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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
234/325

*** 234 査察終了とガイアの試練合格 ***

 



 そんな或る日、案内役の悪魔族の子が映像を持ち込んで来たんだ。

 それは9時街の幼稚園の休み時間の園庭の様子だったんだけど。


 まあ、9時街は一番最初に出来た街だけあって、テストケースとして全種族が万遍なく混ざって住んでるからな。

 ここでも22の種族の子供たちがすべて揃って遊んでいたんだ。


 それで園庭の真ん中で、鶏人族ワーチキンの子供たちが飛ぶ練習をしていたんだよ。

 まあ飛ぶって言っても、走って助走をつけて数メートルほど滑空するだけなんだけど。

 その中でも3メートルほど飛べる年長さんが、年少の子に飛び方を教えていたんだわ。


 それでその年少の子も、一生懸命翼をぱたぱたさせて、1~2メートルほどは滑空出来るようになったんだけど……

 着地のときに足がもつれて地面に顔から突っ込んじゃったんだ。

 まあ、フェンリル鍛錬所で少しは鍛えられてるから、それほど酷い怪我はしてなかったんだけどな。

 それでも少し顔をすりむいてて、ちょっとだけ血も出てたんだ。


 それでその子、まあ痛かったからっていうよりびっくりしたからだろうけど、「ふえぇぇぇぇぇ~ん!」って泣き出しちゃったんだ。

 もちろん幼稚園に常駐している精霊たちがすぐに飛んでってたけど。


 でも……


「ぬうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~っ!」とか、「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」とかいう声とともに、その場にヤタラにでっかい光球が20個ぐらい現れて、その子に向かって飛んでったんだよ。


 そしたらさあ、その子やっぱり全身が銀色に輝き始めちゃったんだわ。

 まだヒヨコみたいな黄色い羽毛に包まれた子だったんだけど、それがキラキラ光る銀色に……


 そりゃそうだよな。

 あんな上級神級や中級神級の『治癒キュア』を20発も喰らったら、あの子3カ月ぐらいは光ったままだぞ……



 それでその子、不思議そうに自分の体を見てたけど、すぐに飛ぶ練習を再開したんだ。

 それでまた転んだけど、それでも光ってるうちはぜんぜん痛くないって気づいたようなんだな。


 それでなんか「ふんすっ!」って気合いを入れたかと思うと、園庭のジャングルジムに取りついて、うんしょうんしょって昇り始めて、そうして止める間もなくそこから飛び降りたんだ。

