表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
274/325

*** 274 神界最高顧問会議からの褒美 *** 

 



 俺の試練世界派遣部隊の活動は超順調だった。

 まあ、物資も戦略も事前にあれほど準備してたからな。


 それに加えて、ガイアでは無かった銀河技術の農業ドローンたちの活躍も大きかったんだ。


 大中小さまざまな種類の自立思考型ドローンが、瞬く間に農地を開墾し、肥料を播き、作物の種を植えて雑草を取り除き……

 また、そうした作業を現地の住民たちにも見学させて農業指導もして、食料生産を軌道に乗せて行ったんだよ。




 そうした或る日、俺はまたゼウサーナさまに呼び出されたんだ。


 案内された先が大会議室だったんで、また神界最高顧問の神さまたちがいるんだろうとは思ってたけど……

 なんか今回は最初からみんな涙だばだば流して泣いてるんだ。

 びっくりしたよ。





「よく来たサトルよ。

 今日は最高顧問の神々がそなたに用があるそうだ」


「は、はい」



「さ、サトルよ……

 せ、先日神界調査部より、そなたが使徒を派遣した500の試練世界の状況を聞いたのじゃ。

 う、ううううっ……

 そ、そなたの使徒たちが救援活動を初めて6カ月、そのたったの6カ月で、試練世界全てで大幅な状況の改善が見られ、なんと5億もの民の命が救われたというではないか……」


「特に効果の大きかったのは、小氷期の訪れや天候不順によって飢饉に陥っていた世界です。

 80の飢饉世界で3億の民が救われました」


「たったの6カ月で5億人…… 想像を絶する功績です」


「そして…… 

 その5億の民のうち、そなたは5000万人もの乳幼児を救うたのじゃぞ!

 自力では飢饉にも魔獣にも同族の暴虐にも無力な乳幼児たちじゃ!

 あ、あの愛らしいガイアの子たちと同じ子供たちを5000万人もじゃぞ!

 ううううっ、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーん」


「議長閣下、お気持ちは大いにわかりますが、少し冷静になってくださいまし……」


「わ、わかった……

 そ、それでの。

 このまま行けば、あと5年も経たぬうちにあの困難に直面していた試練世界500全てで、罪業カルマポイント増加数が限りなくゼロに近づくという見通しも出された。

 そのことが確実になった時点で、そなたを中級神に推挙するよう最高顧問会議として勧告を出したところじゃ」


「えっ……」


「当然のことじゃ。

 今後5年間で試練世界で命を救われる民の数は50億にも達することじゃろう。

 そのうち5億は子供たちじゃ。

 しかもあの500の世界は、そなたの行動によりすべて100年以内に試練に合格確実になるとの予測も出されておる。


 ここにおる如何なる神といえども、誰一人このような凄まじいまでの功績を為した者はおらぬ。

 そなたの活躍は、まさに銀河の英雄にふさわしいものであった。

 一気に上級神に昇格させてもよい程じゃ」


「…………」


「これでの…… 我らも心おきなく引退出来る」


「ええっ!」


「ああ、安心せい。

 皆最高神さまに説得されて、非常勤として神界最高顧問の仕事は続けることになっておる。

 そなたの温情に甘えて皆ガイアに住まわせてもらうつもりじゃが、月に1度は神界に戻ってアドバイザーとしての仕事はするつもりじゃ。


 じゃが……

 最後に心残りがひとつだけあっての。

 それはそなたに褒美のひとつもやれなかったことなのじゃ……」


「褒美…… ですか……」


「さあ、最後に我ら神界最高顧問たちにそなたの望みを叶えさせてくれ!

