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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
256/325

*** 256 『VRゲーム開発室』 ***

 



 それからしばらくして、『世界で最も期待されている研究5選』に選ばれたということで、俺の写真がTIMEに載った。

 どうやら学術誌だけでなく、世界中の雑誌で『若き天才科学者』として写真が載りまくっているらしいんだ。

 日本の女性誌では、「玉の輿ランキングベスト10」入りしてたし……


 肖像権の管理は大学側に任せてあったんだけど、写真使用料としてびっくりするほどの大金が振り込まれてたよ。



 それからまもなく、『世界5選』に選ばれた祝賀会が瑞宝学園グループ主催で大々的に開催された。

 その場には、ネット回線を通じて斎藤前教授も参加してくれたんだ。

 たどたどしい、だが心のこもったお祝いのメッセージにはみんな泣いてたよ……





 真行寺技研でも内輪でささやかな祝賀会が開催されていて、俺も研究所のひとたちと技術談義をし、雑談もしながら食事をしていた。


 そのとき、研究員の平田さんが独り言を呟いたんだ。


「ああ、この技術があったら、最高のVRゲームが作れるのに……」って。


 俺は思わずにんまりしちゃったよ。




 平田さんは、例の斎藤前教授の実験のときに神の手でPCを動かしてくれたひとだ。

 記録映像の色を即座に音に変換して見せてくれたワザはすごかった。

 しかもそのうちに、リアルタイムでスクリーン見ながら音に変換してたもんな。


 ただ平田さんは……

 一見して「ザ・オタク」っていうカンジで、デブで脂ぎった顔で、残念な見た目のひとだった。

 噂では重度のゲーマーで、ほとんどのゲームを制覇している上に、部屋には美少女フィギュアが大量に並べられているらしい。

 研究所の飲み会にもほとんど顔を出さずにゲームばっかりしてるそうだし。


 だけどその仕事ぶりは実に真面目だった。

 どんな無茶な仕事を命じられても嬉々として対応してたし、責任感もあるひとだ。

 残念なのは風貌と私生活だけだったらしい。

 そのために研究所の先輩たちからはけっこう可愛がられている。

 まあ、若い女の子たちはあんまり近寄らないみたいだったけど。




 俺は平田さんに言ってみた。


「VRゲーム、平田さんが開発してみませんか?」


「へ?」


「平田さんだったらすごいゲームを開発しそうでしょ」


「む、むむむ、無理だよっ!

 だって機材も無いし、資金も無いし、第一仕事があるんだから開発する時間なんかぜんぜん無いよ!

 そ、それに協力してくれるひともいないし……」


「俺が勇悟叔父さんに言って、真行寺技研に『VRゲーム開発室』を作って貰います。

 機材も資金も全て俺が提供します。

 もちろん最新鋭の対脳意思疎通装置も」


「ええっ! でっ、でも、ぼ、ボクなんかに作れるかなあ……

 ゲーム制作は昔ちょっと齧ったことはあったけど……

 それに、もしボクが失敗したら、サトルさんが大損しちゃうよ」


「はは、ぜんぜんかまいませんよ。

 平田さんが失敗したらそれは全て俺の責任です。

 勇悟叔父さんにもその点ははっきり言っておきます」


「そ、そそそ、それでも……」



「やってみたらどうだ? 平田」

「そうだそうだ、絶好のチャンスじゃないか!」

「いつも既存のゲームに文句言ってたお前が理想のゲームを作るチャンスだぞ!」

「なあに、他ならぬ悟さんがこう仰ってくださってるんだ」

「それに、お前が大失敗しても会社はビクともせんよ、俺たちが稼いでやるから」

「いいなあ、ぼ、ボク手伝いましょうか?」



 先輩や後輩の研究員さんたちからも励まされた平田さんは、遂に首を縦に振った。


 勇悟叔父さんも、にこにこしながら俺のわがままを聞いてくれた。

 まあいちおう俺も、この真行寺技研をそれまでの10倍以上の年商3000億円企業に育て上げた立役者だしな。





 こうして平田さんの下に助手の若い研究員がひとりついて、『VRゲーム開発室』はスタートしたんだ。



 俺は最初の平田さんたちとの会議で言った。


「まずは絶対にこれだけは守って頂きたいということがあります」


「な、なんですか悟さん」


「それは、このVRゲーム開発に当たっては、絶対に開発予定表とか目標日とかを決めないでください、ということです」


「!」


「それから、研究室での残業もしないでください。

 もちろん仕事を家に持ち帰ることもしないでください」


「そ、そそそ、それはなんでですか?