 もちろん翼をぱたぱたさせながら……


 そう、年長の子が年少の子より長く滑空出来る理由。

 それはやっぱり助走のスピードだったんだよ。

 だからその子、すぃ~って15メートルぐらい滑空出来ちゃったんだわ。



 もう園児達も大興奮よ。

 もちろん神さまたちも立ち上がって大拍手さ。


 それで神さまたちは、鶏人族ワーチキンの子供たちにせがまれて、『治癒キュア』の大盤振る舞いだ。

 全員にかけ終わったときには、みんな魔力切れでげっそりした顔になってたわ……



 そうしてとうとう神界最高顧問会議のガイア査察も終わったんだ。

 なんか神さまたち、最後はまた幼稚園にやって来て、涙ぽろぽろしながら子供たちを抱きしめてたんだけど……



 さてと、ひと仕事終わって俺もほっとしたよ。

 しばらくのんびりさせてもらうとするか……






 最高顧問団の査察が終わってしばらくすると、俺たちはまたゼウサーナさまの執務室に呼び出された。

 ゼウサーナさまは、俺たちを静かに見つめている。

 特に俺は、ゼウサーナさまの威厳に溢れた目でけっこう長いことまじまじと見つめられたんだ。



「お前たち……

 よもや『洗脳魔法』を開発して、神界最高顧問会議の査察官全員に洗脳を施したのではあるまいな……」


「ええええっ! ま、まさかっ!」


「本当だな」


「そ、そんなことするわけないじゃないっすか!」


「ふむ…… それではこの勧告書は現実のことであったのか……」


「ど、どどど、どんな勧告だったんでしょうか?」


「ふむ、まずは50人の査察官が全員一致で『試練合格』を勧告して来た」


「ほっ」


「それどころか、もしもすぐに『合格』を与えなければ、全員が最高顧問会議メンバーを辞任するという脅迫つきだ。

 たとえ将来に於けることであっても、あのガイア国が消滅する可能性が残ることは、到底承認出来んということだそうだ」


「えっ……」


「それから、試練合格だけではなく、その次の段階の『神界認定世界』への認定勧告を出した神が30柱、さらには最終的な神界による『理想世界認定』も出せと言った神まで10柱もおった」


「ええっ!」


「さらには、あのヒト族の魔の手から亜人・獣人族の子供たちを守った功績を讃えて、そなたに3つ目の『神界銀聖勲章』を授けよという勧告も35柱から出ておる。

 残りの15柱は、なんと『金聖勲章』授与を勧告しおった」


「ええーーーーっ!」


「もちろんそなたを直ちに中級神に昇格させよという勧告も、これは30柱から出ておるな」


「げげげげげげげ……」



「それからこれを見よ」


 その場のテーブルの上に、山のようにネックレスやら指輪やら腕輪が現れた。


「な、なんですかこれ?」


「今回ガイアに査察に出向いた神々から、お前に授けてやって欲しいと預かった加護のネックレスその他だ。

 皆、非常に強力な加護やスキルが含まれており、これを使ってあの子供たちをさらに幸せになるよう保護してやって欲しいそうだ」


「げげげげげげげげげげ…… こ、こんなにたくさん……」



「それからの、これらの勧告とは別に、50柱の神全員から『要望書』が上がって来ておる。

 わたしを通じて、そなたに懇請したいことがあるそうだ」


「ど、どのようなご要望なのでしょうか……」


「うむ、全員がガイア国に移住したいと言い出しおった」


「うげげげげげげげげげげ……

 で、でも、中級神さまや上級神さまにふさわしい神殿を50個も造るのにはそれなりに時間が……」


「いや、お前の造った『街』の中の普通の家に住みたいそうだ。

 その家の代価として、それぞれ100万クレジットを支払いたいとのことでもある」


「い、いくらなんでもそんな高額な……

 も、もちろんタダでいいですってば……」


「タダで受け取ると査察官に対する贈賄に当たる可能性があるために、必ず代価を受け取って欲しいということだそうだ。

 そんなことよりもだな。

 そなたのせいで、80人の神界最高顧問のうち、実に50人までもが完全に引退して余生をガイア国で送りたいと言い出したのだ。

 どうしてくれる」


「うーげげげげげげげげ……

 ど、どどど、どうしましょう?」


「まあ現在、最高神さまが全員を説得しておるところだ。

 最終的には普段はガイアに住んで、必要なときには臨時最高顧問として活動してもらうことに落ち着くだろうが」


「よ、ヨカッタですね……」


「それからの。

 食費の代価として、全員がガイア国で職に就いて働きたいと言っておる」


「そ、そんな……

 そんなもんタダでいいですのに……」


「それで、念のためにどのような仕事に就きたいのか聞いてみたのだがの。

 これまた全員が、保育士育成学校に通った後、保育園か幼稚園で保育士として働きたいと言うのだ。

 まあ、中には保育園と幼稚園専門のマッサージ師になりたいと言うお方もいたが」


(やっぱりカミサマたち全員モフリストだったのか……)



「それにしても……

 そなたの創った保育園と幼稚園とはいったいなんなのだ?

 なにか高位の神々を虜にする魔性の仕掛けでもあるのか?」


「そ、そそそ、そんなものはございませんが……

 まあ、ご高齢の方にとっては、子供たちの可愛らしさが堪らなかったのでございましょう……」



「そういうものか……


 ということでだ。

 神界最高顧問会議は全会一致でガイアの試練合格を認定した。

 そして最高神さまもこれをご承認下さっておる。

 おめでとう」



 はは、システィが涙ぼろぼろになりながら俺に抱きついて来たよ。

 まあそりゃそうだよな。

 あの可愛いガイアの子供たちが消滅されられなくて済んだんだもんな。


 まあ俺も我ながらよくやったんじゃないか?






