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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
28/325

*** 28 神界は平和だった…… ***

 


「ところでアダム、砂漠の砂を倉庫に転移させるに当たって、最もお前の負担の少ない方法はどういうものだ?」


(はい。最近システィ様が管理用ポイントで我々の能力を大幅に拡充してくださいましたので、かなりの負担でもだいじょうぶなのですが……

 実は物質の転移はわたくしが既に直接に管理している空間内でしたら、既存の転移マクロが使えますので非常に負担が小さくなります。まあほとんどマナ消費だけで、わたくしのシステム上の負担はほぼ感じられないほどです。

 ですが管理外の空間、例えば砂漠からの直接転移でしたら格段に負担が上がります。そうですね、同じ量の砂を転移させるのに、およそ1万倍の負担増になりましょうか)


「それならさ、例えば地球の業務用の大型掃除機を用意したとするだろ、その掃除機をお前の直接管理物にすることって可能か?」


(はい、可能です)


「そしたらエルダさまに100台ぐらい大型掃除機を買わせて頂いて、それをお前の管理下に置くとしてだ。

 それから、電力は…… そうだな、ガソリン式の大型発電機も買わせて頂いて、そこで生み出した電力を、お前が直接管理物である掃除機に転移させるのはどうだ?

 発電機の排気ガスの処理はお前なら簡単だろ?」


(もちろん可能です。

 ですがサトルさま。

 北部山岳地帯に小規模なダムを作って、そこに水力発電装置を配置するのはいかがでしょうか? 

 その方が管理も維持も簡単ですし、後々も国造りの役に立つかと……)


「おお、さすがだな!」


(最近頂いたPCで、地球の商品もいろいろ調べさせていただいておりますので)


「エルダさま。そうした物資も買わせていただけますでしょうか?」


「もちろんだ」


「もちろん手数料はがっちりお取りください。

 なんといっても元々はエルダさまに儲けさせていただいたカネですから」


「ふふふふ。

 それにしても見事よの。

 サトルとアダムの会話を聞いておると、アタマのいい者同士の会話が小気味いいわ。

 天才同士の会話とはこういうものなのだの」


「お、お褒めに与り恐縮です……

 それじゃあダムが出来て発電機の設置も終わり次第、大型掃除機を大量に用意して、精霊たちに『砂のお掃除』をしてもらおうか。

 あまり急ぐ仕事でもないから焦るなよ。

 これは土の精霊以外の精霊たちに頼めるかな」


「……(こくこく)……」

「へへ。面白そうでしゅね」

「風の力を使った掃除機か…… 楽しそうだな!」

「ふん! 楽しそうだからやってあげるんだからね!」



「のう、サトルよ。

 ところで何故、神界土木部の連中に砂の撤去を依頼しなかったのだ?

 お前達で撤去するのは手間だろうに」


「実は…… あの砂はたいへん有用な資源をたくさん含んでいるんですよ」


「ほう! 資源とな!」


「ええ、実際にはまだそれらの資源を抽出可能な魔法は開発出来てないんですけど。

 もし開発出来れば、あの砂は宝の山になる可能性があるんです。

 それに、もし抽出が出来るとしても、岩石からの抽出は大量の魔力を消費すると思うんです。でも砂になっている状態なら、抽出に必要な魔力は少なくて済むんじゃないでしょうか」


「なるほどのう。

 地球でも、鉱山で採れた鉱石は一度粉砕してから鉱物を抽出させておったな。

 細かい砂であればその分粉砕の手間が省けるということか」


「そうなんですよ。

 それから砂の中の資源ですが、まずは大量の石英質です。

 これは膨大な量のガラス原料になるでしょう」


「あの砂がキラキラと光っている部分が全てガラスの原料ということか……」


「それからあの砂はかなり綺麗な白色をしています。

 これからやはり膨大な量の建物を建築して行く際に、最高に美しい白い石造りの建物が作れるでしょうね」


「そうか。岩石を掘り出して変形させるよりも、もともとある砂をマナの力で固めて建材にする方が、マナも魔力も少なくて済むというのだな」


「仰るとおりです。

 それに将来的には国内に道路網を整備したいんですけど、その際には地球から買って来たバスなんかを走らせやすいように、主要道路は舗装したいんです。

 その舗装の材料にも砂は便利でしょうからね」


「いろいろと考えておったのだのう……

 いやさすがは『神界銀聖勲章』受章者だの」


 へへ、システィが頬を染めて俺を見つめてくれてるよ。

 また惚れ直してくれたのかな。

 この分だと今晩も『子作りの練習』を……

 い、いかんいかん! 今は会議に集中せねば!



