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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
3/325

*** 3 ナナナ、ナゼここでシスティの声がががが…… ***

 


 再び出してもらった食後のコーヒーを楽しみながら、俺はシスティに話しかけた。


「まずはシスティが俺に望む使命だが、『幸福をもたらす』って言われても抽象的でよくわからんな。

『勝利条件』はなんなんだ?」


「いろいろあるけど…… まずは500年後までに、この世界の幸福ハピネスポイントが罪業カルマポイントを1億ポイント以上上回ることね」


「なんだそりゃ?」


「実際に見てもらった方が説明が早いかしら。

 この世界は『タイプRS-7世界』、通称『ガイア』って言うんだけど、それじゃあまずこの世界のステータスを見せるわね。

『ステータスオープン!』」


 途端に俺の目の前にスクリーンが広がった。



 =================



 世界名: ガイア(タイプRS-7)

 管理者: システィフィーナ(初級天使)

 表面積: 約5億平方キロ(内、海洋面積約3億平方キロ)

 レベル: 1

 知的生命体人口: 約2,400万

 幸福ハピネスポイント合計:    13,550,213

 罪業カルマポイント合計: 51,267,803,919



 =================



「なあ、この罪業カルマポイントって……」


「ええ、文字通り、この世界に暮らす住民たちの罪業カルマを数値化したものなの。

 特に、自分の欲望のため誰かを死に至らしめたりすると増えるのよ」


 俺が見ている間にも、罪業カルマポイントはどんどん増え続けていた。

 それに比べて幸福ハピネスポイントはほとんど増えていかない。


幸福ハピネスポイントは、生きている喜びを感じて、世界や創造天使わたしに感謝したとき、もしくは他者を幸福な状態にしてあげて、自分も幸せな気持ちになったときに増えるの。

 でも見ての通りほとんど増えていないのよ。

 わ、私の世界の子たちって、私や世界にほとんど感謝も出来ないまま、つまり生きる喜びもほとんど感じないまま殺されていってるの……」


「確かにヒドい状態だな。

 幸福ハピネスポイントが1350万しか無いのに、罪業カルマポイントは512億もあるのか……

 これじゃあ500年後までに、幸福ハピネスポイントが罪業カルマポイントを1億ポイントも上回るのはほぼ不可能だな……」


「そ、その他にも幸福ハピネスポイントが総人口の5倍以上無ければいけないとか、知的生命体人口が1億以上必要とか、住民のE階梯の平均が2.0以上無ければいけないとか、細かい条件はあるんだけど……

 でもこのままだと人口が増えれば増えるほど、罪業カルマポイントも増えちゃうわ」


(E階梯ってなんだ? ま、まあ後で詳しく聞くか)