 やっぱり機密保持とか……」


「いいえ、もちろんお2人の健康の為です。

 最高の状態で開発をして頂くためでもあります。

 ですから、この条件だけは絶対に守ってください」


「は、はぁ。悟さんがそう仰るなら……」


「それから、必要な資材、資金の要請は、直接俺にメールしてください。

 すべて俺が用意します。いくらかかってもかまいません。

 平田さんたちはVRゲームのことだけ考えてください」


(ごくっ)と平田さんたちが唾を飲み込む音が聞こえて来た。



「とっ、ところで、どんなゲームを開発しましょうか。

 対戦型ですか、それともRPGですか、それとも……」


「まずは美少女恋愛ゲームにしましょう」


「ええっ!」


「取敢えず最初の目標です。

 それがあれば次に冒険型RPGを開発するにしても色どりが出るでしょうし。

 そうして、対脳意思疎通装置を使って、触覚や嗅覚や快感も得られるようにしましょう。

 女の子の髪の毛を触るとサラサラした感覚があって、女の子が感じて出したため息が暖かく感じられて、乳房を触るとぷにぷにとした感触を味わえるようにするんです。


 最終目標は、ゲーム内で理想の女の子を作り上げ、その子に惚れられて愛し合って、キスしてエッチして快感を楽しんで、最後には実際に射精することです」


「「えええええええええええええっ!」」


「もちろん現実と全く変わらない味覚、臭覚も必要ですね。

 理想の女の子と理想のエッチが出来て、リアルで射精もしちゃうVR恋愛ゲームを作るんです!」


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」



 まあ、これで燃えなかったらオタクじゃないよな。

 最初にああ言っておかなければ、たぶん1カ月以内に過労死してたろうし……






 平田さんたちは、早速ゲームの構想を練り始めたらしい。



 俺は『VRゲーム開発室』を訪れた。


 なんだか平田さんが少しだけ清潔になったように見えるな。

 毎日定時に帰るから風呂に入るようになったのかな?



「やあ平田さん、調子はいかがですか?」


「あ、悟さん。

 今、まずヒロインのパターンと設定から入ろうと思ってるんですけどね。

 いや思ったより難航してまして。

 というのもやはり著作権法が壁になってましてねえ。

 僕らではとてもかわいい女の子の絵なんて描けないんで、どこからか買って来なきゃなんないって思うんです。

 でも、1か所からだとヒロインの雰囲気が偏るし……」


「そう仰るかと思って、ヒロインパターンとユーザーのアバターを友人に用意してもらったんですよ。

 もちろん、使用料はフリーです。

 自由に使えますし、著作権法にも抵触しないオリジナルです。


 この外付けHDに入ってるんですけど、後で中身を検討してやっていただけませんか?

 俺はすぐ帰らなきゃなんないんで」


 俺はそう言って、やけにデカいHDを10個渡した。


「いやあ助かります。早速見させてもらいますよ」




 翌日『VRゲーム開発室』に寄ると、平田さんたちがコーフンしていた。


「なんなんですか! あの超膨大な数の女の子たちは!

 それもアニメからリアルまで可愛い娘ばっかしで!


 で、でも、みんな18歳ぐらいの娘ですよね。

 そ、それに体型もみんな標準的で……」


「いったん女の子を決めたら、その娘の外見年齢や体型は自由に変えられます。

 外見年齢は10歳から50歳まで。

 精神年齢も、10歳から50歳まで自由設定です。

 ですから、ステディな娘が出来たら、その娘を外見17歳、精神年齢12歳とかに変えてのエッチも出来ますよ。

 外見12歳、精神年齢20歳とかも。


 ユーザーのアバターも同様です。

 20歳のユーザーが18歳の女の子と仲良くなってエッチしたら、2人で14歳と12歳に戻ってのエッチも出来るわけです。

 精神年齢は、20歳と18歳の意識を10%残したまま、残りの精神年齢は12歳と10歳とか。


((ごくっ!))


 平田さんと助手君が唾を呑む音が聞こえて来た。



「それから、友人に女の子の性格や体型なんかのパターンを作って貰ったんで持ってきました。

 これで女の子の詳細な設定が出来ますから、後で見ておいてください」



 俺はそのまま勇悟叔父さんのところに行って、新しい機器を渡した。


「こ、これは!」


「ええ、対脳意思疎通装置に内蔵されているプチAIの進化版です。

 最近、叔父さんの会社から買った機器で各研究施設の研究が進み、脳の各部位の役割がわかって来てますでしょ。


 要は『その成果を応用して、脳に送り込む情報刺激を視覚、触覚、味覚、嗅覚、聴覚に拡大させた』と言うためのものです。

 これで、脳と会話をしながら希望を聞いて、直接音楽を聞かせてあげたり映像を見せたりしてあげられるようになると思います」


「すごいな……」


「そういった実験の被験体になってくれるひとを使って、脳の反応データを蓄積して行きたいんですよ。

 まあ最終的には、斎藤前教授に久しぶりに美味しいものを食べた味覚を味わっていただくとか、風呂に入った感触を味わってもらえるようになればと思います。


 その先にあるものは……

 そうですね、VRでいくらでも美味いものが喰えて満腹感も得られますが、リアルでは最低限の栄養補給しか行っていないのでラクにダイエットが出来るとかですかね。

 減塩治療が必要な人には、VRで塩辛いものを存分に食べてもらって、リアルでは無塩食にしてもらうとか。

 糖尿病のひとにはVRで山ほど甘いものを食べてもらって、リアルでは一切口にしないとか……」


「う~ん。それは素晴らしい……

 そうなれば単なるゲームではなく、もはや医療用機器になるか……」


「ええ、瑞宝大学の医学部とも連携してみてもいいかもしれませんね……」


「夢が広がるねえ……」





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