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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
226/325

*** 226 ガイア国のヒト族収容所 ***

 


 それからもしばらくは平穏な時が過ぎて行ったんだ。


 大陸西部と東部のヒト族2000万のうち、既に1600万人はガイア国に移民としてやってきたよ。

 そのうち半分の約800万人は罪業カルマポイントによって罪人と認定され、犯罪人用収容所に入れられている。

 まあ主に盗賊団とか軍隊に属して略奪や殺人を重ねて来た者たちだ。


 それ以外はほとんど農民や商人たちだったんだけどさ。

 残念ながら、そうした階層にもけっこう罪業カルマポイントの高い者たちも多かったんだ。


 そうした罪人たちは、罪の重さによって各種の収容所に収容されている。

 最も罪の重い者、まあ罪業カルマポイント100以上の者は、1人用の重罪犯用終身刑者収容所だ。

 ここに収容されているのは、主に元王族や貴族、それから盗賊団や傭兵団の首領や幹部達だな。


 彼らはもう誰とも接触させずに、このまま静かに天寿を全うしてもらうことになっている。

 一応収容所には1ヘクタールほどの農場もつけてやっているが、ほとんど誰も働こうとはしないようだ。

 どうも支配欲の強い奴は、支配出来る相手がいないと途端にフヌケるらしい。



 罪業カルマポイント10以上100未満の者は、そのポイントに応じて4人用から25人用の収容所に入れている。

 その中で支配層になろうとしたり暴力行為を働こうとした者は、即座に重罪犯用収容所に移すことになるが。


 それ以外の罪業カルマポイント1以上10未満の者の多くは100人用収容所とか1000人用収容所に入れて、集団生活を営めるようにしてやっている。

 もちろん男女別だ。

 それなりに悩んだが、やはり殺人犯に子孫を作る権利は無いという俺の判断による。


 それ以外、つまり戦場での殺人を除く殺人数がゼロの者たちは、当初1000人収容所に入れて様子を観察した後に、状況に応じて1万人収容所に移すことにした。

 この1万人収容所は男女両方が住めるようにしてあり、本人達の意思によって婚姻も出来るようにしてある。


 残念ながら、この1万人収容所に移して女性を見た途端に暴力性向を露わにして性犯罪未遂犯となって、100人用収容所に移送される奴が後を絶たないけどな。

 ったく、ヒト族のオスの性衝動はどうにもならんわ。



 罪業カルマポイントゼロの者たちについては、さらにE階梯別に仕分けを行って、それぞれ2万人用の農村に分けて割り振っている。

 その中でも特に俺が期待しているのはE階梯2.0以上の者達のみを集めた農村だ。


 ここでも、当初は食料が豊富にある安堵感からか、働かずにメシ喰って寝てばかりいるやつもいたんだけどさ。

 それでも目の前に肥えた土の畑があるし、水場は豊富だし、なにより倉庫には金属製の農具が大量にあるもんで、農業を始める奴も多かったんだ。


 特に奴らを驚かせたのが肥料だった。

 どうやら土に栄養分を混ぜて収穫量を上げるっていう発想はほとんど無かったようだな。

 それで実際にびっくりするぐらいの収穫が得られると、後はみんな続々と農業を始めてたよ。

 スクリーンの魔道具では、いつも三圃式農業だの施肥の時期だの農業講座も見せてやってたし。



 さらに、農産物が収穫出来た後、本当に税が無いってわかってからは、みんな目の色変えて畑で働き出したわ。

 それから、例えば野菜なんかの保存の効かない農産物の収穫期には、交換市も作ってやった。

 農産物を持ち込むと、菓子だの調味料だの衣服だの櫛だの鏡なんかの身の回りの品と交換出来る場だ。

 行ってみれば組織的な行商の場だな。

 もちろん、そういう取引が得意なサロモン商会に任せてあるけど。


 このときも、まあやっぱりいたよ。

 特にE階梯の低い連中の収容所では、普段は働かずに寝てばかりいた奴が、収穫期になると他人の畑に忍び込んで作物を盗んで、市場で自分が欲しいものと交換しようとしたりするわけだ。


