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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
24/325

*** 24 『加護のネックレス』と『神界銀聖勲章』…… ***

 



<続・ローゼマリーナ視点>



 わたしはその場に大きなスクリーンを出現させた。

 圧倒的な臨場感をもたらす神界最高の3Dスクリーンだ。


 そのスクリーンの中に立つサトルが、対面する大悪魔に微笑みかけた。


「さあ、ベギラルム。今日こそはお前の攻撃に耐えて見せるぞ!」


 大悪魔が涙を流しながら泣き声で応じる。


「それではご無礼仕るっ! 闇魔法物理衝撃波っ!」


 大悪魔の前に、わたしが見ても寒気がする巨大な暗黒球が出現した。

 その中心部では、閉じ込められた膨大なエネルギーを彷彿とさせる雷の嵐が吹き荒れている。


 さらに号泣しながら大悪魔がその暗黒球を放った。

 そうして……

 それがサトルに到達したとたんに、サトルの体はいつものように爆撒したのだ。

 そう…… いつものように……


 周囲には、サトルの血、肉片、骨片が散乱している……

 ああ…… 内臓がびちゃびちゃと音をたてて地面に降って来た……

 あそこに眼球まで転がっている……


 その場にいた中級神さまのうち何人かが消えた。

 きっと粗相をしそうになって、どこかに転移したのだろう。

 さすがにゼウサーナさまはその場に留まっていたが、そのお顔はドス黒くなっている。


 あ、中級神サウサリジェンナが気絶している……

 ふふ。床が濡れてる…… わたしとおなじね。



 サトルの爆撒した体は、まもなく暖かい光に包まれて元通りのサトルの体に戻った。

 まだ意識の無いサトルを囲んでみんなが号泣している。

 システィフィーナが、大精霊たちが、そして一際大きな声で泣いているのが大悪魔だ。


 それからしばらくしてサトルが立ち上がった。


「あーあ、また今日も爆撒しちゃったかあ。

 よしっ! それじゃあもう一丁っ!」


 そうして、もう一度サトルが爆撒したところでわたしは映像を止めた。



 会議室を沈黙が支配している。

 かなりの時間が経って、ようやく消えていた神々が戻って来た。

 みんな顔面蒼白ね。



「ローゼマリーナよ。念のため聞いておきたい。

 なぜ、ここまで凄惨な訓練が行われているのか」


「はい。それは彼が或る現象に気づいてしまったからであります。

 その現象とは、『遥かに格上の相手から、一撃でHPがゼロになるほどの強大な攻撃を受けて死亡する際、防御力及び総合レベルが非常に大きく上がる』というものでありました。

 もちろん彼は、初級天使システィフィーナの加護を受けておりますので、その天使域内で死亡してもすぐに復活いたします。

 そうした死を繰り返すことで、通常では有り得ないスピードでレベルアップが出来ることに気がついたのです。

 彼はこれを『システムバグ』と呼んでおりました」


「システムバグか…… 言い得て妙だの。

 それでは、何故この使徒はこうまでして、このわたしですら慄然とするほどの凄惨な訓練をしてまでレベルを上げようとしておるのか……

 マナ噴気孔の修理だけならば、ここまでの努力は必要無いのではないか?」


「本人の言葉を借りれば、『誰も殺さずに2000万人のヒト族の国々を併合し、平和な国を造るのには、ヒト族の力を超越した圧倒的な力が必要だから』とのことでございました……

 そのためだけに、誰も殺さないと誓ったがためだけに、サトルは毎日20回近く、都合5000回もの爆撒死を繰り返したのでございます……」


(いけない…… わたしまで涙声になっちゃった……)




