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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第2章 銀河宇宙篇
251/325

*** 251 使徒派遣試練世界の問題点について *** 

 


 俺はまた惑星イルシャムに行って発注をした。


 AIたちの準備が終わっても、アバターやらナノマシンやら食料の準備が終わってなくて、試練世界救済が始められないとかいう事態になったら悲しいからな。

 まあ、万が一無駄になったとしても、所詮カネで済む話だし。



 俺の商談だということで、大統領官邸の会議室には大統領閣下の他に数十人の補佐官さんたちが集まっていた。


「それでは注文をさせて頂きたいと思います。

 あ、製品に必要な資源についてはすべて私が負担しますので。

 それから、注文させて頂いた商品の製作や買い付けに関しては、なるべく多くの星を使ってやってください」


 ん?

 なんか大統領さんが困った顔したぞ。


「あ、あの……

 確かにサトル神さまが仰る通り、そのように発注を分散させた方がより銀河宇宙全体のためになります。

 しかし、その場合には、製品の納期が多少長くなってしまうことに加えて、コストの上昇も招いてしまうのです」


「もちろんそうでしょうね。

 多少の納期の長期化は構いません。

 それで、コストの上昇分は遠方への恒星船の運輸コストですか?」


「はい、もちろんその通りでございます」


「わかりました。コスト上昇は構いません。

 ところで、神界から建造が許されている最大規模の恒星間輸送船は、如何ほどするものなのでしょうか?」


「は、はい、1隻1000億クレジット(≒10兆円)ほどになります……」


「それではそれを500隻ほど買っておいてください。

 それらは全て貴惑星に貸与させて頂きますので、製品の輸送や原材料の移動に使ってください」


「「「「「 !!!!!!!!! 」」」」」



 あー、大統領さん冷汗ダラダラ……

 

「かっ、かかか、畏まりましたっ!

 決してグループ内で独占は致しませんっ!」



 大統領閣下が超真剣な表情で答えた。

 そうした配慮が必要なほどの注文なのだと気づいて、数十の喉がごくりと鳴っている。



「まずはAIのアバターの注文ですね。

 五感を備えている必要はありませんので、今までの最新型アバターを100万人分お願いします」


 何人かの補佐官さんが倒れた。


「それから惑星全域を監視するための軍用ナノマシンが欲しいのですが。

 使用するのは神界防衛軍ですので神界ルールに抵触することはありません。

 それで通常惑星1つを網羅するには、予備も含めてどれぐらいの量のナノマシンが必要で、それはおいくらですか?」


「わ、惑星全域ですか……

 それにはナノマシンが最低でも1兆個ほど必要となりまして、代金は1000億クレジット(≒10兆円)になります……」


「それではそれを1ユニットとしましょう。

 1ユニットにつき5兆個のナノマシンを用意して頂いて、代金として6000億クレジット(≒60兆円)をお支払い致します」


 また何人かの補佐官さんが倒れた。


「そして、それを500ユニットお願いします」


 半数の補佐官さんが倒れた。

 みんなぴくぴくしている。


「それから最後に食料品やベッドや寝具や家具や台所用品なんかの日用品なんですが……

 後でリストをお渡ししますけど、これは500億人が10年間生活出来る分量を買わせて下さい」


 補佐官さんたち全員が倒れ伏した。

 さすがは大統領閣下だまだ俺の方を向いてるなと感心してよく見たら、白目になっていて口から舌がハミ出ていた……




 後で聞いたんだけど、俺の注文総額って標準的な惑星の年間GDPの10倍ぐらいに匹敵する金額だったんだそうだ。

 つまり惑星10コ分の年間経済活動総量だな。



 でもさぁ、500の惑星世界の500億のヒューマノイドを救うためだろ。

 だったらそれぐらいのコストがかかって当然だよな。

 そんなに異常なことじゃないと思うんだけど……





 そうそう、AIたちが指摘してくれた試練世界救済のための問題点の中でもカネで解決できない問題。

 つまりガイアにあってその他の試練世界に無いもの。

 それはまず、俺の補佐をしてくれた悪魔族と精霊たちのことになる。


 それでさ、ベギラルムや悪魔族の子たちに聞いてみたんだよ。

『キミたち、新たに雇った悪魔族さんたちと一緒に他の試練世界を救うために出張してくれないかな』って……


 そしたらさー、ベギラルムが涙どばどば流しながら言ったんだわー。


「い、今や悪魔族にとっての最高の栄誉は、サトル神さまのために働かせて頂くことでありますっ!