「そりゃそうだな。

 ということはだ。

 例えば俺が何らかの力を授かって、強大な統一王国を作るとする。

 結果として幸せな国が出来るかもしらんが、その過程の統一戦争で多くの死者が出ては意味が無いっていうことか……」


「そうなの。

 だから最初の人は、小さな王国を作ってそこから幸せを広げて行こうとして、最初は頑張ってたんだけど……

 でも後継者がハーレムの誘惑に負けちゃって……

 それから2人目のひとは宗教で平和と幸せをもたらそうとしたのよね。

 だけど、その子孫たちが調子に乗って、収奪と弾圧を繰り返す最悪の宗教国家を作り出しちゃったのよ」


「『権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対的に腐敗する』ってぇやつか……

 ついでに『諸悪の根源は世襲制』ってぇやつでもあるな」


「その宗教国家の過去の首脳たちだけで、もう罪業カルマポイントは100億ポイントにも達しているの。

 後は、たくさんある各地の王国の歴代の国王や貴族たちで、200億ポイントも出してるわ」


「ヒデえ連中だな。

 ひとり殺せば殺人犯だが、10万人殺せば国王サマかよ……」


「みんな『強い者が手に入れる、より強い者がより多く手に入れる』って信じてるんだもの……」


「それって、俺の前の世界でも昔はそうだったんだぞ。

 中世ヨーロッパとかモンゴル帝国とか日本の戦国時代とか」


「でも、お姉さまはその状態を乗り越えて、今の世界をお創りになられたんですもの。

 石器時代や縄文時代みたいな狩猟と採集の世界では、実りが多い割に人口がそれほど多くなかったこともあって、争い事がほとんど起きなかったんですって。

 お姉さまはそれで最初の試練を乗り越えたそうなんだけど……

 でも、わたしにはもう無理だわ。

 なんでこんなになっちゃったんだろう……」


 しょげかえったシスティの目からまた涙が零れ落ちた。


「システィはほとんど諦めてるんだな……」


「うん、だってもうどうしたらいいのかわからないんだもの……」


「だったらダメモトだな。やるだけやってみるか」


「ほ、ほんと?」


 ああ、システィの瞳が煌めいた。

 微かな希望が見えたからかな……

 それにしてもこの娘、い、いや創造天使サマか、本当に綺麗だよなぁ……



「そのための条件というか必要事項を伝えるぞ。

 まずはシスティも俺に丸投げするんじゃあなくって、一緒に努力すること」


「で、でもわたし、世界に直接過剰な影響は及ぼせないわよ?」


「だが、それでも俺の手助けは出来るだろ?

 一緒に考えるとか、俺に能力を授けるとか」


「う、うん……」


「それから今、神さまから貰った管理用のポイントはどれぐらい残っているんだっけ?」


「あと200ポイントちょっとだけど……」


「それってどんなことが出来るんだ?」


「けっこういろいろ出来るわ……

 想定した状況を示すと、それに必要なポイントを提示してもらえるの」


「じゃあそのポイントを使って、一緒に努力してみようか」


「う、うん…… どうせこのままじゃあ『消去』だものね……

 ポイント残していても仕方ないものね。

 と、ところでサトルはどんな報酬が欲しいの?

 報酬には基本報酬と達成報酬があるんだけど……」


「ああ、基本報酬は、こうやって生き返らせてくれたことと、健康な体を与えてくれたことで十分だ。

 後は前世の世界のメシと多少の物資かな」


「サトルって無欲なひとなのね。

 それで達成報酬は?」


「そ、それはもしも達成できたら考えるよ……」


「うん、わかった……」



(前世の俺の夢……

 可愛いカノジョを作ること。

 い、いや、カノジョじゃあなくっても、可愛い異性の友人で十分だわ。

 システィぐらい可愛い娘だったら最高だな。

 恥ずかしくって言えんけど……)




「それじゃあ一緒に戦略ストラテジーを考えるか。

 その前に、俺はこの空間にしばらくいてもいいのか?」


「うん。以前のひとたちは希望した能力だけ与えてすぐに地上界に送っちゃったけど。

 でも今度は私もサトルを手伝うんだものね。

 一緒に考えましょ♪」


「ところで、戦略会議を始める前にさ。

 ここに風呂ってあるのかな?

 い、いや前世ではほとんど清拭ばっかりで、シャワーすら滅多に浴びられなかったんだ」


「わたしたちは体が汚れないからお風呂には入らないんだけど……

 あ、でもお姉さまはお風呂大好きになったみたい。

 あっちの世界で温泉旅館も経営されてるみたいだから」


(お姉さま…… 再度言うけど創造天使サマのくせになにやってんの?)




 システィの前になにやらスクリーンが出て来た。


「ええ~っと、お風呂セットは工事費込みで200万円か……」


「た、高いな……」


「でもポイントにすれば0.2ポイントだし、サトルに気持ち良く働いてもらうためなら安いものよ」


「お、おう……」


「じゃあ注文するわね。ここでいいのかしら…… ポチっと……」


 しばらくすると白い空間にぴんぽ~んと音が響いた。


「ちわ~、【株式会社エルダーシスター】ですぅ。

 ご注文のお風呂の配送と設置に来ましたぁ~」


「はぁい、今開けますね」


 途端に部屋にドアが現れた。

 そのドアからにこにこした奴が現れる。

 手足は細かいウロコに覆われて、細長いしっぽがぴこぴこ揺れている。

 よく見れば上を向いたしっぽの先がスペード型になっている。

 あ、背には黒い小さな翼もある……

 それから頭には捻じれた角もあるし、口には小さなキバも見える。


(どう見てもこいつ悪魔だよな……)



