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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
289/325

*** 289 惑星ケット 4/7 *** 

 


 再び惑星ケットにて。



 それからもわたしたちは、アイラちゃんにたくさんの質問をしたの。

 アイラちゃんてすごいのよ。

 なんでも知ってるし、どれだけみんなが質問してもぜんぜん疲れた様子を見せないし。


 そう言ったら、「わたしはミニAIですから……」って言ってたけど。

 ミニAIってなに? って聞いてみたかったけど、まあそれはもっとよくアイラちゃんを知ってからにしましょうか。




「わたしたちはいつまでこの船にいていいの?」


「惑星改造が一段落するまでですから、村の皆さんはあと6カ月ほどですね。

 王都の皆さんはもう少し時間がかかりますからあと9カ月ほどでしょうか」


「わくせいかいぞうって、どんなことするの?」


「第1段階は、大昔の火山噴火によって、この星の大陸を平均100メルトもの厚さで覆う火山灰を取り除くことですね。

 そうすれば栄養分豊富な地面も露出して農業に適した状態にもなります。

 森林も大きくなるでしょう」


「それ、すっごくたいへんなことに聞こえるんだけど、そんなこと出来るの?」


「はい、わたしの仲間や各種ドローンたちが、40個師団約80万体も投入されていますから。

 そのうち5万は駆逐艦級超大型の特殊ドローンですし」


「そ、そんなにたくさん……」


「ふふ、サトル神さまのご配下には、全部で3億5000万体のドローンたちがいますからね。

 この星に来ているのはそのうちのほんの一部ですよ」


「サトル神さまってすごい方なのね。どんなひとなの?」


「本当にすごいお方様です。

 それに、しばらく前までは『ひと』だったんですけど、今や『かみさま』になられた方なんですよ。

『慈悲と正義の英雄神さま』なんです」


「へぇー」


「サトル神さまのご指示で、配下の『銀河救済機関』の上級AIさまたちと珪素生命体の『諮問機関』の方々が、銀河中の惑星の災害脅威度を測定されてランク分けされたんです。

 この惑星ケットはその中でもSSSランクに指定されましたので、最大級の援助が行われているんですよ」


「おかげでわたしたちも命が助かったのよね」


「はい。

 サトル神さまの御指示は、『これ以上災害による死者を出すな』でしたので」


「でも…… 火山灰が無くなっても、お水は増えないかもしれないよね。

 お水が無かったらまた……」


「ふふ、ご心配なく。

 この惑星ケットは実は水が豊かな惑星に分類されるんです」


「えっ、そ、そうなの?」


「はい。元々は火山灰の下には豊富な伏流水がたくさん流れていましたから。

 ですが今年は山間部の気温が低く、雪があまり解けなかった上に雨も少なかったので井戸が枯れ始めていたのです。


 ですから惑星改造第2段階として、大陸中央部の大山脈の真ん中に大きなダムも作っています。

 そのダムには冬の間の雪が蓄えられて、春になったら水に変わるでしょう。


 その中央巨大ダムから水路を通って12個の小型ダムに水を流します。

 この小型ダムは標高の低いところに作られますから、常時水が蓄えられることになるでしょうね。

 同時に川を作って、各国やそのまた各街や村に水を流します。


 万が一春になっても中央ダムの雪が解けない場合でも、各所に配置した『プラズマの魔道具』によって雪を溶かせますから、もう水不足の心配は無くなりますよ。

 それでも足りなくなったら、海水を淡水化して転移の魔道具でダムに送りますし」


「それ、わたしたちにとってはとってもありがたいお話なんだけど……

 でもサトル神さまに随分お金を使わせちゃってるわね」


「うふふ、ご心配なく。

 サトル神さまはこの銀河宇宙一のお金持ちでいらっしゃいますし、それにこの惑星改造ではたぶん最終的に赤字にはならないでしょうね」


「そ、そうなの?」


「はい。実はこの惑星の火山灰は、溶融させると極めて良質な建材にすることが出来るんです。

 強度が強く弾性も充分な上に融点は低いですし。


 ですから今取り除いている火山灰は、すべて軌道上の輸送船に転移の魔道具で送って溜めているんです。

 皆さんの村の再建やダムや水路の建設にも使いますけど、多くは他の災害指定惑星の救援にも使われることでしょうね。


 しかもこちらの惑星の火山灰には、非常に良質な石英質が大量に含まれていますから、それで大量の強化ガラスが作れます。

 それに海も非常に深くて広いですから、将来は水不足で困っている惑星に水が輸出されるようになるかもしれませんね。

 その収益はみなさんにも還元されるでしょう」


「はー、わからない言葉がたくさんあったけど、みんなが助かるならそれでいいわ」


「そうそう。惑星改造が終わったら道も整備される予定ですから、アレクさんとご一緒に街に出来る学校に行かれたらいかがですか?