 ひとことお命じ頂ければ、このベギラルム、ただちに惑星大統領に報告し、100万人の悪魔族を集めてご覧にいれましょうぞ!」って……


 い、いやそんなにいらないんだけど……



 精霊たちもほとんどおんなじだったよ。

 こいつら今や1万人近くに増えてるけど。

 大精霊たちやリーダー格の精霊たちに集まって貰って、他の試練世界に出張してくれないかって頼んでみたんだ。


 そしたらみんな、「「「「「「 わ~い♪ お仕事だぁ~♪ 」」」」」」って大喜びだったよ。

 まあその代わり、恒星間転移ゲートを常時接続してやって、いつでもガイアに帰って来られるようにしてやるのが条件だったけど。

 これは神界転移部門へのお願い事項だけど、まあなんとかなるんじゃないかな。



 最後の問題点。

 それは『マナ建材』についてだったんだ。

 あれはガイアの特殊な環境で作られたものだから。



「なあアダム、俺ってマナって作れないかな……」


(神族の方々はみなさまマナ作成スキルをお持ちですよ)


「じ、じゃあ俺も作れるのか?」


(もちろんでございます)


「それじゃあさ、俺が作ったマナを砂とかに浸み込ませてマナ建材って作れるかな。

 例えば、時間経過を早めた倉庫で気体マナを砂に当てる方法とかで……」


(いえいえ、単に気体マナと砂を『融合魔法』で融合させるだけでございます)


「な、なんだそうか……

 だったらマナ建材なんか作り放題だな」


(はい)


「ということは、これで最後の問題も単に俺の労働だけの問題になったのか……」





 AI達の次の研修内容は、『使徒』派遣依頼が来ていた500の世界の状況について全員で討論することだ。


 まずはその世界の問題点を洗い出し、それからその問題点の解決方法を討論して行くんだよ。


 さすがに元世界管理システムが200人いて、それにアダムとイブが加わるもんだから、相当に詳細な検討が為されていたわ。



 そうした試練世界の問題点は、大きく分けて3つだった。


 まず1つ目は、ガイアとおんなじパターンだな。


 昔の地球の中世ヨーロッパの暗黒時代や日本の戦国時代みたいに、戦乱や酷い身分制のせいでヒューマノイドがバタバタ死んで行っている世界だ。


 でも、こうした世界を救う方法は既にガイアで確立されてるからなあ。

 人口が少ない場所にまずは大城壁で囲われた『街』をたくさん作って、その後に、E階梯の低い王族や貴族なんかが支配している地域の農民を移民させればいいだけのことだろ。


 神界のルールでは、そうした本人の意思に基づく移住や移民を武力で妨害するのは重罪に当たるから、邪魔をしようとした支配者層の軍勢は片っ端から逮捕して隔離すればいいし。