「え~っと、システィフィーナさま、設置はこちらの空間でよろしかったでしょうか?」


「はい、お願いします」


 ドアからやや小さい悪魔が4体現れた。

 みんなで風呂セットと思われる品をうんしょうんしょと運んでいる。

 見てる間にその場で風呂の設置を始めた。


「それじゃあシスティフィーナさま、こちらの伝票にハンコを頂戴出来ますか?」


「はぁい」


 システィがどこからともなくハンコを取り出して、伝票に押しつけた。

 俺はその伝票を見せてもらったんだが、押印欄には花丸の中に可愛らしい字で『しすてぃ』と書かれた印があった。


「あ、このハンコ、お姉さまが下さったの。可愛いでしょ♪」


「なあ、なんか前世の世界そっくりなんだが……」


「お姉さまの方針ね。『様式美』って言うんですって」


(…… お姉さま ……)



「ああ、そうそう、システィフィーナさま。

 高額品お買い上げのサービスに、浴用セットも持ってきました。

 こちらに置いておきますね」


「わぁい、ありがとう!」



 大悪魔と小悪魔たちは元気な声で「毎度ありがとうございますぅ~」と挨拶して帰って行った。

 見ればその場に豪華な浴場が出来ていて、湯船の淵に立つ女神像の持つ壺からこんこんと湯が湧き出している。

 湯船の外には蛇口や風呂椅子もあって、石鹸やボディタオルやシャンプーやリンスも置いてあった。


(なんで蛇口や風呂椅子が2つずつあるんだろ?

 ま、まあこれだけ大きな風呂なんだから当然かな……)



 俺はシスティを振り返った。


「なあ、これお湯の供給とか排水とかどうなってるんだ?」


「あ、それはね。わたしの『天使力』で供給したり処理したりしてるから大丈夫よ。

 この空間を維持してるのも私の『天使力』なの」


「『天使力』か……」


「うん。この星に溢れる神素マナを使いこなす能力なの。

 生命創造なんかは神様から頂いた『創造用神力』が無いと難しいけど、身の回りのこととかだったらわたし自身の力でたいていのことはなんとかなるわ」


「そうか…… それじゃあ早速入らせてもらうが…… 

 衝立とか壁とかは無いのか?」


「お風呂って別室に作ったりするものなの?」


「あ、ああ。前世ではそうだったんだが……」


「それじゃあ『お風呂のある部屋』っていうのを作るわね」


 途端にその場にドアが現れた。

 風呂場も消えている。


 俺は驚きつつもそのドアをくぐり、部屋の隅で服を脱いだ。

 壁に鏡があったんで、自分の姿を確認する。

 ああ、前世とほとんど変わらない姿か……

 はは、ガリガリでひょろひょろだわ。

 ま、まあ病死の直後だからな。


 でも、いつも土気色だった顔が健康的な顔色になってる……

『健康な体を与えられた』って本当だったんだな……

 それにしても2年ぶりの風呂か…… 楽しみだ……



 俺はまず、浴槽の湯でかけ湯をした後、洗い場らしきところで体を洗う。

 おお、けっこう汚れてたんだな。久しぶりで気持ちいいや。

 俺は目をつむって頭もごしごし洗い始めた。



「ふ~ん。お湯に入る前にそうやって体を洗うのね……

 じゃあわたしもそうするわね」


 ナナナ、ナゼここでシスティの声がががが……

 し、しかもわたしもそうするわねってててててて……



 俺の隣で美少女天使が同じように体を洗い始めた。

 い、一緒に入るんかよ!


 彼女はもちろんトーガは脱いでいる。

 俺は必死でそちらを見ないようにしながら体を洗った。


(天使って…… 裸を見られることに羞恥心持たないのかな……

 っていうことは、これからも……

 い、いかんいかん! お、俺のオオカミさんが目覚めてしまう!

 色即是空、空即是色……)


「うわー、この石鹸ってあわあわしておもしろーい♪」


 システィさん。俺もアワアワしてますが……

 っていうよりアワワワワワですが……



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