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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
287/325

*** 287 惑星ケット 2/7 ***

 


 それから1カ月ほど経って、村長さんや大人たちが10人ほど帰って来たの。

 帰って来た大人たちの中にはお父さんとお母さんもいて、私も久しぶりにお母さんに甘えちゃった。

 アレクのご両親もいて、アレクも嬉しそうだったわ。


 そうして村人が村長さんの家に集められたの。

 なぜだか、私とアレクは村長さんの隣に座らせられたわ。


「みんな聞いてくれ。

 伏流水沿いに15個の小さな井戸と避難村を作ることが出来た。

 もちろんまだ畑も出来ていないから、これから作物を植えることになるんだが……

 そうやって村を分散させることで、少しでも生き延びるんだ」


 みんなは悲しそうな顔をしたけど、村長さんはそんな村のみんなを元気づけるように大きな声で言ったのよ。



「最も生き残れる可能性が高いのはこの元の村だ。

 だからこの村には小さな子供たちと、その世話をする年寄りに残ってもらう。

 次に生き延びる可能性が高いのは、最初の狩り小屋だ。

 それで……」


 村長さんは私とアレクを振り返ったの。


「アレク、キャシー……

 お前たち結婚しないか?」


 わたしはびっくりしたわ。

 そりゃあ年頃の子どもはアレクと私しかいないし、アレクは優しくて素敵だし……

 でも私まだ13歳で成人してないし……


 村長さんは微笑みながら言ったの。

「お前たちは前回の水飢饉を生き延びた特別な子供だ。

 だから今回も生き延びてくれるんじゃないかと、村のみんなも期待してるんだ。

 そうして2人で狩り小屋に住んで、生き抜いてくれ……」


 わたしはまだためらっていたんだけど、村長さんの目に涙が光っているのを見て決心したの。


「はい。わたし、アレクと結婚します。

 そうして水飢饉を生き延びてまた村を復興させます……」


 アレクがびっくりした顔で私を見た。

 アレク…… わたしと結婚するのイヤなのかしら……


「ぼ、僕もキャシーと、あのその、け、結婚します……」


 よかった。アレクに嫌われてたんじゃないみたい……


 それから村長さんがとっても嬉しそうに微笑んで、その場で結婚式が始まったのよ。

 久しぶりにみんなでお腹いっぱいご馳走を食べたの。


 お父さんが苦労して狩って来てくれた鹿の肉もあったし、それをお母さんが涙を流しながらお料理してくれたんだ……





 翌日はみんなで狩り小屋に行ったの。

 わたし、びっくりしちゃった。

 だって小屋の周りには大きな石がたくさんたくさん積んであって、ものすごく頑丈そうな壁が出来ていたんだもの。

 厚さは1メルトもあって、高さも2メルト以上あったんだ。

 小屋のドアだって、厚さが10センタもありそうな厚いものに替えられてたし。


「みんなで頑丈な小屋に作り直したんだ。

 これならオオカミやイノシシが襲って来ても大丈夫だろう。

 小屋の裏には井戸を深く掘ったときに出た土を撒いてあるからね。

 2人分の作物ぐらいしか作れない小さな畑だけど、なんとか生き延びてくれ」


 小屋に入ったわたしとアレクはまたびっくりしたの。

 だって、お鍋や包丁やほかのお道具もたくさんたくさんあるんだもの。

 隅には立派なかまどもあったし、新しいベッドやおふとんまであるの。

 村で結婚したひとがいると、村のみんなで贈り物をするんだけど、それにしてもこんなにいっぱい……


 それに、小屋の奥にもびっくりするほどたくさんの食べ物が置いてあったのよ。

 わたしたちにこんなに食べ物をくれたら、みんなの分が足りなくなっちゃうのに……

 わたしはたくさんの食べ物を見ながら泣いちゃったわ。


 アレクも入口の脇に立てかけてある立派な弓と剣を見てぽろぽろ涙を零していたの。


「父さん! こ、これって……」


「わたしからお前への結婚の贈り物だ。

 この弓と剣なら獲物がいっぱい獲れるぞ」


「で、でも父さん! それじゃあ父さんの獲物が……」


「なあに、予備の弓と剣があるからな。

 わたしぐらいの猟師になれば、多少道具が悪くても大丈夫なのさ」


 それでもアレクは長いこと泣いていたわ。


 その日はみんなで小屋に泊まったの。

 わたしはお母さんに抱きついて泣きながら、いつの間にか寝ちゃったみたい。



 翌朝早くにみんなは出発して行ったわ。

 村長さんは、「お前たちは村の希望だ。必ず生き延びて村を復興してくれ」って言ってわたしとアレクを抱きしめてくれたんだ。


 お母さんも私を抱いて泣いてたけど、すぐに離して、「それじゃあアレクと一緒にがんばるのよ」って言ってくれたの。


 もし雨が降り始めて井戸の水が増えたら、またみんな元の村に集まることになってるけど。

 でも、ひょっとしたら、これがお母さんやお父さんとの最後のお別れになるのかもしれない……

 そう思ったらもう涙が止まらなかったわ。

 みんなの姿が見えなくなっても、わたしたちは長いことその場に立ち尽くしていたんだ……



 その日は、わたしは小屋の中のお掃除や整頓。

 アレクは小屋の後ろの地面を耕して、作物を植えられるように準備したの。

 しばらくしたら、もう少し畑も広げなくっちゃ。


 小屋から少し離れたところにある井戸はとっても深く掘ってあって、今のところは2人で生きて行くには十分な水があったわ。

 しかも、水が出て来るところには上手に木の樋が差してあって、その下流に3つも大きな水桶があったのよね。

