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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
29/325

*** 29 ガイアの地上界に『準天使域』完成! ***

 


『戦略会議』から数日後……


 俺たちの拠点になる小屋が完成したっていうんで、みんなで地上界に降りてみたんだ。


 あの…… ノームくん。

 これって…… 『小屋』じゃあないよね。

 どう見ても俺の前の世界の『シェーンブルン宮殿』のミニ版だよね……

 宮殿前の広場にはとんでもない数の花が咲き乱れてる庭園もあるし……

 あ、植物の精霊が花のお世話をしてる……

 お、噴水まであるぞ。

 水の精霊の子が2人、傍にちょこんと座って微笑んでるわ……

 偉いなぁ。もうお父さんお母さんのお手伝いが出来るんだ……



 宮殿内の各所では、たくさんの土精霊たちがまだ彫刻を作っていた。

 彼らの場合、彫刻を『彫る』んじゃあなくって、砂を『練成』して粘土みたいにして作るからな。やり直しも自由自在で、地球の本を見ながらたくさんの見事な彫刻を作っていたよ。


 俺がジト目でノームくんを見ると、彼はもじもじしながらも誇らしげだった。


「えへへ。ちょっと凝り過ぎたかもだす……

 でも、『神界銀聖勲章』受章者の使徒さまにふさわしい建物にしなきゃ、って思ってのことだす……」



 まあいいか。

 記念すべき俺たちの国の最初の拠点だものな……


 それからちょっと興味深いことがあったんだ。

 俺も少し手伝って、拠点を囲む壁も完成したんだよ。まあ高さ3メートル厚さ1メートルしかないから城壁って言うよりは単なる壁なんだけど。

 それが完成した瞬間に、壁の内側全体が白く光ったんだ。

 それで不思議に思って管理システムアダムに聞いてみたんだわ。


「なあ、今壁の内側が光ったのってなんだったんだ?」


(あの…… たぶんですが…… この壁の内側が、システィフィーナさまの天使域として認定されたのではないかと……)


「ほう! それにしてもなんでだ?」


(システィフィーナさまの上級使徒であるサトルさまが、お命じになって造られた壁の内部だからかもしれません)


「それって確かめられないのか?」


(少々お待ち下さいませ。ただいまその辺りの岩石を少々システィフィーナさまの天使域に転移させてみます。

 おお! ほ、ほとんどわたくしの負担がございません!

 少なくともわたくしの管理の力が及ぶ『準天使域』になっていることだけは間違いございません!)


「それはありがたいなあ。

 あ、だったらさ、このぐらいの壁であの大砂漠を囲っちゃったら、あそこも『準天使域』に出来てお前も砂の転移が楽になるんじゃないか?」


(そうかもしれません。

 ですが、念のためやや大きめの壁で覆われる方が良いのではないかと……)


「それもそうだな。

 あんまりセコイ壁だと認定されないかもしれないもんな。

 よし、最初は小さい壁にして、どれぐらいまで大きくしたら認定されるか実験してみようか」


(それでもかなりの労力となりますが、よろしいのですか?)


「実はちょっとアイデアがあってさ。

 いったん壁を作ったら、それを太くしたり高くしたりって簡単そうなんだわ」


(なるほど、魔法マクロの応用でございますね)


「そういうことだ。

 だがその前にやることはたくさんあるな。

 まずは俺自身が魔法マクロを使いこなせるようにならなければ話にならないし。

 それにカネも必要だから、砂漠の砂からの金や資源を得るためにも、『抽出』の魔法開発は予定通り進めようか。

 それで余裕が出来たら大砂漠を囲む壁も検討しよう」


(はい……

 ですが、残念ながらその抽出という魔法は、わたくしどもの使用可能な魔法マクロの中には存在しないのです。

 その行為は、『生産』に該当するために、我々中級システムには認可されていないのでしょう)


「でもまあ俺の中には明確なイメージがあるんだよ。

 各種元素が混ざり合った岩石の中から、原子量を指定した元素や化学式を指定した化合物を分離すればいいんだろ。

 それならなんとかなるんじゃないかな」


(なるほど、サトルさまの中でイメージが出来上がっているならば可能かもしれませんね。後はわたくしが魔法式を定義出来ればいいのですが……)


「まあ焦らずに一緒にゆっくり検討して行こうや」


(はい……)


「それからさ。あといくつか開発したい魔法があるんだ。

 たぶん『液状化』とでも呼ぶべき魔法なんだろうけど、物質を熱を加える以外の方法で固体から液体に相転移させるものなんだ。

 その逆で液体を固体にする『固化』も必要だけど。

 この2つがあれば、建設や建築が随分楽になると思うんだよ。

 それに例えば『抽出』した各種ガラス材料資源を『液状化』してから混ぜ合わせて、ガラスを作れるようになるかもだからな。

 最終的には、そういう『練成』の魔法も開発したいんだ」


(なるほど。

 それではサトルさま。加護のネックレスと銀聖勲章のスキルの魔法式の閲覧許可を頂戴出来ませんでしょうか)


「そうか、『スキル』もつきつめれば魔法式で構成されてるわけか。

 だったら俺の希望する魔法のヒントが得られるかもしれないんだな」


(はい。仰る通りです)


「それじゃあネックレスと勲章をお前に預けて、中身の全ての閲覧許可を与えるわ。

 よろしく頼んだぞ」


(畏まりました……)