 またもや会議室を沈黙が支配した。

 しばらく経って、ようやくゼウサーナさまが口を開く。


「その使徒は、限られた情報から瑕疵の原因を推察し、併せて隠蔽工作の存在をも見抜くほどの知力を持ち、困難を打開する方策をも見出した。

 その上、常人では考えもつかない凄惨な努力まで行って、歴史上ヒト族圧倒的最強の座に上り詰めることで使命を果たそうと考えたということか……

 それも誰も殺さずに……


 それではローゼマリーナよ。

 当然ながら、そなたはその使徒の昇格推薦状を用意したのであろう。

 わたしがサインするので提出しなさい」


「おおっ! ゼウサーナさま御自らのサインか!」などという声が聞こえた。


(昇格推薦状にサインするということは、サインした高位者が自動的に昇格者に『加護』を与えることを意味するけど……

 まさか上級神さまともあろう御方が一介の使徒にそれを与えようとするなんて……

 でっ、でも……)


「い、いえ、ゼウサーナさま。

 お、畏れながら、使徒サトルは昇格の推薦を辞退いたしました……」


「な、なんだと!」

「ヒト族が天使族への昇格を断っただと!」

 などという声が聞こえる。


「ふむ。ローゼマリーナよ。

 そなたは当然その理由を聞いたのであろう」


 ああ、ゼウサーナさまの目が笑ってる……


「はい。サトルはこう言いました。

『初級天使に昇格させて頂くと、わたしはこの世界ガイアを出て他の世界で試練に挑むことになるでしょう。

 ですが、わたしはシスティに約束したのです。

 この世界ガイアを平和な世界にして、システィを合格させると。

 それから…… その約束を果たした暁には、システィの産む子の父親にならせてくれともお願いしました……

 それに、この精霊たちや悪魔たちとも絶対に別れたくありません。

 みんな命よりも大事な俺の仲間達ですから……

 前世、病弱でひとりも仲間がいなかった俺が、なんという幸せを手に入れたことでしょうか。こんな幸せを、たかが昇格ごときで奪われてなるものですか』と……」


「ふふふふ…… ふはははは…… わはははははは!

 素晴らしい! 

 そ奴は『知力』『努力』に加えて『信義』までをも持っておったか!

 いや感服した! こんな感動的な思いは数百万年ぶりだ!

 わかった。そ奴はガイアの使徒に留めることとする。


 だが…… そのままでは済まされんな。

 そのサトルとやらには、わたしの加護を与えた上で、『神界銀聖勲章』授与を推薦することとしよう」


「「「「「「「「 !!!!! 」」」」」」」」


 その場にいた神々が皆絶句している……

 もちろんわたしもだ。

 それにしても、ゼウサーナさまのご加護に加えて『神界銀聖勲章』とは……




「それでよろしかったでしょうか、最高神さま……」


 突如としてわたしたちの頭の中に最高神さまのお言葉が響いた。


『うん♪ もちろんいいよ。ボクもすっごい感動したよぉ。

 そのサトルくんっていう使徒って、本当に素晴らしいヒトだねぇ。

 銀聖勲章も当然だね♪

 それから、その初級天使システィフィーナさんと中級天使エルダリーナさんも、それぞれ管理世界を動かさないまま昇格させてあげたらどうかな』


「もちろんそのように取り計らいさせていただきます、最高神さま」


『頼んだよ、ゼウサーナくん。

 あ、それからさ。ローゼマリーナさん』


「は、ははは、はいっ! 最高神さまっ!」


『悪いんだけど、キミはしばらくそのガイアに留まって、サトルくんたちの様子を定期的に報告してくれないかな。

 それにもし出来れば、公式の報告以外にも楽しい読み物形式のやつも読みたいな。たまには映像も添付されたやつ。

 そうすれば、そのうちその彼のお話が『英雄物語』になって、神界のみんなが喜ぶかもしれないから……』


「はいっ! 御意のままに!」


『そうだな、その読み物形式のやつは、神界ネットに乗せて一般公開しようか。

 ふふ。きっとみんな喜ぶよ』


「はいっ!」




(『公式報告書』だけじゃあなくって、楽しい読み物形式のものもか……

 現在進行形の『ガイア観察日記』を書くって言うことね……

 それはもちろん書かなきゃだけど、それとは別にわたしもラノベを書いてみようかな……

 タイトルは…… 【爆撒英雄サトルのガイア建国記】とかどうかしら……

 どうせならサトルが召喚されたところから書いてみようか。

 サトルの1人称とかで……)






