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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
262/325

*** 262 沙希のオーディション *** 

 


『VRマシン治療室』には、精神科医に重度の性衝動過多、もしくは重度ヒステリー症と診断された患者さんがやってくる。

 そして予め待合室のブースで選んだ好みの異性のデータを使って、VRマシン治療用個室で20分ほどのおまかせVRエッチを楽しむワケだ。


 あまりも重度な患者さんは、『オーガズム10ボタン』をポチするだけで連続10回オーガズムを得て、聖人みたいな顔になって出てくるんだけどな。

 中には3回もポチしてげっそりした顔で出てくるやつもいたらしいけど。




 そうして、ある有名掲示板でこのVRマシンが話題になったんだ。

『どうやら本物のVRで美少女やイケメンとのエッチを体験できるマシンがあるらしいぞ』って。


 重度の性衝動を治療してもらった患者さんがこの掲示板で体験談を語ると、ネット界は話題騒然となった。

 ついでに匿名の精神科医がその効果を語ると、もっとエラいことになったんだ。


 そうして、真行寺技研に一般販売はまだかという問い合わせが殺到したんだよ。


『当面は医療用限定とし、一般販売は行いません』という発表が行われると、今度は各地の『VRマシン治療室』にニセ患者が殺到し始めたらしい。

 精神科医の診断書を偽造したヤツまでいたそうだぞ。


 まあ、普通は精神科医に通って、重い性衝動やヒステリーに悩んでいるってウソついて、『VRマシン治療室』の使用許可を貰おうとするんだけどな。


 それでほいほい使用許可を出す精神科医がいたもんで、各地の『VRマシン治療室』がどえらい混雑をするようになっちゃったんだ。

 おかげで真行寺技研には、追加で1000台のVRマシンの注文が来たぞ。


 一台2000万円もするのに豪勢なこった。





 VRマシン治療室の様子は報道もされ始めた。

 なにしろ、社会復帰できた重度患者さんたちの感激の匿名コメントを得るのは簡単だからな。

 さらに世界の精神科学学会でも話題騒然だったらしい。

 関根さんは世界中から招聘されて講演に出かけてたよ。



 そうしてついに、アメリカ政府から真行寺技研に、20台のVR治療マシンの注文が入ったんだ。


 俺はセキュリティを強化したマシンを用意させた。

 PCのケースを開けて見ようとするだけで、プチAIが自壊する機能を持たせたものだ。

 ついでにゲームのソフト部分も破壊される。


 こうしてVR治療マシンは初めて海を渡ったんだ。




 アメリカ政府はまず、刑務所に収監されている重度暴力犯罪者たちの中から、20名の志願者を募って治療実験を始めた。


 各人に1日12時間までの使用を許して1カ月の間治療実験を続けたらしい。

 そうしたら、20名中18人がやっぱり聖人みたいな顔つきになっちゃったそうなんだ。

 まあ、残りの2名は重度性衝動と言うよりは、本当に暴力衝動のみが強いヤツだったんだろう。


 さらに1カ月の治療実験の後、その18名を集めて刑務所内でパーティーを開いたそうだ。

 2か月前であれば、そんな連中を18名も集めたら、1分もしないうちに壮絶なバトルロイヤルがおっぱじまって、半分は死体になるのは確実だったそうなんだが。


 そのパーティーを監視していた看守さんが後に語ったところによると、「まるで教会の司教様たちの晩餐会を見ているようでした」とのことだそうだ。



 この18名は完全に模範囚となり、出所も早まった。

 だけどみんな、『ジェーンと別れたくない』とか『キャシーと会えなくなったら死んでしまう』とか言って泣きながら出所を拒んだらしいな。


 それで全員が出所してからすぐにわざと暴れて刑務所に戻りたがったために、政府は出所した元囚人たちに、週に1度刑務所に来てのVRマシンの使用を許可したんだ。

