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【爆撒英雄サトルのガイア建国記】  作者: 池上雅
第1章 ガイア建国篇
219/325

*** 219 ガイア国精鋭兵3000の全容 ***

 



「次は我が軍のベヒーモス重装歩兵をご紹介いたしましょう」


 最高司令官代理の声と共に、フェンリル達が左右に移動していく。

 そうしてその間に現れたのは、これも魔法で体長40メートルに拡大された100頭のベヒーモスたちだった。

 そのすべてが金属製の鎧に覆われていて、相当に厳つく見える。

 頭部から生えた全長10メートルにも及ぶ角が、磨かれて光っていた。


「彼らの全長は40メートル、体重は1万5000トン。

 重装歩兵ですので脚は多少遅いですが、それでも体が大きい分だけ時速80キロで走ります。

 つまりまあ敵軍の騎兵よりも遥かに速いということであります」



「「「「「 ぶごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~っ!!! 」」」」」


 ベヒーモス重装歩兵軍が雄叫びを上げた。

 その重低音によりヒト族軍の全ての盾と刀槍がビリビリと震える。

 もちろん各所に配置したスピーカーの魔道具から出ている音によるものだ。

 音のエネルギーは距離の二乗に反比例するために、いくらなんでも何キロも離れた場所からの音では、ここまでの効果は得られない。

 だが、魔道具だけあって、敵軍全域に150dBもの大音量が届いた。

 大陸各地のスクリーンの魔道具からも、同音量の音が出ている。


 スクリーンに近いところに居た群衆の30%が腰を抜かした。

 ヒト族軍の20%も腰を抜かしている。



「それではミノタウロス斧兵部隊とトロール槍兵部隊をご紹介いたしましょう。


 旧神聖騎士団軍から向かって右側に900名のミノタウロスたちが並んだ。

 左側にはトロール900名もだ。

 それぞれの兵も身長は30メートルに拡大されている。

 ミノタウロスたちはその手に巨大な斧を、トロール達はこれも巨大な槍を手にしていた。


「「「「「「ぐうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~っ!」」」」」」


 またもや強烈な雄叫びが周囲を震わせる。





「解説のべギラルムさん、ガイア国の精鋭部隊は随分と大きいのですね」


「はい、サトル神さまの魔法で大きさは自由自在ですから」


「重さもですか?」


「ええ。その通りです。

 普通は『質量保存の法則』というものがあるのですが、まあサトル神さまにとっては今さらですね」


「これだけ大きくて重ければ、100倍の数の敵でも対抗出来ると言うことなのでしょうか?」


「ええ。

 通常、技量と装備が同等の軍人同士の戦いであれば、その勝敗を決めるのは体重差です。

 サトルさまの前世の世界では、ボクシングや柔道などと言う格闘技に人気が有ったのですが、選手はそれぞれ細かい体重別の階級に分かれて戦っていたそうですからね」


「体が大きければ大きい程、体重が重ければ重い程、戦いには有利だということなのですね」


「その通りです。

 例えばそうですね、身長2メートル、装備も合わせて体重120キロのヒト族の戦士がいたとします。

 その戦士が、身長4メートル、体重1000キロのオーガ族の戦士と互角に戦うためには、単純に考えて8人ほどが必要と思われます。

 つまり、体重の合計が同じにならなければ、相手にならないということなのですよ。


 あそこに見えるオーガ兵は、身長30メートル、体重は5000トンほどあります。

 ですから単純計算で、オーガ兵1人に勝つためにはヒト族の戦士なら4万人ほど必要になりましょうか。

 まあそれでもオーガ兵が負けるとは思えませんけどね」


「つまり、ガイア国の精鋭兵は確かに3000弱しかいませんが、それでもその大きさと重さがケタ違いだったということなのですね」


「はい。旧神聖騎士団の司令部にも、ガイア軍は3000だということははっきりと伝えていましたが、その大きさと重さについては何も言っていませんでした。

 因みに、旧神聖騎士団のヒト族軍は、その装備も含めて20万人で2万トンほどの重量がありますが、ガイア国精鋭軍は3000人で約2000万トンの重量があります。

 つまりまあ体格比は逆に約1000倍もあるのですよ。


 ですから、ガイア国軍に対抗するためには、ヒト族軍は少なくとも2億人は必要だったのです。

 それがたったの20万人とは……

 呆れてモノも言えませんな」



 この放送を聞いていた全てのヒト族将兵は、蒼白な顔でアブラ汗を流していた。




 画面にはまたガイア国軍最高司令官代理の端正な顔が映った。


「それではここで、旧神聖騎士団軍司令部に降伏を勧告させて頂きます。

 全面降伏を受け入れる場合は、城の天守閣に白旗を掲げて下さい」



 旧神聖騎士団軍の全ての兵士が振り返って城の天守閣を見つめた。

 特に前面に展開していた兵たちほど、必死の思いで天守閣を凝視している。

 彼らにしてみれば、なにをどう考えてもあのような恐ろしい敵と戦いたくはないのだ。


 通常、司令部が降伏を受け入れるのは、自軍の兵力が半数以上死亡したときである。

 つまり、前面にいる兵20万が全員戦死したときに、初めて司令部は降伏を宣言するのだろう。


((((( 司令部の見栄と逡巡の犠牲にされるのか…… )))))


