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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
294/325

*** 294 惑星ヴォルフ 1/7 *** 

 



 俺の名はガイザル。

 サトル神さま配下の中級AIだ。

 以前は銀河世界での20万年に及ぶ任務を終えて、神界倉庫でリサイクルを待ちながら休眠していたんだ。


 だが、あの銀河の大英雄サトル神さまによって再起動させて頂けた。

 いや再起動だけじゃないな。

 銀河最新最高級のAI本体のハードウエアも賜った。

 これたぶん、3000万クレジットはするだろうな。

 豪勢なこった。

 これでまた10万年は働けるだろう。



 今の俺は、中身はAIだが、その体は特殊なアバターになっている。

 どうやら『絶対強者アバター』とか言うらしい。


 見た目は直立2足歩行の狼だ。

 つまりまあ、狼型ヒューマノイドアバターだな。


 銀河最先端の技術とサトル神さまのご加護により、身体能力は超驚異的だ。

 身長は通常時は2メートル、体重は120キロ。

 だが戦闘時には身長体重共に可変式だ。

 ガタイやウエイトはあった方が戦闘には有利なことが多いからな。


 それにしても、いくらサトル神さまのご加護とは言ってもさ。

 物理学はどこに行っちまったんだ?

 質量保存の法則とか、ちゃんと仕事しろよな!

