に運び込めという奇妙な要請だったので、調査期間が必要だったからです」


「な、なんだと!

 我が管区内の救済を管区本部が行おうとしてなにが悪いのだっ!」


「もう我慢ならん!

 キサマのデッチ上げた組織はすぐに解散しろっ!

 後はすべて我ら管区統括神が引き受けてやるっ!」




 そのとき、ウルフォン種族会議議長の席のライトが点灯した。


「ウルフォン種族会議議長の発言を認めます」


 おお、そういうルールだったのか……



「オブザーバーは黙っておれっ!」


「劣等種族の分際で中級神会議に口を出す気かっ!」



 議長が真剣な顔で口を挟んだ。


「ギルイスラーナ中級神。

 今の発言は最大級の種族差別発言です。

 直ちに発言内容を撤回して謝罪してください」



「ぐうぅぅぅっ……」


「ただちに謝罪が為されない場合は、あなたを降格の上解任しなければなりません」


「つ、ついはずみで言ってしまった……

 発言を撤回した上で謝罪する。

 も、申しわけ無かった……」



「謝罪を受け入れます。以後は気をつけるように」


 はは、ウルフォン議長が俺の顔を見て微笑んだわ。




「さて、私ども狼人族の暮らす惑星は銀河全域に20万程ございます。

 そのうち約1万1000の世界では、一部地域もしくは全域で食糧不足に悩まされておりました。

 そして、サトル神殿の『銀河救済機関』設立の話を耳にし、半信半疑ながらも各象限本部や管区本部を通じて救済要請を出したのでございます。


 ですが……

 その救済内容は、管区によって大きな違いがあったのです。

 管区ナンバー500番以降の世界では、直ちに救済が行われ始めました。


 それも、単なる食料供給だけでなく、小氷河期の訪れで冷害に見舞われていた星には、膨大な量の資材も届けられて巨大な温室の建設が始まりました。

 また、同じく氷期の訪れとともに水不足に悩み始めた惑星では、各所にダムの建設と融氷装置の設置までして頂いております。

 そして、それらはどれも素晴らしい救済活動でございました。


 ところがです。

 管区ナンバー200番から500番までの地域では、最も被害の深刻な数個の惑星を除いて救済機関が来なかったのです。

 ナンバー100以下の管区では1件も救済が行われていませんでした」



「そ、それこそがこの若造の傲慢さを証明する実例じゃっ!」


「自分の判断で勝手に救済対象世界を決めていたとは!」


「それこそ差別だろうにっ! 謝罪せよっ!」



「それにしても不思議だと思われませんか?

 なぜ当初1カ月は、ナンバー500以降の管区の星はすべて迅速に救済が行われたのにナンバー100以下の管区では全く救済が行われなかったのか?」


「だからそれこそが逆差別だと言っておろう!」



「われわれ狼人種族本部は、各惑星からそうした実態を受け取っておりました。

 そこで、管区本部に救済を求めたにも関わらず未だに救済が為されていない世界に対し、『管区本部に再度救済を申し出てみるように』という通達を出したのです。


 その結果……


 それら再申し立てを行ったほとんど全ての惑星に対し、管区本部より『要請取次のための手数料として管区本部にお布施を払え』、『救済物資の代金を払え』という通達が帰って来たのですよ」