 ガイアの手順をそのままなぞればいいだけだから、状況の改善は簡単だろう。


 大城壁の建造が必要なら、今ガイアで訓練してる『神界防衛軍特殊工兵部隊』を出張させればいいだろうな。

 あいつらなら3人もいれば惑星1周分ぐらいの大城壁は1カ月で造れるぞ。



 2つ目は、天候の不順なんかで食糧生産が壊滅的な打撃を受けている世界についてだ。

 その多くは小氷河期が訪れていた世界になる。


 こうした世界について討議された結果、2つの解決方法が見い出された。

 まずは、ガイアと同じような強化ガラス製の温室を大量に作ってやる方法だ。

 住居についても、場合によったら40万人都市ぐらいの規模なら、丸ごと超強化ガラスで囲ってやってもいいし。


 それ以外にも寒冷化によって降雨量が激減した世界もあった。

 これについては、高山地帯に小規模な『プラズマの魔道具』でもたくさん置いて、万年雪を溶かしてやってもいいだろう。

 ついでに旧バリオン城跡地みたいに巨大プラズマの魔道具を置いて、強制的に上昇気流を作って降雨を促すとか。



 3つ目の問題は、害獣に悩んでいる試練世界だった。

 やたらに凶暴な肉食動物が蔓延っていて、住民たちが苦しんでいる世界だ。

 どうやら現地では『魔物』とか『魔獣』って呼ばれてるらしいんだけど。


 これについてはやっぱり大城壁が問題を解決してくれるだろう。

 ガイア国みたいに大量の人口を集めた国を作って、その国を大城壁で囲んでやればいいだけの話だからな。

 場合によったら、『神界土木部』の連中を呼んでもいいし。


 困ったのはそうした『魔物』や『魔獣』が飛行生物だったケースなんだ。

 鷲だの鷹だのプテラノドンだのが巨大かつ凶悪に進化した生物だと、城壁造っても意味が無いから。



「なあアダム、俺の『ロックオン』の魔法って、対象数や対象範囲を広げられるかな」


(すべてのアクセサリーを身につけられれば、対象数は数十億、対象範囲は惑星全域になると思われます)


「す、すげぇな……

 それで、飛行型肉食獣だけをロックオンして、そいつらを全員捕獲するって可能かな」


(はい)


「それじゃあそいつら全部捕まえて隔離でもするか。

 絶滅させるのも可哀想だし」


(どちらに隔離されるのですか?)


「そうだなー、試練用に準備されている未使用の世界でも貸してもらって、『魔獣サファリパーク』か『○ュラシックパーク』でも作るか。

 飛行型だけじゃあ少し寂しいから、地上型も少し捕まえて」


(完全保護の魔道具を装着させてやって、銀河宇宙のヒューマノイドに解放したら大人気になりそうですね)


「わはは、大儲け出来そうだな」


(はい)




 こうした授業やケーススタディの後は、AIたちに実地での魔法マクロの訓練もさせた。

 ガイアの人口も増えて来たから、ダムも街ももう少し必要になって来たからな。

 魔道具なんかも相当数作らせたよ。



 そんな研修や実習を数カ月ほど続けた後、俺はもうひとつの提案も用意して、最終的な承認を得るために、またゼウサーナさまに面談をお願いしたんだ。




 神界での面談当日。


 最高神政務庁の会議室に通された俺はびっくりしたよ。

 だって、会議室にはゼウサーナさま以外にも、上級神さまや中級神さまたちが50人ぐらいいるんだもんな。

 あ、これみんなガイアに査察に来てくれた神さまたちだ……




 ゼウサーナさまに促された俺は報告を始めた。

 まずはガイアでのAIたちに対する研修の内容について。

 それから予想される試練世界の困難状況とその解決方法について。

 更にはそのために必要な神界への依頼事項、具体的には神界防衛軍や神界土木部の派遣依頼と転移部門への協力要請だ。


 そして、これらの手段と資材を用意した結果、まもなく試練世界救済が始められることも報告したんだ。



 そうして最後に俺はある提案を申し出た。


「また、困難に直面しているのはこれら試練中の世界500だけではございません。

 試練に合格した後もさまざまな困難のせいで、神界最終認定世界に成れずに苦しんでいる世界が数千万もございます。

 これらの世界にも神界の恩恵を施してやるためにも、現在各種手段を検討しております。


 そうした手段をテストするためにも、地球という世界をテストケースにして実験を行わせていただけませんでしょうか。

 その権限を与えて頂けるようお願い申し上げます。


 それから、ヒューマノイドたちにとっての脅威となっている凶暴な肉食獣などを転移させるために、未使用の小さな試練世界をひとつ貸して頂けませんでしょうか。

 いかに凶悪な生物といえども、絶滅させるには忍びないですから」



 そうして俺は深く頭を下げたあと、その場にいた神々を見たんだ。


 そしたらまた驚いちゃったんだよ。

 だってそこにいた神々が、微笑んでいるゼウサーナさま以外はみんな涙をダバダバ流しながら泣いてるんだもんな……




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