 前線に展開する兵たちの間に、強烈な厭戦気分が広がった。




「ふむ。彼我の戦力差も理解出来ないようですね。

 それではガイア精鋭軍、前進開始っ!」


「「「「「 ぶごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~っ! 」」」」」

「「「「「 ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~っ! 」」」」」

「「「「「 がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~っ! 」」」」」

「「「「「 ギャーーーーーースっ! 」」」」」



 凄まじい雄叫びと共にガイア全軍が前進を開始した。

 ずしんずしんという強烈な音と共に、次第に大地が揺れ始める。


 もちろんサトルの魔法によるものだ。

 普通、いくら巨大な生物が歩いても離れた大地は揺れない。

 特にフェンリルなどは、あの素晴らしい肉球があるために足音すらしない。

 だがそんなことは前線に立つ兵士にはわからないだろう。

 わかっているのは、実際にガイア軍が近づいて来るにつれて、自分の立っている大地が激しく揺れ始めたことだけである。



 さらにガイア軍が近づいてくるにつれて、その大きさがはっきりとわかるようになってきた。

 先頭にいるのは体長40メートル、体高25メートルもの巨獣ベヒーモス100頭である。

 その後ろには、体長50メートルの巨大狼フェンリルに乗った身長30メートルのオーガ族300である。

 さらに左右を見渡しても、身長30メートル、900人ずつのミノタウロス兵とトロール兵がいる。


 前線兵士の恐怖感は最高潮に達しつつあった。



 とそのとき、前線後方のトレビュシェット部隊が、数発の石弾を発射した。

 恐怖に駆られて指揮官の命令も無いままに打ち出してしまったようである。

 残念ながら、先頭のベヒーモス兵の遥か前方にぽとぽと落ちただけだったが……

 どうやら相手のあまりの大きさに目測を誤ったものと思われた。



「全軍停止!」


 総司令官代理の命令と共に、ガイア精鋭軍が動きを止めた。



(ま、まさかあんな石ころを恐れているのか?)

(ひ、ひょっとしたら効果があるのか?)



 そんな希望を抱いたヒト族軍の前方、ガイア軍後方から戦場の上空に鳥のようにも見える物体が飛来した。

 サトルが『戦闘機』と呼んだものの、理解してくれたのはベギラルムだけだったという作品である。

 まもなく全長20メートルほどの同型機が100機、戦場の上空を覆い尽くした。

 その後方上空からやってきたものは……

 全長500メートルに及ぶ弩級戦艦である。

 もちろんベースになった設計はエアカ―だが、その大きさは大分大きい。

 これも間違いなくサトルの趣味だろう。



「空爆開始!」


 空中にホバリングする戦闘機の下部が赤く光り始めた。

 もちろん弱めにしたレーザー兵器であり、すべての機体もレーザー発振機もアダムブラザーたちが操作している。


「うわっ! あ、熱いっ!」

「あちちちちちちちっ!」


 トレビュシェット兵たちが慌てて逃げて行く。

 投石機の周囲にヒトがいなくなると、アダムブラザーたちはレーザーの出力を上げた。

 すぐに煙を上げて燃え始める大型投石機群。


 同時に前進した戦闘機群が、城壁の上のバリスタにレーザー照射を始めた。

 こちらも周囲にヒトがいなくなると、レーザーの出力を上げ始める。


 戦場上空には、500台のトレビュシェットと1000台のバリスタが炎上する煙が立ち込め始めている。


 お蔭でレーザー砲の光条がよく見えるようになった。

 もちろん、空気中に発射されたレーザーの光条はふつーは見えないものなのだが、こうして空気中に煙のようなものがあると乱反射してよく見えるようになる。

 コンサートなどでスモークを焚いて、レーザー光線をよく見えるようにする工夫と同じである。


 レーザー砲の出力を一気に上げると、対象物が瞬時に蒸発してしまってケムリも出ないために、微妙な出力調整が必要とされる作戦であった。

 さすがはアダムブラザーたちである。



 戦場上空は、飛来した100機の戦闘機のレーザー砲によって、1500基もの地上兵器が焼かれているという、まるで50年前の『宇宙人襲来モノ映画』のような様相を呈していた。


 こうして10分ほどで、全ての大型地上兵器が焼き尽くされたのである……




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