 彼らはみんな刑務所の近くに住んで見事に社会復帰し、週に一度嬉々として刑務所に通っているそうだよ。



 こうした様子を詳細に観察していたアメリカ精神科医協会は、精神科治療用にVR治療マシンの使用を政府に申請したそうだ。

 中には自分のところにセラピーに来る患者が減ってしまうと反対した精神科医もいたそうだが。


 だがそうした連中も、自分の医院にVR治療マシンを置けばヤタラに儲かるかもしれないということに気づいて、反対運動はすぐに無くなったらしい。



 こうして、まずは実験用として全米各地50ヶ所に『VRマシン治療室』が作られることになり、真行寺技研に1000台のVR治療マシンの注文が入ったんだよ。



 真行寺技研では、新たに人員も雇い始めた。

 俺たちの研究が、『現在世界で最も期待されている研究5選』に入ったこともあって、真行寺技研は超優秀な人材を大勢確保することが出来た。

 中には瑞宝大学脳科学研究室である父さんの研究室からの出向者もいるほどだ。

 逆に希望者は真行寺研究室に研究員として出向することも出来る。

 こうして、産学共同の研究開発はどんどん進みはじめたんだ。



 また、セキュリティ管理の確りした新工場も建設中だ。

 予定では、VRマシン製造機(ミニAI搭載)を20台にして、VR治療マシンの量産体制を整えることにしている。




 そういえば平田さんと助手くんにカノジョが出来たらしい。

 まあ2人とも、俺の目から見てもカノジョがいないのが不思議なぐらいの好青年になってたからな。

 しかも、会社に莫大な利益をもたらしつつある大功労者だし。


 本人たちは、僕らはなんにもしてなくって、マシンを作ったのは全部悟さんとそのご友人ですって、いつも言ってたけど……


 そういうふうに、仕事には熱心だけど謙虚な人っていいよなあ。

 このまま2人には幸せになってもらいたいもんだ……






 或る日また従妹の沙希が家のリビングに座ってたんだけどさ。

 なんだか元気が無いんだわ。

 しかもちょっと涙目になってるし。

 それでちょっと気になって理由を聞いてみたんだ。



「あのね、わたし中等部でダンス部のキャプテンをしていたの。

 それで高等部に進学してからもダンス部に入って、県の新人戦に出場したの。

 でも…… ベスト16にも入れなかったのよ。

 あんなに練習してたのに……」


 そう言った沙希はとうとう顔を覆って泣き出しちゃったんだ。

 あの美樹ですら沙希の背中をさすってよしよししてたし。



「そうか…… たくさん練習したのに報われなかったのか」


「あ、あのねあのね。

 わたし自分でも音感とかリズム感とか運動神経はあると思うの。

 でも筋力とかジャンプ力がぜんぜん足りないの。

 高校の県大会レベルになると、みんな体のキレやスピードが凄くって……

 でも筋力やジャンプ力なんかすぐには鍛えられないし……

 う、うえぇぇぇぇぇぇ~ん……」


「う、うえぇぇぇぇぇぇ~ん……」


 あ、美樹まで泣き出した……




 それで俺、つい言っちゃったんだわ。


「『身体強化の加護』かけてやろうか」


「えっ……」


「ま、まあ斎藤教授の実験のときに、あの点滅が校歌だって気づいたことへの褒美だ。

 だから、『ダンスのとき以外は使わないこと』、『もちろん加護のことは秘密にすること』。

 この2つが守れるんだったら『身体強化の加護』をかけてやるよ。

 そうすれば筋力もジャンプ力も上がるだろ」


「う、うえぇぇぇぇぇぇ~ん! あ、ありがとうお兄ちゃぁ~ん!」



 そしたらなんと沙希は秋の県大会の個人戦で優勝しちまったんだわ。

 ま、マズかったかな……

 ま、まあ神の親戚なんだから、多少の恩恵を受けても、ゆ、許されるよな……


 だからお礼と称して風呂に乱入して来るのはヤメろって!