「そ、それにあの砂の中には、微量な鉱物資源もけっこう豊富に含まれています。

 まあ、もともと地殻の岩石が風化したものでしたから当然なんですけどね。

 中には相当に微量ですが、金まで含まれているはずです。

 合有割合はわずかですが、なにしろ砂の量自体が膨大ですからね。

 もし『抽出』の魔法が開発出来れば、この世界の金貨だったら、けっこうな数量が作れるかもしれません」


「ほう! 金まであるのか!

 よければその金、わたしが買ってやるぞ」


「えっ! い、いいんですか……」


「うむ。地球で『貴金属買い取りショップ』も始めようかの。

 そうさな。買い取り価格は1グラム当たり4,000円でどうだ?」


「おおおおお…… そ、それ助かります!

 食料ももっと大量に買いたいですし、将来的にはバスや機械設備も」


「はは、わたしも儲かるからの。任せておけ。

 ついでに商社機能もさらに拡充しておくとするか。

 それにしても、あの砂漠は宝の山だったのだのう。

 いや神界土木部に処理など頼まんで大正解だったの……」



「それじゃあ早速『抽出』魔法の開発に取りかかります。

 まあもし開発出来なかったとしても、あの砂漠を農地に変えるためには砂は邪魔ですから『砂漠の砂撤去作戦』は進めます。

 その次は農業用土の確保ですね。精霊たちにやはり大型掃除機を持ってもらって、大森林の『腐葉土』を掘り起こして集めてもらいたいと思います」


「『腐葉土』ってなんなんだ?」


「ああシルフィー、落葉樹から落ちた葉がほどよく発酵して、植物にとっての栄養分に富んだ土になっているものなんだ。

 樹って、そうやって自分の根に養分を与える土を作っているんだよ」


「へー、なるほどー。樹って賢いんだなー」


「だから森の腐葉土を全部剥がさないようにしてくれよ。

 表面の3分の1ぐらいで充分だろう。

 これは将来俺たちの国の民が畑を作るときに、大いに役に立つはずだ。

 そのころには、植物の精霊達が開発した肥料も混ぜられるだろうな」


 傍らに控えていた植物の精霊のリーダーがこくこく頷いていた。


「さあ、今日の議題はここまでかな」


「ところでサトルよ。

 今日の会議だけでもかなりの数の作業が決まったが、それをみんなお前や精霊たちで行うつもりか?」


「ええ、ゆくゆくは国の住民たちにもお願いするつもりですけど、なにしろまだ住民ゼロですからね」


「ふむ。では、お前も『使い魔』を持ったらどうだ?」


「えっ! つ、使い魔! そ、そんなこと出来るんですか?」


「お前は上級神さまの加護持ちだ。さらに神界銀聖勲章まで持っておる。

 どちらにも使い魔呼び出しスキルはついておるだろうに。

 加えて管理用ポイントも10万超えだ。使い魔なぞいくらでも持てるぞ」


「おおおお……

 ど、どんなタイプの使い魔にしようかな…… 

 やっぱり馴染みのある悪魔タイプにするかな……」


 あ! しまった! ベギラルムが項垂れちゃった……

 しっぽもへにゃりって垂れ下がってる……

 お、俺が使い魔を持ったら、もう地球に戻らなきゃならないのかな……


 どうやら俺も相当に消沈していたらしい。

 そんな俺とベギラルムを見て、エルダお姉さまが微笑みながら言ったんだ。


「そうは言ってもお前ではまだ初級悪魔しか呼び出せまい。

 その統括として大悪魔も必要だろう。

 どうだベギラルム。正式にサトルの下への出向扱いにしてやるから、サトルの使い魔たちを鍛えてやってみんか?」


 その瞬間、ベギラルムが復活した。

「あ、あああ、有難き幸せに御座りまするっ!」


 あー、こいつまた泣いちゃってるよ。涙もろいやっちゃな。

 あ、あれ? なんで俺の頬も濡れてるんだろ?




 後日エルダお姉さまに聞いてみたんだけどさ。

「やっぱり使い魔の数は、エルダさまが98人ですから俺は多くても30人ぐらいですかね?」って。

 そしたらさ。

「何を言うておる!

