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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
233/325

*** 233 神界最高顧問会議の査察延長 *** 

 



 熱心な神さまたちは、収容所にいるヒト族の重罪犯たちのところにも行ったそうだ。

 神さまなんかがあんな連中と話をしたら、相当に心が痛むって言ってはおいたんだがなぁ……



「悪魔族のステファイさん、今日はヒト族の重罪犯収容所に連れて行って下さいませ。

 そうですね、最も罪の重い収容者のところにお願い致します」


「畏まりました上級神さま」




「こんにちは。今日はあなたのお話を伺いに来ました」


「おお! ようやく召使をよこしたか!

 なんだババァではないか!

 あれほど年若き女の召使をよこせと言っておいたのに!」


「わたしは召使ではありませんよ」


「ま、まあよい。

 まずは酒を持て。そ、それから食事じゃ。

 山海の珍味をたっぷりとじゃ!」


「いいえ、あなたが食べていいものは、ここにある食材だけです。

 お酒などはもってのほかですね」


「な、なんだと! ぶ、無礼者め!」


「それにあなた……

 畑での仕事もせずに、ガイアTVの教育チャンネルも見ずに、そうして文句ばかり言っているそうですね……」


「い、言わせておけば! 不敬罪で死刑にしてやる!」


「あなたは、そうやって20年の治世の間に3000人もの侍従や侍女を死刑にしてきたのですね」


「奴らは我が高貴なサンゲリア王族に対する敬意が足りんかったからだ!」


「なぜあなたは高貴なのですか?」


「な、なんだと……

 そ、それは、わしが偉大なるサンゲリア12世陛下の嫡子であり、王権を受け継いだ身であるからでだな……」


「その高貴で偉大なるサンゲリア12世陛下は、なぜ高貴で偉大だったのですか?」


「そ、それはもちろんやはり高貴で偉大なるサンゲリア11世陛下の嫡子であり……」


「それじゃあ高貴で偉大なる第1世陛下はなぜ高貴で偉大だったのですか?」


「そ、それはもちろん、当時サンゲリアの地に蔓延っていた蛮族共を滅ぼして、偉大なるサンゲリア王国を打ち立てたからじゃ!」


「つまり、ケンカが強いと偉大で高貴だと言いたいのですか?」


「なっ!」


「まあ、ケンカが強いと『俺は偉大で高貴だ!』と威張っても誰も文句は言わないでしょうからそれでもいいとしましょう。

 ではなぜその初代王の子孫も偉大で高貴なのですか?」


「そ、それは偉大で高貴な血を引いているからだ!

 お前はそんなこともわからんのか!」


「ふう。ということは、あなたはケンカの強い者の子孫だから自分もケンカが強くて偉大で高貴だと言いたいのですね」


「ま、まあお前のようなバカ者に分かりやすく言えばそういうことだ。

 これで少しはワシを敬う気になったか!」


「でもあなたはケンカに負けてこのような場所にいるのですよね」


「うっ……」


「ということはあなたは『偉大』でも『高貴』でもないのではないですか?」


「な、ななな、なんだと……」


「そして、その偉大で高貴な初代王が作ったサンゲリア王国を、あなたが滅ぼしてしまったのですね」


「い、いや、ち、違う! こ、これは一時的撤退であり……」


「自分で食べていけなくなったから、国を捨ててガイア国に食物を恵んで貰う身になったんでしょうに。

 偉大で高貴なる1世陛下にどうお詫びするつもりなのですか?」


「わ、我が息子達が、必ずや元家臣たちを集めてガイア国を滅ぼしてくれようぞ!」


「妄想もいいかげんにしたらどうですか?

 あなたも、あなたの息子さんも、こうやって自らガイア国に降って、乞食同然の身になったんでしょうに。

 しかもその罪によって1人で隔離されているので、あなた方はもう子孫を残せないのです。

 偉大で高貴な血は、偉大ではなかったあなたの代で途絶えるのですよ」


「す、すべてはあのガイア国が悪いのじゃ!

 あ、あの悪の帝国さえ滅びれば!」


「その『悪の帝国』に食べさせて貰ってるのはあなたでしょ。

 命の恩人なんですから、それこそ敬ったらいかがですか?


 ところで、あなたの治世でサンゲリア王国では3万人の餓死者を出したそうですね。

 それから、納税の為に奴隷として売られた者は8万人。

 さらに、度重なる侵略戦争で8万人の戦死者も。

 ガイア国は、1人の餓死者も奴隷も戦死者も出していませんよ」


「そ、そんなもの!

 国としては当たり前のことであろうに!」


「あなたは領民が不作で苦しんでいるときも、重税を取り立てて餓死させたのですよね」


「ふ、不作になどなったのは、領民たちの努力が足りなかったからだろうに!

 そ、それに我が王族に対する敬意もな!」


「あのとき城にあった食料を与えていれば、あれほどまでの餓死者も出なかったのに……

『悪の帝国』というのは、あなたの国のことだったのではないのですか?」


「も、もう勘弁ならん!

 わ、わし自らお前を成敗してくれるわ!」


「やれるものならやってごらんなさい……」


「う、うおぉぉぉぉぉぉぉーっ!」


 びかびかびかびか!


