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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
300/325

*** 300 惑星ヴォルフ 7/7 ***

 



 俺は大声で通告した。


「俺はガイザル統一皇帝だ!

 旧メスチーヤ王国の狼どもに告ぐ!

 まずは王族と貴族。

 お前らは全員5年間の農業労働懲役の刑に処す!

 丸裸になって一から出直せ!」


 再度無数の閃光が煌めいて、数百人の着飾った狼を包み込む。


「「「「「「「「んぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁ~っ!」」」」」」」」


「旧平民階級と旧奴隷階級は、全員1年間の懲役労働だ。

 また、今後、略奪行為など一切の犯罪行為を禁ずる。

 当面はこの広場で食事を供給するからのんびりしていろ」




 その後はピコがアンドロイド兵やドローンたちを動かして忙しそうに働いていたよ。

 広場の炊き出しは実に豪勢なもんだったんで、民衆たちは驚いていたな。


 それから旧王族と貴族は全員しっぽと耳を切り取られて、また不思議生物の団体が出来上がっていった。

 王宮の正門には切り取ったしっぽがぶら下げられて、またキショい門になってたぞ。

 王宮や貴族街の屋敷に押し入って略奪を働こうとした者も、全員こんがり焼かれてしっぽも切り取られていたわ。


 こうして俺はメスチーヤ王国も従えた。

 あとは同じようにして順番に残り9カ国も併合していったんだ……





 俺はガイザル帝国の宮殿跡地に作らせた小さな屋敷でのんびりとしていた。

 さすがにAIたちの政務団は優秀だよな。

 総動員した捕虜や『タゴサクドローンチーム』も投入し、あちこちの平野や湿原地帯が開拓・干拓され始めている。

 来年には農業生産が3倍になる予定だそうだ。


 この分だと、懲役者が全員解放される5年後には、この星の食料自給率は200%近くになっていることだろう。

 もっとも死亡率が激減して新生児数も増えるだろうから、まだまだ農地は必要だが。



 もう俺の仕事はほとんど無くなった。

 唯一の仕事は年に1回、俺に挑戦して来るバカを退治することだ。


 いややっぱり狼共の闘争本能って抑えるのがたいへんでさ。

 だから毎週日曜日に旧12カ国でトーナメント制闘技大会を開催することになったんだ。

 自由参加で予選やって、それを勝ち抜いた猛者たちをまた戦わせるんだけどな。

 それを旧12カ国の王宮前広場に設置したスクリーンで放映するわけよ。


 それが娯楽なんかほとんど無いこの星では、超絶大人気番組になっちゃってさ。

 まあ闘争本能を発露するのは、自分じゃあなくっても感情移入した他人でもいいからな。

 地球で格闘技中継が人気になってるのとおんなじだわ。



 それがあんまりすごい人気なんで、各街や村にも小型スクリーンを設置してやったんだ。

 おかげで予選も本戦もいつも視聴率100%近いそうだわ。


 そうそう、あの俺が連合軍をやっつけた円筒の中は、改造して大闘技場にしたんだ。

 収容人員30万人の。


 そこで予選を勝ち抜いた32人を集めて、年に1度1カ月に渡って本戦をするんだよ。

 そうして栄えある優勝者は、俺と対戦して帝王になれる可能性にチャレンジ出来るワケだ。

 まあ、毎年デコピンで3秒以内にノックアウトしてるけど。


 それでかなりみんなの闘争本能を解消させてやれたようなんで、現在他のスポーツ競技も広めようとしているところだ。

 サッカーとかラグビーとか陸上競技とかだ。


 最初は笑っちまったよ。

 兵士たちにサッカー教えたら、犬属の本能丸出しで、コロコロ転がるボールを見るとハァハァ言いながらみんなで追いかけちまうんだわ。

 最初にボールに追いついたヤツは、ボール咥えて逃げちまってるし。

 わはははは。



 それからAIたちからの提案で、料理番組も出来たんだ。

 大豆なんかの植物性タンパクを美味しく食べるためのハウツー番組だ。


 そしたらさ。

 ピコがあたしも料理を紹介したいって言い出したんだよ。

 だから試しにやらせてみたんだ。

 ピコによれば、『大豆を使ったお肉そっくりな見た目と味の焼き肉料理を紹介する』っていう企画だったんだが……


 それで惑星全土に中継してる番組内で、ピコの身代わりドローンがドヤ顔で料理を紹介したんだな。


「それではこれから、帝王さまも大好きな大豆で作った焼き肉そっくりのお料理をご紹介します~♪」って言って。


 そうして料理に被せたバカデカい銀色のフタを取ったらさ。

 まあ確かに本物の肉みたいに見える焼き肉料理だったんだけどよ。


 どうしてそれをわざわざ実物大の狼野郎の体そっくりにして焼くかな。

 しかもご丁寧に、焼いて無い狼の生首人形が横に置いてあって、苦悶の表情を浮かべて舌出してんだぜ。


 血走った目が今にも零れ落ちそうだったし。

 焼かれた腕も上に突き出されて、くわって広げた指も断末魔の雰囲気出してるし。

 しかも焼きたてで体からケムリ出てるし……


 スタジオにいたゲストたちは、瞬時に上からも下からも体の中身全部噴き出してたよ。



 さらにおかげで惑星全土で1億2000万匹の上下マーライオンが出現しちまったそうだ。

 もー女子供は泣き叫ぶし、街や村の広場はドロドロデロデロになっちまうし……


 仕方無ぇからピコの身代わりドローンを縛り上げて、王宮前広場で3日3晩正座させて、それを番組で流したんだよ。

「ごめんなさい! もうしません!」って書いた看板ブラ下げさせて……




 さすがのピコもアダムさまから直々に怒られて少しは反省したようだ。


(でっ、でもさ!