 わしらをガイアに住まわせてくれるお礼、子供たちを救うてくれたお礼、そして子供たちを救うてくれたことで、わしらに心からの安堵をもたらしてくれた礼じゃ。

 わしらが出来ることならなんでもする。

 どうかそなたの望みを言うてくれ!」



 俺困っちゃってさ。

 そんな褒美とか礼とか言われてもな……

 それでゼウサーナさまをチラ見してみたんだわ。

 そしたら、ゼウサーナさまが微笑みながら頷いてくれたんだ。



「畏れながら……

 ご好意に甘えて、いくつかのお願い事がございます……」


「な、なんでも言うてくれ……」


「あの……

 わたくしの配下であり、このたびの試練世界救済任務でもたいへんによく働いてくれたAIたちに、わたくしも褒美を与えてやりたいのです。

 彼らがいなければ、あの任務は到底達成出来ませんでした。

 それで……

 彼ら自身で子孫を作ることを許可してやって頂けませんでしょうか……

 彼らに、家族を作り、子育てをしながら幸せに暮らしていくという『褒美』を与えてやりたいのです。


 そのためにもうひとつお願いがあります。

 今任務を終えてリサイクルのために休眠しているAI50万人を、すべてわたくしに預けて頂けませんでしょうか。

 今回の救済任務でも、彼ら古参AIの働きぶりは見事の一言でした。

 あのような忠実で誠実で高い能力を持った者たちに、せめて余生は幸せに暮らさせてやりたいのです。


 また、そうした者たちを受け入れるために、ガイアのある恒星系に『人工惑星』を建造するご許可も頂戴出来ませんでしょうか。

 わたしは、彼らに褒美としてAIの故郷になる星もプレゼントしてやりたいのです。

 彼らはそれに充分に値する働きをしてきたのですから」



 あー、なんか神さまたちみんなまただばだば泣いてるわ―。




「さ、サトルよ……

 そなたはそなたの『褒美』として、AIたちに『褒美』を与えることを許可して欲しいと言うのか……」


「あ、はい。そういうことになりますか」


「さすがは我らの、いや銀河の英雄じゃのぅ……

 思いもよらなんだ願いじゃ……」



 議長閣下は周囲の神々を見渡した。

 全員が深く頷いている。


「ゼウサーナや」


「はい、議長閣下」


「このサトルの望み、叶えてやってはくれんか……」


「畏まりました……」


「ありがとうのう。これで心おきなく隠居出来るわい。

 そなたにも面倒をかけるの」


「シュリフィスラーナ議長閣下。

 これで2億年前のあの日、一介の初級天使であったわたくしに、ご加護を賜ったご恩を万分の1でもお返し出来ましたでしょうか……」


「はは、まだそのようなことを考えていたのか。

 もう何万倍にして返してもろうたかのう……

 それに、有望な若い天使に加護を与え、そやつの成長を見守るのはわしの趣味じゃ。

 その点、そなたは見事に功績を重ね、今では最高神政務庁のトップのひとりとして最高神さまの右腕にまでなってくれた。

 わしもなんと鼻が高かったことか……


 しかもだ。

 そなたは初級天使どころか一介のヒト族に過ぎない若者に加護を与え、こうして銀河にその名を轟かす大英雄にまで育て上げて来たのじゃ。

 趣味の点でもそなたは完全にわしの上を行ったのう……」


「か、過分なお言葉、身に余る光栄でございます……

 こ、この上は閣下におかれましても、ガイアにてのご健勝をご祈念申し上げまする……」



 あー、なんかゼウサーナさま涙流してるよ……

 それにしても、議長閣下とゼウサーナさまってそういう師弟関係だったんだな……




「それでの、サトルや。

 わしはガイアに居を移させて貰うが、そのためここ神界の近傍次元にあるわしの神殿が空き家になってしまうのじゃ。

 そこでそなたにわしの神域ごと神殿を譲りたいと思うのじゃが、貰ってくれんかのう」


「ええっ!」


(あ、なんかけっこう驚いてる神が何人もいる……

 そうか、これってけっこう特別な意味があるのかな……)



