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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
224/325

*** 224 『農業』の功罪 ***

 



「ところで、お前が作ったガイア国、その住民である獣人や亜人たちは、そもそも極めて平和な集団を形成しておったよの」


「え、ええ……

 肉食獣相手に多少の闘争は行っていましたが、部族間闘争や、まして部族内闘争は、ほとんど行っていなかったようです。

 あ、オーガ族だけはプロレスリーグみたいなのやってたみたいですけど」


「はは、あれは闘争ではなく娯楽だろうに。

 彼らが闘争を行っていなかった理由はいろいろあるだろう。

 もともと性欲がほとんど無い種族であったり、多少マナが濃くても凶暴化までには至らなかったりな。

 だが、もっとも大きな理由、それは彼らが『農業』を行っていなかったからなのだ」


「あ……」


「大森林地帯の密林を切り開いて広大な農場を作ることは難しかったのだろう。

 まあ、少し開けた場所で小さな農園ぐらいは作っていただろうが。

 中央部付近には草原もあったが、そこはマナが濃過ぎて生存不能であったからの。

 だから、本格的な農業は、環境的な制約で不可能だったのだ」


「それで闘争や戦争が発生していなかったのか……」


「うむ。その通りだ」


「でも……

 だから彼らはあの広大な大森林に生息していても、人口がたった400万人しかいなかったんですね」


「そうだ、さすがに良く気づいたな。

 狩猟と採集の生活は、闘争や階級制が発生しない代わりに、土地当たりで養える人数が極端に少なくなるのだ。

 そうさの、農業をしている場合に比べて土地単位当たりの養い可能人口は、50分の1から100分の1になろうかのう」


「やはりそんなに違いますか……

 ということは、文明が発生して人口が増えて行くためには、どうしても『農業』という発明が必要であり、その農業には必然的に戦争や身分制がセットでついてきてしまうんですね。

 さらにヒト族の場合には、有り余る性衝動が暴力衝動に転嫁されて、闘争がより残虐で悲惨なものになって行ってたんですね……」


「そういうことだ。

 それからの。

 お前も知っての通り、初期世界が試練を克服するためにはいくつかの条件があるが、そのうちのひとつに『人口10億以上』というものがある。

 もしもこの星の知的生命体が狩猟と採集のみを行っていたとしたら、星全体でせいぜい1億が限界だったことだろう。

 故に、農業を始めて人口を増やした上で、闘争や戦争を抑制し、併せてE階梯の上昇も図らねばならなかったのだよ」


「それだけ困難な条件だったんですね。

 特にヒト族にとっては」


「そうだ。

 しかもこのガイアは、既にヒト族が広範な農業を始めていたにも関わらず、人口がたったの2400万しかいなかった。

 それはまず、あまりにも激しい闘争と奴隷制のせいで、天寿を全うできるヒト族の個体が全体の10%以下だったせいなのだが。


 だが、お前はその世界を見事に変えてみせた。

 よもや大平原の全ての亜人獣人種族に農業を始めさせて、かつ闘争を発生させないなどという手段があったとはの。

 ここガイアが無事試練を克服した後には、神界の比較文明学者たちが押し寄せて来ようて」


「なんでウチの世界だけ、農業を始めても闘争が発生しなかったんでしょうか?」


「はは、それはお前の功績だろうに」


「え?」


「ガイア国にはお前という超強力なリーダーと、後は全員平等な国民しかおるまい。

 つまりお前というリーダーが、闘争も戦争も支配階級の存在も許さなかったからこそだろうに。

 まさに、『最も優れた政体とは、民主制でも共和制でもましてや王政でもなく、E階梯の高い強力なリーダーによる独裁制である』ということを地で行っているのう」


「ど、独裁制ですか……」


「まあ、独裁制と言うと聞こえは悪いが、優秀なリーダーによる直轄政治とでも言い換えればよかろう。

 ただ、その最良の政体にとってのアキレス腱は、後継者問題だ」


「ええ、俺も一介のヒト族だったころにはそのことを心配していました。

 でもまあ俺が死んでも、エルダさまやシスティがまた優秀な使徒を呼んでくれるだろうと楽観はしていましたが」


「だが今やお前は神となり、数万年から数十万年の寿命を持つに至った。

 このまま業績を重ねれば、遠からず上級神にも至るだろうが、その場合の寿命は数百万年から場合によっては数億年になるだろう」


「えっ……」


「そのころにはお前もガイアを離れているかもしれんが、それでもお前のことだ、後継者の動向には目を光らせているだろう故に、このガイアはもはや安泰であろう」



「と、ところで、この銀河宇宙の知的生命体の文明は、皆同じような経過を辿って発展して来たんですか?」


「うむ。この銀河宇宙では、ヒト族の歴史はほぼ同じだ。

 いずれも農業が始まり、文明らしきものが始まってからは、殺戮の歴史を辿っておる。

 ここガイアの場合は、濃過ぎるマナのせいでいささか過激の度が強かったが、それでも想定の範囲内であるぞ。


 故に、試練用の世界を与えられて知的生命体を創る役割を持たされた初級天使達は、あまりヒト族を創りたがらん。

 一般にはヒト族を創った場合の試練合格率は10%ほどでしかないからの。

 肉食獣型の知的生命体ですら合格率は35%程になるし、草食獣型であれば合格率は70%を超えておるからの」


「それではなぜエルダさまは地球にヒト族を創ったんですか?」


「それはヒト族の驚異的な発展性に期待してのことだ」


「発展性……」


「一般にヒト族は、その攻撃性によって自滅する可能性が高い。

 ましてや神界の『試練』に合格できる可能性は格段に低い。

 だが、その攻撃性を抑え込めて、E階梯を上昇させしめた場合には、その攻撃性が科学技術やよりよい社会体制の充実に向かうために、結果として高度文明を築けることが多いのだ。