 もちろん、翌日にはスクリーンにそいつの行動が映し出されて、みんなの前で軽犯罪者用収容所に転移させられるんだけど。

 まあ、どんな窃盗犯でもアダムたちの目を逃れることは出来ないからなあ。




 また、子供たちに対しては特別待遇だ。

 なにしろ、ドワーフたちの収容所での観察から、10歳児まででE階梯の方向性がほぼ決まってしまうってわかってるからな。


 ヒト族の一般収容者用収容所では、子供が生まれた時から母親とともに保育園に通うことが義務付けられている。

 この保育園の主な目的は、イブシスターたちが母親に育児教育を行うことだ。

 その後は3歳から6歳までは幼稚園で社会性を学ばせるとともに、亜人・獣人族の保母さんも派遣して他種族にも慣らすようにした。

 そのうちに、ガイア国内の普通の幼稚園との交流や合併も出来るようになってほしいものだと思っている。


 また、この幼稚園は朝8時から夕方5時ごろまでの長時間保育になる。

 その主な目的は、親元を離れて暮らす環境に慣れてもらうことだ。

 やはり、ヒト族の発想が染みついた親と暮らす時間をなるべく減らした方が、子供たちのE階梯の発達に効果があると思ったからだ。


 そして、7歳からの小学校についてだが……

 これは思い切って月曜から土曜日までの全寮制にしてみたんだ。

 まあ、大人たちとの隔離政策でもある。

 もちろん低学年の子供たちには、特にE階梯の高い他種族の保母さんたちを充分に配置してあるし、なによりイブシスターも大勢付き添わせているんだ。


 収容所のレストランに比べても遥かに旨い食事やお菓子、各種ボードゲーム、それから団体スポーツや、遠足や学芸会なんかの団体行動もふんだんに取り入れてある。

 ガイアTVや地球の映画もたっぷり見せてるしな。


 つまりまあ、最近の地球での急激なE階梯上昇に寄与したと思われるものを、片っ端から取り入れているわけだ。

 いわゆるお勉強の時間は全体の半分以下だし、高学年になると各種部活動にも参加出来るようにもなってるし。





 一般収容所(E階梯1.0~1.2)。

 ある小学6年生の場合。


「ただいまー、明日は日曜日だから帰ってきたよー。

 あ、父ちゃんまた寝てるのかよ。畑はどうしたんだよ」


「うるせえ! 俺が寝てようがなにしてようが俺の勝手だ!」


「毎日汗水流して働いてるひともいるのに」


「バカ言ってんじゃねぇ!

 働いても働かなくっても、れすとらんに行けばメシは喰えるじゃねぇか!

 それで働くなんざぁ、バカのするこった!

 お前ぇはそんなこともわかんねぇのか!

 学校で勉強とやらをしてるようだが、そんなこともわかんねぇバカになっちまったのか!」


「あのね、そういうのはバカって言わないんだよ。

 勉強ってもっといろんなことを教えてくれるんだ。

 父ちゃんも大人学校行ってみたらわかるよ」


「ふん! そんなムダなことするわけねぇだろ!

 それよりお前ぇ、今日こそは学校ってぇところからなんかかっぱらって来たんだろうな」


「そんなことするわけないだろうに……」


「な、なんだと! 

 なんか金目の物かっぱらって来いってあれほど言っておいただろう!」


「あんた、なんで親の言うことが聞けないんだい!」


「母ちゃんまで……

 そんな学校の備品を盗んだりしたらみんなが困るじゃないか。

 それに盗みはいけないことだって学校で教わったし。

 他の人の畑の作物を盗んだりしたら、犯罪者用収容所行きだろ」


「なんだとコラ!

 親の言うことが聞けねぇ奴は、奴隷商に叩き売るぞ!」


「なに言ってんだい。

 父ちゃんや母ちゃんに言われるままに一生懸命働いてた兄ちゃんや姉ちゃんだって、大した不作でもないのに奴隷商に売られちゃったじゃないか。

 それでそのカネで父ちゃんたちは旨いもの喰ってたじゃないか」


「な、なんだと!

 よ、よし! お前みたいな生意気なヤツは、明日奴隷商行きだ!」


「奴隷商なんかどこにいるんだよ。

 奴隷を扱ってたような奴は、みぃんな犯罪者用収容所に入れられちゃってるぞ。

 それにさ、金目の物かっぱらってきたとして、それをどうするつもりなんだい?」


「そ、そんなもの決まってるだろうに!

 お前ぇがかっぱらった品を売って、俺たちが金持ちになるのよ!」


「その品って誰が買ってくれるんだよ。

 もう盗品を買い取ってくれる商人もいないんだぜ。

 それにガイア国にはもうカネは無いし」


「な、なんだと!

 学校ってぇところに行ったばっかりに生意気になりやがって!」


「あ、またこんなにパンを溜めこんでる……

 あーあ、もう半分腐ってるし、カビも生えて食べらんなくなってるじゃないか……」


「お、お前ぇに喰わせるためだ!」


「要らないよ、こんな腐ったパン」


「お前…… ほんとに学校に行くようになって変わっちまったねぇ。

 もう今日はメシ抜きだよ」


「別にいいよ。今から学校に戻って夕飯食べさせて貰うから」


「よ、よし! 今から学校に忍び込んで金目のものをだな……」


「だから盗みをしちゃいけないんだってば!

 父ちゃんも母ちゃんも、もっとマジメに生きなよ」


「な、なんだとこの野郎っ!」




「あーあ、暴力なんか振るおうとするから、アダムさんたちに転移させられちゃったよ。

 これ、『傷害未遂罪』ってやつだね。

 特に児童相手の傷害は罪が重いから、1カ月ぐらいは帰って来られないんじゃないかな。

 それに、これで2回目だから、次やったら刑期が1年になっちゃうよ。

 母ちゃんも、父ちゃんが帰ってきたらよく言っておいてよね」


「お、お前のせいで父ちゃんが!」


「だからオイラのせいじゃないってば。

 本当にオイラが悪いんだったら、転送されてるのはオイラの方でしょ」


「なんでそんなに生意気な子になっちまったんだい!」


「あのさ……

 これって、生意気なんじゃあなくって、『正論』っていうやつなんだよ。

 母ちゃんももう少し自分で考えてごらんよ」


「もうお前なんか出て行け! 帰って来るな!」


「うん、そうする。

 学校の同級生も、もうほとんどみんな家に帰らなくなってるしね……

 それになんか父ちゃんや母ちゃんと話してると、悲しくなって来るし……」







 それにしてもだ。

 やはりヒト族ってぇのは例外的な生き物だよなぁ。

 放っておけば倫理心はほとんど育たないし、性欲が強すぎて暴力衝動も強くって……

 でも、もしも運良く自滅の道を免れてE階梯の上昇を果たせれば驚異的な発展を遂げられる……

 なんともまあ因果な種族だわ。


 これ…… 

 どうにかしてもう少しマイルドな種族に出来ないものかな……

 取敢えず、ヒト族の性欲を少し昇華させてやれるようにしたら、どうなるんだろう?




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