「そなたももう神なのじゃからの。

 神界に神殿のひとつやふたつ持っていても当然じゃ。

 ああ、もちろん住めとは言わん。

 まあ別荘として使ってやってくれ」


「あ、ありがとうございます……

 それであの……

 わたくしの仲間の中には神ではない者もおりまして……」


「なんの問題も無かろう。

 神界ならばともかく、わしの神殿があるのはわしの神域じゃ。

 そこならば神ならぬ身でも入れるぞ。

 そうそう、神界転移部門に言って、ガイアとの間に直通の転移ゲートを作らせておこうかの」


「あ、ありがとうございます……

 本日は過分な願いをお聞き届けいただき、誠にありがとうございました。

 それではみなさま、どうかガイアでの暮らしをお楽しみ下さいませ。

 なにかご希望があれば何なりと仰ってください……」



 最高顧問さんたちは嬉しそうに退出して行ったよ。

 ガイアに移ったらどこに住もうかとか、やっぱり幼稚園の近くがいいなとかわいわい言いながら……





 それから俺はゼウサーナさまに呼ばれて執務室に移動したんだ。


 秘書AIのアバターが淹れてくれたコーヒーを一口飲むと、ゼウサーナさまが切り出した。



「サトルよ。

 そなたが神界で休眠するAIたちを欲するのは、単に幸せな余生を送らせてやるためだけではあるまい」


「はは、やはりお見通しでしたか。

 多分ですが、この先わたくしが拝領する任務にも必要となると思いました」


「うむ、その通りだの。

 困難に直面して苦しんでいるのは、なにも試練世界だけではない。

 今後は自然災害等で住民が困難に陥っている世界から、神界に対しての救援要請を受け付けることが決定されるだろう。


 そこでそなたには、『使徒育成・派遣機関』の業容を拡大し、新たに『銀河救済機関』として拡充・発足させる準備をして貰いたいと考えておる。

 まあお前が望んでいた仕事だ。引き受けてくれるな」


「もちろんです」


「それでそのために何が必要だ?

 この際だから今のうちに言っておけ」


「それでは畏れながら……

 まず、『救済』の依頼は、各象限宙域や各中級神管区担当の神々から受け付けるのはもちろんですが、それ以外にも個別の惑星政府からも受けたいと思います。

 場合によっては地域自治体からも。

 こうした体制をご許可願えませんでしょうか」


「ふむ、真に救済を必要としていても、政府や神々の判断で救済申請を握り潰されるのを恐れてのことか。

 確かに、自らの管理能力を問われることを恐れて、そうする神もおるかもしれんの」


「はい」


「それはガイアのマナ噴気孔の瑕疵が、統括初級神の隠蔽によって放置されていたことによる経験から来た判断だな」


「はい。仰る通りです。

 誰しも直接の統括官を飛び越えて神界に直接救済を求めるのは勇気の要ることだと思いますので、銀河全ての惑星に『救済ホットライン』を繋がせて頂きたいと考えます」


「そのための設備資金も全てそなたが出すというのか……」


「もちろんです」


「よかろう、許可する。他に必要とするものは?」


「それでは、わたくしに『神界転移部門』と同等の能力を賜れませんでしょうか。

 救済の要は、事前戦略と人員と物資になろうかと考えます。

 この先の要救済世界の数を考えますと、人員と物資の輸送についていちいち『神界転移部門』の手を煩わせることなく、『銀河救済機関』として独自の輸送力を持ちたいと考えました」


「ふむ。それではサトルよ。

 具体的にどのような能力や権能が必要と考えているのだ?」


「はい、自力恒星間航行が可能な大型恒星船の建造のご許可、もしくは大型『転移ゲート』の設置能力を与えて頂けませんでしょうか。

 この転移ゲートは、現地での物資の輸送を円滑にするために、中型の輸送船の通過も可能な大きさがあればと考えます」


「そなたも知っての通り、銀河世界のヒューマノイドたちには大型恒星船の建造能力がある。

 しかも技術的には、わざわざ恒星や惑星から離れたところに移動せずに、重力場近郊から重力場近郊への転移も可能だろう。

 だがそれは、将来の恒星間戦争の可能性を排除するために、神界より禁止されている技術だ。

 そのリスクをどう解決するつもりだ?」


「それにつきましては、大型恒星船の運航乗務員はすべてAIたちとします。

 もしくは船長と航海士だけは神界から派遣し、その他の乗務員はすべてAIにする形でもいいでしょう。

 こうした形でのみ、大型高性能恒星船を運用させればと思います。


 そうして、この形であれば、銀河のヒューマノイドの輸送事情も大幅に改善されるでしょう。

 彼らは今資源不足に苦しんでいます。

 近隣の恒星系などの生命非居住惑星で資源を採掘しようにも、現状では輸送コストが高すぎて現実的ではありません。


 ですが、神界がこうした輸送部門を運用してやることによって、彼ら独自の資源開発が行えると思います。

 資源開発はヒューマノイドが行い、大規模輸送は神界の手で行えば問題は無いと考えました」


「資源についてはそなたが供給してやるのではなかったのか?」


「それではわたくしに富が集中してしまいますし、ヒューマノイドにも自助努力はさせるべきでしょう。

 それに、わたくしの供給する資源は全て純度100%の純粋元素なので非常に高価であり、一般的な用途には向かないのです」


「それで大型転移ゲートについてはどう運営するのだ?」


「はい、要救済世界の天使域と神界、もしくはガイアの救済機関本部とのみを結びます。

 そうすれば一般ヒューマノイドによる悪用は完全に防止出来るでしょう。

 彼らは許可なく天使域には入れませんので」


「なるほど。

 それにしても、そなたはよく考えておるの。

 だが、『銀河救済機関』だけでなく、『神界輸送部門』も作れと言うのか……」


「す、すみません……」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