 俺は『天使域』についてエルダさまに聞いてみたんだ。


「あの、今日地上界の拠点を囲む壁が完成したんです。

 厚さ1メートル、高さ3メートルほどの壁で、拠点の周りにほんの半径1キロだけ作ってみたんですけどね。

 そうしたら完成したときに壁の内側全体がほんのり白く光ったんですよ。

 アダムに調べてもらったら、どうやら壁の内側がシスティの『準天使域』に認定されたようでして、アダムの管理の力が及ぶようになったんです。

 そういうことってあるんでしょうか?」


「もちろんあるぞ。

 お前が命じて作った壁だろうからな。

 使徒が作った地上界の領域は、自動的に天使の準管理領域になるのだ。

 まあ、これこそが『使徒』を使うメリットのひとつだな」


「や、やっぱり。

 でも、それってシスティの負担が増えたりしないんですか?」


「それは無いな。あってもほんのわずかだ。

 地球なぞ、星まるごとひとつわたしの管理領域になっておるが、わたしはなんともないからな」


「す、すごいですね。星丸ごとですか……

 あ、でもそれどうやって管理領域にしたんですか?

 昔壁を作りまくったとか……」


「はは、そういうことでは無いのだ。

 わたしが2万年ほど前に地球を最初の試練に合格させたとき、自動的にそうなっただけのことだ。

 システィはまだ試練に合格していないので、お前が領域を作ってやる必要がある」


「そうでしたか……

 ところで、囲む領域の面積と『準天使域』として認定されるために必要な壁の大きさって、なにか関係があるんでしょうか?」


「それは当然あるだろう。高さ30センチの壁で覆っても『準天使域』とは認められないだろうからのう。

 まあ、計算式まではわからんが、ある程度の比例関係にあるのは間違い無かろう」


「わかりました、ありがとうございます……」





 俺は土の精霊たちに手伝ってもらって、地上の拠点内に『使い魔』になってくれる初級悪魔達のための宿舎を作った。

 中央に大食堂と大講堂と大浴場を配置して、2人部屋150室が周りを取り囲む構造をしている。

 残念ながらまだ電気もガスも無いから、明りは光の精霊、お湯は水の精霊と火の精霊に頼んである。

 トイレも簡易水洗式にして、汚水は一か所に集めるんだが、これはアダムに頼んで1日1回、南の海に転移して貰って捨てることにした。

 そのうち簡易下水処理場も作るつもりだけど、今は仕方ないかな。


 精霊たちには20人ぐらいずつ常駐してもらって、働いてもらう代わりにケーキは食べ放題だって言ったら希望者が殺到したんだわ。

 それで当番制になったんだけどさ。

 ま、まあ、みんな仕事熱心でいいことだね……



 そうそう。

 初級悪魔たちを『使い魔』として呼び出す前に、ベギラルムに聞いてみたんだ。

 悪魔族って、神界や天使界に従属する『悪魔界』っていうところで平和に暮らしてるんだって。

 もちろん親子間の情愛もあるんだけど、家族単位で暮らすというよりは、種族まるごと家族っていうカンジで仲良く暮らしているらしい。

 それで神さまや天使に要請されると、使い魔として働くんだそうだ。


「なあ、そんな風に神や天使に使役されて、お前たちに不満は無いのか?」


「不満……ですか…… まったくございませんな」


「なんでだ?」


「そうですな。あまり考えたことはございませんが……

 まず、我々は神族の方々に創って頂いた存在です」


「そ、それにしたって、いくら創造主だって、一方的に使役するなんて……」


「ははは、サトルさまはお優しいですな。

 まずは、我々も一応強い種族のうちに入りますが、おかげで食物を食べずともマナがあれば生きていけます。

 そうしてそのマナを供給してくださっているのは神族の方々です」


「で、でも……」


「それだけでなく、神族の方々は我々に安住の地もお与えくださいました。

 万が一他の凶暴な種族が攻め込んで来ても、神の軍勢によってたちどころに撃退されるでしょう」


「そ、それでも……」


「仮にサトルさまがそうした種族の一員で、そういう平和な世界で食べ物に不自由することなく暮らしていたとしたらどう思われますか?」


「あ…… そうか…… 働く場が無くって労働の喜びが無いのか……」


「そのとおりでございましょうな。

 故に我々は、神族や天使族の方々のために働くことで労働の喜びを得ているのでしょう。

 しかも有能な天使さまの下で働き、立派な世界を作る一助になることにでもなれば、それは我々の喜びでもあるとともに、種族全体の喜びでもあるのです。

 エルダリーナさまの配下である我々などは、たまに里帰りした際などには半ば英雄扱いですわ。

 私の近親者たちは泣いて喜んでくれますし、長老たちの宴にも招いてもらえますし、幼い子たちからは英雄を見るような目で見てもらえます」


「そ、そうだったんか……」


「サトルさまは、このたび我々悪魔族の初級悪魔を300人も使い魔として下さるとのこと。

 なにしろサトルさまといえば、あのゼウサーナ上級神さまの加護を持ち、神界銀聖勲章をも授与され、さらには最高神さままでもがお名前をご存じのお方様。

 おかげで悪魔界はたいへんな騒ぎになっておりましたぞ。

 能力も十分で意欲にも溢れた初級悪魔たちが、目を輝かせてやって来ることでございましょう」


「それはありがたいかな……」




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