 バス路線も出来るでしょうし。

 毎日通うのは無理としても、週末には村に帰れるでしょう。

 そうすればわからなかった言葉も勉強できますよ」


「えっ…… が、学校……

 で、でも畑のお手伝いや水汲みも……」


「たぶん冬の3カ月間だけの学校も出来るでしょうし、それに水汲みももう必要無くなりますね。

『水道』が出来ますから」


「水道?」


「ふふ。この船の部屋にもありますでしょ」


「ああ、あの『じゃぐち』っていうのに触れるとたくさんのお水が出て来る……」


「あれは新しく作る家の全てに設置されますからね」


「でっ、でも学校に行くお金なんか……」


「先ほど火山灰建材や強化ガラスの代金の一部が還元されるって言いましたけど、その代金で学校はすべて無料になる予定ですよ。

 食費も含めて。

 ですからキャシーさんが希望すれば、必ず学校に行けるはずです」


「そ、そうなったら嬉しいわねえ……」






 6カ月後。

 わたしたちは村に戻ったの。

 今度こそ本当にびっくりしちゃったわ。

 だって村の周りの白っぽかった地面がぜんぶ茶色い土に変わってたんですもの。

 それに、村の家はそのままだったんだけど、少し離れたところに大きな石で出来た家が30件も建っていたのよ。

 古い家でも新しい家でも好きな方に住んでいいんですって。



 わたしとアレクは新しい家に住むことにしたんだ。

 だって、広いし綺麗だしあったかいし、それになにより『水道』があって、蛇口に触るといつでも好きなだけお水が出て来るんだもん。

 もちろん水浴び場もあって、こっちはお湯も出るし。


 それに窓のところにはふしぎな透明の板があって、窓を閉めていてもお外の光が部屋の中に入って来て明るいんだ。

 これが『がらす』っていうものなんだって。


 お年寄りの何人かは前の家を選んだけど、村のほとんどのひとは新しい石の家を選んだわ。

 ふふ、わたしとアレクの家の隣は、お父さんとお母さんの家なのよ。



 新しい家にも古い家にも、ものすごくたくさんの食べ物が置いてあったの。

 アイラちゃんは畑に作物が実るまでの食糧って言ってたけど、どう見ても1年以上分はあるのよねえ。

 アイラちゃんの家の隣の倉庫には、もっとたくさんの食べ物が積んであったし。



 それにしても……

 はあ、この新しい村は火山灰を100メルトも取り除いたところにあるんだって。

 周りの地形があんまり変わって無いからよくわからないんだけど。

 でも、木はみんな無くなっちゃってたわ。


 それからみんなで昔井戸があったところに行ってみたのよ。

 そうしたらまたびっくりしちゃったの。

 だってものすっごくたくさんのお水が、大きな溝の中をどんどん流れていってるんだもの。

 これが『川』っていうものなんだって。


 その川の両側は、建物とおんなじ黒っぽい石が積まれていて、お水が増えすぎても溢れないようになってるの。

 よく見たら川の底にも黒い石が敷き詰めてあったし。

 しかも繋ぎ目も『ようせつ』してあるから、地面に水が染み込まないんですって。

 なんだかとんでもない大工事だったみたい。



 その川に沿って、幅10メルトぐらいある道がずっと上のダムまで続いているらしいの。

 それから隣街までの道も出来ていて、こっちは幅20メルト以上もあるものすごく立派な道だったのよ。

 しばらくしたら『ばす』っていうものも通るんですって。


 そうそう、村の外れには大きな倉庫と小さな建物も作られていて、アイラちゃんはそこに住んで、これからもいろいろと教えてくれるらしいの。

 アイラちゃんがいてくれるなら安心だわ。




 翌日は村のみんなで広場に集まって、アイラちゃんとどこに畑を作るか相談したのよ。


「だいたいおひとりさま辺り1タンの広さの畑があれば食べていけるんですよね」


「ええ、それだけあればまあなんとか」


「それじゃあ村の人は98人いらっしゃいますから、余裕を見て200タンの畑を作りましょうか」


