表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
261/325

*** 261 『VRマシン治療室』 *** 

 


 しばらくして、俺はまた真行寺技研の『VRゲーム開発室』に顔を出した。


 驚いたよ。

 平田さんと助手くんの風貌が全く変わっちゃってるんだ。

 なんというかこの、脂分が抜け切った爽やかな好青年になっちゃってたんだ。

 お腹も引きしまっていて精悍な雰囲気さえあるんだものな。

 相変わらずティッシュ箱の山はあったけどさ。



 あ、女性の助手さんがお茶を持って来てくれた。

 珍しいな。

 この部屋で女性を見るのは初めてかもしらん……




 また或る日、俺はアダムに作らせたVRゲームシステムのプロトタイプ一式を持って、瑞宝大学医学部の精神医学研究室を訪ねた。

 この研究室には、斎藤前教授の実験以来懇意にしている関根准教授がいる。



「関根さん、お久しぶりです」


「おお、悟くんじゃあないか! よく来てくれたね!

 おーい、みんなぁ。若き天才科学者のご来訪だぞぉ!」


「か、勘弁してくださいよ」


「ははは、それで今日はいったいどんな風の吹きまわしでこんなところに来てくれたんだい?」


「実はですね、今度VRゲームで、『美少女と恋愛&エッチゲーム』っていうのを作ったんですよ。

 ああ、女性用に『イケメンと恋愛&エッチゲーム』っていうのもあるんですけど」


(((((ごくっ)))))


 周囲の学生や研究生たちが唾を飲み込む音が聞こえて来た。



「そ、そうか。

 キミが作ったんならさぞかしスゴイのが出来たんだろうね……」


「それでですね、過剰性衝動で暴力性向にまで至っちゃった男性患者さんや、重度のヒステリー症の女性患者さんに、治療実験として使って貰えないもんかと思いまして……

 それでまず、研究室のみなさんにお試しいただけないかと、プロトタイプを持って来たんです。

 みなさん試してみていただけませんか?

 人体実験はもう終わってますからご心配なく」


「ま、まあ、脳神経外科研究室の方でも、キミの装置を使ってとんでもない治療実績を上げてるみたいだからね。

 じ、じゃあ試させてもらうね」


「そうそう。できれば個室で試された方が……

 それに……」


「それに?」


「紙おむつも穿いておいた方がいいですよ♪」


(((((ごくっ!)))))




 2週間後に精神医学研究室を訪れた俺は驚いた。

 研究室の男性メンバーが、みんなげっそりと頬をこけさせて、目の下に隈を作っていたからだ。

 一部女性メンバーはつやつやしてたけど……



「さ、悟くん。す、すごいねこのゲーム。

 学生が何人か廃人になりかけてるよ。

 そ、それでね、男性患者さんでこの装置を試してみることに同意してくれたひとがいるんだ。

 だからその人に実験してもらってもいいだろうか」


「もちろんですよ。そのためにお持ちしたんですから」




 その患者さんは気の毒なひとだった。

 性衝動があまりにも強すぎて、1日に5回はヌカないと暴力衝動に転嫁されてしまうらしい。


 普段は人望のある親分肌の土建屋の社長さんなんだそうだが、ヌケない状態が続いたときに傷害事件を起こしてしまっていたそうだ。

 そうして3回目の傷害事件で、とうとう実刑処分になって医療刑務所送致になってしまったんだよ。

 それ以来、毎週瑞宝大学病院精神科に送られて治療を受けているそうなんだ。



 そのひとは涙ながらに関根准教授に語っていた。


「どんな薬でも、どんな実験でもかまわねぇ!

 た、頼むからこの俺のやりたい病を治してくれよ!

 可愛い子分、いや社員たちを路頭に迷わすわけにはいかねぇんだ!