 そしたら、とある有名ダンスユニットの芸能事務所から、学園を通じて沙希に連絡が入ったんだよ。


 中学や高校の体育の授業にダンスが正式採用されたとき、けっこうな数の都道府県教育委員会がそのダンスユニットとタイアップ契約を結んだらしいんだ。

 それで、その頃にはどうやらそうした契約は、東日本ではほとんどの都道県に広がっていたそうなんだな。


 まあ、体育の授業にダンスが採用されても、教師たちにダンスしたことあるやつなんかいなかっただろうからなあ。

 だから、授業ではそのダンスユニットが作った練習用DVDを使っているそうなんだ。


 そこで、各県からの代表を2人ぐらいずつ集めて、そのユニットのジュニア版を結成するっていう話にもなったらしい。

 でもって主に高校生で構成されるジュニア版ユニットには、本ユニットのコンサートやPVに出て欲しいとのことだそうだった。

 コンサート出演と言っても、武道館なんかのときだけのバックダンサーらしいが。

 本格的な芸能活動というよりは、月に1回ほど集まって練習するパートタイムみたいなもんらしい。


 そうすれば、中高生たちもダンスの授業に熱心になるんじゃあないかっていう、教育サイドの思惑もあったようだわ。

 生徒たちに、一生懸命ダンスの練習して上手になれば武道館で踊れるかもよ、っていうインセンティブを持たせてやろうってことなんだろう。



 そういうわけで、県代表として個人戦優勝者の沙希にもお呼びがかかったんだ。

 勇悟叔父さんや沙希も、あんまり芸能界には興味無かったんだけどさ。

 本格的な芸能界活動というよりも非常勤みたいなもんだし、どうやら月に1回東京に泊まりがけで行けるって思った沙希も乗り気になったんだ。



 第1回の顔合わせと言うかオーディションの前には、新曲の課題曲と振りつけのDVDが送られて来て、練習しておいて欲しいとのことだった。

 ついでに、どこかで1回以上、振りつけに自分なりのアレンジを入れておくようにとも言われたそうだ。



 沙希は高等部のダンス部で随分熱心に練習していたようだったわ。

 初めて聞いたときには驚いたんだけど、どうやら沙希には中等部のころから親衛隊がいたそうだ。

 まあダンス部キャプテンだったし、黙ってさえいれば相当な美人だからなぁ。


 それで高等部進学と共に高等部でも親衛隊が結成されたらしいんだけど、親衛隊や体操部の連中にも練習を手伝ってもらっていたらしい。


 俺の目の前でも踊ってくれたよ。

 やっぱり『身体強化』かけると体のキレはすごいな。

 そういえば2歳児も対抗してダンス練習してたけど……




 第1回の顔合わせ兼オーディションの当日。

 まあ、加護をかけてやった責任もあるし、俺も東京でのオーディションについて行ったんだよ。


 そうして東日本の各都道府県から集められた50人ほどの中高生が、順番にダンスユニットや所属事務所の社長さんたちなんかの前で、5人ずつぐらいで踊り始めたんだ。


 さすがにみんな上手だったわ。

 それぞれが工夫したアレンジもキマってたしな。

 ユニットのリーダーさんも事務所の社長も満足そうな顔で見てたよ。

 どうやらいいアレンジがあったら実際のメンバーのダンスにも取り入れるらしい。



 いよいよ沙希の番になった。

 もちろん沙希も上手だったわ。

『身体強化』の恩恵で体のキレは超絶的だしな。

 手なんかを速く動かす部分では、ほとんど見えないぐらい速いし。

 ユニットのリーダーさんも笑顔でうんうん頷いていたんだ。


 だけどさ…… 

 どうやら沙希だけがオリジナルアレンジを入れて無いんだよ。


 とうとう曲も最後の方になった。

 この曲でのダンスでは、最後に片手を上げて人差し指を立てたキメポーズをして3秒ぐらい静止するんだけど……



 沙希のやつ、ここで初めてアレンジを入れたんだよ。

 静止が始まる直前に、無助走でほとんどしゃがみ込みも見せずに、その場で伸身の月面宙返りを決めやがったんだ。

 あの後方伸身2回宙返り1回ひねりな。


 それも決めポーズのままで、にこやかに微笑みながら……

 着地も見事に決まってたわ。

 というよりしゃがみ込みも無い実に軽やかな着地だったな。



 まあ、もともと運動神経抜群の沙希が、俺の『身体強化』で垂直飛び2メートルになってるからなあ。

 それでも少し抑え目にして飛んでたそうだ。

 因みに走り幅跳びは12メートルらしい。

 あれほどダンス以外では使うなって言ったのに、誰もいない校庭で試してたそうだ。




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