 地球はもう完成された世界だぞ。これから国を作るお前がたったの30人でどうする! 300人でも足りないぐらいだ!」って言われちゃったんだよ。

 だからとりあえず300人にすることにしたんだけど……


「ところで、エルダさまはなぜ地球では悪魔を使い魔にされてるんですか? 悪魔になにか思い入れのあることでもあったんですか?」


「それは順番が逆だの」


「は?」


「そもそも悪魔という存在を従えたのは地球ではわたしが最初だ。

 というか、連中は神界では割と標準的な使い魔のタイプでもあるが。

 主に忠実だし真面目だし、なにより強いからな」


「と、ということは…… もしかして……」


「そうだ。わたしの使い魔を見て、地球のヒト族どもが悪魔伝説を作ったのだ。

 長い年月の間にはヒト族に使い魔の姿を見られたこともあったからの。

 それに、悪魔という言葉も地球のヒト族の勝手な命名だ。

 もとより奴らは『悪』しき存在でも『魔』でもないからな。

 天使界や神界での彼らの呼び方を直訳すれば、『忠実なる一族』だ。

 お前が『悪魔族』と言ったときにも、連中には自動翻訳で『忠実なる一族』と聞えておるはずだ」


「そ、そうだったんですか……」


「もっともヒト族の悪魔のイメージは少し行き過ぎだの。

 使い魔たちがよく嘆いておるわ。

 それもあって、奴らとも親しくしてくれるサトルの人気が高いのだ」


「そ、そそそ、そうだったんですか……」


「特に女性悪魔たちは、サトルを『無差別まぐあいパーティー』に招待したくてウズウズしとるようだのう……」


「えええっ!」


(や、ヤベえ…… ほんとに招待されちゃったらどうしよ……)


「ったく、主であるわたしを差し置いて、先に喰おうなどとはケシカラン奴らだの!」


(お姉さま…… やっぱ、『喰う』っていうイメージなんですね……)







 それからしばらくの後、或る日の神界にて……



「ねえねえ! 聞いた聞いた?」


「なになに! どうしたの!」


「あのローゼマリーナさまが、神界に『カフェ・ガイア』をオープンするんですって!」


「「「「「 ええ~っ!!! ほんとぉ! 」」」」」


「ホントよお。それでねそれでね!

『爆撒英雄サトルがいつも飲んでるコーヒー』とか、

『あの精霊ちゃんたちが夢中になってる苺のショートケーキ』とか、

『ローゼマリーナが3回おかわりをしてしまったチョコレートケーキ』とか、

『ローゼマリーナが思わず羽ばたいてしまったアンパン』とか、

『システィちゃんが手放さないポテチ』とかがメニューにあるんですって!」


「「「「「 きゃーっ! ステキっ! 」」」」」


「でも残念ながら、メニューに『コーヒーや紅茶に入れるお砂糖は、スプーン5杯まででおねがいします』って書いてあるそうなの……」


「「「「「 そ、それちょっと残念ねー 」」」」」


「ね、ねえ、それ本当に『爆撒英雄サトル』たちが食べてたものとおなじものなのかしら?」


「間違いなくおなじものよ!

 だって、プロデュースしたのがあのエルダリーナさまだもの♡」


「「「「「 きゃーっ! ステキっ!!! 」」」」」


「それに、カフェの隣にはレストランも出来る予定だそうよ!

『あのサトルが涙したラーメンとチャーハンセット』とか、

『土木部のイケメンたちも驚愕したハンバーガー』とか、

『エルダリーナさまイチオシのかつ丼』とかもメニューにあるのよ!

 しかも売店では、あの精霊っ子ちゃんたちが遊んでたゲーム機まで売ってるんですって!」


「「「「「 楽しみねー♪ 」」」」」


「みんなで絶対行こうねーっ♪」


「「「「「 行こうねーっ! 」」」」」



 神界は今日も平和であった……






 また或る日の神界にて……



「すみませ~ん! ガイアバーガー売れ切れでぇ~っす!」


「なんだよなんだよ! もう売り切れかよ!

 せっかく楽しみにして来たのに……」


「ほんっとすみません。

 もう今日【株式会社エルダー・シスター】から入荷したハンバーガー3000個、売れちゃったもんですから……」


「ったくしょうがねえなあ。次は5000個ぐらい入荷しといてくれよぉ」


「ええ、実は明日から5000個の予定なんですけど……」


「お! なんだよ、そこにガイアバーガー10個ぐらいあるじゃねえか!」


「こ、これは予約分でして……」


「いいじゃねえか1個ぐらい! 一口齧らせろよ!」


「あ、あの…… これ最高神さまの予約分なんですけど……」


「…………」


「1個だけ齧ってみます?」


「ヤメとく…… 俺、煉獄界に落ちたくない……

 あのお方様、普段はお優しいけど、食べ物のことになると相当にコワいらしいから……」


「ですよねー♪

 そうそう、隣の『あのサトルが涙したガイアラーメン』はまだ在庫あるみたいですよ」


「お、そうか! ラーメンも旨そうだな!」


「ええ♪ 最高神さまも毎日3杯食べてらっしゃるそうです」


(…… 大丈夫かな、ウチの最高神さま ……)




 神界は今日もさらに平和であった……




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