 この銀河世界には数多の平和文明があるが、その中でヒト族文明が占める比率は12%ほどと低い。

 だが、その低い比率の中でも、ヒト族文明はその発展性をもって技術的には遥かな高みに昇って行っておるからの。

 アダムの高性能アバターなどの高度科学技術の産物は、全てヒト族の星で作られておるぞ。


 それからの。

 神界でも、初級天使が『試練』に合格した暁には通常昇格が行われるが、草食獣型の知的生命体世界を合格させた場合に比べて、ヒト族型知的生命体を合格させた場合には、遥かにその評価が高いのだ。

 つまり、わたしは一発狙いのギャンブルをしていたことになるの……」


「そ、そうだったんですか……」


「地球のヒト族は、最初の試練には合格したものの、未だ神界最終認定世界にはなっておらん。

 まだテロやら部族闘争やらで罪業カルマポイントの発生率が高いからの。

 それでもわたしが同期トップで中級天使に昇格出来ていたのは、ヒト族世界の人口を80億にまで増加させていたからなのだ。


 まああと500年もすれば、地球のヒト族全体のE階梯も上昇して、神界最終認定世界にはなれることだろう。

 そのときには、本来わたしも上級天使に昇格するはずだったのだ。

 もっとも、お前のおかげで既に初級神にまでも昇格させて貰っておるが」


「じ、じゃあシスティは……」


「システィは、わたしに憧れてヒト族を創っただけだ。

 もっともヒト族のあまりに凄惨な行動に絶望して、多くの亜人族や獣人族も創造したのだが。

 まあ癒しを求めたと言ってよいだろう。


 だが……

 ヒト族がその亜人族や獣人族までをも脅かし、大虐殺を行おうとしていたのだ。

 そこで使徒召喚などという非常手段を取ってまでこの世界を救おうとしたのだよ。

 一般に、使徒を使用して『試練』を乗り越えた場合には、神界の評価はあまり高くはならんからの。

 だが、システィにとってはそんな評価などよりも、亜人たちや獣人たちの命の方がよっぽど大切だったということだったのだ」


「そうだったのか……」


「だがお前は、我々の期待を遥かに超越した。

 まさかわたしがシスティに推薦したお前が、『神界金星勲章』まで賜るとは……

 しかも19ケタに迫る幸福ハピネスポイントまで得るとはの……

 つまりお前は、我々の英雄となっただけではなく、銀河のヒト族を代表する英雄になっておるのだよ。

 それも己の努力だけによって」


「そ、そうなんですね……」


「わかってもらえたか。

 ついでにわたしやローゼさまやシスティやフェミーナや悪魔っ娘たちが、女性体として、その恩人や英雄の子を孕みたいという気持ちもわかって欲しいのだがのう」


「そ、それは『試練』に合格してからということで……」


「ふふ、言質は取ったぞ。

 このまま行けば、あと10年もしないうちに『試練』には合格するであろう」


「そ、そんなに早くですか?

 ま、まだ『試練』の締め切りには500年近くありますが……」


「お前は今、ガイアのヒト族を罪業カルマポイントやE階梯に基づいて収容所に仕分けしておるだろう」


「はい……」


「そうして罪人たちにこれ以上の殺戮が不可能になるようにし、併せてE階梯の高い者たちに日々幸福ハピネスを与えておる。

 それらの政策によって、あと1年以内に罪業カルマポイントの伸びはゼロになるだろう。

 一方で幸福ハピネスポイントは驚異的に増えておる。

 その状態とポイントの伸び率を勘案して、神界は特別合格認定を出すことだろうの」


「そ、そうなんですか?」


「忘れたか?

 お前は既に『神界金星勲章』まで賜った銀河の英雄だ。

 神界としても、メンツにかけて、その英雄が取り組む試練世界を不合格にするわけにはいかんのだ。

 多分だが、罪業カルマポイントの伸びがゼロになった時点で、このガイアは『試練合格世界』として認定されることだろうの」


「…………」


「ふふ、そうなったらいよいよお前から子種を貰えるの。

 念のため言っておくが、我々天使族、ああ、いまや神族となっておるが、その天使族や神族は、ヒト族と違って楽しみのために生殖行動をすることは無い。

 まあシスティはお前を慰めるために『子作りの練習』をしてやっておるようだが。

 そして、ローゼさまやシスティやもちろんわたしにも子はいない。

 つまり、お前の子を欲しがっておる女性は、お前が女にしたシスティ以外は皆処女であるからの。

 楽しみにしていてくれ♪」


「うわわわわわわ……」






 翌日からのシスティの神域はもうタイヘンだったよ。


 システィもエルダさまもローゼさまも、トーガの裾がヒザ上30センチぐらいになってるし、胸元もヘソ下ぐらいまで切れ込んでるし……

 さらにトーガ自体も強烈に薄くなってて、ついでに誰も下着つけてないし……


 もちろん、神域当番の悪魔っ娘たちもおんなじよ。

 さらに風呂は絶対にひとりで入らせて貰えなくって、常に10人ぐらいで一緒に入ってるんだよなー。


 まったくもう……




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