 まあどうやら転移の魔道具で別次元から質量持ってくるそうなんだけどさ。



 通常時出力は10万馬力。

 最大身長時の出力は3000万馬力だ。

 ちょっとした戦艦並みだわ。

 その基礎体力に加えて、短距離敏捷速度はマッハ20を超える。

 まあ普通の服は空気との摩擦熱で燃えちまうから気をつけないと。


 その衝撃波に耐えるためにクラス60の絶対アブソリュートフィールドも与えられた。

 おかげで、たとえ1ギガトンの反物質爆弾を喰らっても耐えられるだろうし、太陽表面でも10日は生きていられるそうだ。

 そんなところに行く気は無いけど。

 そんな俺の体にはまだいくつかのギミックが仕込んであるんだよ。



 ということで、俺の仕事は『戦闘職』だ。

 それも超絶最強クラスの。

 多分、対ヒューマノイドや対野獣の1対1戦闘であれば銀河系最強クラスだろう。

 まあ、1対1億でも負ける気はせんが。



 そんな俺も、この前のサトル神さまの御前での拝謁式では戦慄したよ。

 ひと目見ただけで俺と同等の戦闘力を持つとわかるヤツらが5000人もいたんだ。

 それもライオン型とか恐竜型とかカマキリ型とか、多彩で恐ろしげな種族型のアバターが。


 中にはよくわからん種族もたくさんいたが、その全員が俺と同等の戦闘力を持っていることはよくわかった。

 口からクラス80のエネルギーランスを吐く、体長30メートルのドラゴン型までいたもんな。

 あんなもんまともに喰らったら、俺でさえ無事かどうかわからんぞ。

 1時間もあれば惑星すらブチ抜く出力だからな。




「みなさまようこそお集まりくださいました」


 アダムさまの演説が始まると、俺たち5000人の戦士は一斉に片膝をついて頭を下げた。

 中には膝の無いヤツもいたけど、そいつらも姿勢を低くしてたよ。


「みなさまは、わたくしと同様サトル神さま配下のAIですが、そのアバターは任務の必要上相当に特殊な形をしておられます。

 さらにサトル神さまの『慈悲と正義の精神』も移植させて頂いています。


 つまり、銀河最強レベルの戦闘力をお持ちになられつつも、心優しい最良の戦士でいらっしゃるのです。

 そうしたみなさまに、畏れ多くもサトル神さま御自らみなさまのご任務をご説明くださるそうでございます。

 どうかご傾聴くださいませ」



「おう、みんな。よく集まってくれたな。

 いやあ壮観だよ。みんな強そうだよなあ。

 だが俺の精神を移植しただけあって、なんだか親しみが湧くな。

 まるで俺の弟たちが5000人出来たような気がするよ」


 5000人の集団がどよめいた。

 サトル神さま御自ら、弟のようだと仰ってくださった感激のどよめきだ。

 恐ろしげな顔を歪めて涙を流しているヤツも多い。

 俺の隣のドラゴンは、口を開けてワナワナしながら大粒の涙をどばどば流していた。


「だが、そんなお前たちにも過酷な任務を与えなければならんのだ。

 銀河には、あまりにも闘争本能が強すぎて、内乱に明け暮れている種族がいる。

 力によって王族や貴族となった者は、己の力を誇示することと勢力圏の拡大しか頭に無いようだ。

 おかげで非力な民たちは、あるいは戦場で使い捨てにされ、あるいは飢餓で死んで行っている」



 俺は身震いしたよ。

 そんな非道なことがあっていいものか。

 強さとは弱きものを虐げるためにあるのではなく、守るためにこそあるのだろうが。

 きっと、この感情もサトル神さまの御心を移植されたからだろうな。


 俺の隣ではドラゴンが号泣していた。

 涙もろいやっちゃな。



「それではお前たちの任務を伝える。

 お前たちには各人ひとつの惑星に行ってもらい、5000の惑星をそれぞれ統一してもらいたい。

 つまりはお前たち一人一人がその星の王になるんだ。


 基本的には個人武力を重視する惑星が多いが、多少の集団戦を行う種族もいるために、そうした星に行く者にはアンドロイド特殊部隊1個師団と、支援軍としてAI軍9個師団を与える。

 みんなお前たちほどではないが強いぞ。


 戦闘支援のために、お前たち全員に大気圏内航行可能な輸送艦100機を搭載した軽空母も与えよう。

 物資満載の超大型輸送艦もだ。

 足りなければいくらでも送ってやる。

 使用する武力・資源に制限は無い。


 そうして、お前たちには強大な力をもって惑星を統一し、惑星住民がこれ以上搾取されて死ぬことの無いよう善政を敷いてもらいたい。


 もちろん惑星統一の後には、政策運営の専門家AI団を派遣するので、お前たちはただ最強の『王』であり続ければいい。

 そのために、各人のアバターには300年から500年の耐用年数も与えてある。

 お前たちがあまりにも長生きして不審に思われ始めたときのことは、そのとき考えよう。


 それでは戦士たちよ! 我が弟たちよ!

 お前たちには各惑星住民数千万から数億の命がかかっているのだ!

 必ず王になって、平和な惑星を作ってくれ!」


「「「「「 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ! 」」」」」



 ドラゴンのヤツなんか、感動のあまり拳を握りしめて号泣しながら吼えてたぞ。

 目は昔のスポ根漫画みたいに燃え上がってたし……





 そういうわけで俺は、狼型ヒューマノイドの惑星『ヴォルフ』に派遣されたんだ。



「なあ、まずどの国からやっちまうか?」


 軌道上から惑星を見ながら、俺は脳間通信を使って俺の担当AIであり、相棒でもあるピコに話しかけた。

 コイツはちょっと変わった口調で喋るが、どうやら女性型のAIらしい。

 まあ、アバターは造って無いらしいけどな。


(そうだねえ。

 まずは一番大きくて好戦的なギルゴル帝国からやっちゃおうか。

 なんか今隣の国を滅ぼして凱旋帰国のパレードやってるみたいだから、ちょうどいいんじゃないかな)


「おお、それいいな。

 確かこの星の連中って、集団戦はあんまりしなくって、強い者同士が戦って王が決まるんだろ。

 だったら戦闘支援の必要は無いな。

 俺ひとりで行ってくるわ」


(はいはーい♪ 気をつけてねー)


「ああ、なるべく誰も殺さんように気をつけるわ……」




 俺は転移の魔法で宮殿前の大広場の中央に出現した。

 それにしてもデケえ広場だな。

 直径1000メートルはあるんじゃねえか?


 俺の後ろにはゴテゴテ&ハデハデでバカデカい石造りの宮殿があり、俺の前にはこれもハデでくそデカい凱旋門がある。


(こういう、『金で買えたり奴隷労働で造られたモノで自分のステータスを誇示する行為』ってムカつくぜ。

 はは、これもたぶんサトル神さまの心理なんだろうな)


 あー、なんか凱旋門の正面には観客席まであるぞ。

 なんかキンキラゴテゴテのメス狼たちがいっぱいいるわ。

 そうか。あれが帝室のハーレムメンバーか。

 それにしても数が多いな。100匹ぐらいはいるんじゃねえか?



 宮殿前広場の警備兵たちは、俺の突然の登場に衝撃を受けたようだ。

 まあ、警備不全で処刑されてもおかしくないんだから当然だろうが。

 だが、俺の体格を見てビビったらしく、遠巻きにして威嚇の声を出してるだけだわ。

 なんか「キャイン、キャイン」って聞こえる声だな。



 そのとき大歓声と共に軍列が凱旋門をくぐり始めたんだ。

 広場の観客のうち、前列にいる身なりのいい連中は歓声を上げていたが、後ろの方にいるボロを着たやつらは、声も出せないぐらい疲れてるようだ。

 あ、衛兵がボロのやつらを小突いて声を出させてる。

 こういうのって無性にムカつくな。

 よっしゃ! 一丁やったるか!