 こんな大きな水桶を下の村から持ってくるのはたいへんだったでしょうに……




「ねえ、アレク。今日は久しぶりに水で体を洗わない?」


「う、うん。まあ、すぐに畑に種を撒くわけじゃあないし、こんなにたくさん水もあるからな」


「じゃあ、アレク。今日は一緒に水浴びしようか♪

 小さな子だったときみたいに」


「き、キャシーが先に浴びなよ!」


 ちょっと残念だったんだけど、わたしたちは順番にお水で体を洗ったの。

 ああ、久しぶりに綺麗になって気持ち良かったわ。



 その後は2人で夕食を作って食べたのよ。

 傷みやすい物は早く食べちゃわなきゃなんないんで、けっこう豪勢な夕食だったわ。

 これらの食材が少なくなったら、それからは作物が実るまで相当に節約しなきゃなんないけど。

 でも、今日はご馳走が食べられて幸せ……


「それじゃあアレク、外も暗くなって来たし、そろそろ寝ましょうか……」


「う、うん……」


 私は真新しいお布団の敷かれたベッドに入ったの。

 ああ、柔らかくっていい匂いがして気持ちいい。

 でも……

 アレクが毛布を持って、床で寝ようとしてるのよ。


「アレク…… ベッドで寝ないの?」


「あ、ああ、キャシーがベッドで寝なよ。

 お、俺はここでいいから……」



 わたし、お洋服を脱いで下着だけになって、アレクの毛布の中に入っていったんだ。

 そうしてアレクの背中に体をくっつけたの。


「ねえ、アレク。わたしたち結婚したんだよ。

 一緒に寝ないなんてヘンだよ」


「き、キャシー……

 お、お前イヤじゃあないのか」


「なにが?」


「い、いくら年頃の子どもが俺たちしかいなくって、いくら俺たちが特別な子供だって言われてたからって。

 大人たちに結婚を決められて、イヤじゃあないのか?」


「ううん。ぜんぜんイヤじゃあないよ。

 だってわたし、アレクのこと好き、いいえ、大好きだったもの。

 だからアレクのお嫁さんにしてもらって嬉しいわ」


 アレクは毛布の上に座ってびっくりしたような顔をして私を見たの。


「わ、わたしこそごめんね。

 アレクは私のことが好きでもなかったのに……」


 私の目からぽろぽろ涙が出て来ちゃった。

 わたしは涙声でもう一度言ったの。


「ぐすっ。本当にごめんなさい。わたしなんかで……

 え~ん……」


 そうしたら……

 アレクが私を抱きしめてくれたのよ。


「違うよキャシー! お、俺、おおお、お前のこと大好きだったんだ!

 子供のころから大好きだったけど、最近のキャシーはものすごく綺麗になってきて、眩しくて見てられないほどだったんだよ!

 だから泣かないでくれ! 

 お、俺のお嫁さんになってくれてありがとう!

 本当に本当にありがとう!」


「ひぃ~ん! え~ん! 嬉しいようアレクぅ。大好きだよぅ……」


 それからわたしたちは、生まれて初めてキスしたのよ。

 嬉しかったわ……


 このまま雨が降らなかったら、そんなに長くは生きられないかもしれないけど……


 でもアレクのお嫁さんになれて、キスまでしてもらえたんですもの。

 短い人生かもしれないけど、せめて最後は幸せになれたからよかった……


 でも…… 

 わたしたちに残された時間は少ないかもしれないの。

 井戸の水が涸れちゃったら、その後は……


 わたし、その場で立ち上がって下着も脱いだの。

 もう辺りは暗くなってたけど、月明かりでアレクの顔が真っ赤になったのがわかったわ。


「き、キャシー……」


「ねえ、アレク……

 わたし、アレクに抱いてもらいたいの……」


「そ、そんなことして、もし子供が出来ちゃったら、子供が可哀想だよ!

 生まれるまで俺たちが生きていられるかどうかもわからないし、生まれても水が無くなったら……」


 わたしは裸のままアレクに抱きついたのよ。


「あのね。

 お母さんが何日も森に入ってヒニの実をたくさん採って来てくれたの。

 この実を毎日食べてると、赤ちゃんは出来ないんだって……

 だからアレク…… わたしを本当の奥さんにしてくれない?」


「い、いいのか?」


 わたしの目からぽろぽろと涙が落ちていたわ。


「もちろんよ。

 死ぬ前に大好きなアレクに抱いて欲しかったの……

 えへ。たとえ結婚しなくってもお願いしようと思ってたんだ♡」


「キャシー……

 俺もお前にお願いしようと思ってたんだ。

 死ぬ前に俺の奥さんになってくれって……」


「うれしい……」


 アレクも服を脱いでくれて、わたしたちはベッドに入ったの。

 アレク…… どうもありがとう…… 大好きよ♡



 それからわたしたちは何度も何度も愛し合ったの。

 気がついたら外が明るくなってたわ。

 2人で体を拭いて、朝ご飯を食べた後はまた1日中愛し合っちゃった。

 本当はいろんなお仕事がたくさんあったんだけど、でも2人が結ばれた記念に今日1日ぐらいはいいことにしたんだ。


 うふふ。わたしってエッチな女の子だったのかな……


 ああ…… 死ぬ前にこんなに幸せになれたなんて……




 翌日からは2人とも一生懸命働いたのよ。

 わたしは畑を耕して、アレクは狩りに出かけるの。

 獲物はあんまり獲れなかったんだけど、そのかわりにたくさんの木の実や薪を取ってきてくれたわ。

 これでもし水が枯れなかったら、冬は越せるかもしれない……


 そうしたお仕事はたいへんだったけど、でも夜は幸せなの♪

 だってアレクが毎晩愛してくれるんですもの……





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