 ほ、ほら、狼たちがみんなしばらく肉は喰いたくねぇって言ってるって……

 だ、だから結果オーライっていうかなんていうか……)


「バカヤロ!

 お前それ狙ってやったんじゃあなくって、単なる愉快犯だろうが!」


(は、はい…… す、すみましぇん……)




 その後は、ピコが少しおとなしくなったおかげで、しばらくは平穏な日々が続いていたんだ。



 或る夏の暑い日、俺はおやつのかき氷を喰い終えて寝そべっていた。

 ミーヤ型ドローンたちが作った果樹園で一部収穫が始まったんで、ジャムやシロップが作れるようになったんだけどさ。


 それで、狼共に肉ばっかし喰いたがらないで、植物性タンパクや他のもんも喰えっていう宣伝政策を始めたようだ。

 具体的には、干拓工事なんかしてる市民たちに、やつらが喰ったこと無いようなおやつを振舞うようになったんだよ。


 最初見たときは驚いたわ。

 タゴサク型ドローンたちって、冷蔵庫とかき氷機を内蔵してやんの。

 ボデイの中から楽しげな音楽とともに、にょきにょきってなにやら出てきて、あっという間にかき氷屋に変身するんだわ。

「かき氷あります♪」っていう旗まで生えてくるんだもんなあ……


 おかげでドローンたちは市民の間ですっげえ人気者になってたよ。

 おやつの時間になると、楽しげな音楽と共に市民達に取り囲まれるんだ。

 牧畜や養鶏の体制が整ったら、プリンやアイスクリームも出せるようになるそうだ。

 冬はあんまんや石焼きイモなんだと。


 食材改革はまず甘いもんからか。

 さすがはAI政務団だわ。


 この惑星ヴォルフ派遣軍のアイゴーン司令官も、『銀河救済機関』本部からえらく褒められたらしくって、食料や資材はほぼ無制限で届いてるそうだし。





(ねえ、ガイザル。また市民代表が謁見を申し入れて来てるよ)


「なんだ、また大量にメス狼を連れて来てるんか。

 お后さまや妾は要らねえって何度言ったらわかるんだ?」


(そうは言っても彼らにしたら、ガイザルくんにもしも万が一のことがあったら、また元通りの不幸な暮らしに戻っちゃうっていう心配があるんだからさ。

 早くキミの跡継ぎを作ってもらって安心したいんだろうね)


「俺はあと10万年は死なねぇけどな」


(だけど彼らはそんなこと知らないし。

 よかったら1人だけでも后を娶ったら?

 ガイザルくんも溜まってるだろうし……)



 俺は邸の前のメス狼たちを見た。

 あーあ、みんな涙目で震えてるわ。

 俺の機嫌を損ねたら喰われちまうってびびってるみたいだ。

 こんな連中を后にしてもなあ。


「なあ、ピコ。

 俺も一応任務を達成したんだし、サトル神さまにお願いしたら褒美って貰えるんだろ?」


(うん。ほとんどどんな望みでも叶えてくださるんじゃないかな。

 なにしろキミは、死亡者ゼロで惑星統一っていう偉業を成し遂げたんだもん。

 それに1年以内に食料自給率100%も達成したし。

 サトル神さま、すっごく喜んで下さってたみたいだから)


「そんならさ、ピコ。

 お前、サトル神さまに頼んで俺とおなじ神造生命体アバターを貰って来てくれよ。

 そんでもって、俺の后になってくんないか?」


(えっ…………)


「まあそのなんだ。お前がいちばん気軽に話せる相手だからな。

 余生を共に過ごす相手としちゃあ気が楽っていうかなんというか」


(でっでもボク、まだ初級AIだから子供は生めないよ……)


「いやむしろ生まないで欲しいんだ。

『世襲制』ってぇやつぁ諸悪の根源でもあるからな。

 俺が死んだら、サトル神さまがまた王にふさわしいヤツを送り込んでくださるだろ。

 お前にはただ俺と一緒に暮らして欲しいだけなんだ……

 まあ一生イタズラを警戒するのも刺激があっていいだろうよ」


(う、うええええええ~ん! が、ガイザルくんありがとう!

 ぼ、ボク、うれしいよう……)




 数日後、ピコは早速狼人型アバターになって俺の前に現れた。


 感動したよ。

 狼部分はもふもふのしっぽと獣耳ぐらいなんだ。

 後は手首と足首の辺りに、腕輪や脚輪みたいにふわふわの綺麗な白い毛があるだけだ。

 もちろん見た目は絶世のオオカミ族型美少女だもんな。



「えへへ。どうかなこの体。

 あのフェミーナさまとそっくりにしてもらったんだ。

 噂によればサトル神さまのお好みのど真ん中らしいんだけど……」


 ああ、だからなのか。

 だから俺の好みのどストライクでもあるのか。



 俺は思わずピコを押し倒して、それから3日3晩ヤり続けちまったぜ!




 そうそう。

 あのドラゴンも現地の美人(美ドラゴン?)のお后をもらったそうなんだけどさ。

 しょうがないんで義務感で初夜に致そうとしたとき、サトル神さまの影響でうっかりまずは正面からヤろうとしたんだと。


 そしたら、「し、初夜になってことするんだ! こっ、このド変態めぇ~っ!」って新妻にしっぽで思いっきり殴り飛ばされたんだってさ。


 ああいう種族の『正常位』って後背位なのになー。

 それ以来、陰で『変態帝王』って呼ばれてるそうだわ。



 つくづく不憫な奴っちゃのう……

 今度酒でも持って遊びに行って、愚痴でも聞いてやるか……







(惑星ヴォルフ篇 了)



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