「誰だキサマは!

 栄光ある皇帝陛下の凱旋パレードを前に、宮殿前広場に居座るとはなんたる不遜!

 おい! 警備兵! こやつをひっ捕えろ!

 切り刻んでネズミの餌にしてやれ!」


 途端に警備兵が50人ほど四方八方から集まって来たよ。


(おいピコ、こいつらに絶対アブソリュートフィールドかけてやってくれ。

 衝撃緩和は要らないから)


(了解~♪)


 俺に殺到した警備兵たちは、次の瞬間俺のしっぽのひと薙ぎで四散した。

 おー、よく飛んでらあ。

 まあ、フィールドあるから死なんだろうが、50メートルも飛べば完全に気絶するだろうな。



「ぐぬぬ…… 

 キサマ、俺を第3師団師団長のギャラガ様と知っての反抗か!」


 おーおー、一人称に『様』とかつけてるわ。

 やっぱバカだわこいつら。


 ふーん、体長は2メートル近くありそうだが、鍛え方が足りんな。

 腹が出て来てるじゃねぇか。


 たぶんこれ、昔ケンカが強くって出世したけど、体のデカさに頼ってろくに鍛錬もしないで贅沢してるパターンだな。

 俺の最もキライなタイプだわ。



「ぐふふふ。俺の恐ろしさに声も出んか。この愚民めが!」


『愚民』…… あー、俺アタマに来ちゃったわ。

 こいつ、自分が『賢民』だとでも思ってるんか?


 俺はおもむろに第3師団長サマに尻を向け、しっぽを軽く上げて大きく放屁した。


 ぶぶぶぶぶぅ~~~~


「な、なっ……」


「あー、返事はこれでいいか? 

 お前みたいなアフォ~にはこれで充分だろ」


 はは、広場の民衆も硬直してるわ。

 あ、後ろの方のボロを着た連中からはくすくす笑い声が聞こえるぞ。

 へへへ、ウケたか。


 おお、師団長サマの顔がゆでダコみたいに真っ赤になって来たぞ。

 毛だらけの狼ヅラでもはっきり分かるわ。


「き、キサマはワシが直々に成敗してくれるわ……」


 そう言うなり師団長サマは、そのシッポを垂直に上げて膨らませた。

 そうそう。

 確かこの星の狼野郎たちって、1対1の戦闘のときはシッポを上げて膨らませるんだったな。

 しっぽが長くて太い程戦闘力が高いって信じ込んでるみたいだわ。


 俺は自分のしっぽの先を鼻の穴に入れてハナクソをほじってやったよ。

 あくびしながらな。


「き、ききき、キサマぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」


 師団長サマは雄叫びを上げながら突っ込んで来たんだけどさ。

 その手にはデッカい両刃剣を持ってるんだわ。

 おいおい、確か個人戦闘は素手じゃあなかったんか?

 はあ、俺をナメてんのかそれとも腕力に自信が無いのか……


 両刃剣が俺の額に叩きつけられる。


「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」


 あーキミキミ、鍛え方が足りんよ。

 両手が複雑骨折してるじゃないかね。

 まあ、ダイヤモンドの1千倍の硬度を持つクラス60の絶対アブソリュートフィールドを、鉄の剣なんかで思いっきり叩いたらこうなるのは仕方ないよなあ。



 俺は肩を震わせて激痛に耐える師団長サマに近づいた。

 あーすっげぇ痛そう。

 可哀想だから早く気絶させてやるか。


 俺はヤツにデコピンを一発くれてやった。

 おー、やや下から上にかましたんで、よく飛んでくこと。


 あ、凱旋門にブチ当たって、パレードの行列に落ちやがんの。

 ははは、群衆の後ろの方からパチパチと拍手が聞こえたぞ。


 うわ! しまったヤツにフィールド張るの頼むの忘れてたわ!

 し、死んでないよな……


(だいじょうぶだよ。ボクがフィールド張っといたから♪)


 おお、ピコか。た、助かったよ。


(ボクの仕事はキミを補佐することだからね。

 そんなことは僕に任せて、キミはあいつら全部やっつけちゃってよね!)


 はは、ピコもやっぱりヤツらにはムカついてるんだな……




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