「め、めめめ、名誉棄損じゃっ!」


「そ、そそそ、そのような証拠がどこにあるっ!」



「ふむ、証拠ですか……

 あの通達がいつものように統括中級神のサイン入り公式文書ではなく、恒星間通信による直接口頭通達だったのは、やはり証拠を残さないという意味があったのですね」


「な、ななななな……」



「そこでいくつかの惑星では、なけなしの予算を叩いてその代金とやらを振り込みました。

 そう言えば、振り込み指定先も通常の管区口座では無く、何故か管区補佐役初級神の個人口座だったそうでございますが」


「そ、そんなもの、そやつ個人の犯罪に決まっておろうが!」


「それに実際に救済機関が代金を請求していたのかもしれんだろうに!」



「いいえ、既に救済の始まっていたナンバー500以降の世界では、救済に際して一切の対価を求められておりません。

 いくばくかの金銭を提示した惑星もございましたが、すべて救済機関に丁重に断られていたそうでございます」



「証拠は! 証拠はどこにあるっ!」


「言っておくがお前たちの種族連盟の調査など、疑わし過ぎて証拠になどはならんからなっ!」



「さらに1カ月ほど経って、銀河全域に『救済ホットライン』が設置されました。

 そこで管区本部に対して救済を申請したものの、未だになんの連絡も無かった惑星当局が、恐る恐るホットラインで救済機関本部に救済依頼を出したのですよ。


 そう致しましたら……

 驚くべきことに、依頼から3分以内に救済機関の調査員が30名ほど転移して参りました。

 そうして彼らが飢饉の実態を調査している間にも、その惑星の軌道上には倉庫衛星が続々と転移されて来たのです。


 食料が満載された直径30キロもの衛星もございました。

 また、仮設住宅や温室建設のための資材を満載した衛星もございました。


 そうして、それらの衛星から合計600機を越える大気圏航行機が降りて来て惑星内の各地域に展開し、膨大な量の救援物資を配り始めたのでございます。

 また、無数の巨大店舗が僅か1時間で建設され、そこでの暖かい料理の無料提供まで始まりました」



 そこで言葉を切った議長閣下は俺に微笑みかけた。


「あの地球産の『らーめん』という食べ物は実に旨いですな。

 私どもも病みつきになっておりますよ」


(ついに銀河宇宙に覇道を打ち立てたか、ラーメンよ……)




「そうして、その惑星の政府当局者が、救済機関の派遣団に恐る恐る尋ねたのでございます。

『何故、管区本部経由の救済依頼には全く返事が無かったのに、ホットラインを通じて依頼すると、このように迅速に助けて頂けたのでしょうか?』と……


 返事は、『管区本部からこの惑星への救済依頼は存在しなかった』というものでございました……」


「そ、それはなにかの間違いだ!」


「し、証拠はどこにあるっ!」


「証拠も無しにこのような公式の場でそのような誹謗中傷発言をするとはっ!」


「こ、これは我ら中級神に対する侮辱罪に当たりますっ!」


「議長閣下! 動議を提出しますっ!

 こ奴の侮辱発言に対し、降格の上退出を命じて下さいっ!」



「それではまず真偽のほどを確認するために、神界最高監査部に監査依頼を出すことと致しましょうか。

 それで今のウルフォン殿の発言の真偽の程を確認していただくことと致しましょう」



「な、なにもそこまでしなくとも……」


「そ、そうですわ、最高神政務庁の最高監査部の手を煩わせるまでは……」


「ふむ、それでは先ほどの動議は撤回されたということでよろしいのですな?」


「「「「「 ……………… 」」」」」



「沈黙は動議の撤回と看做させて頂きます」



 またウルフォン中級神が微笑んだ。


「それでサトル神殿。

 そうした経緯はあったものの、今では我が種族の困窮世界も全て救済されております。

 それにしても、単に食料を届けるのみならず、水源の確保や膨大な数の温室の造営まで行って下さったとは……


 おかげさまをもちまして、われら狼人族の星は全て救われました。

 ここにおります多くの種族の星もまた同様でございます。


 如何に神界の公式任務だったとはいえ、我ら一同よりの深甚なる感謝の意をお受け取り願えませんでしょうか……」



 はは、獣人・亜人種族の神さまたちが全員揃って深々と頭を下げたわ。

 彼ら種族の風習では、感謝の意を示すために頭を下げるって、あんまり一般的じゃあないそうなんだけど……

 きっとヒト族や地球の日本の風習を調べてくれたんだろうな……




 そのとき、議場の後方の席のランプが灯ったんだ。


「管区ナンバー711、イルスフィーナ中級神、発言を許可します」


 その女性神は、立ち上がって深く頭を下げた。


「サトル神殿のおかげをもちまして、わたくしの統括する第711象限の困窮世界620も全て救われました。

 どの星の子供たちにも笑顔が戻ってきております。

 わたくしの力が足りないばかりに、飢えに苦しんでいたあの子供たちにです……

 サトル神殿…… 本当にありがとうございました……」



 そしたらさ、議場の後方にいた神々が200人ぐらい立ち上がったんだ。

 そうして一斉に頭を下げて、「ありがとうございました!」って唱和したんだわ。

 ほう、管区統括中級神の中にもまともな奴もいたんだな……


 真ん中辺りに座ってる奴は……

 ああ、立ち上がりかけたけど、前列のジジババどもに睨みつけられて座っちまったか……


 あー、でもまた前列のジジババどもが真っ赤になって青筋立ててるわー。




 最前列のジジイが勝ち誇ったような顔で発言した。


「キサマ先ほど、救済要請のあった案件は現在全て救済が終了したか、救済中だとヌカしおったな」


「ええ」


「それでは何故わたしの管区の神界倉庫に食料が届いておらんのだ!

 3カ月前に300の世界、5000億の民のための食料を要求したが、1カ月前にたった衛星3個分の食料が届いただけだ!


 これは逆差別だ!

 何故キサマは我が管区からの指示を故意に無視しているのだ!」




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