 ガイア世界試練合格祝賀会は、1週間続いた。

 今や1万人を超えているエルダさま配下の悪魔さんたちが、地球や銀河世界から膨大な量の酒や料理を運び込んでくれている。


 銀河全域の数千万の世界からも祝電が届いていて、さすがのアダムもちょっと疲れた顔してたわ。



 そうして、俺もシスティも、それからエルダさまやローぜさまやフェミーナも、にこにこしながら祝賀会を楽しんだんだよ。


 ああ…… 俺、ようやくこの世界を救えたんだな……






 試練合格祝賀会も終わって、みんなでまったりしていた或る日。

 エルダさまが俺に言ったんだ。


「サトルや。そういえばお前は自分の神域を作らんのか?」


「えっ…… 俺って神域作れるんですか?」


「もちろんだ。

 そもそも初級天使のころから既に天使域は持てるが……

 まあ、お前は天使族をすっ飛ばして5階級もの特進したのでわからなかったのだな。

 それにしても、いよいよお前も自分の『城』を持つのか……

 だが、ひとりになれる『書斎』ぐらいはいいが、出来れば普段の暮らしはここでして欲しいのだがのう……」


「はは、神域を作ると言っても書斎と倉庫と作業場や休息室ぐらいしか作りませんよ。

 ここでエルダさまの料理長やベルミアの作る旨い料理を食べたいですし、なによりこうした夕食時の皆さんとの団欒は楽しいですからね」


「嬉しいことを言ってくれるの。

 ならばお前の書斎の家具一式は、私が地球産のもので揃えてやろう。

 最新鋭のPCとネット接続などもな。

 神域が出来たらわたしの配下に用意させよう」


「あ、ありがとうございます……

 ということでアダム、俺の神域を作っておいてくれるか?」


(はい、ご希望を仰って頂ければ如何様にもお作り致しますが)


「ところでそういう神域ってどこにあるんだ?

 4次元空間にでもあるんか?」


(そうですね、4次元ですと時間の経過がかなり複雑になりますので、地球の概念で言えば、3.1次元ほどの空間でございますか)


「ほう、だからかなり大きな空間を作れるんだな」


(はい)


「それじゃあさ、このガイアと同じぐらいの大きさの倉庫と、それに隣接する作業場を作っておいて欲しいんだ。

 それ以外にも、書斎や魔法の使い過ぎで気絶したときのための休息室やトイレなんかもだな」


(居住区は不要と言うことでよろしいのでございますね)


「はは、住むつもりは無いからな。

 風呂や寝室は、今まで通りシスティの神域のを使わせてもらうつもりだよ」


(畏まりました)



「そうそう、例の俺が粉々にした小惑星帯の岩石なんだけど、その神域倉庫に転移させておいて欲しいんだ。

 急がんでいいぞ。

 ゆっくりでいいから、そうだな、直径1メートル以上のものだけでいいから集めておいてくれるか。

 直径1メートル以下だったら、将来万が一ガイアに降って来ても、大気との摩擦で燃え尽きるだろ」


(それでは少々お時間を頂戴しながら集めさせて頂きますです。

 また資源抽出を始められるのですか?)


「なんとなくだけど、将来もっとカネが必要になるかもしれないから準備しておこうと思ってな……」





 この小惑星帯は、元は火星ほどの大きさの惑星だったらしい。

 それが何らかの理由で分裂して今の小惑星帯になったそうなんだが……

 巨大隕石が衝突したか、自転が速過ぎたか、さすがに数億年も前のことだからよくわからんそうだ。


 まあ、もし今ガイアに同じようなことが起きようとしても、そのときは『神界防衛軍』がなんとかしてくれるらしいし、俺がその巨大隕石に近づいて『威圧』で粉々にしてやってもいいだろう。





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