「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」




「ふう、わたしはもちろん死刑反対論者ですが……

 このような者だけは死刑にしてやりたくなりますね。

 自らを省みる心が全く無いとは……

 E階梯0.1という数字の通りでしたか……

 ステファイさん」


「はい、上級神さま」


「神界最高顧問会議の査察官として、サトル神殿に勧告、いえご提案がございます。

 お伝え願いませんでしょうか」


「はい、畏まりました」


「ここに『マナ代謝』というスキルを持つ指輪があります。

 この指輪をつけると、相手をマナだけで生きていける体にするというスキルを使えるようになるのです。

 もっとも、マナさえあれば死なないだけで、相当な飢餓感に苛まれることになるでしょうが……


 どうかサトルさんに、このスキルでこの罪人や他の者も『マナ代謝』の体にしてやるようご提案下さい。

 そうして1日5時間の畑での労働と、やはり日に3時間の教育番組視聴をしなかった場合には、食事抜きとなるように計らって頂けるよう、わたくしからのお願いをお伝え願えませんでしょうか。

 やはりこのようなひとたちには、『禁固刑』ではなく『懲役刑』が相応しいと考えます……」


「畏まりました……」





 っていうことで、なんだか便利そうなスキルが手に入ったんだよ。

 そうか、マナさえあれば生きていけるけど、モノを食べなければ飢餓感は激しいのか……


 よし、神界最高顧問さんのお墨付きも得られたことだし、これ超重罪犯に使ってみるかな。

 殺人数1000人以上ぐらいの。

 畑で働いたり教育番組で勉強しなかったらメシ抜きだって言って……





 俺は、もちろん毎日案内役の悪魔族の子たちから、査察官さんたちの様子について報告を受けてたんだけどさ。

 たまには映像つきで。


 でも……

 そろそろ神界の査察期間が終わりに近づくにつれて、神さまたちの顔つきがどんどんと険しくなっていったんだ。

 なんでだろ?

 やっぱりなんか問題でもあったのかな。

 俺は神界のルールに詳しいわけじゃないから、そうした点はアダムに頼ってたんだけど。

 なんかアダムでも見逃すような問題点があったんだろうか。


 まあでも、あと500年あるからな。

 なにかマズイ点があっても、ゆっくり時間をかけて改善していくか……



 それでさ、査察予定期間があと3日ほどになったころ、主任査察官の上級神さまが、5人ほどの上級査察官さんを伴って、俺のところにやって来たんだわ。

 な、なに言われるんかな……



「日頃は我らの査察にご協力頂き、誠にかたじけなく存ずる。

 じゃが……

 本日は、このガイアの地の担当であるシスティフィーナ初級神殿とサトル初級神殿に要望があって参った次第じゃ」


 あー、後ろの上級査察官さんたちも、おっかない顔で頷いてるわ。


「要望と申すのは他でもない。

 我らの査察期間を、あと15日ほど延長させてはいただけないものだろうか」


 な、なんだそんなことか……

 でもそんなに長期間の調査を必要とするような問題点があるのか……

 気になるけど、どうせ聞いても教えてくれないだろうし……


「もちろん構いませんです。

 どうか、ご満足頂けるまでご存分に査察をお続けくださいませ」



 まあ、そう答えるしかないから、俺はそう言ったんだ。

 そしたら……

 なんか神さまたち、目に見えて表情が変わったんだわ。

 それも、キョーレツな嬉しさを隠そうとして必死な顔に……

 なんでだ?




 その後も、神さまたちは実に熱心に査察を続けていたんだ。

 俺は、彼らが何をそんなに気にしているのか探るべく、案内役の悪魔っ子たちに、神さまたちの行動をさらに詳細に報告するよう指示を出した。



「本日のサマーリア上級神さまの査察先は、朝一番で9時街の幼稚園、それから小学校、特に低学年クラスの授業と休み時間の校庭の様子をご覧になっていらっしゃいました。

 昼食は、子供たちと一緒に給食をお取りになり、それからすぐに幼稚園に戻って、子供たちのお昼寝ルームのご査察でした。


 その後は、レストランの厨房や屋台街の見学に加えて、保育士養成学校のご査察。

 ここではかなりご熱心に授業風景をご覧になられています。

 それから中央街の大浴場に赴かれ、浴槽の実地査察と洗熊人族ワーラクーンのマッサージの実地査察をされていました」


「…………」


「本日のヨルムサリーア上級神様の査察先は、午前中は幼稚園と小学校、昼食は幼稚園に戻られて子供たちと共に同じ食事を実食査察。

 それから、年少クラスのお昼寝の場でのご査察。


 午後は中学校や大人学校の部活動のご査察で、特にサッカー部の活動を熱心にご覧になっていました。

 それから、午後は屋台街で各種食べ物の実食査察。あ、手芸用品店で、各種族のぬいぐるみ作成キットも調査用にご入手されていました。

 その後は大浴場の実地査察に加えて、先日入手されていた予約券をお使いになられて、洗熊人族ワーラクーンのエステを実地査察されています」


「予約券なんか使わずとも、いつでも査察出来るようにしてやってくれ」


「それが……

 わたくしもそうお伝えしたんですが、『権力を振りかざした割り込みは絶対にいけません』と言われてしまったんです……」


「そうか……」



「それから本日のサウザーランデ上級神さまのご視察は、朝方が10時街の保育園と幼稚園でございました」


「やけに保育園と幼稚園の査察が多いな……」


「ええ、そして、幼稚園で子供たちのブラッシングやマッサージをご覧になられた後は、洗熊人族ワーラクーンが運営するブラッシング・マッサージ教室に出向かれています。

 この施設に行かれるのはこれで5回目でして、今日は午後いっぱい毛の長い種族へのマッサージを実地経験されていました」


(……まさか…… いや、いくらなんでも……)




 それからしばらくして、またもや神界最高顧問会議の査察は期間延長になったんだ。


 そのころになると、最高顧問さん達の査察は、保育園や幼稚園に集中してたんだけど。

 なんか乳児保育や幼児教育に問題でもあるんか?

 それともやっぱり……




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