「そ、それだけあれば大丈夫でしょうけど……

 でも半年はかかりそうですね。

 せめて春の種蒔きまでに半分は仕上げたいものですが……」


「あ、いえいえ、畑はわたしたちの仲間が作りますよ。

 たぶん10日もあれば出来るでしょう。

 将来村が大きくなることも考慮して、村の上手に段々畑を作りましょうか。


 それで、よろしければみなさんは、こちらで畑が出来る様子を見ていていただけませんか?

 みなさんの畑になるんですから」



 それからわたしたちの前に、箱みたいなものがごとごとやってきたの。

 1台目にはたくさんの椅子とテーブルが乗っていて、2台目にはお菓子や飲み物が乗ってたわ。


「さあみなさん。お手数ですが椅子を降ろしてテーブルをセットしていただけますか?

 お菓子も飲み物もお好きなだけどうぞ。

 足りなければまた運ばせますから。

 それではドローンさんたち、よろしくお願いね」


 アイラちゃんがそう言うと、倉庫の扉が開いて大きな箱や少し小さい箱が10台ぐらい出て来たの。

 大きい箱は、高さ1.5メルト、幅4メルト、長さが8メルトぐらいあってとっても大きかったわ。

 小さいのは、その半分ぐらいからわたしと同じぐらいの大きさまでいろいろだったの。


 みんながっしりしてて、色とりどりでぴかぴか光ってて綺麗だったわ。

 足元は不思議な黒い車輪だったり、なんだかベルトみたいなものだったりしたけど、箱にはたくさんの手みたいなものや板みたいなものがついていたのよ。

 これが『どろーん』さんたちなんだ……




 畑作りが始まったわ。 

 小さいどろーんさんたちがまず斜面に溝を掘って、そこに大きいどろーんさんが倉庫から持って来た溝の付いた大きな棒みたいなものを埋めているの。

 あれたぶん断面が「U」みたいな形をしているのね。

 畑の土が流れて行かないように『つちどめ』をしながら、『ようすいろ』も作っているんだって。

 ときどきどろーんさんの手がピカって光って『じじじ』って音がしてるんだけど、ああやって棒を『ようせつ』してるみたい。

 あ、あの棒、新しいお家の壁とおんなじ石で出来ている……


 そうして『ようすいろ』で囲まれた1タンぐらいの畑が出来ると、また別の大きなどろーんさんが倉庫から持って来たものを、小さなどろーんさんたちが畑に撒き始めたの。

 なんだか青くってぶよぶよしてるへんなものだったけど。


「あれは吸水ポリマーです。

 水を吸って蓄えていてくれるんですよ。

 肥料も含ませてありますし」



 畑が一面の青になると、また小さいドローンさんたちがその上に土を広げていったわ。

 なんだかとっても黒い土。


「あの土は腐葉土と肥料をたっぷりと含ませた土です。

 この村の小麦には最適な土ですね」


 はあー、なんだかすごすぎるわ。

 アイラちゃんやどろーんさんたちって、なんでも知ってるのねえ。



 こうしてわたしたちが見ている前で、畑がみるみる出来上がっていったの。

 1段目は1タンの畑が20個、2段目も1タンの畑が20個。

 そうやって全部で10段の畑が階段状に作られていくみたい。


「それでは農業用水を流してみましょうか」


 アイラちゃんがそう言ってしばらくすると、畑の横を流れる大きな溝にたくさんのお水が流れ始めたのよ。


「この畑の上には川から水を引いた溜池が作ってあります。

 そこの水門を開けばこうやって畑の横を水が流れます。

 そうして、この小さな水門を上に上げると、畑と畑の間を通っている溝にも水が流れ始めるんです。

 これでもう畑の水やりは楽になりますよ」


 これ…… 楽なんていうもんじゃあないわね。

 これじゃあもう大きな水桶なんか要らないじゃない。

 小さな子供でも毎日手桶で水やり出来そうだわ……




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