 わたしは帰り際にゼウサーナさまから地味なネックレスを渡された。


「これは私の加護のネックレスだ。これを使徒サトルに渡して欲しい。

 即死級の攻撃を受けても無効にするなどのさまざまな加護スキルに加えて、あらゆるレベルを100倍にする効果も付いておる」


(す、すごいわ…… サトルが総合レベル1万になっちゃう……)


「まあ、『神界銀聖勲章』が授与されれば、各種効果に加えてやはりレベル100倍の効果も付いておるからな。

 2つ合わせてサトルのレベルが100万を超えてしまうの。わははは。

 これでもう、あの凄惨な訓練で仲間を泣かさずとも良くなっただろう」


(……れ、レベル100万……)


「おお、それからこのカードをシスティフィーナに渡してくれ。

 世界ガイア管理用のポイントが10万程入っておる。

 これでもうポイントが足りずに苦労することも無いだろう」


 わたしは目眩を堪えながらも言ってみた。


「こ、ここまでしていただいて、よ、よろしいのでしょうか……」


「うむ。

 この上は、神界の総力を挙げてシスティフィーナを試練に合格させるのだ。

 最高神さまもそれをお望みだろう。

 もちろんシスティフィーナが合格すれば、そなたも初級神に復帰できるぞ」


「あ、ありがとうございます……」


「それからサトルの発見したあの『システムバグ』だが……

 なるべく早く修正しておくことにしよう。

 万が一にも、天使たちや使徒たちに、あの凄惨なレベルアップ方法を流行させたくないからな。

 もっとも、アレを繰り返せる根性のある者はほとんどいないだろうが……」


「はい……」


「それから、そなたがガイアの観察を続ける中で、もし万が一なにか重大な障害があるようならば、ただちに直接わたしに連絡するように。

 それ以外はそっと『英雄サトル』の奮闘を見守ってやろうではないか」


「は、はい…… 仰せの通りに……」







 そのころ、(英雄?)サトルとシスティは……



「あの…… あのあのあの……

 ね、ねえ…… さ、サトルは、子作りの『練習』ってした方がいいと思う?

 お、お姉さまが、『練習ぐらいならしてもいいんじゃないかの♪』って仰ったの……」





「あああああああああああああああああああああああああぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~んっ!!!!!」







 翌朝……


「すんすんすん…… あーっ! 使徒しゃま、エッチの匂いがするーっ!」

「「「「「「 ほんとだーっ! エッチの匂いだーっ! 」」」」」」


「朝のパパの匂いとおんなじだーっ!」

「「「「「「 おんなじだーっ! 」」」」」」


「すんすんすん…… あーっ! システィしゃまも、エッチの匂いがするーっ!」

「「「「「「 ほんとだーっ! エッチの匂いだーっ! 」」」」」」


「朝のママの匂いとおんなじだーっ!」

「「「「「「 おんなじだーっ! 」」」」」」


「「「「「「 すんすんすんすんすんすんすん……」」」」」」


「それにしても濃い匂いだねーっ♪」

「「「「「「 濃いねー♪ 」」」」」」


「だからあとしばらくすれば、あかちゃんうまれるねーっ♪」

「「「「「「 うまれるねーっ♪ 」」」」」」


「みんなあかちゃんとなかよくしようねーっ♪」

「「「「「「 なかよくしようねーっ♪ 」」」」」」




 この精霊っ子たちのエッチ探知機能……

 どうにかならんもんかな……

 俺の顔が赤くなり過ぎて脳溢血で倒れそうだよ……

 システィはにこにこしてるだけだけど……





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