 た、頼むよ先生っ! こ、このとおりだ!」



 それで医療刑務所と相談の上、そのひとは警護官付で瑞宝大学病院精神科に3週間の試験入院をすることになったんだ。

 まあ、さすが精神科で拘留設備のある病室はたくさんあったしな。




 3週間後。

 驚くべきことに、その人の顔つきはまったく変わっていた。

 脂ぎった893の親分みたいだったひとが、修行を積んだお坊さんみたいになってたんだぞ。


 まあ、VRマシンで1日最高50回ヌいたそうだからな。

 しかも理想の女性ともエッチ出来たし、別に女性とじゃなくっても脳内のディスプレイで『オーガズム10』っていう部分をポチするだけで、連続で10回もイけるんだし。

 もちろんすぐに精液は無くなるけど、イくだけはイけるんだよ。



 その後も週に1度大学病院に通って30分ほどで30回ヌくだけで、そのひとには完全に暴力衝動が無くなった。


 それどころか、もともとスキンヘッドだったせいもあって、仏像みたいな風貌になって来てるわ。

 甚平みたいな和服着てると、通りすがりのじいさんばあさんがよく立ち止って拝んでるらしいな。

 近所の寺で座禅会に参加してるときなんか、座禅が終わって目を開けたら、目の前にお供えのまんじゅうが置いてあったそうだ。

 あはははは。


 そうしてその患者さんは、出所後も週に1回瑞宝大学病院に通うだけで、完全に普通人の生活に戻れたんだよ。

 まあ人工透析みたいなもんだな。


 関根さんはこの成果に驚いて、今論文を執筆中だそうだ。

 その論文を読んで半信半疑だった連中も、添付された患者さんのビフォー&アフターの顔写真見て驚愕するらしいぞ。



 続けて実験を了承した女性患者での治療実験が行われた。

 そしたらやっぱり、般若激怒中みたいな顔をした重度ヒステリー症の女性患者が、1カ月で聖母さま満腹中みたいなおだやかな風貌と人格に変わっちゃったんだ。


 おかげで、このVRゲーム治療法は医学部精神科が一丸となって急速に研究が進み始めたんだよ。



 でも、もちろんこのゲームシステムは今の地球ではオーバーテクノロジーだ。

 なにせプチとはいえ本物の銀河AIが搭載されてるんだもんな。


 まあ、医学部の連中にはわからんかな。

 PCの中身を見せてくれっていう工学部からの依頼は、特許出願中を理由に丁重にお断りしたし。


 そういえば、夜中に忍び込んでマシンのカバーを開けようとした工学部の学生がいたらしいな。

 そいつはAIに探知されてアダムに通報されて、それで翌日パンツをかぴかぴにして、イカ臭爆撒しながら気絶してるところを発見されてたぞ。

 なんでも『連続イき30連発』を喰らって失神したそうだわ。


 それにその後そいつ、可哀想にアダ名が『怪奇・烏賊男』になっちまったんだそうだ。

 わはははははは。



 こうして瑞宝大学付属病院精神科は、重度性衝動とヒステリー症治療の聖地になっていったんだ。

 なにしろ今まで社会生活すら困難だった重症患者が、たったの1カ月で完全に治っちゃうんだもんな。

 完全に普通人として復帰できた患者さんたちからは、涙ながらに感謝されているそうだわ。



 おかげで瑞宝大学病院の精神科は見学の精神科医でいっぱいだ。

 患者の数より医師の数の方が遥かに多いらしいぞ。

 その医師たちも、治療時間外に自分でマシンを試しまくってゲー廃になりかけてたけど……


 ついでに患者さんたちの『ビフォー&アフター』の写真集は、精神科医の間で驚愕の写真集として有名になっちまったらしい。


 俺も見せてもらったけどすごかったよ。

 ビフォーの方だけ見ると地獄の悪鬼羅刹達っていう感じなんだけど、アフターの方は極楽浄土の大師菩薩さまたちの曼荼羅みたいなんだもんなあ。

 人間の顔って短期間であんなに変われるんだな。



 おかげで現在、各地の大学病院に『VRマシン治療室』を設置する計画が進行中だ。

 なにしろ30分の治療で30回もイけるんだもんな。効率いいぜ。

 しかも、実際に精神科医たちがVRマシンを体験しまくって納得してるんだからなあ。



 ついでにこの治療を受けるとお肌にもいい、っていうウワサが出回っているそうだ。

 夜はVRマシンの前の精神科医たちの行列に、看護師さんたちが乱入してるそうだし。

 ときどきマシンを設置してある部屋から、看護師さんたちの悩ましげな声が聞こえてくるらしくって、外に並んでる男性医師たちが前屈みになって困ってるそうだ。

 だからもう一台マシンを置いて男女別にしてやったよ。



 真行寺技研に『美容機器開発室』でも作るか。

 中身はVRゲームと一緒だけど。


 あ、そうだ。

 このシステム専用のおむつを作るか。

 特に男性用は普通のおむつだと股間がかぴかぴになるから、筒状で伸縮性のあるやつがいいかなあ。






 俺は、アダムにさらにバージョンアップさせたVRゲームマシンを持って真行寺技研の『VRゲーム開発室』を訪れた。



「とうとう友人がVRゲームを完成させてくれました。

 お2人はこれを実際に試して、更なる改良点をマシンに音声指示してください」


「「た、試していいんですか?」」


「もちろんです。

 お2人の当面の仕事は、このマシンを試すことです。

 そしてどんどん改良していってください」


((ごくっ!))


 もう完全に好青年にしか見えない2人が唾を呑んでいた……





 しばらくして、関根さんから連絡が入った。


「例のVR治療マシンなんだけど、臨床試験の結果があまりにも素晴らしかったんで、厚労省に一般治験実施の申請をしてみたんだ。

 そしたら何故か1時間で認可が下りたんだけど……

 それで、希望した全国主要都市の大学病院に治療ルームを作りたいんだけどいいかな?」


「もちろんですよ」




 真行寺技研に、とりあえず100台のVRマシンの注文が入った。

 俺は100万円ほどの普通の高級PCを100台購入してもらう。

 そうしてイルシャムの自動工作機械を使って、その中にプチAIのユニットを設置していったんだ。



 この簡略版は、1万種類ぐらいの異性モデルと簡易版アバター微調整システム、それからお任せコースを1000種類ほどにしたソフトだ。


 こうして全国10カ所に、『VRマシン治療室』が出来たんだよ。




 結果的に、この『VRマシン治療室』は大成功を収めた。

 各地の精神病院で診察を受けた重症患者さんが、このVRマシン治療でみるみる治っていくんだものな。


 そうそう、あの土建屋の社長さんも、家の近くの『VRマシン治療室』に通えるようになって通院が楽になったそうだわ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